ひぐらしだより


人生はその日暮らし。  映画、アート、音楽、フィギュアスケート…日々の思いをつづります。
by higurashizoshi
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つぐない

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イギリス・2007年公開
監督:ジョー・ライト
出演:キーラ・ナイトレイ、ジェームズ・マカヴォイ、シーアシャ・ローナン、ロモーラ・ガライ、ヴァネッサ・レッドグレイヴ


古き良きイギリス映画、ということばを思い出させるような、がっしりとしてしかも緻密な…そして映像も音も実に端正で美しい映画だ。ジェームズ・マカヴォイ、キーラ・ナイトレイの主役ふたりもみずみずしく、ぐいぐいと引きこんでいく。
とりかえしのつかないこと、を描いた映画である。ひとりの少女がある激しい感情にかられてついた、一つの嘘。それが、彼女の美しい姉と、ひそかに愛し合った身分違いの男とのふたりの人生を、まるごと変えてしまう。戦争がそこに襲いかかり、少女が悔恨の気持ちにいたったときには、もうすべては手遅れになっていく。

少女が壮麗な屋敷の一室でタイプライターを打っている冒頭のシーンから、それが音楽と重なり、すべるように物語が動き出す躍動感や、若いふたりが秘めた恋をあらわにする瞬間の官能的な美しさ。そしてかれらが目指していたものが、ある瞬間からみるみるうちに崩れていく残酷さ。
少女はなぜ、嘘をつかなければいけなかったのか。
とりかえしのつかないことは、どうつぐなえるのか。

この映画はすこし複雑な構造をしている。少女は大人になって作家となる。彼女が年老いて、最後の作品として『つぐない』という小説を書く。その小説がこの映画に入れ子のようにはいっているのだ。
ほんとうにあったことと、小説の中で彼女が創作したところとが入り混じったまま、映画の描写はすすむ。けれど、ときおり時が混線するように、時間の流れが巻き戻され、また視点をかえて同じ場面が繰り返される。
観ている側は、今どの視点でこの時を見ているのか、それは事実なのかフィクションなのか、迷いつつ作品のつよい流れに身をまかせることになる。

原作はイアン・マキューアンの『贖罪』という小説だ。未読なので原作と映画とのちがいはわからない。ただ、この「入れ子構造」は映画化のための工夫ではないだろう、原作もたぶんそうなのだろうと思わせられる。
というのは、語り手がこの入れ子の中の物語を作っている、つまり少女のころ自分がおかした罪をつぐなうためにこの物語をつづっているということが、この作品の要だからだ。
現実にはなかったことも巧みに織り交ぜながら物語ることそのものが、贖罪の行為なのだと彼女はいう。はたしてそれは成立するのだろうか? 
語り手は物語にとって全知全能の神と同じだ。彼女がほんとうに傲慢でないといえるのだろうか?

老いた彼女を演じるヴァネッサ・レッドグレイヴ。出演場面はごく短いのに、少女のころから持つ孤独、罪の意識、強いプライドなどを凝縮して見せる力はほんとうにすばらしい。
深いしわの刻まれた彼女の顔。その苦悩。そして彼女のつづる物語の中で、色彩ゆたかに若々しい情熱をほとばしらせて、人々はいつまでも生き続ける。
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by higurashizoshi | 2009-01-19 09:22 | 観る・読む・書く・聴く | Comments(4)
Commented by ロックマン at 2009-01-21 18:10 x
「つぐない」わたしも見ましたよ~
今年のお正月、何にもしなくて、「じゃあ、せめて何か1本くらい映画を見よう」と選んだのが「つぐない」でした。
原作を読もうとおもっているのですが、いつも図書館の本貸し出し中で、わたしもまだ読んでいません。(早く読みたいなぁ)

わたしは映画の詳しい内容は知らずに見たので、最後の方でヴァネッサ・レッドクレイヴが登場して説明するまで、これは少女が書いた物語なんだという構造に気づいていませんでした。
少女の視点から見える出来事、実際に起こった出来事。
「あー、自分が見てる物事も、こうなんだろうなあ」そう思いながら見ていました。

自分の感情と思い込みから、物事を見てしまうことや、魔がさしたように、ふっと、ついてしまう嘘って、あります。
この映画のように、運命を変えてしまったり、罪をおかすには至らなくても、それに近い、きわどいことが、今までどれだけあっただろう
と、わたしは見た後に思いました。

原作読んだらまた報告しますね。
Commented by higurashizoshi at 2009-01-22 20:52
ロックマンさんも観たんですね~
原作、文庫になってたのでこの前買ってしまいました。
うちの地元の図書館でもずっと貸し出し中だったので…。
時間をゆっくり使えるときに一気に読みたいなあと思って、まだ置いてあります。
早く読みたいけど、もったいなくて読みたくないような。
微妙な気分です。

小説内小説(これだったら《映画内映画》?)みたいな構造の作品ってときどきありますね。夢からさめたらまた夢の中で、そこからさめても…みたいな。
現実や事実っていったい何だろうと、考えさせられます。
そう、ほんとに、《私》の視点でしかこの世界を見ることはできないんだから、気づかずにどんなことが起きているか、どんな結果をまねくか…わからない。

原作読んだら(どっちが先になるかな?)またおしゃべりしましょう!
Commented by hinata at 2009-02-07 14:20 x
贖罪読みましたよ~
久々ドラマチックな小説、夢中で読んでしまいました。
あ^~もう!<(`^´)> え~(>_<) ホッ(・o・) え、え、え~~(゜_゜)ガガ~ン
みたいな感じでした(^◇^)
少女の微妙な感情とか、映画ではどんな感じだったのでしょう?
原作のあるものが映画になった時って、細かいニュアンスが描き切れなかったりということがある様な気がするので、これはどうだったのかな?と気になります。

後におばあさんになるこの少女、結局のところは、その時の本当の気持ちはどうだったんでしょうね、言っているうちに心の中で事実になってしまうことってあるでしょうしね。この書いてあることさえ真実とは言い切れないということなのかな?と思いました。
良く考えると怖いですね。そして、かわいそうな二人…。
Commented by higurashizoshi at 2009-02-09 20:19
hinataさん
おおっ、先を越されたぁ!
私はやっと読みはじめたところです。
考えてみると、映画というのはほんとに短い中に物語を閉じこめてあるものですねえ。
hinataさんは映画のほうは観てないんですよね、逆の立場というのもおもしろいですねー。

少女のキャラクター、映画のほうが小説より可憐な感じでした。
原作のほうの彼女は、たった13歳でもすごく早熟で、傲慢というか、何か畏れを知らないような感じがありますね。
世界の全部を自分のものにできるというような。
だから全部を自分で作り上げる、という展開につながっていくんでしょうね。
そのへん、映画ではちょっと弱かったところが、小説を読みはじめてなるほどと思いました。
ますます続きが早く読みたくなりました! 集中できる時間がほしい~

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