ひぐらしだより


人生はその日暮らし。  映画、アート、音楽、フィギュアスケート…日々の思いをつづります。
by higurashizoshi
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最近読んでる/読んだ本

d0153627_18314175.jpg『旅』 2009年5月号

ブータンに行きたい。
行けないけど。
最近ずっとそう思っていたら、こんな特集の雑誌を発見、迷わず購入。
若干、ミーハーぽい編集だけど、そこもまあ気楽でよしとして。
写真がなかなか綺麗で、特に風景だけでなく私がいつも目がいく現地の食べもの情報がいろいろ載っているのがうれしい。あと、ブータンの織物のうつくしいこと。砂絵で描かれた曼荼羅など、興味深い写真も数々ある。
今、世界で一番幸福な国、ということで聖地あつかいされているブータン、観光に訪れる外国人のためのホテル建設ラッシュだという。すこし心配になる。
この雑誌、はじめて買ったけれど、いろんな雑誌があるものだなと思う。ブータンに旅する気分をほんのちょっと味わいながら、何度もながめている。


d0153627_2153631.jpg『アストル・ピアソラ 闘うタンゴ』
斎藤充正著 青土社
 
ピアソラを聴きながら読むピアソラ。
そもそもは、私の好きなフィギュアスケートの鈴木明子選手がピアソラの曲で滑っているのを見ながら、ちゃんと聴いてみたいなと思ったのがきっかけ。
CDを買って、それから図書館でこの本を借りてきた。
アルゼンチンタンゴの革命児、なんてふれこみだけは知っていても、そもそもアルゼンチンという国もタンゴという音楽もろくにわかってない私。この大部な伝記本、ものすごく詳細な資料がつまっていて、マニアにはすばらしいものだろうけど私にはほとんどのところがチンプンカンプン。
ほーピアソラはイタリア移民の子だったのね。子ども時代はニューヨークで相当な不良だったんだ。アルゼンチンタンゴなんか嫌いだったのに、お父さんがむりやりバンドネオンを買い与えて先生をつけちゃったんだ…。そのお父さんが亡くなった知らせを聞いて作った曲が「アディオス・ノニーノ」。うつくしくて、意外に悲しさを感じさせない曲だ。
《ブエノスアイレスの四季》というシリーズがすばらしいと思う。本のほうはすっかり拾い読みになりながら耳を傾けるピアソラ。


d0153627_214956.jpg『宮尾本 平家物語』
宮尾登美子著 朝日新聞社

保元の乱でとまったままの、私の平家物語。
タタが最近歴史好きでこの全4巻をまたたくまに通読、関連の本など借りては読んで、平家・源氏の系統図もすっかり頭に入ってるという状態。歴史オンチの私ではまったく話し相手がつとまらず、これは一発学びなおそうとタタ師匠のあとをついていくことにしたのだ。これまで何度も平家物語は挫折して、読み通したことがない私。この宮尾登美子さんの現代語版(訳ではない)はたいへん読みやすくて、最初はスイスイいっていたんだけれど…。
物語が戦いの時期にはいったとたん、誰が誰の味方やら、何をしてるのやら、いきなりわからなくなった。なんとか乗り越えて先に進まねば、まだ清盛は若いパパのままだ…。


d0153627_21441280.jpg『道遠くとも―弁護士・相磯まつ江』
川口和正著 コモンズ

85歳の現役女性弁護士、そのエネルギッシュな人生をたどった本。
女性だからと高等教育を受けさせてもらえず、婚家先では人間扱いされない《嫁》の地獄を経験、離縁。再婚して子どもをもうけたものの、またも《嫁》いびりの末にわが子を置いて離婚。身ひとつで必死の努力を重ね、30歳をすぎて弁護士になった相磯まつ江さんの弁護士生活は弱者を守る意志に貫かれていて、すがすがしい。ジェットコースターのような人生を走り続けてきた記述に、すごい人がいるもんだと感服。砂川闘争、朝日訴訟など、名前しか知らなかった事件や裁判についてもいろいろ知ることができた。
著者は私の東京時代の知人で、彼の人柄そのままに文章も平明でわかりやすい労作。エネルギーをもらえる一冊だった。


d0153627_21403499.jpg『ぼくと1ルピーの神様』
ヴィカス・スワラップ著・子安亜弥訳 ランダムハウス講談社文庫

インドのスラム街育ちの孤児の少年が、クイズ番組に出て次々と難問に正解、巨額の賞金を得た。いかさまを疑われ拘束された彼は、それまでの18年の生涯を語り始める。クイズに正解できたのは、すべて彼の経験した数奇な運命のおかげだった…。
過酷すぎるインドの貧しい階層の現実を描きつつ、パズルのピースがぴたり、ぴたりとはまっていくような高いエンターテインメント性。いささかパズルがはまりすぎ、と感じるのは、著者がインドの上流階層出身の外交官で、イギリス駐在中に英語で書き英語で出版されたという経緯を知ってなんとなく納得。
主人公の少年に、機知と勇気だけでなく、人間に対する思いやりの心が生きているところが救いだなぁ。イギリスのダニー・ボイル監督で映画化(『スラムドッグ$ミリオネア』)され、今年のアカデミー賞を総なめした。映画のほうも早く観てみたい。
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by higurashizoshi | 2009-03-31 21:57 | 観る・読む・書く・聴く | Comments(4)

いかなご異変

d0153627_16453096.jpg

おおー。写真大きすぎ。
このきれいな魚を見てくださいな。いかなごの稚魚、シンコでございます。

今年もいかなごの季節がやってきた。さあ、シンコ食べるぞー! くぎ煮炊くぞー!
(くわしくは去年のいかなご話をごらんください)
…と。
2月末日のいかなご漁解禁日、驚愕のニュースが飛びこんできた。なんと漁獲量が例年の10分の1! そしてこの絶不調は漁が始まっても変わることなく、要するに、要するに…歴史的不漁。
去年は明石沖のタンカー衝突事故が原因の油流出で、いかなご漁は最盛期のときに打ち切りになった。今年こそはと漁師さんたちも売り手たちも、そして食べ手たちも待ちかねていたのに…。
この不漁の理由はよくわからないという。でも、海水温の上昇が影響しているのは確かだとも新聞に書いてあった。
このあたりで、いわばアホみたいに(これ、悪い意味じゃないです。ものすごくたくさん、ということ)獲れるからこそ、安く手に入り、保存食のくぎ煮に炊いて親しまれてきたはずのいかなご。そんな庶民の味だったいかなごが、今年は突然、超高級魚に変身してしまったのだ。

例年安いときは1Kg600~800円くらいで買えてたからこそ、震災のとき支えてくれた全国の知人へ送るために10Kg20Kgと買いこんでくぎ煮を炊くって話もここらではあたりまえだった。
私はもちろんそんな甲斐性モンではないけど、シーズン中は2Kgずつを数回は買ってきてくぎ煮を炊き、釜揚げにして楽しんできた。
去年は漁が打ち切られる直前はかなり値が上がって、1Kg1300円というときがあり、度肝を抜かれたものだ。
ところがところが、今年はそんなもんではありまへんのやで!
今年、私が聞いた一番の高値は、なんと1Kg3600円。明石の魚ん棚商店街でも2500円以上。
案の定、
《毎春、20Kgくぎ煮を炊いてたくさんの知人に送るのを楽しみにしてきましたが、今年はそれができなくなってしまいました。みなさん、いかなごは届きませんが私は元気です》という神戸の主婦の投書が数日前に新聞に載っていた。うっうっうっ…。

一昨日、私も思い切って魚ん棚に出かけ、2Kgだけ買ってきた。もはやシーズン中に漁獲量がふえて価格が下がる見込みなし、と思ったからだ。
袋いっぱい、ぴちぴちのいかなごのシンコに再会できたのはほんとにうれしかったけど、5千円札が瞬間で飛んでいった。
さっそく帰ってすぐに、大鍋ふたつ分のくぎ煮を炊いた。なかなかおいしく出来上がり、みんなで春の味を楽しんだ。それにしても、はたしてこれからいかなごはどうなるんだろう。このまま高級魚になってしまうんだろうか、それとも…。
そんな気持ちをうつしてか(いや単にカメラと腕の問題)くぎ煮の写真も何度撮っても顔色がいまひとつでありました。d0153627_1736060.jpg
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by higurashizoshi | 2009-03-21 17:39 | 家事というか | Comments(6)

ザ・フォール/落下の王国

d0153627_22321463.jpgインド・イギリス・アメリカ 2006年公開
監督:ターセム
出演:リー・ペイス、カティンカ・アンタルー、ジャスティン・ワデル、ダニエル・カルタジローン



1915年、まだ映画がサイレントだった時代。アメリカのとある病院に、5歳の少女アレキサンドリアが入院していた。オレンジ農園で働くお母さんを手伝って収穫中に、木の上から落ちて腕を骨折したのだ。
家族から離れた、寂しく退屈な時間を、アレキサンドリアは病院内をうろついて過ごす。人懐っこい笑顔で誰をも微笑ませる彼女は、みんなに可愛がられている。優しい看護師さん、医師や職員、病院に出入りする氷屋さん、大人の病棟にいる入れ歯のおじいさん。

ある日その病棟で、アレキサンドリアはハンサムな青年、ロイと出会う。ロイは映画のスタントマンで、鉄橋から飛び降りる危険な撮影で事故にあい、下半身に大ケガを負ってベッドに寝たきりだった。ロイはアレキサンドリアに、お話をしてあげようと誘う。お話の大好きなアレキサンドリアは、ロイの語り出す物語にたちまち夢中になっていく。
けれど、ロイには下心があった。
ひどい負傷の上、失恋の痛手に心を病みかけていた彼は、生きる希望を失っていた。彼はアレキサンドリアにお話を聞かせるのと引きかえに、自殺用のモルヒネを調剤室から盗んでこさせようとしていたのだ。
こうして、壊れかけた心にたくらみを隠した青年と、無垢な好奇心で青年を見つめる少女との、もうひとつの世界のお話が始まった…。

眠気を誘うような、けだるく薄暗い病院内の現実世界から、映像は一気にありえないような圧倒的な飛躍をみせる。ロイの語るお話、《壮大な叙事詩》の世界だ。
オレンジと純白の砂漠。サンゴ礁の中の孤島。海を泳ぐ象。
その舞台に、暴虐をつくす総督オウディアスへの復讐を誓った5人の男たちが登場する。オウディアスの軍隊との、幾度もの激しい戦い。5人のリーダー・黒山賊と、オウディアスの婚約者・美しい姫と運命的な恋。
タージ・マハールや万里の長城、エジプトのピラミッドまでが現れ、美麗をつくした衣装をまとった登場人物たちのめくるめく劇が繰り広げられる。

と、気づけば5人の男たちの顔には見覚えが…。
黒山賊はロイその人。誇り高き奴隷は氷屋の黒人青年、木の霊は入れ歯のおじいさん、爆弾作りの男と、猿を連れたダーウィンは病院の職員、そして姫はアレキサンドリアの大好きな看護師さんではないか。
おまけに、《壮大な叙事詩》はしばしば、アレキサンドリアの質問やら抗議に中断される。
そうやって、お話の世界と現実の世界は、行きつ戻りつし、互いに侵食しあい、進んでいく。
ロイの失意や絶望感は、お話の展開を暗く沈めていき、一方アレキサンドリアはそんなお話の進み方はがまんできない。とうとうアレキサンドリアはお話の中に入りこみ、黒山賊の娘になって登場し、主人公たちを危機から救う。

彼女の強い願いにはわけがあった。貧しい移民であるアレキサンドリアの家族は迫害を受け、あるとき家は放火で焼け、お父さんは暴行され殺されてしまったのだ。それを聞かされて育ったアレキサンドリアにとって、お話が死の悲劇に終わることは受けいれられなかった。
けれどあくまで、お話を語る主体はロイだ。現実の世界ではとうとうアレキサンドリアを調剤室に忍び込ませ、お話の世界もまた終末に向けて走り出す。
死に魅入られたように妖しく光るロイの瞳、まっすぐに生を見つめるアレキサンドリアの丸い瞳。めまいがするほど美しいお話の世界の中で、息づまるような最後の時が動きはじめる…。

これは、とても説明するのがむずかしい、不思議な映画である。
監督のターセムはインド出身、アメリカでコマーシャルフィルムを多数撮り数々の賞を受けてきた人だという。確かに、構図や映像の手ざわりにそれを濃く感じる。
ターセムは最初の映画『ザ・セル』がヒットしたあと、長年あたためてきた企画を実現させるため、世界各地でこつこつと撮影を続け、なんと自費でこの映画を作り上げたのだそうだ。

病院での絶望した青年と純真な少女という、古典的な組み合わせ、きわめてシンプルなストーリーと、豪華絢爛としかいいようのない、いくつもの世界遺産を含む奇観めぐりともいえる映像の中で演じられるお話の世界。この対比が、ともかく斬新で度肝を抜かれる。
そして、完璧な美意識でつらぬかれたようなお話の世界に、少女のひと言が入りこんで妙なゆるみが生じたり―そんな不完全さに、どこか脱力したようなあたたかさが感じられるのも面白い。
あたたかさといえば、アレキサンドリアを演じた、けっして美少女ではなく健康そのものの丸い頬の女の子。見る人みんなを幸せにさせる最高にあたたかい笑顔は、観終わったあと、どんな映像美よりも美しく心に残った。

原題は『The fall』。オレンジの木から落ちた少女、鉄橋から落ちた青年。
果実、花びら、馬、人、そして太陽が、時が、落下する。
落ちていくその中にきらめく光。
生きている時間は落下のあいだに、あわく激しくまたたく物語なのかもしれない。
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by higurashizoshi | 2009-03-16 22:50 | 観る・読む・書く・聴く | Comments(2)

タタ14歳になる

思えば遠くへ来たもんだ…という歌があった気がする。ふと見ると、もう私とほぼ同じ背丈のすらりとした娘さんがいて、それがタタなのだった。昨日、タタは14歳になった。

幼いときからずいぶん苦渋の多い道を歩いてきたこと、もっと楽に生きてこられる道はなかったんだろうかと、親として何度も考え考えしてきた。
この一年半の長い冬の季節を越えて、またひとつ殻を脱ぎすてたような今のタタを見て、振り返ってばかりいるのはやめて、私も前を向いていこうと思う。
タタはタタの特性と、経験をもって、その個性をたわめてしまわない生き方を模索していってほしい。私はその手助けを少しずつしながら見守っていくだけ。

昨日はコトブキも東京から戻って、そろって誕生祝いをした。
ミミといっしょに作った、焼きたての自家製酵母パンが大好評!
あやしげな茶色い飲み物は、りんごの皮ときび糖入りの紅茶を炭酸水で割った、自家製アップルティーソーダ。タタいわく、「テムズ川の色…」。ほんまかいな?

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ケーキも作りましたぞ。
クリームはミミがていねいに、ていねいに全部塗り、プレートは板チョコの裏にデコペンで苦労しながら書きました。写真がちょっと暗いけど、このように。

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13歳はまだまだ子どもという感じがするけど、14歳となるとぐっと印象が変わるような。
自分の14歳を振り返ってみると、今のタタのほうがはるかに大人びているなあと思う。
笑顔で迎えられた誕生日。タタほんとにおめでとう。
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by higurashizoshi | 2009-03-13 17:48 | 雑感 | Comments(10)

ドクター・アーハー

ちかごろ身辺雑記が多いのだけど、今回は健康診断の話。
最後に全身的な健診を受けたのは、たぶん15年くらい前、当時働いていた会社の社員健診を受けたときだったと思う。それからいろいろなことがあり、自分の健康状態にかまっちゃいられない年月が過ぎてきた。
いや、それは少し言いわけかもしれない。強制されない限り、私は自分の体を調べたりしないタチなのだ。ケガは数知れずだけど大病をわずらったことがないから、大丈夫だろうと高をくくってるところもある。それにこの十数年、家族のためにさんざん各種の病院に行ってきたから、自分のためにまで行きたいとは思わない。近づきたくない。それが本音だった。

さて、今回ひょんなことからひさびさに健診に行くことになった。ひとつにはタタが「おかあさん長生きしてね。すぐ死んじゃわないように調べてもらって。」とうれしいのか悲しいのかわからないことを最近何度も言ってきたからだ。
そして市からのお知らせを見ると、予約すればうちのすぐ近くの総合病院で健康診断を受けられるとわかった。
ここはひとつ人生の区切りとして(?)受けてみることにするか。そう思ったのだった。

受けたのは身長・体重・血圧など基本的な測定と血液検査、あとは肺のレントゲンと問診という簡単なものだった。それにしても身長・体重だって測るのはいつからぶり? というくらい自分の体に無関心な私。そして驚いたことに、身長が伸びていた! 最後に測った記憶より1センチ以上も。限りなく成長を続ける私…体重も伸びていたことはいうまでもなく…まあでも、一年以上もほとんど家の中だけで生活してたんだから少しくらい増えても当然、と。

採血の前に問診があった。
名前を呼ばれて行くと50過ぎくらいのドクターが椅子を勧めてくれる。
「あ、どうぞ、どうぞ。アーハー」
アーハー?
「えっとえっと、身長これですか。体重ね、あと3キロくらい減らした方がいいですかな、アーハーハー」
どうもドクターは「アーハー」というくせがあるらしかった。
「何かこれまで病気されたことは、アーハー、ありますかね」
(アーハー、病気といえば、)と私は頭の中で言った。「特にないですけど…虫垂炎ぐらいですねえ」
「アーハー虫垂炎ね」
ドクターは問診票に小さい字で「虫」と書いた。
ところがそこで手が止まり、なぜか「虫」の字の横をドクターはぐじゅぐじゅとペンで塗りつぶしている。ん? ドクターは物思いにふけっているのだろうか。なぜか小さく緊張する私。
それからドクターの手がすばやく動き、くちゅくちゅっ、と何か書いて、問診票は次の瞬間に裏返されてしまった。
今っ! なんて書いたの、ドクター…
「運動はあまりされてないんですかね、アーハー、毎日少しでも外を歩くとか、アハハー」
アハハー、外に行けなかったんです、世の中そういう人もいるんですよ。そう思いながら、問診票を見たくてたまらない私。
でも結局、それは裏返されたままだった。「ま、ま、特に問題はないようですから、アーハーハー」と問診終了。ああ知りたい。「虫」の次にはなんて書いてあるんだ?

採血の部屋に行くと、歌のおねえさんみたいな雰囲気の看護師さんが「はあい、どうぞ」と迎えてくれた。おねえさん、私の左腕の袖を上げて、針の入りそうな血管を探す。
私は皮膚が薄いのか、血管はすごくよく見えるのだけど、昔から注射針が入りにくい。なんとなーくいやな予感はした。
「はい、じゃここにしますねえ」とおねえさんは朗らかに宣言して、ぷすりと針を刺した。
「あら」注射器に手ごたえがないらしい。「すみませんねえ」と言っておねえさんはそのまま、ぐり、ぐりと針の先を動かして血管をつかまえようとする。「よし」自信にみちた声でおねえさんは注射器を引っ張るが、また空振り。
「うーん」おだやかな顔の眉間にしわを寄せて、さらにぐり、ぐり、ぐりと針を差込み、動かし…、押し進め、動かし…
「ごめんなさいねえ」とおねえさんはにっこり微笑んだ。「右腕にしましょうね」
―というわけで、結局左腕の内側に穴が二つ、右腕に二つという状態で採血室を出た私。
子どものころだったら泣きそうだっただろうけど、大して痛いとも思わなかったのは鈍感になったから? いや、人生において、こんな痛みなんて実に実にちっぽけだってわかったからだ。

そのあと、またまたいつからぶりかわからない肺のレントゲンを撮り、コースは終わった。
廊下のソファで会計を待ちながらぼんやりしていたら、さっきの問診票のことがまた浮かんできた。
そういえばあのドクターの左手薬指には銀の指輪がはまっていたなぁと思い出す。
仕事を終えたドクターは家に帰って玄関をあける。家族が「おかえり」と出迎える。
鼻をひくひくっとさせてドクターは言う、
「今夜はカレーかな、アーハー」
…いや、そんなはずはないな。決まりきった問診を繰り返すという退屈きわまりないルーティンワークの中で、彼の「アーハー」はリズムを刻む《鎧》なんだ、たぶん。不特定多数を相手にする仕事の現場で、自分を守ってくれるもの。
それにしても、それにしても、「虫」のあとにドクターは何て書いたんだっ!?

健診の結果はじきにわかるのかと思ったら、通知が届くまで2ヵ月近くかかるそうだ。
受け取るころには健診を受けたことすら忘れてるだろうか、5月の私は何をしてるだろう。
そのころになって要精密検査なんていわれても面食らうだろうな。周囲は怒涛の混乱でも自分には重大事は起きないという、私の人生のルールが変わるなんてことはあるのだろうか。
ま、受けるもんは受けたんだし、あとは風にまかせるとしよう、アーハー。
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by higurashizoshi | 2009-03-07 12:52 | 雑感 | Comments(7)

ひなまつり

冷え込んで雨も降り出した、桃の節句。
朝からミミが何か作ってるなあと思ったら、こんな「くまひな」ができていた。
このくまたちは、いつもトイレの窓にいて、いろんなポーズをとってる。クリスマスのときはサンタ服を着せられていた。おひなさまになったのは初めて。
携帯カメラではうまく写らないけど、細かいところまでよくできているんですよ。
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さて、ひなまつりメニューということで、これまでちゃんと作ったことのなかった、ちらし寿司に挑戦してみた。
酢飯をつくり、にんじん、しいたけ、れんこんを甘辛く炊いたのと、いりゴマを入れて混ぜて。
錦糸卵、ゆでた菜の花、えぴ、かつおのたたきをのせて、完成。
まだまだ自由に買物には行けないので、材料の調達に苦労したけど、それだけにできあがると満足、満足。
写真では実物より顔色がよくないのが残念だけど…味のほうもなかなか(自画自賛)。
「しいたけ苦手だったけど今はだいじょうぶ。」とタタ。
おだやかなひなまつりの一日でした。

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by higurashizoshi | 2009-03-04 11:34 | 雑感 | Comments(4)

姫路へ

一年何か月ぶりかで、姫路に行った。
以前は、明石ではじめた「あそぼうかい」の姫路版に毎月、お城前の公園に行っていたし、ホームスクーリング家庭のネットワーク「HSNひめじ」の月一回のサロンにも参加していた。姫路はタタとミミの親友が住んでいる町でもあり、なじみ深いところだった。
明石から新快速で、25分ほど。乗ってみればけっこうあっという間で、ああこんなものだったっけ…と思う。
姫路の駅は大規模な改装が進んでいて、ひさしぶりに来た私たちは浦島太郎状態。なんとか地上に出て、見知ったバス停にたどり着いた。駅前の大通りのかなたに眼をやると、小さく姫路城が見える。また会えたねえ…と心でつぶやいた。
目指すKさんのお宅まで、バスで10分あまり。「HSNひめじ」のサロンは、しばらくお休みしていたのがちょうど先月から再開されたところで、Kさんちのかわいらしいリビングルームと和室は20人近い子どもと大人でいっぱいだった。

「やっと会えたわね」とKさんがハグしてくれたとき、長い時間が流れたことが不思議な気がした。タタとミミは和室で子どもたち同士で遊び、大人はリビングでいろんな話をする。
手作りのいちごのロールケーキを食べながら、生クリームはやっぱり「よつ葉」よねえ、とか、発達障害と特別支援学級の話、学校とのつきあいの体験談、世界には自分と似た人が3人いるんやて、ほんまかなあ? とか、子どもが家でどんなふうに学んでいくかという話…。
大人の輪に入っていた17歳のAちゃんはデモクラティックスクールに行っていて、自分が書いている小説の話をしてくれた。作曲も好きでよくピアノを弾いてるそうだ。

私は、以前ならあたりまえのようにしていた《大勢の人といっぺんにしゃべる》というのを、自分がいかに長いことしていなかったか、よくわかった。前後左右の人がいろんなことをしゃべっているのを聞いて、キャッチして、話に入って、というのはずいぶんテクニックがいることなんだな。ちょっとぼうっとすると、いろんな人の話し声が頭の中で交錯してワンワンして何がなんだかわからなくなってくる。
タタがたくさんの音や声の重なりを苦痛に感じることや、聞きわけて対応するのがむずかしくしんどい気持ちが、少しだけわかった気がした。
この一年半ちかく、私はほんとうに家族以外の人のいない世界に生きていたんだな、と実感した。

それでも、この日は楽しかった。タタもミミも元気だったし、私もたくさんの懐かしい人に会えて、いろんな話を聞けた。
帰路、タタは電車がだいじょうぶだろうか、と思ったけれど、車内が意外に空いていたこともあって、スムーズに帰ってこられた。
少し前なら、こうやって出かけたらどっと疲れるのはタタだったのに、今回はタタは帰宅後も元気で、私の方がへろへろで、晩ごはんを作って食べたら力尽きてしまった。
「ああ…うちは静かでいいなあ…」チャチャと寝っ転がって天井を見上げていると、あんなに外に出たい、人と会いたいと思い続けていたのに、どうやらこの間に私の体質は変わっちゃったらしいぞと改めて思った。

ぼちぼちと、リハビリということか…。
いや、新しくもう一度、外の世界とつきあいはじめるという感じかな。
半分眠りに落ちながら、それはなかなかいいなァと思い、私はいつしか幼い子のようにコトンと寝入った。
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by higurashizoshi | 2009-03-01 09:12 | 不登校とホームスクーリング | Comments(2)

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