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ひぐらしだより


人生はその日暮らし。  映画、アート、音楽、フィギュアスケート…日々の思いをつづります。
by higurashizoshi
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東日本大震災チャリティー演技会2013 ~復興の街、神戸から~

大震災のすぐあと、自分たちに何かできることはないかと考えたフィギュアスケーターたちが立ち上げたこの神戸チャリティー演技会。
その1回目は震災後ひと月もたたない4月初めにおこなわれて、仙台で被災した羽生結弦選手がそのリンクで再生を心に誓ったことでも知られている。
私はこの第1回は震災と原発事故の報道の波の中で全然気づかず、開催されたのを知ったのは演技会が終わってからだった。
去年の第2回はしっかり事前に情報をキャッチしてチケットを取り、このブログにも簡単なレポートを書いた。このときが、考えると高橋大輔選手を生で観た最初だったのだな。


さて、今年第3回が開催されるという情報を見たときは、正直とてもほっとしたものだった。
たった2年しかたっていないというのに、被災地から遠い地域では、急速に薄れつつある大震災の記憶。阪神淡路の震災を経験した神戸周辺ですら、例外ではない気がする。
私自身、もし福島の子どもたちを関西に招くキャンプのスタッフにならなければ、きっと日常に埋もれて次第に遠いまなざしで被災地を見るようになってしまっていただろう。
そして、キャンプを続けてきた経験から言えるのは、そんな世間の流れの中で、被災地を支援するイベントや企画を継続していくのは想像以上に難しい、ということだ。
私たちのキャンプもこの夏には3回目を迎えることになり、少しずつその準備が始まっている。明らかに冷めていく人々の支援への《熱》を、どうやったら少しでも食いとめ、被災した地域や人々への思いを向けてもらえるのか。試行錯誤しつつ、今年もまた頭の痛いお金の問題や、膨大な事前準備に立ち向かうことになるのだ。

だから、去年のこの演技会の最後に高橋選手が「来年もまたこのチャリティー演技会を開きたいと思っています」と言ってくれた言葉を記憶にとどめていたものの、本当に今年もやってくれるのだろうか、できるのだろうか…と思っていたのだった。
それだけに、今年の開催を知ったときはとてもうれしくて、ものすごく気合を入れて発売日の朝イチ、ジャストの時間にローソンで待機していてチケットを取った。
するとなんと、会場に行ってみたら一番前の席! こんなことは初めてだったのでミミは「ここで運を使い果たしたか…」と言っていたけど、ドンマイドンマイ。

会場の神戸ポートアイランドスポーツセンター。
東日本大震災チャリティー演技会2013 ~復興の街、神戸から~_d0153627_1244237.jpg


当日のパンフレットもない、本当に手作りの素朴な演技会で、特に今年はその温かい感じがすごく心地よかったのだけれど、事前準備、広報、会場設営、人員配置など、これだけ大きなイベントを開催するのは本当に大変なことだと思う。
ほぼ司会(!)だった大ちゃんが紹介してくれたのは、この演技会を最初から支えた大黒柱、ミヤケンさんこと振付師の宮本賢二さん。
彼が思いっきり照れながらリンクの上でしてくれたあいさつには、胸にぐっとくるものがあった。本当に心の温かい人なのだと思う。

出演者でもあり、企画にもかかわっている田村岳斗さん。
演技中の写真はなかったので、これは募金箱をお持ちのもの。相変わらずの美貌です。
東日本大震災チャリティー演技会2013 ~復興の街、神戸から~_d0153627_1264511.jpg
かつて本田武史選手のライバルとして活躍し、今はコーチや解説などをされているヤマトくん、実は今もジャンプはキレッキレのトリプル巧者、しかもエンターテイナー。滑りと煽り(!)の二本立てで会場をものすごく盛り上げてくれました。
ヤマトくんのブログに、今回の演技会の紹介が書かれているのでご覧ください(ここをクリック)。


ノービスやジュニアの選手のフレッシュな演技、村中小月選手・哉中選手姉妹の美しい滑り(特に小月選手は、これがたぶん現役最後の演技になるのでは?)、そのほか関西で活躍する選手たちもみんな技術が高く、すごいなあと改めて思った。


そして、今は現役を引退してプロスケーターや解説者として活躍している太田由希奈さん。
彼女の滑りは一度観てみたいと思っていたが、期待以上だった。
滑る音がほとんどしない、ほんとうにスムースなスケーティング。そして美しくしなやかな体の使い方。ジャンプは入っていないのに、こんなにうっとりとするスケートがあるのだなあ…と見ほれてしまった。


宮原知子選手。
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今シーズンの全日本選手権でサプライズの3位に入った15歳。まだものすごく小柄で子ども体型ながら、ジャンプも滑りも安定感があって将来を嘱望されている選手。
今回生で観て、そのスケーティングの素晴らしさに感動した。なめらかで伸びがあり、何ともいえない品のある滑りで、これは持って生まれたものなのだろうな。
度胸もあり、練習熱心とのことなので、今後体型の変化にどう対応できるかで大選手に育つかどうかが決まってくる気がする。



町田樹選手。
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まっちーが坊主頭に!
写真を見たときはアゼンとしたものだ。だいぶ伸びたのね。何か思うところがあっての坊主だったのでしょう、しかし今季のアバンギャルドなかっこいいショートを、伸びかけの坊主頭で滑るのを観ることになるとは!
でもアクセルを含め、ジャンプはことごとく決め、今季後半の不調からすでに立ち直っている感じ。来シーズンはどんなプログラムを持ってくるのか、すごく楽しみになった。



織田信成選手。
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今回の演技会で、実は一番感動し、すごいと思ったのが彼だった。
去年観たときも「うわー、スケーティングがきれいだな、やわらかいな」と思ったのだけど(そして去年も確か不調明けだったのだ)、今季後半を故障のため苦しく過ごした彼の、復活のファンファーレみたいな素晴らしい演技だった。
空間の使い方が大きく、ぐーっと引き込まれるような魅力ある滑り、そしてジャンプの高さ、正確さ。すべてのジャンプをクリーンに決めていて、表情もとてもよくて、
「ああ、これを試合でできたらなぁ…」と思った。
いつもどうしても試合になると緊張して失敗したり、演技中は無表情になってしまう織田くん。本来はこんなに素敵なのだから、それをみんなに見せてほしい!



さて、トリは言わずと知れたこの人。
おそらく客席の8割、いやそれ以上?を埋め尽くした大ちゃんファンが見つめる中、さっき司会進行でふにゃふにゃカミカミしゃべってた人と同じ人?という変貌が起きる瞬間。
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今日はどのプログラムをやってくれるんだろう…と思っていたら、オーソドックスに今季のエキシビション。ミヤケンさん振り付けのピアソラ、通称ミヤソラでした。
さて、ここからが正直なところ、書きづらい。

ポーズを取り、音楽が鳴り始めた一瞬から世界をひと振りで変える人。
滑りはいつものように素晴らしく、誰にもできないくらい細やかで、音を極限までとらえて、ジャンプもアクセルはまた旅に出てたけどそれ以外はきれいで、中盤の寝ころびシーンは今日は照明が明るいままだったから寝ころばずにすませて、最後のステップはやっぱり情熱的で扇情的で…

何が悪かったというわけでもなく、十分魅力的な大ちゃんだった。
でも、昨シーズン2度、生で観たときのあのわしづかみにされるようなパワー、観るものを渦の中に引きこんでいく圧倒的なオーラが、私には最後まで感じられなかった。
もちろん、彼が今、調子がよくないことは重々わかっている。今日も無理せずに滑ってくれたらとそれだけ思ってきたのだ。そう思ってきたわりには、ミヤソラを滑る大ちゃんの出来はけっして悪くなかった。
でも最前列に座り、こんなに間近に見られたのに、血が騒がなかった。素敵だとはもちろん思ったのだ。でも血が騒がなかった、そのことが自分でちょっとショックだった。
ジャンプがどうとか、そういう問題ではない。演技後の大ちゃんにスタオベしながら、「これは、何なんかなあ…」と考えていた。


エンディングの出演者全員の手話を使ったパフォーマンスや、最後のまたまたおちゃめな大ちゃんの挨拶も、とても感じのいい温かなもので、特に大ちゃんが「続けて4回目、5回目とやっていきたい」と言ってくれたのは本当にうれしかった。
東日本大震災チャリティー演技会2013 ~復興の街、神戸から~_d0153627_1312118.jpg


そして終了後の募金のとき、今年もまた出演したスケーターが並んで募金箱を持ち、募金するお客さんはそこで一言二言話をすることができるようになっていた。
私も選手たちに声をかけていきながら進んでいって、町田くんや織田くんにもちょっと言葉をかけて、最後に大ちゃんの前に行ったとき、
「ああ、やっぱり本当に疲れてるんだな…」と思った。
もちろんいい笑顔で、こちらをちゃんと見てあいさつしてくれていたけれど、まずその小ささ細さにちょっと絶句する感じだった。
一年前に同じ場所で間近に見たときより、ずっと痩せていて、これ以上細くなったらなくなっちゃうんじゃないの?と思うほど。
こんな小さな身体で、あんな壮絶な戦いをしているのか…

もう募金の列も最後の方で、何百人というお客ひとりひとりに笑顔であいさつし続けて、体力的にも限界手前、というところだったと思うけれど、それにしても何というのだろう、肉体的に「疲れてる」というだけじゃない何か、重い何かが彼の姿全体からにじみだしているように思えた。
長光コーチが列の最初のあたりにとても控えめに立っておられて、話しかけるお客さん全員にていねいに応えておられたのが、とても印象的だった。まるで重い荷を背負った息子をそっと支える母のようだなあ…と思った。


震災犠牲者への黙祷から始まり、被災地への義援金を集めてフィナーレするこの演技会。
来年、再来年と年を追うごとにもっと薄れていくだろう被災地への注目、震災の記憶をとどめるために、ぜひ続けていってほしいと思う。
一年後は、ソチ五輪も終わっている。
そのとき、大ちゃんはどんなふうにこの演技会の日を迎えるのだろう?
by higurashizoshi | 2013-04-02 01:39 | フィギュアスケート

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