ひぐらしだより


人生はその日暮らし。  映画、アート、音楽、フィギュアスケート…日々の思いをつづります。
by higurashizoshi
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2017年 05月 02日 ( 1 )

五島列島 小値賀島・野崎島への旅 4

長々とつづってきました今回の旅の話も、これで最終回(たぶん)。
いつも「ブログなんて長いと誰も読んでくれないよ」と人から言われるので、そうよねーと思い、今度こそ短く書こうと思うんだけど… なんか、長くなっちゃうんですよねえ。だから途中であきちゃう人もいるんだろうなあ。まあ、気が向いた方はもう少しおつきあいください。

さて、野崎島でアクティブなエネルギーを使い果たし、あれこれ感じ考えすぎてボー然状態で小値賀島に戻った私。小値賀での1泊2日はもうひたすら、なすがままに過ごそうと決めていた。
目的なし。急ぐ用なし。何にも考えず、のんびりと。
そもそも、最初に書いたように野崎島が大きな目標すぎて、小値賀島のことは何も知らないまま来てしまったので、島の地図すら現地でもらって初めて目にした始末。

小値賀島での宿は、「愛宕」という民宿に予約をしていた。
愛宕のご主人が港まで車で迎えに来てくださっていて、ラクチンで宿まで。ああ、なんだこの極楽ぶり。自分で歩かないってなんて楽なの。そもそもあちこちに人がいるし!
そう、人がいるってすごいことなのだと思った。人がいるって、ものすごい安心感だ。もちろんストレスにもなりうるわけだけど、このときの私には、あったかいお風呂に急にチャポンと入ったかのような、心がほとびるような感覚があった。

着いた民宿「愛宕」さんは、なんと目の前に野崎島がドーン!
小値賀港からかなり離れていて、ちょうど野崎島側の別の漁港に面していたのだ。さっき別れたばかりなのに、どこまでも縁があるわね野崎島。
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素朴なお宿に落ち着き、そのあとは付近をぶらぶらと散歩したくらいで、ぼよーんと過ごした。
お散歩中にも、あちこちで行きあう人がみんな「こんにちは」と言ってくれる。あたたかい。
庭先の花にも、人の住む気配を感じる。
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とはいっても、小値賀島も過疎に悩む島だそうで、今の人口は2600人ほど。
確かに、散歩しているとところどころに、空き家らしい建物が目立つ。

まるで、昭和の街並みにタイムスリップしたような。
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家の前にこんな木があるって、やっぱりここは南の島なんだなあと思う。
すんごいっすよ。
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その夜は、小値賀の新鮮なお魚づくしの美味しい夕飯をいただいた。
脱力しすぎてて、写真撮るの忘れました。特に美味しかったのが、白身のお刺身を小さく切ったのを、超たっぷりのすりたてのゴマとお醤油・みりん・お酒であえたもの。これをお茶漬けにするのが、五島列島ではポピュラーな食べ方なんだそうだ。これはもう、永久に食べ続けられそうなくらい旨かったです。


一夜明けて。
元は漁協勤務だったという愛宕のご主人が、「魚のあがるとこば見ますか?」と、朝の小値賀港に連れて行ってくれた。
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最近は漁獲量が減っているのでさびしいとのこと。でも小値賀の魚は東京などにいくと高級魚として人気があるのだそうだ。
これから東京の居酒屋に直送されるという魚たち。
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南の海らしい鮮やかな色の魚。
名前を聞くと、「ヨメ」というんだそうだ。なんでヨメなんですか?と聞いたら、
「色がきれいかやけん」
だそうだ。ふふふ。
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宿に戻ると、ご主人が「今日はほかにお客もおらんけん、このあと島をひととおり案内しますよ」と言ってくださる。なんて親切な! もう、なすがままに連れていっていただくことに。
笑顔のやさしい奥さんにあいさつして荷物を持ち、完全無欲な状態で車に乗り込む。

車で回る道々、いろいろなお話を聞いた。小中高とひとつだけ公立校がある小値賀島だが、子どもの数がどんどん減っているうえ、働き口がないため高校を卒業すると100%島を出るのだそうだ。愛宕のご主人の二人の娘さんも、島を出て遠くで家庭を持たれているとのこと。
逆に、ゆったりした暮らしを求めてよそから小値賀島に住みつく若い人もいる。特に農業はなかなか人気があるという。

島のあちこちに牛がいる。ここで育つと、肉牛として遠隔地に運ばれるそうだ。
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「地ノ神島神社」。
野崎島にある、「海ノ神島神社」と一対をなす社だ。
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海の際に立つ鳥居。
対岸はるかに、野崎島の鳥居と向い合わせになり、飛鳥時代ともいわれる昔からこの海の安全を見守っている。
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鳥居をくぐり、ごつごつの岩の浜に出てみる。
遣唐使も通ったという海峡。なんだか敬虔な気持ちになる。
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牛の塔。
ここの由来は、前々日に小値賀の民俗資料館で聞いていた。
鎌倉時代、もともと二つの島に分かれていた小値賀島をひとつにするための干拓工事が行われた。大変な難工事で、使役のために何万頭もの牛が犠牲になった。その亡くなった牛の数の石ひとつひとつに経文を書いて積み、その上に供養塔を建てたのだという。
牛たちを供養し続けてきた、小値賀島の人々のやさしい心が思われる。
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赤浜海岸。
その名の通り、ほんとうに海辺が全部赤い!
この島が火山の噴火でできた名残りなのだという。
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こちらは、柿の浜海水浴場。
なんとも素朴でかわいらしい海水浴場だ。きめ細かな砂も、打ち寄せる水もきれい。
夏には島の人でいっぱいになるという。
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車は橋を渡り、隣の小島、斑島へ。
ここで有名なのが「ポットホール」。
ポットホール…って何じゃ?

この海べりの岩場にあるのだそうだ。
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岩によじのぼり、裂け目から見下ろすと…
うわおお!
なんすかコレは!?
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この裂け目の底に見えるのが、ポットホール。地元では「玉石様」として信仰の対象になっているのだそうだ。
いつの昔からか、この裂け目の奥で石が波に洗われてクルクルと回り、回り、回り…いつしかまん丸の玉石様に。クルクル、クルクル…何十年、何百年、いやもっと?
これ、底まで3m以上と相当深くて、玉石様は直径50cmくらいだそうだ。
しかし、この玉石様のもとになった石は、どうしてここにあったの?誰かが入れたの?周囲の石からはがれたの? …誰か教えて~!

今度は、車はもうひとつの橋でつながった小島、黒島へ。
ここの金毘羅宮が展望台になっているのだという。
愛宕のご主人、あちこちへ車を走らせてくださるが、必要なときだけ案内してくれ、ほとんどは「どうぞごゆっくり」とご自分は車で待機。マイペースで見て回りたい私には、これがすごくありがたかった。
黒島の金毘羅宮への石段。新緑が美しい。
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素朴な展望台があって、そこに陶製の地図が。
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ここは国境の島、という言葉が思い出される。
小値賀港が一望。
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車に戻り、昼はどこで食べられるとですか、と聞かれたが、本日まるごとノープランの私。
「ふるさと」を勧められたが前々日に行ったので…と言うと、「おーがにっく」は友だちがやっとる店やけん、どうですかと言われる。
その店!実は前々日に小値賀のメインストリートを歩いたとき、目をつけていたのであった。というか、目をつけざるをえない店構えであったのだ。
これが前々日、その衝撃に思わず撮影した「おーがにっく」の店の前のメニュー。
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どうですか、すごいでしょう。名状しがたい多彩さとディープさ。
イノシシとトルコライスとウニとラーメン、そして鯨!

そうか、あそこの店主さんとお友だちだったのか。でも愛宕のご主人、野崎島の管理人の前田さんともお友だちだったね。なんだかみんな、つながってるね…
「トルコライスってなんですか?」と聞いてみたら、「食べたことないけん…」との答。そしてご主人、聞いてみますよと即、スマホを取り出し「おーがにっく」の店主さんに電話。
「トルコライスっていうんは、トルコと関係があるんね?え、ない?トンカツとスパゲッティ?」等の対話ののち、
「まあ、食べてみたらわかるんじゃないですかねえ」
ということであった。

小値賀島一周の観光の旅終了。港の近くのしみじみした海産物屋さんの前で、車から降ろしてもらった。なんとまあお世話になったことだろう。「愛宕」のご夫妻、ほんとうにありがとうございました。

笑顔のすてきなおばさまの海産物屋さんでいろいろとおみやげを買いこみ、ここでも親切にも「お昼食べに行かれるなら荷物預かりますよ」と言ってくださる。忘れたら大変…と私が言うと(これはポカが日常の私にとってはごくリアルな話)おばさまはカラカラと笑って、
「3時の船でしょう。忘れてたら港まで持ってってあげますよ」
と何でもないことのように言われる。うーん、あったかい。

まだお腹が空いてなかったので、しばらく港近くの裏通りをぶらぶら。
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ええ時間が流れとるねえ…
と思って歩いていたら、一軒の家の前に数人の人たちが集まってなにやら相談中。
そこを通り過ぎようとすると、ひとりの男の人が私の顔を見てやおら、
「あんたええとこに来たね。この家もらわんね。ただよ!」
とニコニコして言うではありませんか。
「え、突然!?」
思わず話を聞いてみると、しばらく前にこの家の住人のお年寄りは亡くなられ、遠くに住むお子さんが、誰かもらってくれる人がいれば無料でこの家をあげたいと言われているとのこと。
「どうね、いい家よ。もらわんね。ただし、ここに住んだらお姉さんが会長さん」
会長?
聞けば高齢化で町内会長のなり手がいないので、この家を譲る条件は、町内会長になることなんだそうだ!
と、そこへ通りかかった数人のおばあちゃん連。「なんね、なんね?」
「いや、このお姉さんに、この家ばもらわんねと…」と男の人がいいかけると、おばあちゃんのひとりがにべもなく、
「この家はダメね!根太が腐っとる!」
とバッサリ。
すると男の人も負けてない。
「お姉さん、あっちの家はしっかりしとるよ。あっちも空き家やけん、古民家やけん」
と売り込む。
「でも、リフォームしないと住めないですよねえ」と言うと、一緒にいた役場関係らしき人がすかさず、
「いや、空き家に住んでいただく場合、リフォームに町から200万出ますから」。
「ほら、200万出るとよ!どうね!」
「いや~急に言われてもねー」
なんだかんだと、お互い軽口合戦になり、笑いのうちに解散。

おそらくこの島のかかえる切実な問題をはらんでいるのだけど、なんだろう、こんなふうに行きずりの旅行者の私に声をかけてこられるフレンドリーさがなんとも楽しい。
そして、この島に住んだらどんな毎日がありうるんだろう?と、現実離れした空想がふと頭をよぎったりもして。

さて、ほどよくお昼どきのお腹になってきたので、いよいよ懸案の「おーがにっく」へ。
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うーん、この脱力した《構えてません》感がなんとも。
店の前にはさきほどの写真のメニューが掲げられてるわけですよ。
こちらが店内。
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店内あちこちにもメニューあり、洋食、中華、酒のつまみ、とんこつラーメンから小値賀の海の珍味まで、この幅広さに脱帽です。
なかなか雰囲気のあるご店主、いろいろおしゃべりしているうちにびっくり!なんとこのご店主が前々日行った民俗資料館の、初代学芸員だったとのこと。長年考古学を研究され、小値賀島と野崎島の古代からの歴史についてたくさん論文も書かれていて、店内に置いてある文献をいろいろ見せていただいた。
考古学研究から、なぜ食べもの屋さんに?と尋ねると、
「小値賀には休日にお昼を食べられる店がほとんどないんですよ。もともと発掘作業で料理は作り慣れてたし好きだったので…」
とのこと。今も研究の方もぼちぼちと続けておられるそうだ。

さてお昼なにをいただこうか、と考えて、トルコライスの中身を聞くとかなり濃厚そう。カツにナポリタンにサラダか…もうちょっと疲れてなければトライするところだけど。
ご店主が、「さっき港から来た小イカがあるんで、それをバター焼きにするのはどうですか?」と提案され、それは美味しそう~とお願いすることにした。
今朝見に行った港からあがったばかりの、可愛らしいイカ。これが絶品でした!
(思わず食べちゃったあとで撮ったので、イカ減ってますけど)
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うまいうまいとモフモフ言いながらいただいたあとで、テーブルの上のメニューの一点に眼が止まる。
むっ!?
「カメの手!」
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このカメの手、バルセロナの市場の魚売り場で何度か見たんですわ。
ぎょえー、スペインではカメの手食べるんか!と娘たちと盛り上がったものの、調理法もわからず手出しはできぬまま。その後、高知に行ったときにも売ってるのを見た記憶があり、日本でも食べるんか!と思いつつそのままになっていた。
「カメの手、どうやって食べるんですか!?」
と勢い込んで聞くと、いたずらっぽく微笑んだ店主さんがすぐにサッと湯がいて出してくれた。
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腕部分(!)をピリッと裂いて、中から出てくるオレンジ色の部分をぱくっと食べる。
濃い海の味がして、コリッとして、
「おっ旨い!カメの手!」
しかし…
「これね、カメの手じゃないですよ」
と言われて
「?」
なんと、これは岩場に生息する甲殻類で、カメの手そっくりなのでこの名前がついたんだそうだ。にゃに~!? カメの手ちゃうんかい! 長いことだまされとった…
でも、バルセロナ以来の課題が思わぬところで解けて、あーこれもたぶん一生忘れないなあと思ったのだった。

すっかり長居して(お昼どきなのに誰もお客さん来なかったね…)興味深いお話をいろいろ聞かせていただき、店主さんにごあいさつして「おーがにっく」を出る。
いよいよ船出、帰路につく。
海産物屋さんのおばさまにお礼を言って荷物を受け取り、港へ。

小値賀の漁の無事を祈る、小さな社。
お世話になりました、小値賀島。ほんとうにいいところだった。
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行きは高速船だったが、帰りはフェリーでゆっくりと。
さて乗りましょうかねと船着き場に行ったけど、誰もいないし船もない。アレ、もう出発時間迫ってるのにおかしいな。
と思っていたら、ターミナルの「おぢかアイランドツーリズム」の職員さんがあわてて走ってこられた。
「フェリー、あっちですよ!」
私、あらぬ方向の別の船着き場に行ってたのね。ほんとに最後までお世話になりました。今日最後の便でっせ、乗り遅れたらエライことやっちゅうねん。
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フェリーの2等船室というのは、何かそういうきまりごとでもあるのか、乗り込むや否やみなさんじゅうたん敷きの床の上にやおら横になって毛布をかぶるんですね。きっと多くの人はこの航路が日常で、ここは休むとこ、となっているのだろう。
旅人としては、デッキに出て島との別れを惜しむほかない。

あっという間に小値賀島、野崎島は遠ざかっていった。やがて平戸をへて、陸路へ。そして長い時間をかけて九州から本州へと戻っていく。旅が終わる。
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今、帰りついて10日以上がたち、すっかりいつもの忙しい生活に戻った中でも、ふと島の感覚がよみがえることがある。
夜明けの島の空気。島じゅうに響く鳥の声。人のいない野崎島と、人のあたたかな小値賀島。突き抜けるような不安と怖さと、楽しさと。たったひとりで経験した旅の匂い。
私の身体や心の深いところで、きっとこの感覚は生き続ける。


*****

小値賀島・野崎島への旅の記録、これにて終了。
いや~長かったですねえ。
全部読んでくださった方、ありがとうございました。
国別対抗戦のことを書くよりもこちらを優先したので、フィギュアについてはまた今季を振り返るような形で書けたらいいなあと思っています。




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by higurashizoshi | 2017-05-02 09:55 | 旅の記録 | Comments(2)

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