ひぐらしだより


人生はその日暮らし。  映画、アート、音楽、フィギュアスケート…日々の思いをつづります。
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ハッピー・ゴー・ラッキー

d0153627_23105228.jpg2007年 イギリス
監督・脚本 マイク・リー
出演 サリー・ホーキンス、エディ・マーサン、エリオット・コーワン、シルヴェストラ・ル・トゥーゼル、スタンリー・タウンゼント


マイク・リーの映画が好きだ。「ネイキッド」「キャリア・ガールズ」「秘密と嘘」「人生は、時々晴れ」「ヴェラ・ドレイク」と、どれも強烈に記憶に残る映画ばかり。マイク・リーの映画を観るといつも、《生きていくとは、こういうことだ》と思う。
つらいこと、どうしようもないこと、くすっとおかしいこと、ちょっぴりの安息…淡々と登場人物の体験をつづりながら、人と人との《絶望的なわかりあえなさ》と《わかりあうという希望》を同時に見せてくれる。

細かい脚本なしで、役者とディスカッションしながら撮っていく彼の映画は、役者の力量が試される。カンヌでパルムドールを受賞した「ヴェラ・ドレイク」も、俳優たちの演技とは思えないリアリティに凄みがあった。そしてそれに続く新作が完成、ベルリン映画祭でサリー・ホーキンスが主演女優賞を取った…という情報が入ってきて、「早く日本で公開しないかな!」と大いに期待していたのだが…おや?公開の話が出てこないぞ? とぽつねんとした気分になっていたときから、はや2年。
このたび、《主要映画祭で受賞しながらも日本で劇場公開されなかった映画特集》として「三大映画祭週間」という素晴らしい企画があって、やっとこの「ハッピー・ゴー・ラッキー」を元町映画館で観ることができた。

観終わったときに身体から出てきた言葉は「ああ、マイク・リーだ!」。主人公ポピーの日常を、この先もずっと眺めていたいなあ…と思った。
大きな出来事は何もない。30歳のポピーは一見へらへらと能天気な女性で、のっけから「なんだこいつは?」と思わせる。ファッションもめちゃくちゃで、他人にも不用意に話しかけるし、とにかくいつも笑ってばかりで、難しいことなんて何も考えてないように見える。
ところが意外にもポピーは小学校の先生。貧困層も抱えるその学校では、子どもたちになかなか凛と、そして温かく熱心に接しているのだ。もう10年も親友とフラットをシェアして住み、仕事と日々の暮らしを楽しんでいる、けっこう真面目な女性だということがだんだんわかってくる。
同僚とフラメンコを習いに行ったり(このフラメンコの先生が秀逸!)、妊娠中の妹のところに泊まりに行ったり、問題を抱えた生徒のケースワーカーに一目ぼれされたり、いろいろなことがあるのだが、彼女にとっての頭痛の種は自動車の教習。契約した教官が彼女を怒鳴りまくり、批判しまくるのだ。
この教官を演じるのがマイク・リー作品の常連エディ・マーサンで、思慮深くつつましい人物を演じることが多い彼がここではとにかくキレてて凄い! そのキレまくる教官との関係が、この映画の中で唯一ドラマチックといえるのだけれど、ここで鮮明な形であらわれる《絶望的なわかりあえなさ》と《わかりあうという希望》は、まさにマイク・リー映画の白眉だと思う。

「ハッピー・ゴー・ラッキー」は、テイストとしては「キャリア・ガールズ」に近い、実に淡々とした描写の作品だ。だからこそ、一見何もないように見える人生のひとつひとつの局面の深みを、そして一見単純に見えるひとりの人間の多重な深さを、さりげなく鮮やかに切り出してくる。
ポピーの顔から笑いがすっと消え、哀しみと受容のまなざしで相手を見つめるとき、観客ははっと胸をつかれる。人は複雑で、とらえどころのないものなのだと。そして映画の最後になって、私たちは初めて、ポピーの能天気な笑顔や行動の理由を、実にさりげない形で知らされる。

エンドロールを眺めながら、「ああ、またマイク・リーにやられてしまった!」と満腹の心で私は思った。そして家に帰って新聞を見ると、次の新作「家族の庭」がもうすぐ劇場公開されると書いてあるではないか! 今度はちゃんとロードショー上映されることになったのだ、よかったよかった。しかしはたして、神戸にはやって来るのだろうか…?
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by higurashizoshi | 2011-11-18 23:15 | 観る・読む・書く・聴く | Comments(2)
Commented by hinata at 2011-11-19 13:15 x
こちらの映画も、マイク・リー監督も知らなかったけれど、『家族の庭』は、見たいな~と思っていた所でしたよ。
この映画も見てみたくなりました。
《絶望的なわかりあえなさ》と《わかりあうという希望》を同時に見せてくれる。
こういうのなんだか妙に惹かれます。

Commented by higurashizoshi at 2011-11-26 11:05
hinataさん
お返事おそくなりました!

『家族の庭』神戸でも上映することがわかり、楽しみにしてます。
hinataさんも観たいと思ってたんですね~
マイク・リーの映画はほんとにすごいですよ。とてもリアルで、
リアルすぎてつらい人はいるかもしれないけど…
比較的観やすいのは『秘密と嘘』と『人生は、時々晴れ』かな。
なかなかレンタルにないんですけどね。

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