ひぐらしだより


人生はその日暮らし。  映画、アート、音楽、フィギュアスケート…日々の思いをつづります。
by higurashizoshi
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歯医者騒動

子どものころから歯は丈夫。虫歯のないのが当たり前、と思って油断していたのがいけなかった。思わぬ伏兵があらわれて、このところずっと歯医者通いが続いていた。
伏兵というのは、歯周病である。そんなの自分とは無縁のはなしと思っていたのに、今年ひさびさに歯医者に行ってみたら、
「うへー。歯周病ですよ。進んでますよ。いやー、いつの間にこんなことになっちゃったのかなあっ!」
と言われた。そんな元気に言われたってね。なんか先生、怒ってるみたい。いつの間に…って、そりゃいろいろありましたから。歯医者なんて来られませんでしたから。

そこから延々二ヶ月以上、痛い治療に通い、先週やっと先生から「はい、次回で終わりですからねー」と笑顔で言われた。
やっと最後だ~と思って心も軽く診察を受けた火曜日。痛いのも今日までね~と思うと我慢もきくというもの。
「さ、て、と…」
歯科衛生士さんにかわって先生がやってきて、おもむろに口をのぞきこんで、あちこちを触り、そしてひとこと。
「やっぱりこの歯、抜かなきゃだめですね」

え…?
「やっぱり」…?
「この歯」…?
「抜く」…?

いや、確かにこの、右の一番奥歯はすごく状態悪いって言われてはいた。言われてはいたけどさ、抜くなんて聞いてないし。…やっぱりって何?

「ぬ、抜くんですか?」
「そうですねぇ、ほかに方法がない」
「…抜いたらどうなるんですかっ?」
先生はハハッと笑い、「いや大丈夫ですよ、まあ義歯か…インプラントか…」
「いんぷらんと、ですか?」
「人工の歯です。ボルトで埋め込んで、うまくいけば半永久的に使える。義歯は寿命短いし手入れが大変ですからねぇ」
「……」
頭が状況にぜんぜん追いつけないまま、まず一番に浮かんだ問いを口にする私。
「その、いんぷらんとっていうのを入れると、いったいいくらぐらいかかるんですか?」
先生はちょっと困ったように笑って、ソフトな声で言った。
「50万…ですね」

思考、停止。
5秒経過。
思考、ゆっくり再生。

ごごごごご、ごじゅうまん!?
ごじゅうまん? ごじゅうまん? ごじゅうまん?(以下略)

今日で終わりのはずだったでしょ? 
だのに、来てイスに座ったら、「やっぱり抜く」で「いんぷらんと」で「50万」って…
ぬゎんじゃそりぁぁぁぁ―――!?
そして先生、
「インプラントにしたら、治療が終わるまでだいたい、一年半ですねー」
としれっと言う。

一年半?
今日で終わりが、一年半?

「まあ、よく考えてみてくださいね」と送り出されて、放心状態のままふらふらと歯医者を出た。
頭の中は「ごじゅうまん」の文字が点滅。50万、自分の歯のために50万? 突然に50万? …歩いているうちにだんだん、やっと腹が立ってきた。
おかしいよ、先生。最初から説明してもくれないで、いきなり他の選択肢はないって言い方されて、納得する患者がいるかい? こっちは治療終了と信じて行ってたのに。
あああ、ショックのあまり文句のひとつも言えなかった自分が口惜しい。口惜しいと思うとまた無性に腹が立つ。思わず奥歯を噛みしめる。これ、抜いちゃうの? ほんとにそうするしかないのか? そしてそして…50万? いやいや、絶対無理。ダメ。ほかの道があるはず。きっとあるはずだっ!

その夜、姉に用事があって電話した。切りかけたとき、ふと「そういえば今日さあ…」と事のてんまつを手短かに話したのだった。
すると、なんと。姉いわく、
「エッ、あたしも歯周病で一番奥歯抜いたよ、去年。」
なんですと!? なんちゅうディスコミュニケーション姉妹。そんなこと知らんがな。
「それでっ、それでっ、そのあとは? どうしたん?」義歯か、50万か?
「…え、そのまま。」

そのまま…?
「あたしが行ってるとこの先生は、この場所の歯は抜いたままで大丈夫って。ボクも奥歯抜いてそのままですねん、って口あけて見せてくれたもん」
ハイ…?
「で、で、抜いて今はどうなん?」
「いや、すっきり! めっちゃ具合いいよ。」

なんなんだ、なんなんだこのギャップ。
今日、私が言われたこととぜんぜん違うじゃないの。
驚きのあまり、その後ネットで調べてみたら、抜歯のあとそのままにしておいていい、という意見の歯医者もそれなりにいることがわかった(ただし一番奥歯の場合がほとんど)。
その一方で、インプラントや審美歯科系の歯医者のものすごい数、華麗な宣伝ぶりにも圧倒され、くらくら。もちろんそっちが今は主力で、いまやお金をかければ、高度な技術で人口の歯もきれいな歯並びも手に入れられるのだ。50万円で腰を抜かしてた私なんてカワイイもん、という巨額の金を歯につぎこむ人も多いらしい。
ふーむ。

そしてひと晩考えた結果、姉の行っている「口をあけて抜歯あとを見せてくれる先生」のところに行ってみることにした。これまでの歯医者は家からすぐのところで至極便利だったのが、そこは車かバスで数十分という距離。でもじっさい、行ってみた価値は大いにあったのだ。
先生はこちらの話はじっくり聴いてくれるし、やっぱり口をあけて「ボクも抜いてそのまんまですわ!」と言い、インプラント50万に「…高っ!」と苦笑し、
「うちなら35万ぐらいですわ。そやけど運がよかったですやん、この奥歯やったらホレ」
とレントゲン写真を見せながら、
「この歯を抜いてもここが噛み合わせるから、大丈夫ですよ。そんな高いモン、入れんでよろしいやん!」

よし、決めた。
明石に越してからずっと子どもたちもお世話になってきた歯科ではあったが、きっぱりお別れすることにした。これからはこの「口をあけて見せてくれる先生」のところに通おう。
そう思った決め手はこの診断だけではなく、これまでの歯医者ではいかにも「助手のお姉さん」でしかなかった歯科衛生士さんが、ここでは先生と対等にモノを言ってるのが新鮮だったからでもある。プロ意識で背筋がのびた感じの衛生士さんたちは、とってもさっそうとしていた。

そして、心もぐっと軽くなった帰り道で思ったこと。
50万円、はもちろん大問題だけど、私の中でいちばん大きかったのは、医者への不信感だったんだ。もし治療の最初からきちんと見通しが説明されていたら、かかりつけ医を替えようとまでは思わなかったかも。
…まてよ、もしそうなってたら、私は結局あの先生にずっと従うことになってたんだろうか?
そう考えると、今回のショックも、実はいい転機につながっていたと思えなくもない。絶妙のタイミングで姉から話を聞いたのも、不思議な運。これもまた、《ピンチはチャンス》っていうやつなのかもねえ…。結果的に、信頼できそうな歯医者が新たに見つかったわけだし。

でもやっぱり、家に帰り、迎えに出た子どもたちに開口一番、口をついて出たことばは…
「50万もうかったぞい!」
正直な私であった。
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by higurashizoshi | 2010-09-22 11:29 | 雑感 | Comments(2)
Commented by wadac at 2010-10-02 12:27 x
私も左下の去年、奥側2本の歯が無くなり、インプラントで80万と言われたんだけど、とりあえず脱着式の部分入れ歯にしました。それも面倒なんであまり使わず、今、これを読んで思い出して久々に付けました。下の歯入れた無いと上歯が下がってきちゃうんんだそうで、ちゃんと付けろと歯医者に言われてたんだけど。。。今日は一日付けとこう。
Commented by higurashizoshi at 2010-10-02 18:36
wadacさん
2本で千円…は竿竹屋ですが、2本で80万…もはや高いのか
なんなのかわかりませんね。
部分入れ歯って、手入れとか大変そう。つけなくても支障ない
のなら、私でもほっぽってしまいそうです。
たまに気の向いたときに…じゃあダメなのかなあ。

結局、この問題の歯、先日この鞍替えした歯医者で抜歯したんです。
そのあとは、やっぱりそのまんま。今のところ問題なく、快適ですよ~。

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