ひぐらしだより


人生はその日暮らし。  映画、アート、音楽、フィギュアスケート…日々の思いをつづります。
by higurashizoshi
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ニコ・ピロスマニ

昨日は私の誕生日だった。
ずいぶん前からコトブキにこの画集をリクエストしていて、とうとう昨日贈ってもらった。d0153627_1739233.jpg

ニコ・ピロスマニはグルジアの画家で、日本でいうと明治維新のちょっと前に生まれて大正時代に亡くなっている。
8歳で孤児になり田舎から首都チフリス(現トビリシ)に出てきて、正規の美術教育を受けることなく職を転々としながら絵を描いた。絵の主題はグルジアの庶民やその生活、動物などが多い。職を失ってからは食事や酒と引き換えにレストランや居酒屋の壁に絵を描くこともよくした。
50歳のころ、たまたまロシアから来た美術家グループに「発見」されて、天才画家としてロシアで展覧会に出品、芸術家協会の会員にもなったが、ピロスマニ本人はチフリスで漂泊の生活を変えることなく、やがて酒に溺れながら56歳で誰にも看取られず亡くなった。

その後彼の絵は収集され、主な作品はグルジアの国立美術館に所蔵されて、ヨーロッパのあちこちで回顧展も開かれ、素朴派の画家として世界に知られることになった。今はグルジアを代表する画家として、紙幣に肖像画が使われるほど国民に愛されているという。

私が初めてピロスマニの絵を見たのはゲオルギー・シェンゲラーヤ監督のグルジア映画『ピロスマニ』(1969年)の画面の中だった。
これはニコ・ピロスマニの生涯を描いた映画で、大阪の自主上映館で観た当時私は20歳くらいだったと思う。そのときの異様な感動は今でもまざまざと覚えている。それまで観たこともないような、静謐で残酷で美しい映画だった。
その映画の中に、実際のピロスマニの絵が次々と登場する。ほとんどその絵と映像が一体になっているかのような不思議な感覚におちいる。
ピロスマニはあらゆる束縛や人間関係からこぼれ落ちるようにのがれて、憑かれたように絵を描きつづける。自分が社会的存在として生きていることから眼をそむけるように。
特に私が強い印象を受けたのは、彼の動物画だった。まるではりつけになったように奇妙なポーズで静止した動物たち。その眼は澄んでいて、深い悲しみと不思議なあたたかさを発している。

その映画を観て以来、ずっとピロスマニの絵をこの目で見てみたいと思いながら果たせずにきた。1986年に東京と大阪でピロスマニ展があったそうだが、そのころ私は何をしていたのだろう?知らずに過ぎてしまった。
いまや映画『ピロスマニ』をもう一度観たいと思っても、ビデオもDVDもすでにどこでも在庫切れになっているようだ。
ときどき無性にピロスマニの絵を見たくなることがあって、ネット上の展示などを眺めていた。
ロシア語版で比較的最近出たピロスマニの画集があることがわかって、辛抱強く辞書と格闘するつもりで思い切って買おうかと考えていたら、この3月に思いがけず、日本語版の本格的な画集が出るというではないか! 
それで一も二もなく誕生日プレゼントとしてコトブキに頼んでいたというわけだ。

今日は静かな雨。朝から何度もページを繰って、やっと手に入った画集をながめている。
カラー図版189点というのは、残っている作品数の少ないピロスマニの画集としてはかなりの収録数だ。
全体を見ると、意外に人物画が多い。でもやはり惹きつけられるのは彼の動物画である。
何度も見ているうちにふと気づいた。ああ、ピロスマニという人は、人間より動物にずっと近さを感じていたんだ、と。というよりむしろ、動物画はみんな彼の自画像なんじゃないか、そんな気がした。
奇妙で美しいキリン、つぶらな瞳の鹿や牛たち、彼らは皆すべてを受けいれるようなまなざしで静止している。

表紙に使われている絵は「女優マルガリータ」。ピロスマニが恋に落ちたフランスの旅芸人一座の女優の肖像画だ。
真偽のほどはわからないが、この恋のエピソードが「百万本のバラ」という歌になったといわれている。この恋は実らずにマルガリータは帰国、この肖像画はそれから十年以上たって描かれたものらしい。
どこか菩薩をおもわせるような、優しいけれども悲しさのただよう絵だ。

図版もきれいだし、巻末には池内紀、小栗康平、スズキコージ、山口昌男、あがた森魚、四方田犬彦など豪華な顔ぶれのエッセイも収録されていて、これで5800円は安い。今回の刊行でやっとピロスマニ好きが日本語で彼の画業を気軽に見渡せるようになったわけで、文遊社という出版社は聞いたことがなかったけれど、偉いっ! ありがとう! と声を大にして言いたい。
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by higurashizoshi | 2008-06-05 17:40 | 観る・読む・書く・聴く | Comments(9)
Commented by hinata at 2008-06-06 00:12 x
お誕生日おめでとうございます。
すてきなプレゼント良かったですね、
ニコ・ピロスマニ知りませんでしたが、
素敵ですね、本物が見たくなりました。
絵のことは、よくわかりませんが、
きっと画面上で見るより、もっと深い絵なんだろうなという気がします。
素敵なもの教えていただいてうれしいです。
ありがとうございます。(^u^)

トマト味噌汁やりました?
トマトと、刻んだキムチおいしかったですよ。
後、みそのトマトソースもなかなかいいですよ(^u^)
Commented by higurashizoshi at 2008-06-06 18:57
hinataさん、ありがとうございます。
私も画集見ながら、ますます本物が見たくなっています。
ピロスマニの絵は子どももスッと入りこめるような気がします。
動物画なんかは短い文をつけて絵本にしたくなる感じ。

トマト味噌汁、やってみましたよ。
これが意外にさわやかで、違和感がない!
キムチとも相性いいんですね? うちもキムチは大好きでいろんな料理に
使うけど、トマトは考えなかったな。やってみよう。
「みそのトマトソース」とは? 気になる~
Commented by くれない at 2008-06-06 22:40 x
ピロスマニ!
画集がでたなんて知らなかったです。

もうかれこれ30年くらい前、私も映画見ました。
岩波ホールでした。
ピロスマニの絵のような風景と人々でしたね。
内容は忘れてしまったけれど、淡々とした映画だったような・・
物置のような部屋が記憶に残っています。
グルジアの民族音楽で地声の女声合唱が印象的でした。
確か、公開前後に展覧会があってみに行ったと思います。
なにか強烈な何かを感じたようです。

偶然さいきん展覧会のチラシでピロスマニの絵を見ましたよ。
だから、この話題にびっくりしました。
渋谷のbunnkamuraミュージアムの企画展に何点か出るようです。
ちょっと検索してみてはいかがですか。
higurasiさんのお住まいから遠いですが、ちょっと楽しめますよ。

きっと見たことなかっただろうと思うキリンの絵がありましたよね。
国は違うけどアンリ・ルソーを思い出します。
Commented by higurashizoshi at 2008-06-07 10:39
くれないさん、岩波ホールでこの映画が日本初公開のときに観られたんですね。
深く印象に残る不思議な映画ですよね。
しかも展覧会も…うらやまし~
今、画集の後ろの《展覧会履歴》を見たら、77年に「素朴(ナイーフ)な画家たち」展と
いうので国立近代美術館で出品されてます。これですね!

で、今年bunkamuraに出品?
さっそく見つけました、「青春のロシア・アバンギャルド」展。ピロスマニが数点?来るんですね。
秋には大阪にも巡回してくるそうです。
そのころには外出できるようになってたらいいなぁ…(悲)

アンリ・ルソーとはよく類似をいわれるみたいです。
まったく別の国で、たぶん何の影響も直接与えあってはいないはずなのに不思議ですね。
Commented by くれない at 2008-06-19 21:22 x
秋には、大阪で展示があるのですか。
行かれるといいですね。

ところで、思い出した映画があります。
もしかしたらご存知かも。
私は、公開が終わってから、古雑誌で記事を読んで、行かなかったことを後悔しました。
「ニキフォル 知られざる天才画家」という映画です。
ポーランドのアール・ブリュットの画家の実話だそうです。
ポーランド!3年前に何も知らないまま行った国です。
行ってみて、映画が、すごい国らしいと少し知りましたよ。
記事をよんで、「え?」と思ったのは、ニキフォルを演じた俳優が、主演女優賞を受賞しているということです。
このじいさんが??
ね! 見たくなるでしょ。
今日検索してみたら、ホームページが、まだありました。
それに、DVDも発売されてます。
やった!
さっそく娘に、ツタヤで探してもらうことにしました。
HPの予告編が、うれしいです。
http://www.nikifor-movie.com/
もう一度「ほんとに女優?」
Commented by higurashizoshi at 2008-06-20 14:22
くれないさん、しばらく更新できない間にまたコメントもらえてうれしいです。

で、ニキフォルなんですが、映画も、この画家も、ぜんぜん知りませんでした!
さっそくHPを見て、予告編も観て、すごくわくわく!
境遇なども、ピロスマニに共通するところがありますね。
HPで絵を見ましたが、素朴で美しく、色がとてもきれいですね。
映画も私の好みにビビッとくる感じですよ。ぜひともDVD借りようと思います。
ほんと、驚いたことに、ちっちゃいおじいちゃんのニキフォルを演じてるのが、
どこから見てもじいさんにしか見えないのに女優さん… 
この発想、どっから出てきたんでしょう。目が点です。

3年前にポーランドに行かれたんですね。またお話聞きたいな。
ポーランドの映画、昔いろいろ観ました。アンジェイ・ワイダとか。
一時期、古いポーランド映画もけっこう自主上映とかでやってたし。
でも最近のはまったく知りませんでした。
予告編でひさしぶりにポーランド語の響きを聞いて、ああきれいだなって…

すてきな情報教えてくださって感謝です!
Commented by くれない at 2008-06-20 20:26 x
ポーランドは2泊しただけですが、初めてのヨーロッパ旅行の最初の国だったので、感慨深かったです。
「オリバーツイスト」のポスターをよく見ました。
ポランスキーは、ポーランド人なのですね。
ホテルの窓から、トラックに乗用車を積んで、たぶん走行中の撮影をしているのが見えました。

私が、若いころも、ポーランド映画の上映会があったようですが、ほとんど観たことがありません。
題名だけは、聞いたことがありますが。
1つだけ観たのは、「尼僧ヨアンナ」という映画でしたが、なんだか悪魔つきの話だったような気がしますが、あのころは良さがわからなかったですね。
Commented by higurashizoshi at 2008-06-20 22:37
ああ、ポランスキーはポーランドの人でしたね。
確か、わりと早く国を出てしまったのかな?
『戦場のピアニスト』でアカデミー賞を取った…?

『尼僧ヨアンナ』、名作っていわれてますけど私は観てません。
今調べてみて、ストーリー読んだらとっても濃厚なお話ですね! 
『ニキフォル』は近々借りて観られそうです。

ヨーロッパ、特に東欧はあこがれです…
昔、シベリア鉄道に乗ってモスクワまで行ったのですが、そのあと国境越えて
なんとか東欧まで行きたかったのに資金切れで実現せず。
あのときもう一発リキを出してればなあ…といまだに後悔してます。
Commented at 2009-11-29 22:09 x
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