ひぐらしだより


人生はその日暮らし。  映画、アート、音楽、フィギュアスケート…日々の思いをつづります。
by higurashizoshi
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振り返りのはじまり/スペインへの旅1 出発

帰国して4日。
なんとなく違和感を感じていた日本の雰囲気にもふたたびなじみ、いろんな日常が動きだし、しかし身体はまだまだ疲れが取れてないらしく、とにかく眠い。
眠すぎて今日は歯医者の治療台で寝入ってしまい、ウィーンウィーンと器具を口に差し込んでいた歯科衛生士さんを、
「だっ大丈夫ですかっ!?」
とめっちゃビビらせてしまった。すいませんね…


商店に入れば、「Hola!(オラ)」とあいさつしないのが不思議で、道行く人がみんな日本語をしゃべって日本のしぐさをしていることが不思議で、頭の中では思考と関係なくスペインのさまざまな情景が断片的に再生され、足の裏には石畳の道のごつごつした、でも同時に柔らかい独特の感覚がよみがえる。
実際に行ってみるまでのスペインという国のイメージは当然のようにくつがえされ、出会ったたくさんの人の顔がいくつもいくつも浮かぶ。そして街の音も、奏でられ耳にした音楽も、まっすぐな陽光も、暗い雨の夜も、すれ違う人たちから匂いたつ甘く濃いトワレの香りも、どこまでも続く石造りの建物に狭められた路地も、なにもかもが胸の中にまだなまなましく漂っている。
おびただしい絵画、建造物、夢の国を歩くような絢爛がいくつも、いくつも目の前を通り過ぎ、呼吸のひまもないほど眼をこらしつづけて、ふと反転し気がつけばまた日本の物馴れたちいさな風景の中で、ぽつんと立ちつくしている自分がいる。

そうか、行って、帰ってきたのか。
私は行って、そして帰ってきたのだ。

ただこの地球を半周して10日ほどを過ごし、帰ってきただけだというのに、こんなに細胞が波立ち入れかわるような思いがするのはなぜだろう。
旅のあいだにつけていた小さなノートを開き、ちいさなSDカードにしまわれた1700枚ほどの写真を見直し、これからこの旅を振り返る作業をしてみる。

どこにも行けなかった、行きどまりだったかつての場所から、大きく振り子をうごかし、遠くまで行って、そして帰ってきたことの意味。それを知るための、もうひとつの旅をはじめることにしよう。





◆出発 / 2014年10月7日

前日に自宅を出て、関空ちかくのホテルに泊まった私たちは、
「やっぱりここは日本食でしょ」
と近辺をウロウロしたあげく、疑問に思うほど客のいないガランとした蕎麦屋に入って夕食をとった。
店員の若い男の子はすごく声が小さく、静かに静かに注文を聞きに来た。

翌日からの食事計画がまったく立っていない状態だったので、「これが最後の確実な食事でござる」という少し悲観的な思いで蕎麦をすすった。あんまり旨くない蕎麦だったのは、まるで「未練を残すなヨ」と言われているようで、ほんのりと寂しかった。
店はひたすらに客がいなく、店員の男の子はお勘定のときまでも、思わず顔を見てしまうくらいとてもとてもちいさな声だった。ああ、日本。なんだか切ないぜ。

実際、娘たちの前では明るく振るまっていても、私のそのときの心境は「これから海外旅行♪」などという楽しげな路線からはあまりに遠く、
「あああ、とうとう始まってしまう、もう誰にも助けてもらえんのだ」
というかなり背水の陣なもので、
「弱音をはくな~弱音をはくな~」
と心の中で自分を鼓舞しつつ、それでもホテルに戻る前にはしっかり最後の日本のスイーツとして《クリーム抹茶大福》を「これこれ♡」とコンビニで買ったりするのであった。
まあこういう二律背反というか、絶望と楽しさが同居してるというのが私の常なので、追いつめられてもどこかがスコンと抜けていて、人からはだいたい基本のん気な人物と見られるのだろう。

そして案の定まったく眠れない一夜を過ごし、関空行きのシャトルバスに乗り込んだときには念仏を唱えるくらいの心境で、見た目は普通の私でも、内面の姿がもし如実に出れば、
「どうしたのあなた!真っ青よ!」
と、おそらくどこかのマダムに言われてしまうくらいの状況であった。
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ところがそれなのに無事フィンエアー(フィンランド航空)に乗り込んだら、やっぱり真っ青な一方でエラく気持ちが高まり、というのも私は飛行機が無類に好きなんである。
「今から飛ぶんだな、ぐふふふふ」
という無邪気な喜びと、これからどんなことが待っているんだろうという不安、まずはヘルシンキで乗り継ぎができるんだろうかとか、マドリードに着いたら送迎はちゃんと来るんだろうかとか、そしてそのあとは…そのあとは…と考えはじめるとくらくらしてくる。

それなのに離陸の瞬間から「ああ、窓際の席がうらやましい…」と物欲しげな視線を投げ、空を飛んでると思うとワクワクしてしかたないのだ。
なんせ海外旅行は忘却のはるかかなた、というくらい久しぶりなので、いまどきの飛行機は一人一人の座席にモニターがついていて、好きな映画なんかが見られるだけでなく、今どこを飛んでるか地図で見せてくれたり、飛行機の前方と下方をカメラで見せてくれたりするんだ。おおすばらしい。と感動しきりで、ともかく窓からの景色がのぞめないので、雲しか見えなくても下方カメラをモニターに映し出しては延々と眺めていたりする。

などとやっているうちにフィンエアーの機内食が来た。
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機内食の感想はといえば、これだけの大量の温かい食事をいったいどうやって積み込んで管理しているんだろう、ということと、キャビンアテンダントさんは重労働だなあ、ということと、うん、外国の味だ、という3つであった。
ライス添えだったり、日本のゼリーもあったりして、まだまだ入りまじってはいる感じだけど。

フィンエアーはマリメッコデザインで紙コップとかナプキン、ひざ掛けなんかもなかなかセンスがよろしい。しかも意外にも関空→ヘルシンキ間は日本人アテンダントさんも乗っているし、機内放送もときどき日本語があるし、まだまだ《守られてる感》いっぱいであった。あ、乗客も日本のツアーらしき人たちがけっこういたし。

ひたすらに広いロシアをぶった切って飛び続け、ときおり現在地を座席前のモニターで確認していると、どんどこどんどこヨーロッパに近づいていくので驚く。いやあ飛行機ってすごいもんだなと改めて思う。
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関空からヘルシンキまで10時間足らずで行ってしまうのだけど、それって大阪から東京までがのぞみで3時間強だから、その三倍くらいということ。
そう考えると、あれでしょう。大阪から新幹線乗って東京に着いて、「あっ忘れものした!」っつって大阪に戻って、「ああやれやれ」と再び東京へ。――っていう間になんと、大阪からヨーロッパまで行ってしまうんですよ。どういうことなんだ、それって。

などと自問しているうちに、ものすごく長いかなあと思っていた機内の10時間足らずは意外なほどサクサクと進み、いよいよ乗り継ぎという最初の試練が待っているヘルシンキ上空。
着陸してからの話は次回に。
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by higurashizoshi | 2014-10-22 14:59 | 旅の記録 | Comments(4)
Commented by ようこ at 2014-10-22 20:12 x
higurashizoshiさんのスペイン旅行記の始まりですね(^^)
旅行から帰って来ると荷物の片付けもあるし、写真の整理もあるし(^^;)
日常に戻るまで時間がかかりますよね。

higurashizoshiさんの旅行記、ゆったり構えて待ちますので書くことを楽しんで下さいね♪
Commented by hinata at 2014-10-23 01:52 x
はじまりはじまり~
楽しみにしてます(^u^)
Commented by higurashizoshi at 2014-10-24 00:57
ようこさん
書くことを楽しむ… ありがとうございます!
例によって書き出すときりがないので、なんとか抑制しつつゆったり書こうと思っています~
気長に読んでいただけるとうれしいです。
Commented by higurashizoshi at 2014-10-24 00:58
hinataさん
はじまりましたよ~
といってもこの調子でいくと、いったいいつ完結するのやら?
どうぞゆる~くおつきあいくださいね。

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