ひぐらしだより


人生はその日暮らし。  映画、アート、音楽、フィギュアスケート…日々の思いをつづります。
by higurashizoshi
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東日本大震災チャリティー演技会2015

《東日本大震災チャリティー演技会 ~復興の街、神戸から~》。
フィギュアファンの間では「神戸チャリティー」としてすっかり定着したイベントの、震災以来5度目の神戸での開催。
私は第2回からずっと毎年参加してきた。これも、神戸の近くに住んでいるという幸運のおかげ。そして年々厳しくなるチケット争奪戦にもかかわらず、いつもS席をゲットできたのは…ううむ。念力のなせるわざかな。
あの震災を前に、大ちゃんや宮本賢二さんたちフィギュア関係者が「スケートでできる支援を」と必死に考え、必死に動き、立ち上げてくれたこの演技会。その思いにこたえるため、ファンもここに集まり、来られない多くの方も募金を欠かさずにきたのだと思う。

一流スケーターの演技を、ショーとは違う素の環境で堪能できるというレアさはもちろんのこと、その後はずらりと並んだスケーターたちの持つ募金箱に直接募金をして、間近で言葉をかわすこともできるという、まさに夢のようなイベント。
風化が言われつつある震災への復興募金としては異例で、年を重ねるごとに募金総額がはね上がっていくという稀有な企画でもあった。

私自身、毎年この演技会に参加することで気持ちをリセットし、自分の仕事も含めて震災支援への思いも新たにしてきた。もちろん、大ちゃんをはじめ、たくさんのスケーターにこんな形で毎年接することのできる機会はほかにない。そういう意味でも本当に大事な、楽しみなイベントだった。

けれど、今回は二つの理由で、「また来年も」と思えないまま会場に向かった。
ひとつは、5回目という節目。震災後、5という数字をめどに開催を打ち切るイベントは多い。私のかかわっている保養キャンプの世界にも、その例はある。
そしてもうひとつの理由は、ファンなら誰でも知っている、大ちゃんの留学だ。先のことを決めないまま、スケートからいったん離れての、アメリカ留学。

やはり、神戸チャリティーは大ちゃんあっての企画だと思う。特に、震災への支援の熱が急激にさめていく現在の状況の中では、大ちゃんがこの演技会開催メンバーからはずれることは、おそらく存続問題に直結する。
どこにいても、この時期に合わせて神戸に帰ってきてくれるんじゃないかな… という淡い期待は捨てられないものの、こんな大きなイベントは準備段階も長く、中心になるメンバーを欠いたままの状態ではむずかしいだろう、とも思う。
そんなわけで、「この演技会も最後かもしれない」という気持ちが、チケットを買う前からずっとあった。もちろん存続を心から望むけれど、覚悟はしておくべきだと。

そしてやはりもうひとつ。
「大ちゃんの演技を見られるのはこれが最後かもしれない」
という、口に出したくない思いがずっとあった。会場に向かった大ちゃんファンの多くが、その思いを秘めていたことだろう。


一昨日の演技会、神戸・ポートアイランドスポーツセンター。
長ーい行列に並んで、会場入り。
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リンク全体を見渡せる席からの眺め。
さらりとリンクインする出演スケーターたち。
東日本大震災の犠牲者への黙祷。
毎年恒例になったこの時間にも、いっそうの思いをこめて祈った。

大ちゃんのあいさつ。
この演技会を続けてこられたことへの、各方面への感謝を、さわやかな笑顔で(カミカミなし!)。もうこれだけで、すでに胸がじーんとなった。
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ジュニア選手たちの演技。
ういういしい島田高志朗選手、手足長い! 三原舞依選手、山隈太一朗選手、友野一希選手は、昨年にくらべて身体も技術も、めきめきと成長を感じた。ノービスの白石優奈選手のジャンプクイーンぶりにびっくり。すばらしい3ルッツ×3トゥ!

本田武史くん、風格が違う。生で観る武史イーグルの快感。いつまでも見ていたい。

村上佳菜子選手。ついこの前世界選手権で見たばかりの、ショートのオペラ座。腕や上半身の優雅な使い方は、努力して彼女が手に入れたもの。ジャンプは少し不調だったけど、美しいクリスティーヌだった。来季… どうするのかな。すばらしい才能と、ここまで積み重ねたものと。そして彼女自身の思いと。
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一部の最後にサプライズ。織田くんがリンクに出て紹介する形で、なんと大ちゃんがここで登場! どよめく客席。
大ちゃんは黒一色の、シンプルこの上ないコスチュームでリンクに立った。

「思い出のマーニー」だった。
「Fine On The Outside」のおだやかな調べで彼がゆっくりと滑りはじめた瞬間、あたりの空気が変わった。
たったひと振りの腕。たったひとつの身のこなし。やわらかなターン。
それらが、魔法のように空間に息を吹きこみ、あざやかに彩っていく。

このプログラムに、ジャンプは一か所しかない。
それ以外、彼は滑る。舞いながら。いつくしむように。
たたかわない。とがらない。彼は滑る。愛するように。
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きっといつもと同じように、彼は《何か》を滑ってはいない。
テーマや、物語を、スケートに乗せてはいない。
感じるままに。ただ音楽を聴き、そこに身体をまかせて。
それがこんなにも美しい作品になるのはなぜだろう。その場にいるすべての人が、彼の中に吸い込まれ、たゆたい、特別な時を過ごす。

この短いプロを滑り切るまでの時間。
まるで永遠のような、夢のような時間。
そしてそれは、胸の深くに軌跡をのこして、あっという間に終わりをつげた。
これまでの高橋大輔のスケートの中で、たぶんもっとも謙虚で、もっとも優しい演技だった。そう感じながら、ずっと涙が止まらなかった。
たくさんのことを思い出した。激しく思い出した。そして癒されていた。不思議な気持ちだった。


第2部。
ジュニアは岩元こころ選手、三宅星南選手、坂本花織選手。
星南くん、コミカルな演技を精一杯。あこがれの大ちゃんと、今日同じリンクで滑れてよかったね。まっすぐ背中を追いかけてください。花織ちゃんも今、急激に成長中。
田中刑事選手、ひさびさのアフロ。ジャンプさえ調子が整えば、ふたたび上昇できるはず。飛躍のときを待ってるファンがたくさんいると思う。

本郷理華選手。今季ショート。
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今日もまた、3トゥ×3トゥ含むジャンプはすべてクリーン。度胸と確実性の高さには、あらためてほれぼれ。生で見ると、表現面はやはりまだまだ伸びしろがあると感じた。華のあるトップ選手になっていく準備は整っているので、来季以降はそれをいかに実現するか。


今回、間際になってインした宇野昌磨選手。
生で観るのは昨シーズンのワールド大阪エキシ以来。
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で、この一年ぶり生ショーマがすごかった。滑りのスケールがぶっ飛ぶほど大きくなっていて、このスケールの大きさは… 現役ならパトリックか、ジェイソンか。
ジャンプのすばらしさはテレビでもある程度認知できたけど、滑りのねばり、伸び、自在さがここまでとは。これは生で観ないとわからなかった。
ショーマにとっても、今日ここで大ちゃんと共演できたことはずっと記憶に残るのではないかな。彼が目指す表現の道の先に、大ちゃんは燦然と立っているのだろうから。
そしてその目標に向かっていくとしても、その行く手にはきっと、宇野昌磨にしか作れない世界がある。本気でそう予感させられた。


宮原知子選手。
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ワールドのエキシ。知子ちゃんとしては思い切って笑顔ではじけるプロ。ショーマの直後だったので、彼女の端正でどこまでもキッチリしたスケートが好対照だった。これはこれですばらしい。
全日本優勝、ワールド銀メダルと、結弦くんとまったく同じ結果、しかもどちらも初!なのに、メディアではあまりに地味な扱いの知子ちゃん。でもいいのだ。今のうちに力をどんどんたくわえて、いずれ大輪の花になるのだ。


織田信成選手…って、いまだに書きそうになってしまう。
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リバーダンス。特に前半、やわらかな動きが音楽にぴったり合って、すごく心地よかった。織田くんは引退後、ほんとにいろんなものから解き放たれた感じがする。それがスケートにまっすぐあらわれているような。表現がとても多彩に、自由になった。
ネコ足着氷は健在。いまだに生で観ると、この柔軟性に「うわ」となってしまう。


そして最後に、大ちゃんがふたたび。
何をやるのか、ファンはいろいろ予想していたと思うけれど、そうか…なるほど…と思った。
「I’m Kissing You」だった。
昨年5月、ソチ後はじめて人前で滑った臨スポで初披露したプロ。
以降、何度もあちこちのショーで滑ってきたのを観たけど、最初にそこで目にした印象は強烈だった。
あの苦しかったソチ五輪が終わり、なにか放心したような、それでもふたたびリンクに立ちファンの前で滑る責任を自分に課しているような…。
身体も絞れてない、心も整ってない、プログラムもまだ自分のものになってない、それでも懸命に演じようとする姿が今も忘れられない。

それから一年足らず。
《最後》の演技として選んだ「I’m Kissing You」は、あのときと同じものとは思えない、すみずみまで洗練されたプログラムになっていた。
「思い出のマーニー」がまっさらな木綿の感触だとしたら、これはまるで使いこまれたビロードのような肌ざわり。
内へ内へと降りていく「マーニー」と、観客へとからみつくような「Kissing You」。
どちらもが、大ちゃんにしか作りだせない無二の作品だった。
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これが《最後》。
目に焼きつけておかなければ、と思う間に、さらさらとこぼれ落ちていく時間。
でも、「マーニー」でさんざん泣いたからか、不思議と落ち着いて観ることができた。
さよなら。いってらっしゃい。二つの声が自分の中でこだまする。
ありがとう。ありがとう。そう心で呼びかける。これまでたくさんのよろこびをありがとう。


恒例になった「Story」でのエンディング。最後に、ふたたび大ちゃんのあいさつ。
自分のことは何も言わず、ただ震災復興のためのイベントとしてのコメントのみ。これもまた潔い。
しかし大ちゃん、マイクを持ったら息が上がりすぎてて、いきなり「ブフォッ」。
思わず気が抜けて泣き笑い。今回、なぜかカミカミはなかったけど、ここでしっかり笑かしてくれました。
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毎年、このあとの募金までの長い待ち時間に、宮本賢二さんが出てきていろんな持ち芸を見せてくれたりというお楽しみがあり(今年もあったらしい)、そしてスケーターひとりひとりと対面しての募金タイムがあるのだけど…
今回はどうしても事情があって、ここで帰らなければいけなかった。
最初からその予定で、動かすことができず、割り切っていたつもりだったけど、やっぱりその場になると去るのはつらかった。

大ちゃんと対面してひとことかわして、別にそれでどうなるというものでもない。
むしろ、ものすごい数の募金の列のひとりひとりに笑顔でこたえ、話に応じる彼の負担を少しは減らす役に立つくらいのものなんだけど…
会場を足早に出て、暗い道を駅に向かいながら、心を整えた。

演技を観て、それで《最後》にして、私は私の持ち場に帰ろう。
心の中で、もうお別れのあいさつも、感謝のことばも告げた。
私の愛した、高橋大輔のスケートは消えない。時が過ぎ、たとえ彼が滑ることをやめてしまったとしても。これから彼がどんな人生を選びとるとしても。


募金の様子。参加した方のレポートによると、大ちゃんお疲れ気味だったものの、いつものように最後まで笑顔を絶やさず、ていねいに言葉をかわしていたそう。(織田くん、また泣いてる…?)
募金終了後は、去りがたいファンに向かって、スケーターみんなで出口に並んであいさつしてくれたそうです。
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織田くんとのスナップ。
ずっとライバルだった二人。ときには複雑な思いで、きっとすれ違ったこともあった二人。
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      (演技会の様子を少し見られるニュース動画、こちらをクリックしてご覧ください)


私にとってこの春は、個人的に決別と新しい出発の春でもあったので、こうして神戸チャリティーに参加できたのもまた、もうひとつの《終わりとはじまり》になったと思う。
翌日読んだインタビューで、大ちゃんはこれからのことをこう言っていた。
「自分のために生きたい」と。
きっとこれまでずっと、スケートのため、周囲の期待にこたえるため、ファンのため、ただただ前を向いて進んできた人生だったと思う。
何を目指して、どこに行きたいのか、ほんとうにやりたいことは何なのか。
それをこれから考える旅に、大ちゃんは出るのだと思う。

《終わりとはじまり》の春。
どうか元気で。あなたの大切なものが、どうか旅の果てに待っていますように。
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by higurashizoshi | 2015-04-09 11:00 | フィギュアスケート | Comments(2)
Commented by 葉っぱ at 2015-04-10 22:09 x
写真をいっぱいありがとう、
フィギュアスケーターはすてきだね、美しい!

大ちゃんの特集、YV朝日系で関東でもやってたよ。
たぶん関西よりも長かったかも。
外国に招かれてレセプションなどでインタビューに英語で答えられなくて、歩く姿を見せることで答えている代わりにしてたけれど、ほんとうは自分の気持ちを英語でしっかり伝えたかった、ってスイスでの映像が流れていたよ。

とにかく、しばらく日本を本拠地にしないのは寂しいね。
でも、本人の気持ちが1番大切だから見守るしかないんだろうね。
Commented by higurashizoshi at 2015-04-13 09:13
葉っぱさん
関東で放映されたその映像だと思うんだけど、ネット上で見つけて見ました!
海外での試合やショーの経験がたくさんあっても、自由に話せるとこまでいくのは、自覚的に勉強しないとですもんね。
大ちゃん、これまでは目標が常に目の前にあって、コーチやスタッフなどたくさんの人が、進む道を作ってくれていたと思うので… ひとりで道を切り開いていくのはきっと大変だろうな~と思います。
でも本人がそうしたいと思って決意したことなんだから、ファンはただただ見守るしかないですね。

スケートに戻ってきてほしいけど…その気持ちは山々だけど、今はそんな思いにも、そっとカギをかけて。
ぐいっと涙をふいて、前に進まなきゃな~と思う春です。

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