ひぐらしだより


人生はその日暮らし。  映画、アート、音楽、フィギュアスケート…日々の思いをつづります。
by higurashizoshi
プロフィールを見る
画像一覧
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

夜のパパ

d0153627_2174487.jpg図書館でこの本の背表紙がふと眼にとびこんできたとき、不思議な題名にひかれた。
手にとって、表紙の絵を見た。
ほっそりした青年が、頭にふくろうをのせている、繊細な線の銅版画。
「ああ、この本は私の本」
と思った。
そんなふうに直感することはめったにない。
すぐに借りて帰って一気に読んだ。もう返したくなくなっていた。

夜のパパ。
なんのことだろう、と想像がめぐるタイトルだ。
思春期手前の少女ユリアは、シングルマザーの母とふたり暮らし。
看護師の母は、夜勤の間ユリアと家にいてくれる人を、広告で募る。
応募してきたのは、予想に反して若い青年だった。

スウェーデンでは、夜間に子どもをみてくれるシッターのことを、「夜のママ」というらしい。
だから青年は、夜のパパ。
この夜のパパは、かなり風変りな青年だ。スムッゲルというふくろうが相棒で、本に埋もれた部屋に暮らしている。石の研究をしているらしい。
いっぽうユリアは、かなり頑固で、まっすぐな性格の少女。
学校では女の子同士のいじめの標的になり、家では無理解な母とぶつかってばかり。
相当に不機嫌な人生を送っていた。

一緒に夜をすごすようになっても、いっこうに心を開かないユリアに、夜のパパはお互いに手紙を書き合うことを提案する。
この本はその、ユリアと夜のパパの往復書簡で成り立っている。

誰のことも心から信用することができなかったユリアは、夜のパパとの間に、不思議なつながりを育てていく。
恋の感情でもなく、父親代わりの愛情でもなく。
夜のパパは、べたついた優しさとは無縁の、けっこう自分勝手で気分屋なところもある青年だ。
ただ、ユリアのことを、一人の人間として、きちんと尊重する。
ユリアがつたない表現であらわすこと、ひとつひとつに、ちゃんと向き合う。
子どもだから、大人だから、などということと関係なく、批判もし、共感もする。
そうしながら、ユリアと夜のパパは、いつしかいろいろな問題にふたりで立ち向かっていく。
ふくろうのスムッゲルが、そのとぼけた行動で、ときには離れかけるふたりの気持ちを結びつけてくれる。

ユリアと夜のパパ。ふたりはよく似ている。頑固で、孤独で、嘘がない。
ふたりの結びつきは、とても強くなっていくが、そのつながりは単純に名前のつけられないものだ。

この本を読んでいると、とても澄んだ気持ちになっていく。
人と人が、その結びつきの名前にーーたとえば家族とか恋人とか友人とかという名前に縛られて、ほんとうの感情が見えなくなることは多い。
年齢や、上下関係などでも、同じことが起きる。

でも、ほんとうに大切な一対一の関係というものは、何にも支配されない。
ユリアは、夜のパパとの関係で、そのことを知る。
だからユリアは傷つきながらも、少しずつ世界に対して心を開いていくのだ。


この本の作者マリア・グリーペは、スウェーデンではとても著名な児童文学作家とのことで、たくさんの著書がある。
ほとんどの作品の挿絵を、夫の画家ハラルド・グリーペが描いているそうだ。
この「夜のパパ」もそうで、物語にぴったりと寄りそうような、やわらかく繊細な絵がほんとうに魅力的だ。
この本には続編「夜のパパとユリアのひみつ」があり、少し大人になったユリアと、少し人間くさい夜のパパに出会うことができる。

二冊とも、そばにそっと置いて、何度も読み返したい大好きな本だ。
[PR]
by higurashizoshi | 2008-03-16 21:11 | 観る・読む・書く・聴く | Comments(5)
Commented by hinata at 2008-03-17 00:37 x
私も好きかも~
表紙の版画が良い感じですね。
読んでみます(^u^)
Commented by テル at 2008-03-17 01:13 x
はじめて知りました。。

「ユリアのことを、人としてきちんと尊重する」に惹かれます。
今度、読んでみたいです。

ちょうど、今日、テレビで見た海外ドラマの中で
日頃家にいないお父さんが、こどもの世話に関して
「たかが、子どもだろ」とか
「どうせ、子どものすることだろ」とか言うセリフがあり、
奥さんが、鼻で笑うシーンがありました。
特に、夜のベビーシッターがらみの話だったので、
この本のこと、知ったのタイムリーです。
Commented by higurashizoshi at 2008-03-17 14:01
hinataさん、ぜひ読んでみてください~。
この本、長らく絶版になってたのが、「復刊ドットコム」というサイトで
リクエストが集まって、4年前に新装版で復刊したそうです。
私がこの本を知ったのはその後なので、復刊してくれたことに感謝!です。
愛着を感じてた人が大勢いたってことなんでしょうね。

テルさん、何のドラマを見てたのかなぁ。
偶然こういうタイムリーなことって、ときどきありますね。
「どうせ子ども…」的なこと、ほとんどの大人はほんとに何気なく言ったり、行動したりしてるなって思います。
自分はそんな大人であるまい、と思ってても、はっとすることがしばしば…。

ユリアと夜のパパは、人と人との関係について、私に大切な思索をあたえてくれます。
Commented by ようこ at 2008-03-18 13:18 x
ユリアのまっすぐで頑固な性格・・。うちの長女とだぶります。

こういう性格だと生き難いですよね。長女を見てても思います。
でも長女に対し「ああ~もう面倒くさい子だ!」と思う反面、この子はこのままでいて欲しい・・なんて思ったりもします。
まあ、変わらないでしょうが・・。

今度私もこの本を捜して読んで見ます。
「夜のパパ」・・・おもしろいタイトルですよね。
Commented by higurashizoshi at 2008-03-18 21:32
私はね、自分がほんとはすごく頑固でまっすぐなのに、少女時代くらいから
それをカムフラージュしてきたような気がするんです。生きやすくするために。
人とぶつからないように、とか、疎外されないために、とか。

ようこさんの長女さんも、たぶんユリアのように、正直な人なんでしょうね。
きっと、夜のパパみたいに、心をまっすぐ向き合わせられる相手が
見つかったときには、うわべだけでない大切な関係を作れる人なんだと
思います。

…夜のパパってなかなかすてきな青年なんですよ。

フォロー中のブログ

明石であそぼう! たこ焼...

最新のコメント

Disney 鴨さん ..
by higurashizoshi at 23:49
こんばんは。お久しぶりで..
by Disney 鴨 at 20:03
bikegogoyさん ..
by higurashizoshi at 14:59
いやー、楽しかったです南..
by bikegogoy at 22:38
伝わってきます。なんてい..
by まにまに at 10:40
まにまにさん 読んでく..
by higurashizoshi at 22:45
先輩、すごい旅をしたんだね。
by まにまに at 18:27
おはようございます。 ..
by Disney 鴨 at 10:36
Disney 鴨さん ..
by higurashizoshi at 01:15
こんばんは。ひぐらし草子..
by Disney 鴨 at 20:22

検索

ファン

ブログジャンル

映画
ウィンタースポーツ

画像一覧