ひぐらしだより


人生はその日暮らし。  映画、アート、音楽、フィギュアスケート…日々の思いをつづります。
by higurashizoshi
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世界フィギュアスケート選手権2013 (その1)

何から書き始めればいいのだろう。
というのが正直な気持ち。
今季のフィギュアスケートの総決算、世界選手権。
ペアとアイスダンスは放映が後まわしになるため、まだ全体を振り返ることはできないので、ともかくシングル男女について。

今回の開催地はロンドン。ロンドンといってもカナダのロンドンという町。
カナダはウインタースポーツが盛んな国だから、リンクもたくさんあると思うのだけど、今回の世界選手権がおこなわれたリンクはアイスホッケー用のリンク。だからスケート用のリンクより幅が4m狭いのだそうだ。
この4mの狭さが、今回の世界選手権ではけっこう選手たちを苦労させたように思えた。
軌道が描きづらいのか、何度も後ろを振り返りながらジャンプに入り、思い切りの悪いジャンプになってミスが起きる。悪くすると演技中に壁に激突する。そういう場面をいくつも見た。国際大会でこれまでもホッケー用リンクが使われた記憶はあるけれど、「どうしてわざわざまた、世界選手権の会場にこのサイズのリンクを選ぶ?」と何度も思わされた。
一年で最高の大会なのだから、最高のコンディションで選手たちを滑らせてあげたい。誰しもそう願うと思うのだけど…

と、いきなり文句から入ってしまったのは私個人にとってすごく残念な結果が男女ともにあって、正直かなり落ち込んでいる証拠かもしれないなあ。
気を取り直していってみましょう!


まずは男子の結果から。
1位はカナダのパトリック・チャン選手。2位はカザフスタンのデニス・テン選手。3位はスペインのハビエル・フェルナンデス選手。
チャン選手の優勝はまず予定通りとして、2位のテン選手はまさに伏兵の大サプライズ。3位のフェルナンデス選手はメダル候補の予想を現実にしてみせた。
ひしめきあう世界のトップたちの中で、最後に笑った男3人。
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今回のメダリストの中で、誰もがあっと驚いたのは何といってもまったくノーマークだったデニス・テン選手。ショートとフリー両方のプログラムのすばらしい演技。
バンクーバー五輪に16歳で出場したとき初めて見たテンくんは、本当にまだ小柄で少年ぽくて、でも滑り始めればパッションのすごい選手!という印象が残っている。
そもそもカザフスタンでトップ選手というのは聞いたことがなかった。カザフのスケート環境はどんなふうなんだろう?
テンくんは母国を出てバンクーバー五輪のころはロシアを練習拠点にしていて、その後アメリカに渡り、ベテランの名コーチであるフランク・キャロルについた。
でもそれからしばらくは相次ぐケガとジャンプの不振で苦しみ、国際大会でなかなか結果が出せず、ショートとフリーのどちらかがよくても片一方は転倒が多かったり、才能はあるのに難しいもんだなあ…と思っていた。

今季のプログラムも映画『アーティスト』の音楽をショート・フリーの2部構成で使うというめずらしい試みなれど、これまでいい演技の記憶があまりなく、『アーティスト』今シーズン使う人多いよなあ…テンくんなんて両方使ってるんだねえ…くらいに思っていた。
ところが今回の世界選手権では!
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まずショートで完璧な四回転を含む全編クリーンな演技を見せ、2位に躍り出たテンくん。
まあでも、これまでのパターンからいけばフリーは…と思っていてすいません。見事にいい意味で裏切られました。
フリー(『アーティスト』後編ですね)の演技が始まったとき、テンくんの醸す空気が大人の男の落ち着きに満ちていたのに「おや?」と思わされた。
まさかまさかの世界選手権ショート2位発進、まだ19歳で実績もさほどない彼。ガチガチに緊張していても不思議じゃないのに…。

このフリーの演技のすばらしかったこと!
最後のトリプルフリップがひとつ抜けてシングルになった以外、まったくミスらしいミスもなく、四回転もパーフェクト、スピンも美しく、そして情熱爆発のステップで会場のボルテージを上げる、上げる!
おそらくテンくん史上に残る演技となることでしょう。他選手の失速などいろいろな理由はあったにせよ、圧倒的ハイスコアを叩き出し、なんと自己ベストを20点以上更新するという信じられない得点で銀メダルをつかみ取った。
(フリー動画はこちらから。テンくんの喜びが高まっていく様子がたまりません)
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テンくん本当におめでとう! 母国ではこの栄誉、どの程度報道されているのだろう…



母国では、といえばこの人も母国初となった世界選手権メダルをつかんだ一人。
今では羽生選手と同じトロントのリンクで、オーサーコーチの指導を受けているハビエル・フェルナンデス選手。
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いとも簡単に種類の異なる四回転ジャンプを跳んでしまう彼も、これまでスケーティングスキルや表現面でまだまだという印象で、正直、世界のてっぺんに立つには早いのでは…と思っていた。
それでもやっぱり四回転は強かった。今回は、ミスもありながらの粘り勝ちで、ショート7位から銅メダルに滑り込んだ。
ハビー、スペイン初の世界選手権メダルおめでとう! これからはさらに、品格や優雅さを感じさせる選手になってほしい。



今回の世界選手権を振り返って、きっとテンくんの大躍進とともに人々に深く記憶されるのは、羽生結弦選手の劇的なショートからフリーへの展開だったと思う。

今季、世界最高得点を自分で塗りかえてきた、自信のショートプログラム。四大陸では調子よくなかったけど、さすがにワールドでは照準合わせてきたのでは?と思っていた。
でもショートの演技前、リンクインする直前の羽生選手の顔を見て、おやっと思った。いつもすがすがしい顔でインする彼が、なんだか曇った、迷いのある表情をし、何度も深呼吸を繰り返している。
なんだか変だなと思いつつ画面を見ていたら、始まったショートの演技冒頭でいきなり四回転の転倒、壁に激突。
その後もまったく彼らしくない演技で、今季最高の得点から最悪の得点へと20点近くもダウン。テンくんの20点アップといい、ごく若い選手にはこんなこともあるのだなあ…と思う。
しかもこの日のショートでは、パトリック・チャン選手がまたまた信じられないハイスコアを叩き出して、今シーズン羽生選手が作った世界歴代最高得点までもあっさり塗りかえられてしまうというオマケまでついた。
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演技直後、苦笑いしていたけれど、その後くやし涙を流す映像が報道され、こっちまで泣きそうになった。それと同時に、彼が四大陸選手権のあとにインフルエンザで長期に寝込み、回復直後に左ひざを故障し、ほとんど練習できてない状態で痛み止めを服用してこの試合にのぞんでいたと知った。そういうことだったのか…。

もともとぜんそくの持病もあり、右足首の剥離骨折なども抱えている羽生選手。身体もなんだかさらにどんどん細くなっていってるようで、とにかく基礎的な体力作りや体質の改善が必要なんじゃないかと思う。
だけどそれに反比例するかのように、追い込まれるほどにすさまじい闘志を燃やして勝負に向かっていくメンタルの強靭さが、この18歳少年のすごいところ。

今回の世界選手権は、来年のソチ五輪でそれぞれの国から何人出場できるかという、いわゆる《枠取り》がかかっていた。
日本の出場枠が2人になるか3人になるか。楽勝で3人取れると見られていたにもかかわらず、それがショート終了時点で予想に反して崖っぷち状態になり、日本の3選手に重責がのしかかった。
しかも羽生選手には全日本チャンピオンとしてのプライドと責任がある。まさかのショート9位発進で、本来なら棄権してもいいほどのコンディションの中、ひとことの弱音も吐かずにフリーに向かった。

去年の世界選手権の『ロミオとジュリエット』の感動的なフリーの演技。満場のスタオベとyoutubeのうなぎ上りのアクセス数、またたく間に世界に「ユヅル・アニュー」の名を知らしめたあのときから一年。
結弦くん、またやってくれました。左ひざの故障だけでなく、なんと6分間練習で古傷の右足首も痛めたという満身創痍ぶりで、魂の滑りを。
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正直、今季のフリー『ノートルダム・ド・パリ』には、私はさっぱり感動したことがなかった。何がやりたいの?何が表現したいの? 羽生選手自身もよくわかっていないような。

ところがこの身体ボロボロ、すさまじい気力だけで滑りぬいた今回のフリーでは、まるでカジモドの辛さ、フロロの苦しみが乗り移ったかのような、表現というよりもはや痛みそのものというか、羽生選手が叫びにならない叫びをあげながら必死で疾走する塊みたいに見えた。
ジャンプひとつ乗り越えるたびに何か崇高なものへ近づいていく感覚すらおぼえ、初めてこの『ノートルダム・ド・パリ』に感動したのだった! 
(こ、こんな感動のしかたでいいんだろうか?と思いつつ… なんか結弦くん関連の感動って、こういうリアル崖っぷちの危ない場面ばっかりの気がする)

演技直後、精根尽き果てて崩れ落ちた姿。ものすごい歓声の嵐。ああ、いつもながら結弦くんドラマチックすぎる。
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フリーだけなら3位につけ、最終結果も総合で4位まで順位を上げて、見事にソチ五輪の枠取りに貢献したのでした。ああ何という強さ。こんなメンタル強い人、プルシェンコくらいしか見たことないかも。
(フリーの動画はこちらから。未見の方はぜひご覧ください)

それにしても結弦くん! お願いだからゆっくり休んで、身体直して、うんと丈夫になってください!


男子について、まだ続きます。
ああ、書きたくないけど書かないわけにいかない…(涙)
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by higurashizoshi | 2013-03-18 22:12 | フィギュアスケート | Comments(2)
Commented by 英語マーマ at 2013-03-23 17:04 x
higrashizoshiさま
桃の花に関する記事を探していて、数年前に書かれた、こちらの記事に出会いました。
その記事だけでなく、何か、とても惹かれるものがあって、最近の記事も読ませて頂いたところ・・・。

フィギュアの記事、すごいですね。
実は、私もフィギュア(主に男女シングル)の大ファンで、耳学問だけは結構いっているように思っていたのでしたが、こちらの記事に脱帽、です。
詳しいだけでなく、温かくて深い視点。
とてもとても感動し、コメントを残させて頂きます。

申し遅れましたが、英語教師を3年前に退職後、英語ブログと大人の方対象の英語教室を展開中の、神戸市民です。

ありがとうございました。
Commented by higurashizoshi at 2013-03-26 01:41
英語マーマさん
はじめまして、コメントありがとうございます。

桃の花からフィギュアスケートへ…
いろいろたどって読んでくださったんですね。
フィギュアに関しては、私もまだまだそんなに詳しいわけではないんですよ。
ただ、観始めると止まらない、書き始めると止まらないという中毒状態。
身に余る感想をいただいて、光栄というか気恥ずかしいというか…
でもうれしく拝見しました。ありがとうございます。

英語のブログ、覗かせていただきました。楽しくいろいろなことが身につきそうな素敵なブログですね。
こちらも、また気の向くままにお読みいただけるとうれしいです。

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