ひぐらしだより


人生はその日暮らし。  映画、アート、音楽、フィギュアスケート…日々の思いをつづります。
by higurashizoshi
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福島・南相馬への旅 1

一昨年の大震災以前、私は福島のことを何も知らなかった。地理オンチにもほどがある私は、福島県がどこにあるかさえ、正確には知らなかった。

 「中通り」「浜通り」って何? 
 福島の、そんなところに原発があったの?

その私が、震災を境に何人もの福島の子どもたち、大人たちと知り合い、親しくなり、そして今、ひとりで福島を旅している。人生は不思議だ。



早朝の東海道新幹線で西明石から東京へ。東北新幹線に乗り換え、やがて車窓から安達太良山をのぞむ。高村智恵子が、東京にはない「ほんとの空」があると言った山。
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朝に明石を出たのに、福島駅に降りたのは、まだ午前11時前。おそるべし新幹線。
朝から何も食べてないので、駅ビルの中でおにぎりを買う。駅前の小さな公園のベンチで食べる。
ふと見ると目の前にモニタリングポスト。思わずおにぎり片手に立って行って数値を見る。0.2マイクロシーベルト。


南相馬行きのバスに乗る。福島市や郡山市など中通りへは何度か行っているが、初めて浜通り(福島県沿岸地域)へ行くのだ。
バスはけっこう人が乗っている。地元の人よりも、東京あたりから調査に来た大学関係者などが多いようだ。


外は快晴。郊外に入ると、新緑が美しい。
川俣町に入る。田んぼに水が張られて、きれいに苗が植えられている。
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「持って行って、実際に測って体感したほうがいい」と言われ、友人から借りた線量計。
そこに住む人にとって大事なふるさとを、外から来た人間がこんなふうに計器で勝手に測るのは、申しわけない、後ろめたい気持ちがある。
でも、目に見えない、匂いもない放射線のありかを知る方法はこれしかない。
川俣町のなかほどでバスが停車したとき、降りて測ってみた。悪いことをするようで、こっそりと線量計を出す。
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川俣町は福島市の南東に隣接する。一部が計画的避難地域に指定されていて、震災後は大混乱におちいったはずの町。バスの車窓から見た限りでは一見ごく普通に人々の生活が営まれているように見える。ただ、途中あちこちの山道に「ただいま除染を行っています」の看板を見た。
空間線量は0.5マイクロシーベルトだったが、草の上に置いたとたん線量計の数値はぐんぐん上がって行った。
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再びバスに乗り込む。通行できない道路にぶつかる。「原子力災害現地対策本部」の文字。
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しばらく行くと川俣町が終わり、飯舘村に入った。
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飯舘村で酪農を営んでいた長谷川健一さんのお話を、神戸でうかがったのは去年。
原発事故後、ひたすら翻弄されつづけた飯舘村の現実。手塩にかけた牛を、田畑を手放し、生涯をかけた仕事をうしない、村じゅうの人々が強制避難させられ、家族はバラバラになった。長谷川さんは、《原発さえなければ》と書き残して自死した、友人だった相馬市の酪農家のことにも触れて、この理不尽を、怒りを抑えるように訥々と語られた。

今、全村避難の飯舘村にはぽつぽつと人が入っているという。もちろん住民が生活しているわけではなく、除染作業や土木工事、役場関係の業務など。また、置き去りにせざるを得なかった動物たちに餌をやりに入っている人もいるようだ。

確かに、本当に時折、車が停まっていたり、人影がいくつか建物の中に見えたりした。
けれどそれ以外は、飯舘村はただただ、静かだった。そして田畑が、ビニールハウスが、家屋が、庭園が、荒れ、人の手を離れ、野性に戻っていこうとしていた。
長い長い歳月をかけて、人が耕し、工夫を重ねて作物を育て暮らしてきた土地は、原野に変わりつつあった。
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新緑の飯舘村は、美しかった。
「までい」(ていねいに、心をこめて)を合言葉に、世界で一番美しい村を目指して、ここで営まれていたたくさんの人々の暮らし。それらは、東京に送る電気を作るための原発によって、根こそぎうしなわれた。

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バスの中でも線量計の数値は高い。
いまだ原発の有用性を説く人は、ここに来てこの曠野の中に立つべきだ。
これほどの事故が起き、収束どころか危機は続き、16万人以上がふるさとに帰れない中、「世界一安全な原子力発電の技術を提供できる」と胸を張って原発の輸出を推進する首相のいる国。それが私たちの国だ。


バスが飯舘村を出て、南相馬市に入ったとたん、風景の色が一変した。車窓が、人の、暮らしの匂いに包まれている。ほっとしながら、胸が痛んだ。
この境界線は単なる行政区分にすぎない。放射線量でいえば、この境界はほとんど意味をなさない。グラデーションで広がる汚染の中にこの地域すべてがある。いや、この地域だけでなく、日本全体がある。
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by higurashizoshi | 2013-06-06 01:45 | 雑感 | Comments(0)

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