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ひぐらしだより


人生はその日暮らし。  映画、アート、音楽、フィギュアスケート…日々の思いをつづります。
by higurashizoshi
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ジャパンオープン2013、新プログラム

またまた更新できないでいる間に、フィギュアスケートの本格的な競技シーズンがスタートし、あちこちから新プログラムの披露が飛び込んでくるようになった。
日本の男子選手の、考えただけで震えがくるほどの過酷な五輪代表権争いの道のりが、いよいよ始まったのだ。

たった3枠の代表権に、ざっと数えても高橋大輔選手、羽生結弦選手、小塚崇彦選手、織田信成選手、無良崇人選手、町田樹選手と少なくとも6選手が実力として拮抗している。
すでに試合で4回転ジャンプを鮮やかに決めてみせた織田選手(先月のネーベルホルン杯優勝)、町田選手(先月の近畿選手権大会優勝)、ミスはあったものの4回転を降りた無良選手(オンドレイ・ネペラ杯2位)、そしてこのほどフィンランディア杯で新フリープログラムを披露して大量得点差であっさり優勝した羽生選手など、B級の国際大会や国内試合でそれぞれ助走をつけて、まもなく始まるグランプリシリーズ、そして年末の全日本選手権へとこれから進んでいく。

ジャパンオープン2013、新プログラム_d0153627_15555190.png

羽生くんの新衣装は、ジョニー・ウィアー選手のデザイン。ジョニーらしく装飾的でゴージャス! しかし相変わらず結弦さん、なんちぅ細さだ。

それにしてもみんな、4回転飛ぶ飛ぶ! 羽生くんはもちろん、織田くんもまっちーも、今季しょっぱなからジャンプの切れが実によく、快調すぎるほど。
昨シーズン後半ケガでフェイドアウトしていた小塚選手も、今季は正念場として復活してきそうだし、五輪代表の3枠を誰が取るかは、本当に最後の最後までわからないという状況。


そして、10月5日におこなわれたジャパンオープン。
とうとう、高橋選手の新しいフリープログラムがベールを脱ぐ日。
選曲が「ビートルズメドレー」であることに腰を抜かしたあの日から、本人やプログラムを目撃したメディアなどからは「優しい」「あたたかい」「愛あふれる」等々、従来の大ちゃんイメージとはかけはなれた、ほんわかプロ…? まったく想像がつかない…。なんでまた最後のオリンピックシーズンに、あえて…?と思わせるような言葉ばかりが聞こえてきて、頭の中は混乱というよりただただ「?」が浮遊する状態だった。

振り付けのローリー・ニコルとは初めて組むわけだし、正直私の中では過去のローリー振り付けのプログラム(得点の取れるうまい構成の、オーソドックスな音楽を使った王道プロというイメージ)と大ちゃんの個性がまったくリンクしなかったので、ほんとうに想像がつかないし不安も大きかった。


さて、実際にジャパンオープンで新プログラム「ビートルズメドレー」を観た感想。

まず、衣装が予想外。圧倒的に黒の多い大ちゃん衣装の中で、今回はピュアなイメージで来るだろうとは思っていたが、こういう柔らかいうえにも柔らかい素材のオフホワイトとは考えていなかった。白系で来るなら、もっとスリムなラインかと。

ヨーロッパや北米の選手が、クラシックプロで着る衣装みたいな感じ。綺麗だし、大ちゃんがこれを着るのが新鮮といえば新鮮だけど、もう少し上半身のどこかにタイトなところがほしい気が。
でも、このどこまでも柔らかな感じが、おそらく最後の競技フリープロになるだろうこのプログラムに対する、彼の思いのあらわれなんだろう。

それは冒頭の表情からもあらわれていて。
ひえー、こんな優しい顔で始まるプロなんて見たことない。

ジャパンオープン2013、新プログラム_d0153627_16132750.png


最初の4回転トゥーループをおしいところで転倒、トリプルアクセルも転倒と、ジャンプは大きな失敗があったにもかかわらず、とにかく最後まで微笑みを絶やさず、不思議なほど柔らかく滑り切ったことが印象的だった。
もちろんステップのバリエーション、高橋大輔にしかできない多彩な音のとらえかたは圧巻。特に今回、ローリーに指摘されてさらに磨いたというエッジワークは、もともとあれほど凄かったのにさらに進化していて、まるで魔法使いのよう。
けれど、メドレー曲の中で「カム・トゥギャザー」タンゴバージョンの《いつもの濃く!激しく!刻む大輔ワールド》感を除くと、どの曲もおだやかで、優しくて、「あれれ?大ちゃん、ふわっふわ?」という夢見心地のままで終わってしまったような。

ジャパンオープン2013、新プログラム_d0153627_1627533.png

そして、滑り終わったあとの大ちゃんもまた、あれだけジャンプミスがあったのに(スピンまでミスあり!)さわやかな笑顔が絶えなくて、インタビューでもとても自己肯定的で…。「なんなん、この突き抜けた明るさは?」とこれもまた新鮮に思ったのだった。
とはいえ、このプロについては、いまだキツネにつままれたような感じは続いている。
(余談ですが、私は子どものころ《キツネにつつまれた》ような、と間違って憶えてました。この言葉をリアルに想像すると、すごい不思議感でいっぱいでした。もちろん、つままれるのも不思議だけれどね)


この日、ぶっちぎりで1位になったハビエル・フェルナンデス選手はフリーで4回転を3度、降りてみせた。
たとえスピンやステップでレベルが取れなくても、表現力が評価されなくても、4回転を完璧に決めれば(しかも複数回)勝つのだ。それが今の男子フィギュアスケートの世界。
今の段階で、大ちゃんは決して有利ではない。というか率直にいって、今の段階ではあやうい。重要な試合の局面で4回転がきっちり入らなければ、絶対に上位には行けない。しかもその上位というのが世界の、だけでなく、日本国内の代表権争いでもまったく変わらないレベルでそうである、というところがおそろしい。

4回転を跳ぶための努力は、ずっとずっと重ねてきている。最良の方法を模索して模索して、練習を続けてきている。それでもすんなりと、確実に決めるところまでいかない、大ちゃんの4回転。
にもかかわらず、プログラムを鉄壁の「濃いダイスケ」で固めて五輪シーズンを迎えなかったところが、この期におよんで新しいチャレンジをしていくところが、また彼らしいのかもしれないなあ…とも思う。
だってそのほうがたぶん、楽しいから。面白いから。そう思ってるんじゃないかな?大輔さん。

勝つことはもちろん、求め続ける。
でも、アスリートとしての最後を、自分を《見せる》ことよりも、スケートへの、周囲の人たちへの思いの表現にしたい。
そんな彼の、たぶんこれまでなかった心の広がりもまた、感じられる気がした新プロ初見だった。
まあ、まだまだ頭の中はキツネにあちこちつままれたままで、しっかり像を結ばないままだけど…

悲壮感なく、オリンピックが終わるまで彼が笑顔で滑り続けてくれたら。
ファンもきっと途中、泣いたり笑ったりしながらも、悔いなくいられる。そんな気がする。
とうとう高橋大輔、最後の競技シーズンが始まった。
by higurashizoshi | 2013-10-08 16:46 | フィギュアスケート

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