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ひぐらしだより


人生はその日暮らし。  映画、アート、音楽、フィギュアスケート…日々の思いをつづります。
by higurashizoshi
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スペインへの旅 5 トレドのカテドラル、サント・トメ教会

トレドで買った本「トレドのすべて」によると、カテドラル(大聖堂)は13世紀前半に建築がはじまり、15世紀末に基礎部分が完成した、とある。
基礎部分ができあがるまでに250年以上? うーん、気が遠くなる。石の文化ってスパンが長いんだなあ。

私たちが歩いていって最初に出会ったのは、カテドラルの正面にあるこの大きな門。
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まずはその大きさと壮麗さに圧倒された。
細かい装飾がほんとうにすばらしい。
これだけでもうすでに、ぼうっとなってしまってしばらくこの前から動けなかった。
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カテドラルの門の前で、チェロを弾く男性。
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トレドでも、このあとマドリードやバルセロナでも、路上で演奏する人はとても多かった。
みんな必ず、お金を入れてもらう皿などを前に置いている。そこが日本との違い。
そもそもクラシックの楽器を路上で演奏する人は日本ではあまり見ないけど、逆に日本のように若者の弾き語りなんていうのはスペインでは見なかった。

この写真は翌日撮ったもので、市庁舎広場から見たカテドラル全景。
堂々たるゴシック建築、といってもゴシックの中では素朴というか、どこか土の香りがするような風情がある。
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さて、カテドラルの中へ。
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あとで見直すと、トレドで撮った写真って変に少なくて、特に教会の内部などはひとつの場所でたった一枚ずつしか撮ってなかったりする。フィルムカメラ時代の撮り方みたい。
たぶん、トレドが私にとってはあまりに特別なところだったから、そして宗教関係の建物の中は特に、バチバチ写すのは申しわけないような気持ちになっていたのだ。ずっと自分が地上5㎝くらい浮いてる感じだったからよくおぼえてないけど。
それでもって、あとになって「ぶ、ブレてる~。もっと撮っておけばよかったァ」なんて後悔したり、めんどくさい人である。

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内部は荘厳な雰囲気ながら、やはり外観と同じように威圧的ではなく、どこか素朴さを感じさせる。
それでも、こういうおそろしく高い円天井を持つ石の建造物に入ると、自分が紙と木の小国から来たコビトになったような気がする。この圧倒的な空間に満ちる空気がこちらに迫ってきて、ただただ棒立ちにならざるをえない。
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このカテドラルの完成の最終段階で18世紀に入ってから作られた有名なトランスパレンテ(装飾祭壇)が聖堂の奥にあり、その過剰なまでの華麗さには度肝をぬかれた。
これでもかという豪華絢爛ぶりに、このトランスパレンテに関してはどうやら完成当初から賛否両論があるのだそうだ。
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さて、聖具室に入る。
ここにエル・グレコの大作「聖衣剥奪」がある…

あった。正面に。
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写真撮影は許可されていたのに、ああだめだー。おそれ多くてこれ以上近づいては撮れなかった。それにしても、この遠方からでもなんという色彩のあざやかさ。

というわけで、別のところから画像をお借りして紹介を。
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間近で見た本物とはかなり色調がことなり、実際にはキリストの聖衣はローズがかった紅色にちかい。

この作品はギリシャ生まれのエル・グレコが、イタリアをへて30代半ばでトレドに来てから初めての大仕事だった。
いわばよそ者の画家が、トレドの中枢であるカテドラルを飾る大作をいきなり任されたのだ。彼がイタリア時代に残した作品のスケールと、この仕事のスケールがあまりに違うので驚く。どこで、どのようにその飛躍が起きたのかは、いまだ解明されていないらしい。

この観るものを惹きつけずにはおかないドラマティックな絵は、マニエリスムの影響をうけた、当時のトレドでは独創的と受け取られた構図によって批判をうけた。
キリストの頭より上に群衆がいることや、左下に3人のマリアを描いたことが聖書の記述とちがう、などの理由で、カテドラル参事会は報酬の支払いを拒否。納得しかねたエル・グレコとの間で裁判に発展し、争いのすえに報酬は注文時に約束された額から大幅にダウンして支払われた。

エル・グレコ氏、かなり粘着な、いや頑固にして強固な人物だったのでしょう。これが彼のトレドにおける係争ことはじめであり、このあともグレコは晩年まで、絵の報酬に関して何度も裁判を起こしているのだ。
《哲学者》とも評された一大知識人にして、ぜいたく好きの浪費家でもあったといわれているエル・グレコ。
トレドで著名人となったのに、死ぬまで本名のドメニコス・テオトコプーロスではなく《エル・グレコ》(ギリシャ人)と呼ばれつづけた彼。
いったいどんな人だったんだろうなあ。なかなかにくせもので、穏やかならざる人物であったことは間違いない。


「聖衣剥奪」を観たあと、呼吸を整えて聖具室の展示を眺める。
すばらしく豪華なこの金銀細工は、トレド一の宝物である聖体顕示台。祭典のときには練り歩く行列の先頭に掲げられるそうだ。
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ほかにも、イザベラ女王の王冠など、大変なお宝だらけでくらくら。
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カテドラルの回廊も美しかった。
いつまでもここに佇んでいたいと思わせる、静謐で清々しい空間。
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次に向かったのは、サント・トメ教会。
さっき駅のホームで下半分の巨大ポスターを見た「オルガス伯の埋葬」。
門外不出のこの名画を、いよいよ観るのだ。
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しかし、カテドラルからここまでで、すでにめっちゃ道に迷ってます。
地図上ではすごく近いはずなのに、とにかく道が細くて建物が高くて、今自分がどこを歩いてるのかすぐわからなくなる。

サント・トメの入り口でチケットを買う。
こういうところでも必ず、お互い「オラ」とあいさつするんですね。でもそのあとは、明らかにアジアからのツーリストだから、チケット売り場のお兄さんは英語で話してくれる。

で、小さな入口から教会内に入ると、いきなり右手にあります。ありました。
「うわ」と思ったけど、ちょうど絵の前はどこかの国からの団体さんが埋めていて、ガイドさんが滔々と大きな声で説明をしているところだったので、ちらっと横目で見ただけで、先に教会の聖堂内へ。

こぢんまりとした、落ち着いた感じの聖堂でしばらくゆっくりしてから、人のいなくなったのを見はからって戻り、深呼吸して「オルガス伯の埋葬」の前に立つ。
(ここは完全に撮影禁止なので、もちろんカメラはバッグの中。またネット上の画像を)
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大きい絵だとはわかっていたので、その大きさに驚くことはなかった。
ただ、実際に観て感じたのは、「ほんとうに、まったく古さを感じさせない、異様な絵だ」ということだった。

聖者に抱えられる、死したオルガス伯。その場面にずらりと立ち会う男たちは、エル・グレコ自身を含む当時のトレドの著名人たちの、生き写しのごとき肖像だという。そこに聖人も違和感なく入りまじり立つ。上空では、今まさに昇天するオルガス伯の魂がキリストたちに迎えられようとしている。
手前でこちらを見つめる少年は、エル・グレコの息子、ホルヘ・マヌエル。

つまりこれは、あれだな…と思う。
《トレド・オールスターズ》というか、トレドの上流社会+宗教界の紅白歌合戦というか、トレドの有名人と天上人たちの、総合ブロマイドみたいなもの。ちゃっかり息子を案内役に仕立てているところがニクい。

だからなのか、とっても神聖な場面なのに、とてもなまなましい感じがするのだ。異様なほどなまなましい。それはエル・グレコの多くの宗教画に言えることなのだが、とても400年以上前に描かれた絵と思えない。
特にこの絵は、非常に世俗的な空間と幻視的な空間が共存しているなかに、あざやかな色彩、光、空気のうねり、そのライブ感が異様なのである。
そう、ライブ感。古い絵を観ているという気がまったくしない。


名画を観て感動する… というのとはちがう、でも一種特別の高揚感に包まれて、ぼーっとした頭でサント・トメ教会を出る。
そろそろお昼ごはんを食べようか、ということで、教会前のその名も「プティカフェ・エル・グレコ」に入る。
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トルティージャ、スペインオムレツを初体験。料理一品の量が多いので、少食の私たち母娘だと煮込み料理、サラダ、トルティージャ、とひとつずつ頼んで3人で分けるのでちょうどよかった。
生クリームが使われているのかな?卵部分はふわふわ、ぶ厚くてじゃがいもがたっぷり入り、ボリューム満点。

コーヒー主流らしいスペインで、お茶を頼むとたいていティーバッグでちょっとがっかりすることが多かったが、ここでは茶葉をたっぷり使った淹れたてのおいしいお茶が出てきた。
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そう、なぜかスペインではこんな南部鉄瓶みたいなティーポット(ていうか急須?)が多いみたいなのだ。おもしろいなあ。めっちゃ重くなければおみやげに買って帰りたかった~。


さてお腹が満足したので、次の目的地、エル・グレコ美術館へ。
やっと旅の第2日の後半に入るところで、次回へ続く…。
by higurashizoshi | 2014-10-31 12:54 | 旅の記録

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