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ひぐらしだより


人生はその日暮らし。  映画、アート、音楽、フィギュアスケート…日々の思いをつづります。
by higurashizoshi
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帰ってきました

福島の子どもたちを招く2週間の保養キャンプが終わって、今日で5日。
ようやく、終わったんだなあという実感と、日常に復帰した現実感がわいてきた。

キャンプまでの準備も加速度的に忙しかったが、実際のキャンプ期間は一部の隙間もない多忙さだった。
去年の経験で覚悟はしていたとはいえ、今年は泊まりも数回入れたので本当にみっしりだったなあ…。

毎朝ワークパンツのあちこちのポケットにデジカメと消毒薬と虫さされの薬とばんそうこう、はさみに輪ゴムにテープにペン、そしてしばしば動画用のカメラも持ち、子どもたちの動きにつれて走り回っていた。
去年は主にお母さんたちとのかかわりが多かったのが、今年はそれに加えて子どもたちとずいぶん仲良くなったのはとてもうれしくて、何人もの子との他愛ないおしゃべりがほんとに楽しかった。どの子もかわいくて、じっくりと話をする時間がもっとほしかった。

スタッフは子ども担当、生活担当、食事担当などに分かれていて、それぞれの現場で皆フル回転で働いているのだけど、私は事務・ブログ担当兼記録係という立場なので、現場では《何でも屋さん》になる。
ブログ用に写真を撮りまくり、記録用に動画を撮りまくりながら、子ども担当や生活担当の手助けに回る。子どもの傷の手当てもするし、子ども同士のケンカの訴えも聞くし、熱が出た子を病院に連れて行ったり、その日のボランティアさんの受付をしたり、時にはメディアの取材対応に回ったりと、ある意味雑然と、ある意味中途半端に現場にかかわることになる。
そして夜はパソコンにその日の大量の写真を取り込んでブログの更新作業。不器用で、変なところにこだわるので、これがまたえらく時間がかかる。
去年もそうだったように、キャンプ開催中のブログは「ああこの写真も入れたい」「この子があんまり写ってないからこれは入れたい」「ここはこの順番」「説明足りない」等々…ドンドン写真と文の数が増殖し、労力もボリュームもうなぎ上りになっていくというお約束の現象が起きて睡眠時間が削れていく。しかしアドレナリンが出っぱなしになっているので疲れを感じないのだ…。

今回のブログ作業の天王山は、途中明石から兵庫県の奥の佐用町にキャンプが移動し、私も泊まりで行っていた間のこと。宿泊地の電波が弱く、パソコンを持ってあちこちさまよいながらブログ更新をしたという初めての経験。ほかのスタッフにもずいぶん助けてもらったし、地元の方にもすごくお世話になった。
正直、今回はスタッフの中で自分の立場のあいまいさを考えたり、去年はなかったような多少の軋轢などもあって、特にキャンプ後半は気持ちの上で重い部分もあった。だから晴れ晴れとキャンプを終えた、というのとはちょっと違うのだけど、去年の熱気と悲壮感に満ちた感じとは違い、今年のキャンプ終了は「来年また会おう!」と子どもたちやお母さんたちと笑顔で別れる幕切れになった(とはいえ、最後はやっぱり泣いてしまいましたが…)

今回見ていて気になったのは子どもたちの体力、抵抗力が落ちている実感があったことで、疲れやすかったり、日焼けや虫さされなどが予想外に重症化したり、鼻血がしばしば出たり、すぐに熱中症気味になったり…。
日ごろ外であそべない現状を考慮しても、どうしても全体的に免疫力が低下しているのではないか、という気がしてしまう。去年も参加していた子が多かったので、去年と比較しての変化が感じ取れて、そのことがずっと胸にささっている。

キャンプ中、子どもたちは川に飛び込み、虫とりに走り回り、きれいな石を集め、セミの抜け殻を集め、草原を転げまわってあそんだ。
子どもにとってあたりまえのその行為はすべて、今の福島ではできないこと。
それをもう子どもたちもしっかり自覚していて、「帰ったらまた家の中であそぶんだよ」「外行くときは自転車から降りないで、全速力で行く」「明石では草取ってもいいんだよ。土さわってもいいんだよー」と言う。
まさに異常が日常になっている子どもたちの今。みんなその中で生きている。これからも育っていく。
「ただちに人体に影響はない」「原発事故の直接的影響での死者はひとりもいない」「原発は日本の経済発展に不可欠」。
そう言ってのける大人は、この子たちのふるさとでの毎日を見つめたら、どう感じるのだろう。放射線管理区域内に匹敵する放射線量があちこちで測定される地域で、ふつうに暮らす子どもたちの。

きらきら光る子どもたちの笑顔が、今も目の前にある。
保養キャンプを続けていくことは、あまりにも小さな歩みを、とても必死の労力で続けていくこと。
大きなプロジェクトを動かすのは特別な人間たちではない。
うまくいかなくて焦ったり、お金がなくてへこんだり、いろんな考えの違いをすり合わせたりして、みんな、よたよた、でこぼこしながら歩いていく。
理不尽に対する怒りも、疲れて陥る虚しさも、いくつも飲みこみながら。
たぶん誰のためでもなく、自分のためにやっているんだよね、とつぶやきながら。
もう来年の計画を始めている、めげないスタッフの中に私もいる。


***
…なんてカッコいいこと言ってて、キャンプ明けに実家に立て続けに行ったら別の現実にぶちかまされました。
キャンプも楽じゃないけど、日常も楽じゃない。
そこを何とか、生きていくのだな。



8月1日、佐用の空。
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by higurashizoshi | 2012-08-15 14:45

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