ひぐらしだより


人生はその日暮らし。  映画、アート、音楽、フィギュアスケート…日々の思いをつづります。
by higurashizoshi
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パルシネマで2本

2本立て1200円という低料金、女性用シートなどきめこまかい配慮、親切なスタッフ。
そしてカオスな街・新開地、福原界隈という立地。ゴージャスともスタイリッシュとも縁のない、昔ながらの映画館=《小屋》的なレトロさも含め、なんともいえない良さを感じる貴重な名画座、それが「パルシネマしんこうえん」
忙しい予定の合間に駆けつけて、一気に2本の映画を旅し、現実に戻るときには少し心が潤っていたり、自分の中に新しい何かが加わっている。

昨日は午前中の用事を終え、車でいったん家に戻って子どもたちと昼食のあと、ひとりで電車に乗り、パルシネマに行ってきた。こんなことができるようになったんだなあ…と改めて噛みしめつつ。

さて今回の作品は『最強のふたり』と『ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋』の2本。長いレビューを書く余裕がないので、ざっとメモ的な感想を書いておきたい。



d0153627_17524586.jpg最強のふたり

フランスで記録的大ヒット、日本でも大ヒット、すでにハリウッドリメイクも決まっている話題作(それにしてもハリウッドはなぜこうリメイクが好きなのか?やらずにいられないのか?)。
事故で首から下がすべて麻痺した大富豪の中年男フィリップと、貧民街育ちで前科のある黒人の若者ドリスが出会い、互いの人生が変化していくさまを描いた作品だ。

なんといっても、ドリス役のオマール・シーが魅力的。全身に生きるエネルギーがみなぎっていて、しかも押しつけがましくなく、ガタイがあんなにでっかいのに何ともいえず愛らしい。
全身のかもし出す雰囲気も素敵なのだが、顔がいい。なんて気持ちのいい、美しい顔なんだろう!と何度も見入ってしまった。私は常々、顔を見ればその人の品性も人となりもわかると思っている。こんな人にそばにいてもらったら、こんな魔法のようなことが起きるのではないか、と思わず信じたくなってしまう。

まったく介護経験もやる気もない若い男が、まったく階層のちがう、しかも重い障害を持った男を介護する。そこに化学反応が起きる。すべてをぶっちゃけで語り行動するドリスに心地よく揺さぶられ、解放されていくフィリップ。これは実話に基づく映画で、元になったドキュメンタリーがあるそうだが、ポイントのひとつはフィリップが大金持ちであることだろう。
経済的負担に耐えながら生活する多くの障害者から見れば、フィリップの何不自由ない生活も、何人もの専属スタッフがつく介護体制も、ほど遠い夢物語に過ぎない。そこを一種のファンタジーとして、フィリップが解放されていく物語を楽しんで受容することができるかどうかが鍵になると思う。
そのためには、どんなにお金があろうとあがなえない苦悩がフィリップの中にあることが観客に共感されなければいけないのだが、そのあたりが少し弱かったのではないかと私は思う。
今、老父を介護していて実感することだが、身体の自由がきかない苦しみ、排泄も含めたコントロールができないことの屈辱感、日々の細々とした苦労はエンドレスで、いつも絶望と背中合わせだ。にもかかわらず希望はあるのだ!と思わせるだけの根拠がこの作品にあるかどうか、というといささか難しいところだ。

だからこの映画はむしろ、比喩としての不自由――何かに閉じ込められ、がんじがらめになっている人が、まったく違う存在と出会い、予想外の形で自分を解放するというストーリーとして観るべきなのだろう。
フランス映画らしいしゃれたユーモアやエスプリ、変に《泣かせる》趣向などないさらりとした展開はこころよかった。クロワッサンを毎朝届ける男の子の前髪に注目!


む、メモ的に、といいながらやっぱり長くなる私の文…



ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋

d0153627_181392.jpg最初に言っておきたいが、この邦題はいただけない。クレイアニメの『ウォレスとグルミット』とまちがえそうだし(そんなことない?)、副題含めて長すぎて焦点がぼやけてしまう。なんかこう、もっとピリッとタイトな邦題がほしかったところで、もったいないと思う。

マドンナの監督第2作。1作目がかなりマニアックな感じだったので、ゴージャスな王室ものが来るとは意外だった。とはいっても、これはどこまで史実、どこまで空想なのか判然としない物語。軸足は現代ニューヨークにあり、ウォリーという若い女性がサザビーズでウィンザー公夫妻の遺品と出会うところから話は始まる。
ウィンザー公とは元のエドワード8世で、離婚歴もある人妻ウォリス・シンプソンとの恋の成就のために国王の位を捨てた人である。この《世紀の恋》の一部始終が、遺品を糸口にウォリスにのめりこんだウォリー(ややこしい!)の現実と並行して語られていく。

映画は二つの時代を小刻みに行き来するうえ、ウォリスとウォリーがどちらも黒髪で(あえてそうしているのだろうが)なので慣れないうちはちょっと混乱する。
現代のウォリーは夫との間に深刻な問題を抱えていて、いわば自己セラピーのような形で、ウォリスの人生をひもといていく。ウォリーを演じるアビー・コーニッシュも好演だが、ウォリスを演じているアンドレア・ライズブローという女優さんが巧い! ぼーとしたお坊ちゃまなエドワードを引き回し、策を弄し、一方で情熱的に愛を捧げる。全イギリスから憎悪されたとまで言われたウォリスを、あでやかな外面の奥の孤独や苦悩も含めて、たくみに造形している。

ウォリスの身につけるファッション、調度品のすべてが豪華絢爛で、凝ったカメラワークとともに、ものすごいごちそう感を味わえる。カルティエのてんこ盛りの一方で、セレブの乱痴気パーティーで流れるのはセックス・ピストルズ。あまりにも満腹でくらくらするので、現代のウォリーが窮地におちいったのを助けてくれる男エフゲニーの部屋の、がらんとしたシンプルさにほっとする。この部屋の書棚にリルケの「若き詩人への手紙」なんぞが置いてあるところがニクい。

映画の中ではウォリスもウォリーもともにDVを受けるのだが、女性が暴力にさらされる主題というのはフェミニストの闘士でもあるマドンナのテーマでもあるのだろう。
ちょうど今熟読中のスティーグ・ラーソン『ミレニアム』シリーズがこの主題に貫かれた話なので、そういう意味でも興味深かった。
『最強のふたり』メインで観に行ったのだけれど、こちらの方もなかなか見ごたえのある作品で面白かった。映画というものは、いつも予想以上の贈りものを私にくれる。


というわけで、今回も「パルシネマしんこうえん」に感謝!
おいしい映画をごちそうさまでした。
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by higurashizoshi | 2013-05-15 18:07 | 観る・読む・書く・聴く | Comments(0)

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