ひぐらしだより


人生はその日暮らし。  映画、アート、音楽、フィギュアスケート…日々の思いをつづります。
by higurashizoshi
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スペインへの旅 7 トレド、さらにエル・グレコめぐり

◆第3日 / 2014年10月9日

トレドでの2日目は、美しい朝焼けではじまった。
ホテルのバルコニーからの眺め。左の建物がアルカサル(旧王宮)。
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今回の旅で、朝食つきはトレドのホテルのみ。
あとはすべてアパートホテルで自炊なので、ホテルのバイキングの朝食も楽しかった。
地階のレストランは、私たち以外日本人はいなくて、スペイン国内の観光客と、イタリアやドイツあたりからのお客さんばかり。そしてバカンスシーズンじゃないから、リタイア後らしき年配のご夫婦ばかり。みなさんゆったりと脂肪のついた体型で、ゆったりとくつろいでおられる。
ホテルもしみじみ、客層もとってもしみじみ。よろしいわあ。朝ごはんも、さすがにハムやチーズの種類が豊富でおいしかった。


さて、おもむろにホテルを出発し、まずはサンタ・クルス美術館へ。
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正面の門。
おおお、すごいぞこれは。またも圧倒。
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ここは元教会かと思ったら、元は病院なのだそうだ! 
病院の門がこれでは、くぐるだけで霊験あらたかで病気が治りそう。

現在、没後400年の特別展「El Greco: Arte y Oficio」(英語でArt and Skill)がここで開催されているとのこと。
美術館前にはまた巨大なポスターが。中に入るとどんな作品が待っているかを考えるとすでにくらくら~。
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そしていよいよこの特別展に入ったのですが…

これが予想を超えるすごいラインナップの展覧会。
今回の特別展のために、プラド美術館など国内はもとより、さまざまな国からエル・グレコ作品の異なるバージョンが実に多彩に集められている。
しかも会場の建築もすばらしく、正直ここだけで一日中いてもいいくらいだった! なんと贅沢な時間だったことでしょう。
撮影一切禁止だったので、ここで観た作品をいくつかネットからの画像で紹介。


「無原罪のお宿り」
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エル・グレコの生涯最後の大作。あざやかな色彩と光、引き伸ばされた人体とねじれた空間、ほとばしるエナジー。後年のグレコ的なものがすべて凝縮されてこの絵の中に詰まっている、といっても過言ではない。
この絵はもともとこのサンタ・クルス美術館所蔵で、2年前の日本での「エル・グレコ展」の目玉作品として来日していた。
当時はこの「無原罪のお宿り」がついにトレドから来る、ということで非常に話題になっていたのを思い出す。そして大阪の国立国際美術館でこの絵を仰ぎ観たときの、身体ごと天上に巻きあげられていくような異様な感動も。

まさかトレドで再会できる日がくるとは… と感無量だった。



「受胎告知」
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「無原罪のお宿り」と並び称される、エル・グレコ最高傑作のひとつ。プラド美術館蔵。
日本での展覧会では、この絵の3分の1ほどの縮小版で、習作ともいわれている「受胎告知」(マドリードのティッセン=ボルネミッサ美術館蔵)が展示されていたので、ついにここでオリジナルを観た、という感がつよい。
画面から光が放たれてこちらへ向かってくるような臨場感。あざやかな紅色、緑、青、と《エル・グレコカラー》満載の色彩構成。その美しさにただただ引きつけられる。
「無原罪のお宿り」とともに、この大作2点が同じ場所にタンタンー!と展示されていて、その贅沢さにめまいがした。



「聖霊降臨」
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「受胎告知」とともにマドリードのドーニャ・マリア・デ・アラゴン学院の聖堂の主祭壇に飾られていたといわれる作品。現在はプラド美術館蔵。
この散逸してしまった主祭壇の祭壇画がこの作品も含めた6点であった、という説を唱えているひとりがスペイン美術の著名な学者だった故・神吉敬三さんで、今回トレドに来るにあたってこの方の著書を何冊か熟読し、無知な頭が少し賢くなった。

この幻の6点祭壇衝立が、神吉さんの監修によって日本の大塚国際美術館(徳島県)で再現されているという話を知ったのも著書の中でだった。振り返って調べてみると確かに2年前のエル・グレコ展の図録にも、この再現の写真が掲載されていた。帰国したらぜひとも徳島に行って確かめねば!(こちらにあります


そのほかもともかく贅沢極まりない作品群で、マリア・マグダレーナや聖フランシスコなど同じ題材の別バージョンの作品がいくつも集められて展示されていたのも、類を見ない展示で興味深かった。
量産された宗教画については、おそらくエル・グレコ個人ではなく工房で製作された作品が多いので、どこからどこまでがグレコの筆になるものかは判別がむずかしいものも多いだろう。

印象的だったのは息子ホルヘ・マヌエル(『オルガス伯の埋葬』に描かれていた少年)が加筆したり、父親の作品を模写したもの。
エル・グレコも一人息子を跡取りにするべく、きっと英才教育をほどこしたのだろうが… 大変気の毒だが、親子でその技量のあまりの差にヘナヘナとなった。天才の一人息子ホルヘくん、苦労しただろうな。しかもエル・グレコは散財の末に、死後がっぽり借金を息子に残したという記録があるそうで、ますますあまりにお気の毒…


たっぷりとエル・グレコをお腹につめこみ、幸福なゲップをしながらサンタ・クルス美術館の回廊へ。
またこの回廊が美しかった。
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イスラムの影響を受けた、ムデハル様式と呼ばれる建築や細工などが随所にみられる。
そのほか常設の展示はたくさんあるらしかったが、エル・グレコ展だけで時間切れとなり残念でした。
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サンタ・クルス美術館をようやく出た昼過ぎ、突然の大粒の雨!
仕方なくとりあえずホテルに一時戻って、途中で買ったトレド名物のマサパンをお昼ごはん代わりにする。
マサパンはアーモンドの粉で作られた甘い焼き菓子。ちょっと和菓子のような、しっとりした味わい。お店では、こんなカラフルなマサパンも売られている。ほんとに和菓子みたい。
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雨がやんだので、ホテルを出てソコドベール広場近くのセルバンテス像にごあいさつして…
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さらにディープなトレドの探索に向かう。

トレド旧市街の城壁の内周をなぞって歩き、太陽の門へ。
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14世紀に作られた、ムデハル様式の威厳ある美しい門だ。
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このあたりから、非常に古いユダヤ教会や回教寺院などが続く。道はねじ曲がり、どこに行きつくか不明なり。
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迷って迷って、歩いて歩いて、やっと見つけた案内所のお姉さんに教えてもらい、サント・ドミンゴ・エル・アンティグオ修道院にたどりつく。名前も長いが、道のりも長かった!
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なんでここを目指してひたすら来たかっていうと、ここがエル・グレコが埋葬されている墓所だからで、もちろん作品も多数あるのだ。《エル・グレコ詣で》のマストですよ、マスト。
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…と、なんだかえらくひっそりしているなあ。門が閉じてるし?

近づいてみると、ただいまシエスタ時間?で休憩中。うう、臨時休館じゃなくてよかった!
開門までしばらく時間があるので、その間に昨日遠くから見て心ひかれた教会に行ってみることにした。

またまた、てくてく、てくてく。
おお、こんな狭い道を車が走りよる。しかしほんとに人がいませんね。
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道が…
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狭いのだ。
しかしなんという佳い風情。なんとここちよい町並み。
(このあたりの写真は娘撮影のものを拝借。彼女のほうがセンスいいのです)
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まるで熟成された時が、ゆっくりとこの小路をたゆたっているよう。


またも迷って迷って…
さて、たどり着いたのはここ。
サン・フアン・デ・ロス・レイエス教会。
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「トレドのすべて」によると、15世紀後半に建てられた、ムデハル様式の影響を受けたゴシック建築の傑作とのこと。非常に凝ったデザインの美しい建物で、前日に遠くから見たときに「なんだ、あの素敵な教会は!」と眼をつけていたのです。

さて、教会の中へ。
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はなやかな中にもどこかつつましい祭壇画や、柔らかい光線にいろどられた聖堂内部の装飾ひとつひとつが、とても美しい。
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回廊はやはり、静寂の美につつまれている。
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ヨーロッパとイスラムが融合したこの雰囲気は独特のもの。ここの回廊からの風景は忘れがたい。
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中庭を見下ろして何百年? 横棒にしがみついている、ちょっぴり気の毒な天使。
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さて、そろそろさきほどのサント・ドミンゴ・エル・アンティグオ修道院の休憩時間が終わるころなので、そちらへ戻ることにする。

ここがサント・ドミンゴ・エル・アンティグオ修道院の入り口。
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エル・グレコの墓所があることが表示されている。ふう、なんだか緊張するなあ。
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中に入ると修道女さんがにっこりと出迎えてくれ、こちらへと手招き。
ほとんど人のいない聖堂はほの暗く、ただただ静かだ。

そして振りかぶれば、正面の祭壇画にはなやかなライトが。
これが、エル・グレコがトレドにやってきて最初に手がけた大規模な祭壇画のプロジェクトで、中央の「聖母被昇天」「聖三位一体」を含むすばらしい作品群で構成されている。
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ただし、中央の上下2枚を含め4枚が散逸したためにここにあるのはレプリカ。現在はそのうち3枚はプラド美術館にあり、私はこの2日後にプラドで本物を観ることになった。

主祭壇の脇にある祭壇画、「キリストの復活」。これはレプリカじゃなく、エル・グレコ真筆なのですね。
あまりにあっけなく、何の囲いもなく飾られているのでかえってどきどきする。
これはおそれ多いながらも、なんとか1枚だけ撮影しました。ぶるぶる。
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それにしても本当に色彩あざやかで、とても400年以上前の絵画とは、やはり思えない。

さて出口へ…と行こうとすると、修道女さんが「お待ちなさい」と止めにきて、こっちも観ていきなさい、と手招き。
なにやら薄暗い、ちょっとあやしげな空間へ。

ここは旧聖堂なのか、非常に古い主祭壇があり、おそらくこの修道院の礎ができたという11世紀ごろにさかのぼるものも収められているのだろう、かなりナゾめいたものを多数含む展示館のようになっていた。
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ぼろぼろに朽ちた服を着て並び立つ聖人を含む幼子の人形たち、皿に乗ったヨハネの色あせた生首人形… 絶対に夜ひとりでは来られそうにない雰囲気の展示物が並び立つ奥に古文書も数々あり、ふとその一枚に眼をやるとエル・グレコの署名!?
あとから調べて、それは本物のエル・グレコによる契約書であることがわかったのだけど、素人には意味不明の数々の古文書や古い書籍がけっこう適当に並べてある中に、こんなものが実にサラッと展示されているのであった。

で、ナゾの展示室のゴージャスすぎる毒気にのまれたまま、いよいよ修道院においとましようとすると、またどこからともなく現れた修道女さん(きっとこの修道院にお住まいなのだろう。夜は怖くはないのでしょうか…)。
「あんた帰る前に、これ観なあかんやないの」
と言って(いや、そんな感じで)、
「ここや、ここや」
と指さして教えてくれたのが、聖堂出口の足元近くに小さく開いたガラス張りの窓。

よっこらしょとしゃがんでのぞき込むと、おお!
聖堂地下にある、これがエル・グレコの墓所か…。
めっちゃ一部しか見えなくてなんだかよくわからないけど、修道女さんありがとう! 
ここからだけほんのちびっとだけ、エル・グレコが眠る場所が見えるサービスになっているのだな。
ここも、写真を撮るのははばかられて、思わず手を合わせてごあいさつするにとどめました。
 ―エル・グレコさん、あなたの絵を観にはるばる日本から来ましたよ。
なんつっても、偏屈そのものの顔でにべもなく「知らんがな」と言われそうな気もするけど…


というわけで、トレドの町の《エル・グレコ詣で》もひととおり終わり。
ほんとはタベラ施療院や、ほかにもエル・グレコ関連で行きたいところはまだあったのだけど、そこはひとり旅ではないのでね。あまり母ばかりワガママではいけませんからね。
もし気ままな単独行動だったら、エル・グレコ病に浮かされて、このあと何日トレドにいつづけたかわかったもんじゃないです。

このあと、町を一望できる高台に行き、トレドでの最後の夜を過ごした話は次回書きます。
次回でやっとトレドが終わり、マドリードへ。引っぱる引っぱる。
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by higurashizoshi | 2014-11-25 00:47 | 旅の記録 | Comments(0)

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