ひぐらしだより


人生はその日暮らし。  映画、アート、音楽、フィギュアスケート…日々の思いをつづります。
by higurashizoshi
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小日向さん

ふだんは日本の連続ドラマというものをほとんど観ないのだが、この1月からのシーズンはなぜか、何本もドラマを観ている。
珍しく奈良が舞台で、玉木宏がダメダメ男を演じる「鹿男あをによし」、面白い。小栗旬初主演の「貧乏男子」もかなりアホらしいけど意外に面白い。
でもなんといっても出色は「あしたの、喜多善男」だ。

名脇役として人気が上がってきた小日向文世が初めてドラマの主演。
松田龍平、小西真奈美、吉高由里子、栗山千明など役者がことごとく良く、生瀬勝久、温水洋一などクセのある面々もガチャガチャせず、実にいい味で配されている。
脚本がよくできているし、小曾根真の音楽が洒脱で、映像も緊密で、ほんとウェルメイド。
山崎まさよしが歌うエンディングも決まっていて、しっぽまでおいしいという感じ。
タタがテレビ嫌いでリビングに音が鳴っているのも苦手なので、ドラマはぜんぶ録画して後日観る。だから放映時には観られないのだが、これは毎回待ちかねる気持ちで、必ず翌朝には観ている。

小日向文世さん、不思議な役者である。
今はなき劇団「オンシアター自由劇場」で演じていた若き日の小日向さんは、ちょっと中性的な色っぽさを漂わせた、細身で繊細な感じの青年だった。
自由劇場が「上海バンスキング」でブレイクしたころ、小日向さんは看板女優・吉田日出子の相手役としてよく活躍していた。私はその当時、たまたま友だちが自由劇場に入団したのでその舞台を何度か観に行っていて、小日向さんの独特の魅力が妙に印象的だったのを憶えている。

その後何年もたって、これもたまたま、別の友だちが小栗康平監督「眠る男」の撮影現場の調理スタッフになった。「眠る男」には小日向さんが、出番は少ないが重要な役で出ていた。
撮影中、私は友だちを訪ねて、そのころまだ乳児だったタタを抱いて撮影現場(群馬の山奥)に遊びに行った。撮影オフのときで役者さんには会わなかったが、映画に登場する家や建物の間を歩きながら彼女からいろんなウラ話を聞き、のちに「眠る男」が完成して、感慨深く観たのを思い出す。
この映画で小日向さんは、まるで植物のような不思議な男を演じていて、「やっぱりこの人、おもしろいなあ」と思った。と同時に、自由劇場を離れて、映画やドラマの世界でやっていくには「地味だなあ…」大丈夫かな、と心配になった。

で、それからまた何年もたってからの話。
東京は吉祥寺の「井の頭文化園」の動物園は、幼いタタのお気に入りだった。入口近くにある「ふれあいコーナー」でモルモットをさわれる。タタは夫コトブキとモルモットのところへ飛んで行き、ネズミ系動物がぜんぶダメな私は「ふれあいコーナー」がなるべく視界に入らないように、近くの子ども用砂場のふちに腰かけた。
砂場では何組もの親子連れが砂遊びをしていた。そのとき、私のすぐそばで、子どもに何か話しかけたお父さんがいた。その声を聞いた瞬間、私はびっくりして目を上げた。この声!
砂場にしゃがみこみ、小さな女の子とミニバケツに砂をかき入れている小日向さんがそこにいた。
小日向さんは女の子に言っていた。「ねえもう、帰ろうよー」
女の子は、一向に帰る気がないらしく、砂を掘るだけで返事せず。
「帰ろうよ、ねえ。帰ろ?」小日向さんは、ちょっと焦れたように、でも温厚に、しかしわりとしつこく、繰り返していた。
ふつうのお父さんのように小日向さんがいきなりいたので、ちょっと茫然とした。
その当時、つまり今から10年くらい前は、ドラマの端役などが多かったのか、くわしくは知らないけれど名前を耳にすることもほとんどなかった。
でも「帰ろうよ、帰ろうー」という調子は、なんだかとっても小日向さんぽくて、「やっぱりこの人、なんか味があるなあ」と思った。そして「細身の美青年だったけど、おじさんになったんだなあ」ってひそかに思ったことも憶えている。

さらにまた年月がたって、小日向さんの名前をテレビ欄や、映画の配役欄で目にすることが増えてきた。
実際に見て、すごく印象に残っているのはドラマ「僕と彼女と彼女の生きる道」。エリート銀行員の主人公の、イヤな上司役。表面上なんともイヤな上司なのだが、複雑な虚無を抱え込んでいて、挫折後に自死する。このことが、主人公の選ぶ道を変えさせる。
この小日向さんを見て、うなった。すごい、いい役者になってるではないか!評価も着実にされているようではないか!
世の中捨てたもんじゃないねえと思っていたら、とうとう今回は主演ドラマである。しかもこんな上質の作品で。よかったね小日向さん、と陰ながら言いたい。

「あしたの、喜多善男」で小日向さんは、11日後に死のうと決意した中年男を演じている。とりえもなく、不運続きの、でもたぐいまれな善良なる男。
でも彼の心の中には、もうひとりの自分がいる。辛辣で、醒めていて、毒のある「ネガティブ善男」。この二人を小日向さんが演じ分ける。それも見ものだ。
ドラマはちょうど半分にさしかかったところ。どんなふうになっていくのか、楽しみだ。
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by higurashizoshi | 2008-02-06 20:42 | 観る・読む・書く・聴く | Comments(6)
Commented by くれない at 2008-02-07 02:10 x
こんにちわ!
おじゃまします。

コヒナタ話についつられて。

年明けてすぐ、近所の神社に初詣に行ったとき、毎年並ぶのですが、私の家族の前で、ビデオをやたら撮ってるへんなおじいさんがいるなあと思ってたんです。
列が進んで、本殿のところまできたら、なんとおじいさんだと思っていたひとが、コヒナタさんだったのです。

そうなんです。近所に住んでいらっしゃるようですよ。
いつもニットの帽子を深くかぶっていてるのですが、そのときは、小さめのメガネずり下げてかけていたので、おじいさんにみえたのですねえ。
奥さんと男の子ふたりを連れていました。
(色白な男の子だったから、小さいときは、女の子に見えたのかもしれませんね)
コヒナタさんなんだか上機嫌に見えましたよ。

その後2日に渋谷にいったとき、ビルに巨大なコヒナタさんの写真が貼られていたのでびっくりしました。
ドラマの主役なんだあ。そのとき知りました。
Commented by higurashizoshi at 2008-02-07 15:18
くれないさん、ようこそです!

おじいさん…
ついパソコンの前で吹いちゃいました。コーヒー飲んでるときでなくてよかったー。
そうですか、ご近所さんなんですね。
昨夜ネットで見つけたインタビューで、息子さんが二人と書いてあったので、女の子というのは私の記憶違いだったのかなぁ、って思ってたんですよ。
コメント読んでて、おじいさんに見える小日向さんが、目に浮かぶようで。
なんか、愛すべき方ですねえ。

このドラマ、評価はすごく高いらしいんですが、視聴率が低いとか…
視聴率が何だってんだ! と思う私です。
一見の価値あり、ですよ!

またいつでもいらしてくださいね~。
Commented by ホッキョクグマ at 2008-02-07 19:35 x
>「ねえもう、帰ろうよー」
 あまりにも小日向さんの雰囲気そのままで、PCの前で飲み物を吹き出してしまいました。
 「あしたの・・・」は放送開始前にたまたまTVの予告編を見かけて、「ウソ!!」と驚喜してしまったドラマで、やはり毎週ドキドキしながら見ています。
 小日向さんについては何年か前に「非・バランス」という映画をwowowかなにかで偶然見て、そのオカマ役が妙に印象に残ってしまい、ドラマのキャスティングに含まれていると、ついそのドラマを見てしまいます。決して目立ちしすぎないけど、良い意味で「ノドにひっかかった魚の骨」のような存在感が心地好いもので。
 ”視聴率が低い”というのには驚きました。ここ何年かのベストドラマとハマりこんでいるのに。
 このドラマを見て、今まで映画などを見てあまり好きではなかった松田龍平くんも、意外と連続ドラマのようにじっくり見せてくれる役の方が合うのかもなどと思うようになりました。
Commented by higurashizoshi at 2008-02-07 20:21
おお、ホッキョクグマさんも温暖化に負けず、ドラマをごらんになってるのですね!

「非・バランス」は未見ですが、小日向さんのオカマ役ってすごーく想像つきます。
女性性を宿した男性、っていうイメージが若いころの小日向さんにはすごく強くて、おじさんになることが思い描けなかったというか…。
でもちゃんと「女性性を宿したおじさん」になってくれて、だからいろんな役ができるんだなと思うんですよね。

そうそう、松田龍平くん、こんないい役者になってたんですねえ。
どうしても、これまで「松田優作の遺児」というイメージが勝手に私の中で抜けなかったんですが、このドラマ見てそれが取れました。

それにしても視聴率って、ほんとに信憑性あるもんなのかなぁ…。
ギモンです。
Commented by テル at 2008-02-09 00:16 x
うわ~、見てる人は見てるんだなあ~小日向さん(笑)

ウチは息子と私でとってもお気に入りで見ていたのに、
途中から娘が、ボンビーがいいといいだし、チャンネル争い。

今週は、息子は珍しく勉強する
娘は、ボンビーももういい、
私は、風邪気味で、つけているのにホットカーペットの上で寝てしまい、気がついたら終わってました(-_-;) でも、「もうかえろうよ~」が、ドラマから出てきたそのまんまみたいで、ウケました。。
Commented by higurashizoshi at 2008-02-09 08:28
テルさん風邪? 気をつけて~。
チャンネル争いって、いまや、なつかしい言葉かも。テレビは一人一台、みたいな
おうちも多いのでは? 
チャンネル争いして、やっとゲットしたのに、うたた寝してるママ…
うーんなんだかとってもいい風景だ!

小日向さん、前に親サイバーでも話題になってたような。
ほんと、見てる人は見てる、そんな存在ですね。
堂々の主役、って私は思うんだけど、テレビの世界では何より視聴率らしいので、
「小日向主演ドラマ、コケた」みたいに言われたら、くやしいな。
ドラマにもアカデミー賞みたいなのがあったら、主演・脚本・音楽はいただき!
と思うほどです。

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