ひぐらしだより


人生はその日暮らし。  映画、アート、音楽、フィギュアスケート…日々の思いをつづります。
by higurashizoshi
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だからわるい

子どものころに読んだ、こんな話があった。
題名は「だからわるい」。正確におぼえていないけど、こんな内容だ。

一匹の犬が、弱々しいネコを追いつめている。
それを、男の子たちがながめていた。
するとひとりの女性が血相をかえて走ってきて、男の子たちをしかりつける。
男の子たちは驚いて、「ぼくたちただ見てるだけだよ。何もしてないよ?」と言う。
女性は言う。「だから、わるいんですよ!」

これだけの話である。
男の子たちは、何もしてないのに、なぜしかられるのか理解できない。
何もせず、傍観していることこそが悪い。女性の怒りはそこにある。
このあと、男の子たちと女性の立場のちがいは、変化するのだろうか。

さて、なんでこんな話を思い出したかというと、『靖国 YASUKUNI』という映画なのである。
まだ公開されてないこの映画を私はもちろん観ていないから、中身のことではなく、いろいろと報道されている上映中止問題についてだ。

ごくごく簡単に経緯を追うと、こんな感じだ。
3月12日 自民党の国会議員が中心になり議員向け特別試写会
       文化庁がこの映画に助成金を出していることを問題視
3月15日 4月12日封切りで上映予定のあった新宿の映画館が上映中止を決める
3月26日 同じく銀座の映画館が上映中止を決める
      (右翼の街宣車、嫌がらせ電話など受けて)
4月1日  同じく東京・大阪の2館での上映中止を運営会社が発表
4月4日  配給元が5月以降全国で21館上映予定と発表
      (ただし混乱防止のためとして詳細は未発表)

複雑なようで、シンプルな話だと思う。
試写会をおこなわせた議員たちは、その後のあいつぐ上映中止について、まるで予想外だったようなことを言っている。
でも、じゅうぶんにこういう動きが起きることを期待しての、異例の特別試写会だったと思う。
だけど、あくまで映画館や運営会社の上映「自粛」だから、責任は「自粛」する側にある、というわけ。
で、「上映中止はまことに遺憾」などと涼しい顔をしておっしゃってるのだ。

この映画の監督は44歳の中国人。いくつかのインタビューを読むと、中国のテレビ局で番組制作をしていたが、20年ほど前に日本に移り住んで、苦労を重ねながらドキュメンタリー作品をつくってきた。靖国神社という特別な場所に興味をひかれ、10年がかりで撮りためた映像をこの作品にしたということだ。

上映中止を決めた映画館の中で、実際に右翼の嫌がらせなどを受けたと言っているのは1館だけ。あと、名古屋の映画館には政治団体が来て中止を申し入れ、上映が延期になった。
つまり、多くの自粛の理由は、まだ何も起こっていないが起こるかもしれない混乱を事前に避けたもの、ということになる。

一方で、これから上映すると明言して動じない映画館もある。
北海道から沖縄まで、今わかっているだけで5館。市民映画館やミニシアターが多い。
一番最初に上映するのは大阪の「第七藝術劇場」で5月10日からだ。どんな妨害があるのか、ないのか。無事上映はできるのか。

この問題について、新聞やネットの情報を読みながら、私はいろいろ考えた。
見過ごせないことだと思うし、腹立たしい。
これからの日本の先行きの暗さを思わせられて、すごく不安でもある。
大手の運営する映画館がさっさと手を引いて、弱小な市民映画館が矢面に立とうとしているのも、いたたまれない。
なんとかしたい、でも…
家から出られない私は、上映する映画館に出かけて、この映画を観ることすらできない。
そして、ひとりで怒ったり悲観したりして。それだけで終わるのか…

そう思っていたとき、ふっと、「だからわるい」の話が頭に浮かんだのだ。
「何もしてないよ?」という男の子たち。
みんながそうやって「何もしてない」で「見てるだけ」のうちに、犬はネコを殺してしまうかもしれない。
…たとえほんとにちっぽけなことでも、今の私でもできることを見つけて、それをやろう。
そう思い立った。

家にずっといる利点は、時間がたっぷりあることだ。そしてパソコンがあれば、情報は出かけなくてもかなり集められる。
まず、『靖国 YASUKUNI』の上映中止を決めた5つの映画館とその運営会社3社を新聞記事で確認して、それぞれの連絡先を調べた。
これはインターネットでわりと簡単にできた。メールアドレスもFAX番号もネットでは公表してないところは、直接電話して教えてもらった。
そして、上映が中止になったことはとても残念に思うということ、上映を再検討してほしいこと、映画を商品としてでなく文化として守るのが映画館の仕事であるという考えなどを書いた文章を、それぞれにFAXやメールで送った。

次は、応援編。これから上映を予定している5つの映画館はだいたいHPを持っていたので、掲示板のあるところは書き込みの形で、メールが出せるところはメールで、上映することに敬意を表して、心から応援していますという文章を送った。
もし、ひとつひとつ手書きの手紙を書くとかいうことだったら、根気のない私はあえなく挫折していたと思う。
抗議編と応援編の二つの文章をパソコンで書いて、あとは宛先名をかえてどんどんコピペして送っていくというモノグサ作戦だからできたんだろう。

それでも全部送り終えるのに、あれこれほかのこともやりながら2日かかった。
少しすっきりした。もちろん、だから何ができたってわけではない。
きっと私の出したメールもFAXも、特に抗議編はクシャクシャ、ポイで終わりだろう。
でも、実感したことがひとつある。
これをしたことで、この問題は私にとって「ひとごと」ではなくなったということ。
それは意外なくらい深い違いだ。こうなると、これから自分のこの問題を見る目は変わっていく。追いかけていく。

できるのはほんとにちっぽけな、ささやかなこと。
でもひとつずつでもやっていく手だてはあるんだなと思った。
たとえ《ごまめの歯ぎしり》だとしても。
「何もしてない」男の子たちのところには、私は、いたくない。
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by higurashizoshi | 2008-04-08 16:30 | 観る・読む・書く・聴く | Comments(7)
Commented by くれない at 2008-04-10 00:05 x
以前みた「蟻の兵隊」という映画で、8月15日の靖国神社の様子を初めて知りました。

旧日本軍の格好をした(コスプレ?)人々が行進したり、小野田さんが演説したり、なんだこりゃの世界です。
きっと毎年こんな大騒ぎやってるんでしょうね。
なのにちっともマスコミは取り上げないのですね。
ニュースで中継したらいいのに。

「荒れる成人式」を毎年撮りに行くくせに。
Commented by higurashizoshi at 2008-04-10 14:58
「蟻の兵隊」、観たいと思いながらまだ観られずです。
8月15日の靖国神社って、そんな感じなんですね~。
ほんと、中継してくれたらいいのにね。レポーターが入って。

やっぱり、触れずにおきたいところ、なんでしょうね。
今回は、それをよりによって中国人監督が撮った、っていうのが許せないと。

私の伯父さんたちも靖国神社に祀られてるんですよ。
父が9人兄弟の8番目で、一番上からお兄さんが3人、はたちそこそこで戦死しているので。
でも東京に住んでる間、一度も行ったことなかったです。
Commented by マスター at 2008-04-10 18:15 x
higurashizoshiさん、こんにちは。ブログには「はじめまして」です。ほんとに時々だけど、ブログものぞかせてもらっています。(自分のブログはほったらかしなのですが。)
この話題を、今日別の人と話していたので、黙っていられず乱入しました。自主上映でやっている、いいなあと思う映画を、たいていは観に行けずに「あ~あ」で終わるのが常なのですが、「靖国」は絶対観に行こう!と、今日茶飲み話の相方と話してました。
あと、なんか神戸でもアートヴィレッジかどこかで上映するような話を聞いたように思うのですが…。聞き間違いかな?
とにかくおっしゃるとおりで、傍観することが加害者の側に立ってしまうことってありますね。(だからと言って、なんでもかんでも関われるわけではないのですが。)
一つ前の話題「青い三角定規」にも、コメントしたかったと思いつつ、今日はここまで。
また読みに来ますね。
Commented by higurashizoshi at 2008-04-10 21:32
マスターに「いらっしゃいませ」って言うのも変ですけど…
ようこそマスター!

神戸のアートビレッジセンター、HP観たら上映予定の中には今のとこ入ってないようです。ぜひやってほしいですね。
今回の騒動で『靖国 YASUKUNI』に逆に付加価値がついたみたいな論調もあったりして、作った側はウンザリだろうなーと思います。
映画は、ただ映画として守られ、観られないと。

大阪の「第七藝術劇場」も上映まであとひと月。上映始まったらマスターぜひ行って現地リポート聞かせてください!
またお越しくださいね。
Commented by にゃおん at 2008-04-23 13:08 x
高崎あたりで上映あるかしら?観たい映画です(^-^)

議員の試写会に関しては、この映画の制作費の一部が国から出てるので、内容確認のためにあって然りだったのではないかと思いますな。
Commented by higurashizoshi at 2008-04-23 15:37
にゃおんさん、「シネマテークたかさき」で上映の予定ありですよ。
ちょっと先の話だったと思いますが。

国会議員向けの試写会というのは前例のないことで、もし試写会で観て誰かが「文化庁からの助成は問題あり」と言い出したとしても、上映中止にする権限は議員には当然、ないのですよね。
今後こういう映画に助成金を出さないために、ということであれば、議員も一般公開後に映画館で観てから協議すればいいわけだし。

だから、いったい何のためにわざわざ試写会をさせたのかということになるわけで…。
これはやっぱし、上映を妨害したり自粛したりする動きが出ることを見越してのスタンドプレーだったとしか考えられないって思うのですよ。
Commented at 2008-04-25 20:20 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。

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