ひぐらしだより


人生はその日暮らし。  映画、アート、音楽、フィギュアスケート…日々の思いをつづります。
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マリリン 7日間の恋

d0153627_23441938.jpg2011年 イギリス・アメリカ合作
監督 サイモン・カーティス
脚本 エイドリアン・ホッジス
出演 ミシェル・ウィリアムズ ケネス・ブラナー エディ・レッドメイン ジュリア・オーモンド ジュディ・デンチ エマ・ワトソン






マリリン・モンローが「嫌いだ」と言ってのける男性に、私はこれまで会ったことがない。
魅力的だけど好みじゃない、と言う男性はもちろんいるが、「嫌い」はいない。
「苦手」と言う人はいるかもしれないが、その人もひとりになると、そっとマリリンの艶やかな写真を横目で見たりするのではないか…(今、どきっとしませんでしたか?あなた)。

彼女が波乱万丈の短い人生を終えて、50年がたつのだそうだ。(今もし生きていたら86歳!)
この50年の不在ののちも、彼女を超える魅力と個性と存在感を持ったスターを見つけることはむずかしい。
今もセクシーさの代名詞として、可愛い女性の典型として、圧倒的なオーラを放つマリリン・モンロー。こんな人はどこにもいない。

この映画は、そのマリリンが女優として成功をおさめ、初めて製作にも乗り出した『王子と踊り子』(1957年)の撮影の舞台裏を描いている。
名優ローレンス・オリヴィエとの初共演を果たしたマリリンは、極度の緊張もあって精神的に不安定になり、撮影は難航。その現場に居合わせた第3助監督の青年がマリリンを支え、たった7日の撮影最後の期間に彼女と淡く艶やかな恋におちる。
後年は映画監督となったその青年が、マリリンの死後ずっとのちに書いた手記をもとにした物語である。

過去、マリリン・モンローを演じた女優は何人かいるが、ここまで正面切って演じきった女優はいないだろう。
素顔はマリリン・モンローとまったく似ても似つかない、華奢でボーイッシュで可憐なミッシェル・ウイリアムズが、《似せる》のではなく《なりきる》のでもなく、彼女なりのマリリン・モンローを作り出すために、細心この上ない演技をしてみせる。まずそこが見どころ。
実際のマリリンよりはるかに清楚であっさりしたマリリンではあるが、何ともいえずコケティッシュで可愛らしく、少女のように儚くて、思わず支えてあげたくなる。

当時の撮影現場の雰囲気を十分に感じさせるカメラワークや美術など(実際に『王子と踊り子』を撮影した建物を使ったという)も上質だし、ローレンス・オリヴィエに扮するケネス・ブラナーや老女優役のジュディ・デンチもさすがの風格。ハリポタ後のハーマイオニー役エマ・ワトソンも端役ながらいい演技をしている。

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しかしなんといってもこの映画ではまり役なのは、憧れのスターだったマリリンのそばで仕事をすることになり、彼女を支えることになり、ついには恋に落ちる青年コリンを演じるエディ・レッドメインだ。
うぶで、生気にみちて、きらきらしていて、まるで仔犬のような若者。
富豪の御曹司にもかかわらず、身ひとつで映画界に飛び込んだ青年が、目のくらむようなスター・マリリンの孤独と不安を前にたじろぎ、彼女の魅力にあっけなく翻弄されていく。
数えきれない男性を次々に支えと慰めにしてきたマリリンにとって、この恋はほんの一時の鎮静剤のようなもの。彼自身もそれをおぼろげにわかってはいる。わかっちゃいるけど止められない。この純粋さとも愚かさともいえる感情を細やかに表現するエディ・レッドメインは絶品だ。あまりに絶品なので、このひと今後年を取っていくと、もっと別の幅広い役をできるようになるのだろうかとつい心配になってしまう。

この映画の最大の成功は、マリリン・モンローというスターの人生の、ごく限られた短期間だけを描いたという点だろう。
観客はこのたった6年後に、マリリンが謎の死をとげることを知っている。すでに彼女は薬の処方に頼り、酒に頼り、演技指導の個人教授に頼り、圧倒的な人気とうらはらに常に劣等感にさいなまれている。
知のアイコンともいえる人気作家ヘンリー・ミラーと三度目の結婚をした直後で、映画の製作者にもなり名優たちとの共演にも漕ぎつけ、名実ともに絶頂期に差しかかっていたマリリン。なりたかったはずのスターの地位。なりたかったはずの演技派への道。
でも彼女は怖い。自信が持てない。自分の思う《あるべき自分》にいつも追いつけず、必死で何かにすがり、ようやく立っている。

この撮影現場ではたまたま、その「何か」が優しく一途な青年・コリンだっただけ。だから彼にだけ見せる素顔、彼にだけ見せる姿態はこの世で一番甘く美しい。
そうやってひとりの青年を頼りに必死に泳ぎ切って一本の映画を撮り終え、現場を去るまでの7日間の凝縮された時の流れを、この映画は鮮やかに切り取ってみせている。

恋は、終わるからこそ美しいのだ。
コリンはいつまでもマリリンとの恋を胸にあたためて生きたのだろう。
でもマリリンはこのあと、人生最後の6年を、きっとあとも振り返らず走り抜けていったに違いない。死後50年たっても男たちをとろかす、圧倒的な魅惑を振りまきながら、あの幼い子どものように渇いた心で。
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by higurashizoshi | 2012-10-14 23:57 | 観る・読む・書く・聴く | Comments(0)

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