ひぐらしだより


人生はその日暮らし。  映画、アート、音楽、フィギュアスケート…日々の思いをつづります。
by higurashizoshi
プロフィールを見る
画像一覧
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30

捨てる神、拾う神(その2)

さて、寝込んで4日目。ようやくオランウータンになりたいと思わなくても、なんとか布団から起き上がれるようになってきた。しかし起きてみると腰はガラスのようにもろく痛んで、その上に上半身がぐらぐらしながらようやく乗っかっているごとき頼りなさ。初めて階段を降りて一階に行ってみるのに、えらく大がかりな決心がいった。
この日、姉夫婦が私をスペシャルな鍼灸院に連れて行ってくれることになっていた。姉の夫パルさんは長年の腰痛持ちで、数年前には椎間板ヘルニアの手術もしたのに、術後も二度もぎっくり腰になったという聞くだけで痛い経験の持ち主。そのとき助けてくれたのがその鍼灸院だという。
何でも、看板もないふつうの民家で、口コミの患者しか診ず、たちどころに痛みを取ってくれて、しかも料金は安いという。ブラックジャック…? しかしなんだか怪しくないかい? もしパルさんが実際にそこで治療を受けて、「もう帰りはスタスタと…」と本人が話すのを聞かなかったら、きっと尻込みしていたと思う。

姉夫婦が迎えに来て、パルさん運転の車に乗り込んだ。となりの神戸市内に入って10分ほど走り、住宅地の奥深く、細い細い道を入りこんでいった先にその家はあった。知らなければまったくわからないような場所だし、目印になるものも何もない。途中、車の振動や道路のでこぼこにも腰が痛んでつらかったが、目的地に着くと好奇心がむくむくしてきた。はたして本当にこの痛みがたちまち消えるのだろうか?
小ぎれいな玄関を入り、奥の部屋に通された。もちろんソロソロとしか歩けない。
「こんにちは」と明るい声に迎えられて見るとサングラスをかけた細身の先生が立っている。「大変でしたねえ」と私の説明を聞きながら、治療台に腰かけさせ、体のあちこちをすばやく触診する。「筋肉がぜんぶガチガチになってますね」と先生。そりゃあそうです、ろくに眠れない痛みでもう体中に力が入りまくりで、自分でもこんなに筋肉がかたまるもんかしらって状態なのだ。

なんとか治療台にうつぶせになると、腰の上の方、ウエストの背中側に先生はすばやく鍼を刺していく。かなりの本数。鍼は以前の腰痛で経験済みなので怖くはない。そして先生は治療台の近くにある、音楽のミキシング用の機械みたいにダイヤルがいっぱい並んだ重厚なマシンをいじり始めた。ドクンドクン、ドム、ドム、ドム…なんだか鍼の刺された部分の奥が振動し、があっと熱く痛くなってきた。
「こ…れは、なにをやってるん…ですか」とようやく聞くと、
「電気です」と先生の元気な答。つまり、鍼につないだ線から電気を通して、直接筋肉をほぐしていってるらしい。
このかなり激しいドムドム治療を数十分続けながら、先生が語ってくれたところによると、ぎっくり腰そのものはごく小さな神経の痛みで、その周囲の筋肉がその痛みや緊張で固まり、さらにその周りの筋肉が…と悪循環を起こしていくことで激痛のメカニズムができるというのだ。
「だからその筋肉をほぐしてやれば痛みのほとんどは取れるんですよ」と先生はケロリと言う。んん、そんな単純っていうか直球な話なのか? じゃあ世の中の腰の激痛で苦しむ人は筋肉をほぐせば痛みから解放されるってこと? ほんまかいな…
その間も先生は私のふくらはぎや足裏を両手でほぐしていきながら、
「いやあ、回復力のある、いい筋肉してますねー」としきりにほめてくれる。ドムドム攻撃を受けているウエスト部分は、だんだん暖まり、気持ちよくすらなってきた。
今後また激痛におそわれないようにするには、何よりも冷やさないこと、長く同じ姿勢をとらないこと、毎日足首の運動をして血流をよくすることなど、先生はいろいろ具体的に教えてくれる。なんでも、ふくらはぎは《第二の心臓》とも呼ばれてるそうで、ここをピストンとして血流が上がっていくと全身の状態がよく保たれるのだとか。ほおぉ、ほおぉ…

「はい、終わりました。どうぞ、降りてみてください」
うながされて、そーっと体を起こす。治療台から両足を下ろし、立ち上がる。歩いてみる。
あれ、あれれ? さっきまで痛みの点の上でぐらぐら揺れてた私の体は? ふつうにすうっと歩けるこの感じはなんなの?
痛みがすべてなくなったわけではない。でも、この治療台に乗る以前とは、まったく別の肉体。動ける。怖くない。自分の体がやっと戻ってきた、そんな実感。
なんとも魔法にかかったような気分で先生にお礼を言うと、
「僕ね、ぎっくり腰って大好きなんですよ。悲鳴を上げながら担ぎ込まれてきた人が、ぴんぴん歩きながら帰っていくのを見るとうれしくて」とニコニコ。またひとり、先生の喜びのもとが増えたということか…。
そして支払いをするとき、あまりに安いので、つい「ほんとうにこんなお値段でいいんですか?」と聞いてしまった。すると先生、
「僕、有名なスポーツ選手もたくさん診てるんですよ。そういう方たちからはたっぷりいただいてますから」とにやりと笑った。…正真正銘、ブラックジャック!

その後数日、多少のリバウンド的痛みも起きつつも、ともかく私は日常生活に復帰した。
劇的に復帰したので、しばらくぼーっとしていた。もちろんまだまだできない動作はあるし、車の運転をちょっとしたらアクセルを踏んだ姿勢で体が固まりそうになった。
でも、風前のトモシビになっていた東京行きも、これでまたしっかり灯る火になったわけだ。ブラックジャック先生の申しつけ通り、新幹線に乗るときはしっかりカイロを数枚貼りつけ、ときどき立ち上がって通路をぐるぐる歩くことにしよう。
魂もへたるようなことが続いたこの数年のあとで、ようやく実現する旅。それがポッキリ、もとい、ぎっくりと腰を折られてとりやめ? という事態から、また浮上。
ああ忙しい私の人生。あとは息をひそめて出発を待とう…。
[PR]
by higurashizoshi | 2009-11-29 17:27 | 雑感 | Comments(4)

捨てる神、拾う神(その1)

さてそろそろブログの更新をしようと思っていた矢先のこと。
生涯4度目のソレが、ある朝突然やってきた。
前日、姫路の書写山というところ(トム・クルーズ主演の『ラスト・サムライ』のロケ地)に紅葉を見に行って、帰りに登山道をうっかり徒歩で降りたのがまちがいのもと。思いがけず、怖いくらいけわしい道で、しかも下り。もともと強くない腰にガンガンこたえて、これはいけないなあ…とは思っていた。

そして翌日の朝。なにげなく起きて、朝刊を取りに出て、玄関先でちょいと物を拾い上げようとかがんだあと、「う?」
がががががぁーと腰に激痛の波。まさか、いかん、やばい、そんな、と思いながらとにかく玄関のドアを閉め、階段を上がり、上がり、…痛いぞ、来たぞこれは、だめかもと思いつつやっとのことでタタとミミを起こした。
「起きてー。ぎっくり腰になったみたい」
びっくりして目を覚ました二人にすべてを託し、そのまま布団へずるずる…ばったり。
そのあと丸二日は、眠れないほどの絶え間ない痛みとの闘いで、過去に経験があるとはいえ、正直まいった。激痛のせいで寒気がする、とか、痛さのあまり悲しくなる、とかいうのはひさしぶりの経験だった。
トイレだけにはかろうじて起きたけれど、そのたびに相当の決心がいる。布団の上に座れなくて、両手をついてうずくまっているときには、
「ああ、私の腕がオランウータンみたいに長かったらどんなにいいだろう。オランウータンはいいな、オランウータンになりたい…」
と真剣に思った。あとでその話をしたらタタとミミはけらけら笑っていたが。

私が新型インフルで寝込んだら、という想定で子どもたちにいろいろ話もし、ミミの家事の腕もあがっていたのが思わぬところで役に立った。食事作り、洗濯、ネコたちの世話、ぜんぶ協力して二人でやってくれた。私は二階からまったく降りられず布団に寝たままなので、ときどき聞かれたら指示を出すくらいで、一日三回、子どもたちがお盆にのせて枕元に運んでくれる食事をありがたくいただいた。
食べるのは横になったまま、腹ばいにもなれないのでひたすらちょこちょこと口に運ぶのである。味噌汁もお茶も、曲がるストローで飲む。口の端からこぼれるわ枕は汚すわ、体を少しでも動かすと激痛は走るわ…で必死の食事だったけれど、不思議なくらい何もかもがくっきりと美味しかった。

私が寝込んだのを知って親しい人たちからの差し入れもあり、それにくわえてタタとミミが作ったポトフや野菜のごまあえ、こんがり焦げ目のついた焼き魚、かために炊けたごはん、どれも体にじわっと力づよく入ってくる。なんとありがたいことだろう。タタも私の世話ができるくらい元気になったし成長した。捨てる神あれば拾う神あり、じゃないけどものごとには必ずつらいことの裏によいこともあるもんだ…と思いながら、しかし、しかし痛いのはどうしようもなく痛い。
そして最初の瞬間から頭にはりついているのは、あと二週間もしないうちに出発する予定だった東京行き。数年ぶりに実現するはずの泊りがけの旅が、この腰のおかげで風前のトモシビになって揺れていることだった…。
[PR]
by higurashizoshi | 2009-11-26 16:06 | 雑感 | Comments(3)

ラースと、その彼女

d0153627_21304615.jpg2007年公開 アメリカ
監督 クレイグ・ギレスピー
出演 ライアン・ゴズリング エミリー・モーティマー ポール・シュナイダー パトリシア・クラークソン


片田舎の小さな町に暮らす青年ラースは、寡黙で人づきあいが苦手。いつもひとりで過ごし、恋の気配すらないラースを、兄夫婦は心配していた。
ところがある日、ラースが晴れやかな顔でやって来て、彼女を紹介するという。兄夫婦は大喜びでラースとその彼女を夕食に招待するのだが、その夜、夕食の席でラースのとなりに座った《彼女》を見て兄夫婦は驚愕する。それはどこからどう見ても人形だったからだ。
自分で購入した等身大のリアル・ドールを、ブラジルからやってきた実在の女性ビアンカだと紹介するラース。朴訥な兄は「弟が狂った」とパニックを起こし、優しい義姉はラースを傷つけないため、なんとかその場をつくろおうとする。こうして、ラースとその彼女をめぐる物語が幕をあけた…。

『ラースと、その彼女』は、人形に恋した純粋な青年というファンタジックな物語の体裁をとりながら、心の病などで《別の現実》を生きる人に対して周囲はどう接していくことができるかを語る、重いテーマの作品だ。
人形を実在のビアンカだと信じきっているラースは、熱烈に彼女を愛し、かいがいしく身の回りの世話をする。義姉は一計を案じ、「ビアンカの体調管理のため」と偽ってラースを医者に診せることに成功する。洞察力のすぐれた女性医師は、人形のビアンカの血圧を測りながらラースの心の状態を観察するという離れわざ(!)を演じ、以降、彼女はラースとビアンカのすぐれた理解者になる。
医学的にみれば「妄想」であっても、ラースにとっては必要な現実を無意識に作り上げているのだから、極力彼に合わせてあげるようにと医師に言われ、兄夫婦はこの《ラースの現実》に寄り添うことを決心する。つまり、人形をビアンカという、ラースの大切な恋人としてあつかうことにするのだ。そして教会や近所の人々にも事情を説明して協力をもとめ、小さな町はしだいにビアンカを受けいれはじめる。ビアンカは教会で賛美歌も歌うし、美容院でカットもするし、病院のボランティアにも行くようになる。
こうした背景には、ラースの周囲には両親の代からなじんだ家族的なコミュニティがあり、その中で彼が、引っ込み思案だが柔和で優しい青年として親しまれていたことがある。もちろん、ビアンカを連れ歩くラースを奇異の目で見る人々もいるのだが、けしてラースはコミュニティから排除されることはない。

物語は分析的ではなく、やわらかな雰囲気のなかを進む。ビアンカとの恋を周囲に受けいれられたラースは、生涯感じたことのなかった幸せにひたる。それは観ているこちらも胸があつくなるほどだ。そして、なぜラースはビアンカという《現実》を必要としたのかという、物語の大きな枠組みはさりげないかたちであらわれてくる。
冒頭のシーンからラースがいつも身につけている手編みのショール。
臨月まぢかな優しい義姉の、細い肩と大きなお腹。
やがてラースが選びとるもの、そのために越えなければならない痛み。
物語の幕切れのあと、なんともいえないせつない、でも温かい思いが胸の奥にしみていった。

幼い子どもが人形やぬいぐるみを生きているように扱い、それを周囲にも強いるのはごく普通のことだ。痛いって言ってるよ、とか、この子にもごはんあげて、というふうに。周囲の人はそれをほほえましく感じ、子どもの感性に合わせてあげることをいとわない。
それなのに、ラースのような大人が同じことをすると、それは異常な行為になり、排除されることになる。けれど、それがその人の《現実》であるのなら――周囲とはちがう、《別の現実》ではあっても――周囲がそれに寄り添っていくことはとても大切なことなのだと思う。《現実》を否定されることは、その人そのものが否定されること。私はこの映画を観ながらいつの間にか母のことを考えていた。
もの忘れが進んで、母はしだいに、忘れたことをおぎなうために《別の現実》をこしらえるようになった。私がプレゼントしたものを、誰かにもらったけどいらないから、と私にくれたりという、まだまだささいなものだが、ときどきぎょっとし、悲しくなる。そしてそれは視点を変えれば嘘や作り話にみえるから、ともすれば母に対してマイナスの感情をもつ種になってしまう。でも母にとってそれが《現実》で、だとしたら私にできることはそれに寄り添うことだけだ。この映画は、そんなことにもあらためて気づかせてくれた。

こまやかな脚本のすばらしさとともに、ラースを演じたライアン・ゴズリングはじめ自然で深みのある役者たちの演技のアンサンブルが、とても心地よかったこともつけくわえたい。そして最初はグロテスクにも見えた人形のビアンカが、少しずついきいきと愛らしく見えてくることに気づいたとき、私もこの町の人たちと同様、《ラースの現実》の魔法にかけられていたのだと思う。
[PR]
by higurashizoshi | 2009-11-10 21:40 | 観る・読む・書く・聴く | Comments(4)

ミミ12歳

やたらと忙しく、アップがすっかり遅くなりましたが、
ミミの誕生日はハロウィーン。
いつのまにやら12歳になったのです。
d0153627_17283477.jpg

この日は近くのレストランでディナーということになってたので、お昼ごはんは家で作るけど、何がいい? と聞いたら…ミミのリクエストはこれ。
全部手作りハンバーガー!
全部手作りったって、肉は作ってませんので念のため。

バンズ、焼きまして。
d0153627_1728555.jpg











牛肉を包丁でたたいてミンチにして、パティをつくり、こんがり焼いて、
レタスとトマトとチーズをはさみました。
お店のみたいにきれいにできなかったけど、ジューシー&ボリューミー!
ミミは大満足してくれたよう。よかったよかった。

d0153627_17322261.jpg












この飾りは、ミミが自分の誕生日とハロウィーンを祝うため、前から作っていたもの。
なかなか凝ってる。d0153627_1736945.jpg












12歳になったミミは、なんだかすっかりおとなびて、まぶしい感じ。
近頃はとにかく映画が大好きになり、プレゼントのリクエストはこんな渋いものでした。d0153627_1740494.jpg
《ヒッチコック・シグネチャーコレクション DVD6枚組》
しばらくはミミといっしょにヒッチコック漬けになりそう。

無事に元気に誕生日を迎えられたこと。
毎年のことながら、ほんとうに天に感謝です。
[PR]
by higurashizoshi | 2009-11-06 17:45 | 雑感 | Comments(6)

フォロー中のブログ

明石であそぼう! たこ焼...

最新のコメント

bikegogoyさん ..
by higurashizoshi at 14:59
いやー、楽しかったです南..
by bikegogoy at 22:38
伝わってきます。なんてい..
by まにまに at 10:40
まにまにさん 読んでく..
by higurashizoshi at 22:45
先輩、すごい旅をしたんだね。
by まにまに at 18:27
おはようございます。 ..
by Disney 鴨 at 10:36
Disney 鴨さん ..
by higurashizoshi at 01:15
こんばんは。ひぐらし草子..
by Disney 鴨 at 20:22
Disney 鴨さん ..
by higurashizoshi at 08:28
こんにちは。 男子SP..
by Disney 鴨 at 17:05

検索

ファン

ブログジャンル

映画
ウィンタースポーツ