ひぐらしだより


人生はその日暮らし。  映画、アート、音楽、フィギュアスケート…日々の思いをつづります。
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福島・南相馬への旅 2

《これは、私が2013年5月24日に個人的に南相馬を訪れた記録です。被災された方や、津波・原発事故被害に心を痛められた方の中には、写真や文章によってつらさがよみがえったり、不快に感じたりされる部分があるかもしれません。それでも自分の見聞きしたことを少しでも伝えたくて、記事にしています。ご了承のうえ、どうぞ注意してお読みください。》


南相馬市原町でバスを降り、市内の鹿島で農家民宿「森のふるさと」を経営されている森さんとお会いする。
今夜の宿として予約したら、沿岸部の被災の様子を見に連れて行ってくださるとのことで、この日バス停まで迎えに来られていたのだ。右も左もわからない地で、本当にありがたい。

森さんの自宅兼民宿も、下の畑まで津波が来たとのこと。海から相当離れているので、水が来るなんてまったく考えられなかったそうだ。
南相馬市は津波被害と原発事故による被害の両方を負い、常磐線が機能停止となったこともあって震災直後は陸の孤島となり、物資の流通が途絶えた。
その後市の北部は次第に生活が復旧したものの、南部は放射線量が高く、原発から20km圏内は人の入れない状態が続いた。原発事故さえなければすぐに行われたはずの、津波後の救助活動、遺体捜索もできなかった。

森さんの住む鹿島も沿岸部はすべて津波にやられ、たくさんの友人知人を失われたという。鹿島はすぐに救助に入れたが、それでも混乱につぐ混乱で、当時は事態の全容がまるでつかめなかった。息子さんが消防団員なので、津波後の捜索に参加されたそうだ。多くの悲惨な状態の遺体に接する日々が続き、
「息子は捜索活動のことは『思い出したくない』と言ってます。思い出すと夜も寝られなかったようで」と森さんは言われた。


車はまず、南相馬市の南に隣接する浪江町に向かった。
浪江町の一部はこの春、警戒区域から避難指示解除準備区域に再編され、立ち入りが可能になったそうだ。
すでに20km圏内に入り、福島第一原発に近づいていく道。
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浪江町「希望の牧場ふくしま」。
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ここは家畜の殺処分に反対した牧場主が、牛たちを生かし続ける道を模索して、300頭以上の被ばくした牛たちを育てている牧場だという。
もともと食肉用の牛なので、もちろん出荷はできず、牧場側に収入はない。寄付やボランティアを呼びかけ、この現実を知った人と連帯しようという、ひとつの運動体であるようだ。
(『希望の牧場ふくしま』についてくわしくはこちらを)
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餌は十分足りてはいないようで、一部の牛たちはあばらが見えるほどやせている。
それでも殺処分されず、こうして青空のもと、広い場所で生きていける。
殺されるはずの食牛として生まれ、思いがけない経緯をたどって、殺されることなく生き続ける牛たち。黙々と餌を食む牛たちを見ていると、人間の傲慢さや罪深さが、ねじれながらあぶりだされてくる。

牧場での空間線量。これでも、「ふつうはもっと高いけどなあ」と森さん。
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車は浪江町の沿岸部、請戸に向かった。
途中、検問所があり係員に止められる。フリーパスでは入れないらしい。
「兵庫県から津波の被害を見に来られたお客さんです」と森さんが説明してくれると、車のナンバーを控えられ、必ず5時までに検問所を通過して出てくださいと言われる。
「この先は、前は入れなかったですよ」と森さん。ご自身も請戸の海辺まで行くのは、震災後初めてだという。

津波に襲われなかった地域も、ところどころ建物が地震でつぶれたままになっている。警戒区域で出入りができなかったため、手をつけられずにきたのだろう。
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だんだん海に近づいていく。
海のそばの防風林が、津波をかぶって塩にやられ、茶色く変色しているのが遠く見える。
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このあたりは一面田んぼだったそうだ。今はただ荒地になっている。
トラクターなど農機具がぐしゃぐしゃにつぶれ、まだいくつも転がったままになっている。
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漁港としてにぎわっていたという請戸港。港のそばの住宅地や商業施設。すべて流されたという。被災前の様子をよく知る森さんは、運転しながら「風景が変わり過ぎて気持ち悪い」とつぶやく。
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港だった場所に着いた。
漁業関係の建物だったのだろう、ぽつりと立っている。内部はめちゃめちゃに破壊されている。
誰もいない、何の音もしない。海も静かだ。
壊れたこの建物のどこかにヒヨドリが巣を作っていて、澄んだ声で鳴いているのだけが聞こえる。
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海辺の木々は塩をかぶり、立ち枯れている。まるで、別の世界に来たような光景だ。
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港の防波堤。一部は完全になくなっている。
この静かな海が、と信じられない気がする。
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水の力のすさまじさを思う。防波堤の上部がえぐられている。
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海沿いの道を進み、住宅地が広がっていた場所に向かう。
大切な暮らしを支えていたものたちが、がれきと呼ばれる塊になって、まだ累々と広がっている。
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この上まで津波が来たのだろうか。折れ曲がって立ちつくす電柱の前に、言葉もなく立ちつくす。
阪神淡路の震災後の光景を思い出す。
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住宅地だった場所に入っていくと、もう写真が撮れなくなった。
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コンクリートの、家の土台だけがどこまでも連なる。
かろうじて残っていると見えた家も、たどりつくと中はすべてえぐれて、がらんどうになっている。

広大な荒れ野に見えるこの場所に町があった。そしてあの日、消滅した。
どれだけの人が流されたのだろう、どれだけの暮らしが流されたのだろう、と考えると哀しみや恐怖を通り越して、心が真空状態になる。
自分がここに立っていていいのかわからない。ずっと手を合わせながら、祈りながら歩く。



ふたたび車に乗り、これ以上南下できない、行き止まりまで来た。
福島第一原発まで、7、8kmくらいだろうか。
引き返し、南相馬市の小高地区を目指すことにした。
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by higurashizoshi | 2013-06-09 22:08 | 雑感 | Comments(0)

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