ひぐらしだより


人生はその日暮らし。  映画、アート、音楽、フィギュアスケート…日々の思いをつづります。
by higurashizoshi
プロフィールを見る
画像一覧
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29

グザヴィエ・ドラン作品 3本一気観!

ひさびさに映画のレビューです。
神戸の元町映画館に昨日行って、若き天才と話題のグザヴィエ・ドラン作品、第1作から第3作まで一挙上映!を約7時間かけて観てまいりました。

カナダの映画監督にして俳優、その他多才ぶりを発揮して次々と作品を発表、世界を驚かせているという評判のグザヴィエ・ドラン。
といっても私はぜんぜん知らなくて、ミミに「こんな人がいて、今度元町映画館で一挙上映があるんだけど、行きたいと思ってて…」と言われて、「ほほー?」となった次第。
幼いころから映画を一緒に観て(幼い子が観ないような映画もネ)、映画好きに育てたかいがあったというものだ…。もはや、私が教えられる立場。

で、なんとかスケジュールあけて「この日!」とさだめ、タタとミミと3人で食料とお茶持参で元町映画館へ。
3つも映画を続けて観て、体力もつかしらと思ったけど全然大丈夫でした。特に、時系列順に同じ監督の作品を観たので、頭の中で作品同士がこんがらがることもなく、大変おもしろい体験でした。
そして…やっぱり私は心から映画ってものが好きなんだなあと改めて思い、ちょっと感動。


では、3作一気に観たので、レビューも一気にいきます!




マイ・マザー
2009年公開 カナダ
監督/脚本/製作 グザヴィエ・ドラン
出演 グザヴィエ・ドラン、アンヌ・ドルヴァル、フランソワ・アルノー、スザンヌ・クレマン
d0153627_12406.jpg

グザヴィエ・ドランが17歳で脚本を書き、19歳で監督・製作・主演し、第1作にしてカンヌ映画祭で上映されたという作品『マイ・マザー』。
原題は「僕は母を殺した」。そう、これは古今東西さまざまに描かれてきた息子による《母殺し》のドラマなのだ。

映画には、母を憎み、拒み、かつ執着し愛を求める――実にめんどくさく、いじらしく、危険きわまりない思春期の少年の等身大の葛藤が、徹頭徹尾、むきだしに生々しく描かれている。
と同時に、ヌーベルヴァーグをはじめとする映画史やポップカルチャーにインスパイアされているのが丸わかりの、青臭くも才気ばしった映像美がこれでもかとばかりに展開する。
とにかく、オレには表現したいことがこんなにあるんだ! オレはこんな《絵》を構図を見せたいんだ! という欲望の発露で、すがすがしいほどパンパンにふくれあがっている作品。

d0153627_142625.png

で、ひとつ間違えば自己満足的な若書きの作品になりかねない危ういところを、作者(であり主演俳優)であるところのグザヴィエ・ドランの、その鼻息の荒さの一方にある賢さ、見通しの鋭さと客観性が、最後まで破綻することなく作品を完結させているのである。

ドランくんお見事。ナルシスト美少年と見せかけて、19歳にしてこの才気と聡明さは、ただならない。




胸騒ぎの恋人
2010年公開 カナダ
監督/脚本 グザヴィエ・ドラン
出演:グザヴィエ・ドラン、モニア・ショクリ、ニール・シュナイダー

d0153627_173310.png

『マイ・マザー』で母息子関係を描いたグザヴィエ・ドランが第2作で描くのは、ずばり恋。胸騒ぎというよりは、胸が痛くて穴があきそうな恋。
20代の仲良し男女二人(ドラン演じる男の子はゲイで、女の子はヘテロ)が、同時に一人の男に恋をする。しかも、絵に描いたような美男。頭がよくて人当たりがよくてみんなの人気者で、アンタは日本の少女マンガかルネッサンス絵画から抜け出てきたのかというような美青年。

残酷なことに、美青年はこの主人公2人に対して同じように愛想がよく、3人で遊びに行こうよって誘ったりして、しかしそれぞれとの関係は、同じようにいまいち進展がない。
2人はせつなさに胸を焦がし、お互いに嫉妬し、牽制しあい、要はていよく美青年にいたぶられているのか? いやしかし希望はないわけではない、というやるせなさ。
ドラン演じる男の子もせつないが、痛々しいまでの虚勢を張る女の子を演じるモニア・ショクリという女優さんがすごくいい。

d0153627_183194.png

ポップでお洒落なしかけがいっぱいの映像、洪水のように流れる音楽、特に冒頭と最後に流れる「バンバン」(確かに聴いたことがある曲なんだけど…どこの曲?)が耳にこびりついて離れなくなる。
映像、音楽だけでなく、ここまでスローモーション多用? ここまで思わせぶりなインタビュー多用? となんにしても過剰なのがオレ流!とばかりのグザヴィエ・ドランくん。
しかし、輪廻のような恋のロンドに乗せて、粗削りな第1作からステージを上げてかなり洗練された作品に仕上がっております。『500日のサマー』が好きな人にはお勧め。ミシェル・ゴンドリー作品好きな人にもお勧め。ちなみに私はどちらも好きです。




わたしはロランス
2012年公開 カナダ
監督/脚本/衣装/編集 グザヴィエ・ドラン
出演:メルヴィル・プポー、スザンヌ・クレマン、ナタリー・バイ、モニア・ショクリ
d0153627_1101843.png

3作目にしてグザヴィエ・ドランはとうとう作品づくりの側に。今作ではほんの一瞬、カメオ出演のみ(それでもやっぱり出たかったのね、と思わせる力の入れようの一瞬でしたが)。
1作目、2作目が短編から中編小説だったとしたら、ついにこの作品で彼は長編小説に着手。まったくスケールの異なる段階へ移行したことがはっきり示される。映画としての文体においても、表現方法においても、これまでとは勝手がちがう。そのとまどいもまた露呈しつつ、全力でこの大作にぶつかり、一歩も引かずにいる勝負感が、一種のカタルシスを呼ぶ。面白い作家だなあ。この時点でまだ23歳、すさまじい才覚。
しかも今作ではさらに手を広げ、監督・脚本のみならず、衣装も編集も音楽選びも! とにかく自分のやりたいことを自分のやりかたでやりたい人なのだな。

性同一障害をカミングアウトした主人公ロランスと、その恋人フレッドの、10年にわたる年月を描いたこの作品は、一組のカップルが曲がりくねった長い道のりを、憎みあい、離反し、また惹かれあい歩んでいく過程をときに痛いほど生々しく、ときにファンタジックに、じっくりと描いていく。
女性になるロランスを受けいれようともがき、壊れていくフレッド(名前が男女逆転しているようなのも、意図的なものだろう)。さまざまな形で二人はそれぞれの人生の、再生をこころみる。
ロランスもフレッドも、自分に正直で率直、それゆえに激しくぶつかりあう。お互いをもとめあいながらも、穏やかに歩みをそろえることなどできない。そこが痛ましくもあり、同時にすがすがしくもある。

d0153627_1105573.png

愛の成就などというものは瞬間に過ぎず、けれどその瞬間のために人はすべてを投げ出すこともできる。その一方で、人生という長い時間の流れの中でゆっくりとしか育んでいけない愛の形も、また存在する。
若い作者グザヴィエ・ドランはその概念を自分なりに懸命に咀嚼し、この長い物語を駆け抜けてみせた。その野心と底力がこの作品を支え、美しいものにしている。

主役二人の演技もすばらしいが、『胸騒ぎの恋人』で虚勢を張る女の子を演じたモニア・ショクリが、フレッドの無愛想な妹役でまた出ていて、実にいい。
3作続けて観たおかげで、重なって出ている役者さんがとても多いので、それを発見するのも楽しかった。
すでに4作目『トム・アット・ザ・ファーム』(日本では劇場未公開。昨年の東京国際映画祭で上映)、5作目『Mommy』(現在、カンヌ映画祭でコンペティション部門に出品中とのこと)と怒涛の勢いで撮りつづけているドランくん(いや、もうドラン氏と呼ぶべき?)。

願わくば、彼の自意識過剰でケレン味たっぷりなところが、よい方向に結実していっていますように。
3作を観たところで、
「うまくいけばここからさらに凄い作品をつくっていける才能だけれど、評価が高まり製作費がうなぎのぼっていく過程で、はたしてこの人は堕さずにいられるかしらん?」
という一抹の不安も感じたので。

それを確かめるためにも、4作目5作目もぜひ!上映してくださいますよう。
元町映画館さま、今回は太っ腹な企画に感謝の一念です。
[PR]
by higurashizoshi | 2014-04-25 01:17 | 観る・読む・書く・聴く | Comments(2)
Commented by hinata at 2014-04-30 09:25 x
気になる~と思って、やってそうな映画館チェックしたら、最初の2つだけ短期間でやってたのだけど、残念。夜だから行けそうにないわ。
映画チェックは最近してなかったのだけど、『チョコレートドーナッツ』だったかな?今気になってます(^o^)
Commented by higurashizoshi at 2014-05-02 23:42
hinataさん
うーん、それは残念でした。またどこかでやらないかな?
『チョコレートドーナツ』、私も気になる気になる!
ほかにも観たい映画がたくさんあって、お金と時間がほしいです~

フォロー中のブログ

明石であそぼう! たこ焼...

最新のコメント

Disney 鴨さん ..
by higurashizoshi at 00:53
こんばんは。 ひぐらし..
by Disney 鴨 at 22:17
Disney 鴨さん ..
by higurashizoshi at 16:30
bikegogoyさん ..
by higurashizoshi at 16:13
こんばんは。お久しぶりで..
by Disney 鴨 at 20:57
お久しぶりです。忙しそう..
by bikegogoy at 07:10
なみさん ずいぶん長く..
by higurashizoshi at 12:52
初めまして。マリンメッセ..
by なみ at 17:22
Disney 鴨さん ..
by higurashizoshi at 23:49
こんばんは。お久しぶりで..
by Disney 鴨 at 20:03

検索

タグ

ファン

ブログジャンル

映画
ウィンタースポーツ

画像一覧