ひぐらしだより


人生はその日暮らし。  映画、アート、音楽、フィギュアスケート…日々の思いをつづります。
by higurashizoshi
プロフィールを見る
画像一覧
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30

スピッツ2010@神戸こくさいホール

好きなものの話を人とするのは、あんがいむずかしい。うまく好みが一致したときは会話が平和にすすむけれど、最初からまったくの行き違い、となると気まずい。そして、実はいちばん困るのが、「○○が好きなんだけど…」「あ、それ私も好き」と幸運なスタートを切った会話が、双方の「好き」の中身に実はエライ差があり、その「好きななにか」に対する認識のちがいがあきらかになっていき、心はかけはなれていき、結局はかなしい結末で終わることである。

d0153627_17173117.jpgで、なんの話をしたいかというと、スピッツである。かわいいですね。
じゃなくて、日本のバンド、スピッツ。知らないって人はあまりいないだろう。デビューから20年以上、ずっと売れ続けている。メガヒットだってあったし、タイアップも多数。スピッツの一般イメージはたぶん、《草野マサムネの透明なボーカル》《美しいメロディーと歌詞》《爽やか癒し系バンド》みたいな感じ。
だから私は言えない。「音楽どんなの聴くの?」「何が好き?」と聞かれたとき、「スピッツ」と。「まあUKロックとか…」などとお茶をにごす。
だって、無邪気に「スピッツ」と答えてごらんなさい。「あ、スピッツ私も好きー」とか「いいよねスピッツ」という対応がかえってきて、「『白線流し』の歌だよね」とか「聴きやすいよね」という流れになり、なにかこう、きらきら~とした空気になって、こっちは(あー、やっぱり言うんじゃなかった…)と後悔することになる。
d0153627_17223810.jpgスピッツのどこが好きって、私はいわゆるヒット曲じゃないマイナーな曲(特に初期のころ)の、湿った歪んだところが好きなのだ。草野マサムネという天才の書く歌詞と曲は、林の奥の廃屋にそっと隠れているような、暗い胸騒ぎにしめつけられるような、なつかしさと残酷さが点滅する世界。ときどきありきたりの歌を作ってしまって(そしてヒットして)がっかりさせられながら、ずっと長年好きでいつづけているのは、もちろん草野くんの声が理由なくただ好き、ということも、バンドのバランスのよさもあるけれど、その作品世界の美しい歪みっぷりが私の心にぴったり添うからだと思う。

で、そのスピッツのライブに行ってきたという話である。6月7日、神戸こくさいホール。そして、いっしょに行ったのがタタだという驚愕の事実! といっても、事情を知らない人には何のことだか…だろう。不安定期には生来の聴覚過敏が出て、音楽はおろかテレビの音も出せなかったタタである。それが、回復してくるにつれ自分からCDを聴くようになり、好きなアーティストも見つけ、いろんな音楽をたのしむようになった。とはいっても、ライブはとにかく音の大きさが段違いだし、独特の空気、大勢の人…よもやタタが「スピッツ神戸に来るの? 行きたい!」と言うとは思わなかった。
もちろん、タタにとって人生初ライブ。音は大丈夫なんだろうか、楽しめるんだろうか、と案じながら、私のほうは久々の生スピッツなのでその分もさらに緊張して、うへーと言いそうになりながらライブにのぞんだ。
タタにとってはスピッツは「小さいころから聴いてきたから、家族とおんなじで、好きなんだけどあたりまえな存在」なんだそうだ。ふーむ。なるほど、客席にはうちと同年代くらいの親子連れの姿もちらほら。いつの間にかスピッツも40代だもんなあ…と実感。

今回のツアーは、例年とちがってアルバム先行ではなく、新しいアルバムを準備しながらのツアー。だから未発表の新曲あり、なつかしい曲ありで、昔の歌もマイナーな選曲のものがいくつかあったりした。ライブが始まって、とたんに私は不思議な気持ちにおちいっていった。
前回スピッツのライブに行ったのは、9年前、渋谷公会堂。タタは6歳で、当時住んでいた東京の学校で不登校になり、それでも行かなければと本人が必死でもがいていたころだった。そのほかにも私じしん、個人的に耐えがたいできごとがあって、人生で何度目かのどん底の時期だった。タタとミミをあずけて、ひとりで行ったライブ。ステージを見つめている時間だけ、何もかも忘れられた。
そして今。となりには15歳のタタがいて、手拍子をしている。ステージの上のスピッツは、まるで9年の歳月なんかなかったみたいにフレッシュで、いったいこれはどういうことなんだろう。私はこの9年で、こんなに年とってしまったというのに。
なんだかおいてきぼりをくったような、それでいてしあわせな気持ちで、2時間あまりを過ごした。アンコールの最後、「僕のギター」で終幕。タタは大音響もなんのその、「すごかった! 楽しかった!」を連発していた。
まさかこんな日が来るとは思わなかったタタとのライブ。お互い、きっとずっと憶えているだろう。

家に帰ってからも「スピッツは歪みだ!」という話で盛り上がり、mixiに《スピッツは誤解されている》というナイスなコミュニティがあるのを発見して、2人で大ウケしながら読んだ。おお、私と同じように思っている人たちがいたんだと感動。まあ、スピッツ自身がその誤解を解こうとする気もなく、一般イメージもちゃんと利用してバンドとしての平常飛行をつづけていくわけだから、これは一部のコアなファンが胸に抱いていたらいい想いなんだろうな。堂々と「スピッツ好きです」と言う、かなわぬ夢を心にしまって…。
[PR]
by higurashizoshi | 2010-06-12 17:32 | 観る・読む・書く・聴く | Comments(4)
Commented by マッシー at 2010-06-13 03:10 x
お久しぶりです。
4年ほど前から、スピッツを聞くようになりました。まだ3枚ほどしかアルバム聞いてないのであまり詳しくないのですが。
聞くようになったのは、歌詞に「おやっ!?」ってちょっと黒いもの?ひっかかるものを感じたからでした。
higurashizoshiさんが感じてる歪みとつうじることなのかな?
もう少し別のアルバム聞いてみようかという気になってきましたよ。

ちょっと聞けないようなすごく基本的?な疑問をかかえたままな私です。スピッツって名前。なんでスピッツ?

Commented by きのこ at 2010-06-13 07:30 x
こんにちわ。先日はありがとうございました。

その感じ、分かる気がします。
スピッツさんに本当のところを聞く術はありませんが、
深いところで響く人だけに届くエキスが混ぜられているんでしょうか。
私もベストアルバム2枚だけ持っています。
これは完全に「スピッツいいよね~~」のレベルですね。

また会って、こんなことや、いろんなこと直接お話したいです。
Commented by higurashizoshi at 2010-06-15 22:09
マッシーさん
そうですか! スピッツ聴かれるんですね。
で、きっとそれ、それですよ、その黒いもの。
そこを聴きこんでみると深みにいけるかも?

売れ線の曲をさらーっと聴いてると、きれいなだけにしか
聞こえないかもしれないスピッツの曲。
ぜひ別のアルバムも開拓してみてください。

それと、名前のことですが、たしか「弱い犬ほどよく吠える」
っていう意味でスピッツと(昔はきゃんきゃん鳴く代表格
でしたよね)つけたとか。自己イメージなんでしょうね。
Commented by higurashizoshi at 2010-06-15 22:10
きのこさん
私もお会いできてよかったです。

響く人には届くエキス、コアなファンの一部は《変態性》と
言ってるみたいですよ。
ベストアルバムにもエキスはかくれているかも…?

またいろいろお話しできるチャンスがあるといいですね。

フォロー中のブログ

明石であそぼう! たこ焼...

最新のコメント

おはようございます。 ..
by Disney 鴨 at 10:36
Disney 鴨さん ..
by higurashizoshi at 01:15
こんばんは。ひぐらし草子..
by Disney 鴨 at 20:22
Disney 鴨さん ..
by higurashizoshi at 08:28
こんにちは。 男子SP..
by Disney 鴨 at 17:05
Disney 鴨さん ..
by higurashizoshi at 15:28
こんにちは。 ひぐらし..
by Disney 鴨 at 14:45
Disney 鴨さん ..
by higurashizoshi at 00:20
こんばんは。 ひぐらし..
by Disney 鴨 at 20:54
Disney 鴨さん ..
by higurashizoshi at 02:06

検索

タグ

ファン

ブログジャンル

映画
ウィンタースポーツ