ひぐらしだより


人生はその日暮らし。  映画、アート、音楽、フィギュアスケート…日々の思いをつづります。
by higurashizoshi
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フィギュアスケート国別対抗戦 (その2)

国別対抗戦、アイスダンスはトップ争い2組以下もきらびやかなラインナップだった。
女性が鼻を骨折していたにもかかわらず手術を延期、世界選手権に続き銅メダルとなったフランスのナタリー・ペシャラ&ファビアン・ブルザ。
ベテランながら今一歩のところで世界のトップの中に入れずに来た彼ら、今シーズンはヨーロッパ選手権でついに金メダル、そして世界選手権でも悲願の表彰台に立った。
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ジュニアからシニアに上がって2シーズン目にして早くもロシアのトップカップルになったエレーナ・イリニフ&ニキータ・カツァラポフ。
ソチの星、とロシアで期待される若い二人。まだまだ荒削りだけれど、才能・容姿ともに恵まれたスケールの大きなカップルで、これからが楽しみ。
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そして私が大好きなカップルのひとつ、イタリアのアンナ・カッペリーニ&ルカ・ラノッテ! とにかくキュートでなめらかで、この二人の滑りを見ると幸せな気分になる。フリーダンスの「道」はオリジナルとは別の一編の映画を観るようだ。
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世界選手権4位だったカナダのウィーバー&ポジェ組の、今シーズン一番感動的だったプログラムがここで見られなかったのは残念だけれど、世界のトップカップルを詰めこんだ豪華幕の内弁当のようなぜいたくな国別対抗戦だった。

そして幕の内弁当の中ではとっても目立たないところにいたけれど、書いておきたいのはリード組のこと。
弟クリスがNHK杯のフリー直前練習中に、アメリカのカップルと激突。右足指を裂傷、骨折する大ケガを負った。この負傷はなかなか完治せず、その後の今シーズンの試合は次々欠場、全日本にも出られなかった。ようやく出場した世界選手権も、やはりケガが響いてフリーダンスに進めず終わった。
今もクリスは治療途中、痛みとの戦いが続いているというのに、さらに国別対抗戦に出場したリード組。本人たちの意向とはいえ、その一番の理由は、要するに彼らが欠場したら代わりになるカップルが日本におらず、国別対抗戦への出場を日本チーム全体が棄権することになるからだ。
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クリスとキャシーの滑りはエネルギッシュで、特にフリーダンスはとても素晴らしかった。
でも演技直後にクリスが顔をしかめ、右足を引きずりながらキャシーに支えられてリンクを降りる姿はなんともいえず痛々しかった。
NHK杯でクリスと衝突したのが、私が特に好きなリン・クリンクライラット&ローガン・ジュリエッティ=シュミット(名前が長い!)というアメリカのカップルだったので、余計に複雑な気持ち。彼らはその後クリスのケガをとても心配しているというが…。
直前練習はシングル選手同士でも時には事故が起きるのに、リンクに同時に5組も入るカップル競技は本当に危ない。何とかやり方が変えられないものかと思う。

そして今回のクリスのけなげすぎる努力を目の当たりにして、ソチ五輪から始まる団体戦への懐疑的な気持ちはいっそう強くなった。
個人競技ならば責任はその選手が負えばいい。とはいえ、それでもオリンピックとなれば国を背負って出場しているという重責がある。それが団体戦となれば、選手にかかる負担は今よりどれほど重くなることか。私には、フィギュアスケートという競技にそうした形がそぐうとは思えないし、そんなふうに選手への負担が増すことでフィギュアスケート競技全体の質が高まるとも思えない。むしろ逆なのではないか…と思う。

うーん一体誰が団体戦の導入なんてものを推進したんだろう?
躍進著しいペアの高橋成美&マービン・トラン組も、トラン選手が日本国籍を取る方向に動くと報じられている。ごく若い時期の競技生活のために、後戻りのきかない一生の選択をすることになるわけだし、それが日本のメダル獲得(特に、団体戦も含めた)のためだとしたら何だかすごくモヤモヤするなあ…。私がモヤモヤしたってしょうがないけど…。

今シーズンの競技の見納めとなったこの国別対抗戦では、男子では高橋大輔選手のショート・フリーとも最高の演技が観られた。世界選手権でも凄かったのに、その後の試合でここまで完璧に、いやむしろさらに進化したプログラムを見せてもらって正直、ボー然としてしまった。
解説の佐野稔さんが、
「ショートも完璧、フリーも完璧、来年どうすんのって感じですよね!」
と言っていたがまさにそんな感じ。来年これ以上のものをどんなふうに見せるつもりなんだ?と心配になってしまうほど。
ただしこの国別で、今のところ到底追い抜けない状況だったパトリック・チャン選手を上回って一位になったことについては、たぶん高橋選手本人は決して納得していないと思う。
チャン選手は明らかにジャンプが不調だったし、まさにこれ以上ないほどアウェーな環境の中での戦いで、正直、点数の出方も日本の選手に対して甘いと感じた。

ブライアン・ジュベール選手が世界選手権に引き続き好調でシーズンを終えられたのもうれしかったし、女子では鈴木明子選手がやっぱり世界選手権に続いて3回転×3回転を決めて点数的に日本チームを金メダルに押し上げた。
27歳にして進化し続けている鈴木選手、今シーズンはグランプリシリーズから始まってすべての出場試合でメダルを持ち帰っているという偉業。それなのにメディアでの注目度が低いのは本当に残念だ。彼女についても来シーズンのプログラムがとっても楽しみだし、まだまだ成長する姿が見たいなと思う。

それにしても、これでシーズンは本当に終わってしまった。
あとは秋まで、大量録画した今シーズンの競技をおさらいするか、ない財布をひっくり返してアイスショーを観に行くか、ネットで各選手の新プログラムの情報を探すか、ぐらいしかないんよねえ…。
寂しいけど、選手たちがオフシーズンを充実して過ごし(そういえば羽生くんはブライアン・オーサーにコーチ変更したという。どう変化するかな?)、5ヶ月後にまた新しいシーズンでたくさんのプログラムが観られることを楽しみにしよう。

というわけでフィギュアの話題に長々おつきあいくださったみなさんに深謝。
(とかいってまた書くと思いますが)
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by higurashizoshi | 2012-04-30 01:05 | Comments(2)

フィギュアスケート国別対抗戦 (その1)

国別対抗戦、一昨年の1回目は単なるイベントだと思っていた。いちおうISU(国際スケート連盟)公認の競技会とはいえ、日本で開催されるお祭りのような感じで、応援合戦が楽しいという印象くらいしか残っていなかった。
ところが今回の国別対抗戦はずいぶん様相が違っていて、その第一の理由は2014年のソチ五輪から、フィギュアスケート競技に団体戦が採用されることが決まったから。
つまり体操競技などと同じように、個人で争うほかに国同士がメダル争いをすることになるのだ。どうしてそういう流れになったのかは知らないけれど、愛国心の薄い私としては「国の威信をかけて」なんて言われると「もう従来の個人競技でも十分国の威信を背負わされてるのに、そのうえ?」と思ってしまう。「がんばろう日本!」って、もう十分がんばってるやん…。

ともかくもそんなわけで、今年の国別対抗戦は参加国全体がガラリと本気モードになっていて、選手も世界ランキング順にかなり正確に選ばれてまことに豪華な顔ぶれになり、しかもみんな世界選手権後の疲れもあるだろうに、相当ハイレベルな戦いを繰り広げてくれた。
実はこの時点でまだ世界選手権のアイスダンスを全部観終わっていなかった私。前にも書いたように実際の競技がおこなわれたのが3月26~28日。だのにJ-PORTS4での初放映は4月17日。ペアも同様の扱いで、いかに男女シングルばかり偏重されているかよくわかる。
まあ、日本のアイスダンスカップルで国際試合に通用するのはリード姉弟の一組だけ、ペアでは高橋成美&マーヴィン・トラン組だけ…という実情があるので、視聴率だけ考えたらある程度仕方ないところもあるが、カップル競技の面白さ、特にアイスダンスの芸術性や美しさなど、あんまりにも日本では知られてないのが残念すぎる。

で、ようやく4月17日からの世界選手権アイスダンスの放映をともかく録画して、ところが忙しくてまとまった時間が取れない、コマ切れに観るのは絶対イヤ、お母さんだけ先に観ないでね、あんたも抜けがけんといてや、とかまあ家族の事情なんかもあって、しかもそんだけ実際の競技から日がたってたら、もはや順位も結果も知ってしまってますやん。臨場感、ないよなあ…というわけで延び延びになり、あれ?と気づいたら国別対抗戦の日になってしまっていたというわけ。

国別対抗戦に出場したアイスダンスカップルは、カナダ、アメリカ、フランス、イタリア、ロシア、日本からそれぞれ一組ずつ。世界ランキングでその国の最上位のカップルが出場しているので、日本(リード姉弟は残念ながらランキングは低い)以外は世界のトップぞろい。今回の世界選手権での金メダルから順に6位まで(4位のカップルは1位と同じカナダなので出ていないが)のカップルがずらっと顔をそろえるという豪華さ。
特に今、熾烈に世界一の座を争っている2組、カナダのテッサ・バーチュー&スコット・モイア組とアメリカのメリル・デイビス&チャーリー・ホワイト組が世界選手権に引き続きトップ争いをすることになった。
完璧なユニゾン(二人の調和)と細部まで音楽を表現する芸術性、そしてノーブルな美しさと気品をあわせ持ったバーチュー&モイア。
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一方、スケート靴にエンジンがついていると評されるほど、驚異的なスピードとアスリート魂でアイスダンス競技の概念を塗り替えつつあるデイビス&ホワイト。
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バンクーバー五輪でバーチュー&モイアが金メダルを獲ったとき、デイビス&ホワイトは銀メダル。そのあとテッサ・バーチューの手術によるブランクの昨シーズン、デイビス&ホワイトはすべての試合で勝って勝って勝ちまくった。

テッサが復帰した今シーズンは、再びトップ争いが始まったが、それまで必ずバーチュー&モイアが上を行っていたジャッジの評価が、試合ごとに変化するようになった。表彰台の一位と二位を両カップルが行ったり来たりが続き、そして世界選手権での結果は総合4点差でバーチュー&モイアが金メダル。
今のところ、やっぱりまだわずかにバーチュー組が実力で上回っているなと思う。でもデイビス組もさらに技術力を高め、魅力的になってきているので、これからどうなるかは本当にわからない。

そしてこの2組のカップル、同じコーチ、同じコリオグラファー(振付師)、そしていつも同じリンクで練習しているチームメイトなのだ。
毎日同じリンクで顔を合わせ、談笑するカップル同士が世界一を争っているという、ちょっと信じられないような光景。上達しても、調子が悪くても、お互いすぐにわかる。そしてチームメイトとしては助け合う関係。それぞれの心の内にはどんな思いが交錯しているのだろう。
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私はどちらかといえばバーチュー組が好みで、特にバンクーバー五輪のフリーダンス(マーラーの『アダージェット』)の美しさは忘れられない。デイビス組は芸術性よりも、これぞアスリート!というべきパワーに圧倒される感じだった。
でも今シーズンのデイビス組は「こうもり序曲」で素晴らしく美しい滑りを見せたし、絶対に世界の頂点に上りつめるのだという殺気(?)すら感じる(特にメリル・デイビスの戦闘的なことといったら!)、そこがスリリングで魅力的。
逆にバーチュー組の今シーズンのフリーダンスは映画「パリの恋人」を氷上に再現したプログラムで、技巧を凝らした玄人好みの構成、相変わらず完璧な仕上がり…とはいえ、私はこういうオリジナリティのないプログラムはあまり好きではなくて、「もっと別のプログラムが見たい!」と思ってしまった。

結局、国別対抗戦の結果では、世界選手権とは逆にバーチュー組が銀、デイビス組が金メダルとなった。今シーズンで忘れられないのは世界選手権で2位に終わったときの、自分たちの得点を食い入るように見るメリル・デイビスの、冷徹で、さらに戦闘的な表情!
やっぱり闘う女はこうでなくっちゃ。ふだんの楚々とした風情のメリルとのギャップが素敵である。

(つづく)
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by higurashizoshi | 2012-04-27 00:52 | Comments(0)

さくら、さくら

寒さが続き、開花がとても遅くなった今年。
開きはじめると、一気に満開へ駆けていった。

明石公園、静かな雨の中の桜。
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須磨、妙法寺川沿いの桜。もう散り始めている。
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友人から春の贈りもの。手描きの器に黒豆ショコラ。
能登の黒大豆をビターチョコでくるんだ繊細な美味しさでした。
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by higurashizoshi | 2012-04-15 18:11 | 雑感 | Comments(4)

ライブタカハシ体験

「東日本大震災復興チャリティー演技会2012 ~復興の街、神戸から~」に行ってきた。
高橋大輔選手の演技を生で観るという夢がかなうということで、かなり緊張しつつタタとミミと3人でポートアイランドのリンクへ。

アイスショーではなくあくまで「チャリティー演技会」。売り上げはすべて被災地への募金となる。募金がなかなか被災した方たちに届いていない現状を思うと複雑な気分だけれど、少なくともこういう催しがあることで、震災を忘れず、東北に眼を向け続ける助けにはなると思う。
ショーではないのでライティングはなく素のままの会場。ここはつい先日、タタとミミが生まれて初めてスケートをしに来たリンクでもある! その同じリンクで選手たちがものすごいことをしてくれるのだから不思議な感じ。

発表されたキャストには入っていなかった荒川静香さん。まさか観られると思っていなかったのですごく驚いた。その神々しいまでの美しい滑りは心に染みこんでくるようで、思わず涙がにじんだ。トリノの金メダルの直後に引退して、本当に自分のやりたいスケートをやる道を選んだ彼女。そして今、ここまで美しいとは…とクラクラした。
現役の頃よりジャンプのキレがよくなった?と思う田村岳斗くんは会場を盛り上げたし、わが家では近い将来絶対化ける!と注目している田中刑事選手、もう期待以上の滑りでワクワクした。高橋選手の芸術性のあとを継ぐのは彼だ!と勝手に認定。
急成長中の町田樹選手も、あの楽しいエキシビションプロ(エアギターで大歓声!)をパワフルに演じてくれた。
そして今シーズン不調でフェイドアウトしていた織田信成選手、ひさしぶりの登場。テレビで観ているよりもずっとずっと柔らかい、クリームのような滑り。こんなに美しかったのか!とかなりがく然とする。ジャンプもきっちり成功して、来シーズンにつながる印象だった。
西日本の若手の選手たちが次々素晴らしい演技を続け、最後は大歓声の中、高橋選手がリンクに。

何をやるのかな…今シーズンのショートをやってくれないかな…と思っていたら、「ロクサーヌ」だった。おそらく大ちゃんフリークで相当数埋め尽くされた客席は悲鳴のような叫び。
たぶんファンの中でも人気プロなんだろう…でもショートじゃなかったな…とちょっと残念に思っていたのだが、ロクサーヌ。過去のエキシビションの映像で何度か観たことはあったけど全然違うやん? こんな凄いん? 今の大ちゃんがやるとこんなになるのか! とドンドン驚きと興奮がふくらんでいって、気がついたら完全に魂さらわれ状態。
ジャンプもすべて完璧、指先ひとつ、足さばきひとつにいたるまで官能性と情感があふれ返ってドドーンと客席に打ち寄せ、ぐわーと観客をわしづかみに引き込むものすごいパワー、これか! 今の高橋大輔を生で観るとはこういうことか! と頭まっしろ状態で凝視した。羽生くんなんてまだまだヒヨコちゃんだということがよーくわかった。

あっという間にフィナーレ。最後のあいさつでは、高橋選手はこれからもこのチャリティ演技会を毎年続けていきたいと言っていた。そうであってほしい!
そしてそのあと、出演者全員がロビーに並んで募金活動があり。
なんとこれは、それぞれ募金箱を前に置いた各出演者の前に行って、募金ついでにお話もできるという信じられないことで。
列に並びながらタタとミミと小声で「荒川さんいる、すぐそこにいる、こっこれから話すの?どうしよう何言おうわわわわ」とかなりなパニックに陥りつつ、そこは歳って取るものだなー。いざ前に立つと荒川さんとも織田くんとも刑事くんとも大ちゃんとも、短くだけどしっかりお話しできたのだった。

荒川さんが至近距離で見てもほんとに綺麗だったこと、それより何よりしっかり眼を見て話す誠実さ。「心が洗われました」と言ったら本当にうれしそうに「よかった!」と女神のような笑み。
織田くんはほんっとに構えのない人で、ふわっと自分を開いて他人を受けいれる感じだった。「なんとええ子なんや…」といきなり親戚のおばちゃんの気持ちに。
そして大ちゃんの前に行ったらさすがに緊張したものの、ソチまで続けてくれることへの感謝と、ケガに気をつけてほしいことと、あと「来シーズンはジャズとクラシックですね!」と決めつけたら、「や、まだわかんないです!」と笑っていた。

さっき氷の上であんな魔術のような世界を巻き起こしていた人が、すぐ目の前で普通に立ってるのがなんとも不思議で、いつまでもその不思議さが残った。地上から3センチくらい浮いてるような感覚で帰路についたのだった。
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by higurashizoshi | 2012-04-11 22:11 | フィギュアスケート | Comments(0)

世界フィギュア選手権2012(その2)

今回の男子フリーでは、あれよあれよと見ている間に四回転ジャンプに成功する選手が続出。
応援していたアダム・リッポン選手やジェレミー・アボット選手(なんといってもmuseの楽曲で滑った今季プログラムが素晴らしい)がミスに沈んだのは残念だったけれど、前回触れた羽生結弦選手をはじめ、ずっと不遇だったブライアン・ジュベール選手が、真骨頂の四回転はじめパーフェクトな演技だったのには思わずテレビの前で拍手! フローラン・アモディオ選手もこれまでで一番いい四回転を決め、ほぼクリーンプログラム。
そして男子フリーの最後は、ショートプログラム上位3人を残すだけとなった。今季負けなしのパトリック・チャン選手、若手の実力派ミハル・ブレジナ選手、そして高橋大輔選手。

高橋選手のことを書き出したらまたキリがないのだけど、まず昨年の世界選手権で彼に起きたこと。
フリーの演技中に靴のブレード(歯)がはずれ、中断。必死の修理ののち再開したものの、やはり感覚が違ってしまったのかミスが続き、メダルを取ることができなかった。
この悔しさが逆に、「ソチ五輪まで現役を続行する」という宣言につながって、引退の二文字にヒヤヒヤしていたこちらは胸をなでおろすことができた。
にしても、高橋選手、すでに26歳。個人差はあるものの、早い選手なら競技から退いていく年齢。すでにオリンピックのメダルも手にし、たとえばステファン・ランビエールみたいに早々とプロスケーターになって活躍する道も、彼なら保障されているはず。
そこを「ソチまで」というのは、うーん相当、漢(おとこ)だねえ…というしかない。

高橋選手はバンクーバー五輪シーズンのプログラム「eye」と「道」で、それまでからさらに進化した。で、それ以上どう進化するんだろう?と思っていたら、昨シーズンはマンボ踊りまくりのショートと、ピアソラの「ブエノスアイレスの冬」の精神性の高い素晴らしいフリーのプログラムの対比で「うおー」と言わされた。
そしていったい次は何? と思って待っていた今季のプログラム。
今季のタカハシは黒かった。何が黒いって、衣装が全部黒。ひとつのプログラムにもたくさん衣装を作る人なので、今季も競技会が進むにつれ「あ、また新調した」「あ、また新衣装」と気づき、それがどれも黒、黒、黒。しかもショート、フリーともすべて真っ黒。

原点に返る? シンプルの極みを目指す? 大人の渋さを強調? 
ほんとのところはわからないが、少なくとも今季のプログラムはそんなところがあった。
ショートの「イン・ザ・ガーデン・オブ・ソウルズ」は瞑想的な楽曲に乗せて、まるで修行僧のようにタイトな、それでいて大人の色香がムンムンというプログラムで、フリーの「ブルース・フォー・クルック」は一転してルーズなブルース。上手くない人が滑ると絶対退屈になる、渋い地味なナンバーを自在に、実に自在に料理するさまはまさに絶品!

今回世界選手権で雪辱が果たせるかどうかは、そのフリープログラムに四回転が入るかにかかっていたといえる。この日は多くの選手が成功させ、高橋選手の出番までにすでにものすごいハイレベルな争いになっていて、けして今では四回転ジャンパーとはいえない大ちゃんがここで成功できるんか? と心臓バクバクで見ていた。
今季の彼の特徴は、氷の上での落ち着いたたたずまい。この世の雑音とは遠く、自分の内側をじっと見ているような。こんなところまで来たんだね、この人は…といつも思う。

だから、演技開始のすぐあと、まるで予定されていたことのように綺麗に四回転トゥループを降りてきたとき、ほっとすると同時になんだかとても納得できる気がしたのだ。
そしてそのあとは、アクセルもほかのジャンプもまったく不安なく降り、ステップは本人が楽しんでいることがわかる余裕ぶり。ここまで音楽をつかみ、踊り、表現できる選手はやっぱりいないよなあ…不世出の人だよ大ちゃん…と改めて思う。(動画はこちら

次のブレジナ選手はショート2位発進で力みが出てしまったようで、本来のキレのいいダイナミックなジャンプが決まらず沈んだ。負けん気とガッツが裏目に出たか…来季がんばってほしい。
そして最終滑走のチャン選手。今季この人は他選手と別世界に生息しているので、もちろん四回転は2回決めるし、そのひとつは三回転とのコンビネーションだし、スケーティングなんてもうバターの上を滑ってるお人形みたい。と思ってたら最後のジャンプの前に転倒、ちょっと人間らしいところを見せてくれた。しかし、今の調子では誰がどう頑張ってもパトチャンの天文学的スコアを超えることなぞ不可能なり。

というわけで、結果はチャン選手金メダル、高橋選手が銀、羽生選手が銅となり、サプライズとしてはやっぱり羽生選手のメダルだった。フリーのロミジュリはyoutubeの閲覧数がえらいことになっているらしく、ちょっとこれからが心配である…。
女子には触れる余裕がなかったけれど、ずっと応援している鈴木明子選手が27歳の誕生日を迎えた直後にみごと銅メダルをとったのは、本当にうれしかった。あっこちゃんおめでとう。まだ引退しないでね。
浅田真央選手には、ともかくゆっくり休んでほしい。それだけ。

肝心のアイスダンスについては、今月中旬の放映を観たら書こうと思っております。
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by higurashizoshi | 2012-04-07 23:30 | フィギュアスケート | Comments(0)

世界フィギュア選手権2012(その1)

毎年、フィギュアスケートの競技シーズンは、開幕したと思ったら嵐のように時が駆け、あっという間に終わってしまう。
ウインタースポーツなのだから仕方ないが、ちょうどシーズン開幕のプロ野球が大々的に取り上げられているのに比べて、一年に一度の世界フィギュアスケート選手権なのに新聞の扱いはこんなに小さいよ? シーズンはもう終わってしまうというのに? こんなすごい試合がおこなわれたんだよ? と思ってしまう。フィギュアファンだったらみんな思うのだろう。

今シーズンの競技はあと、国別対抗戦を残すだけ。世界選手権が終わり、しばし怒涛の試合内容をリピートしつつ脱力感。ああ、終わったんだなあ。
去年は震災のため東京開催の予定がモスクワ開催に変更、時期も4月にずれ込んだ世界選手権。今年は例年通りこの時期に、フランスのニースでおこなわれた。
ただし、今年は全米選手権、ヨーロッパ選手権を生中継で放映してくれた素敵チャンネルJSPOTS4が、なんとなんと肝心の世界選手権を生中継しない! しかも録画放映は4月7日からってどうゆうこと!?
それが何を意味するかというと、開催時は地上波でしか観られない。ということは、ほぼ男女シングルしか観られない、ということ。ペアとアイスダンスは地上波放送ではほとんど無視されている(日本の選手が一握りしかいないため)。
あああ…一番待っていたアイスダンスが4月の半ばにならないと観られないとは! それまでに観たければyoutubeのちっこい荒い動画を観るしかないということだ。
ああ、ない金をつぎこんで契約してるのにJSPOTS4よ、こんなところで裏切るとは! もう素敵なんて言ってやんない!

…と、この理不尽にブーイングしつつ、地上波の放映はもちろんばっちり録画オン、かつテレビ前に女3人がかぶりつきで、ともかくも男女シングルをじっくりと見せていただきました。
なんといっても今回は男子でした。特にフリーでした。凄いものを見せていただきましたよ。

今季の最注目は17歳の羽生結弦選手。タタと同い年ということもあってジュニアのときから応援していたが、とにかくケタ外れの選手になりつつある。
去年の震災時は仙台のホームリンクで被災、自宅は半壊、その後夏にリンクが再開するまで各地のアイスショーに出ながら練習してきたという、羽生選手にとって忘れられない厳しいオフシーズンだったと思う。
被災地を背負って、という気持ちもあっただろうし、競技が始まってからはとにかく攻めて攻めて攻めまくる試合内容。この人、顔は優しくて身体は細くてクニャクニャで気が抜ける感じなんだけど、いったんリンクで演技に入ると別人化する。
特に今季のフリープログラム「ロミオとジュリエット」は彼に直球はまりプロで、あるブログで《これではジュリエットの一家全員殺してしまいそう》と言われていた(思わず納得)。
しかも四回転ジャンプの精度がどんどん上がってきて、彼のジャンプはスケールがすごく大きいのでとにかく迫力があり、かつ美しい(これは昨夏に大阪のアイスショーで実物を見ての感想。このときのトリプルアクセルの美しさは衝撃的だった)。

もちろん初出場だった今回の世界選手権、ショートプログラムは気負いが先に立った感じでいくつかミスをおかし、7位発進に。
まあいくら急成長してるとはいえ、まだ17歳になったばかりだし、初めての世界選手権だし、そんなもんちゃう? と思っていたのが大間違いだった。こやつはとてつもなく度胸と根性のある少年であった。おそれいりました。結果はなんとフリーだけなら2位、総合3位、夢の250点越え。羽生選手の細っこい首にメダルが飛んできてしまったのだ(動画はこちら)。

このフリーの内容が凄かった。会場大興奮。なんといってもジャンプ。最初に完璧な四回転を決め、次々に鮮やかにジャンプを成功。しかもそのあと、ストレートラインステップでいきなり転倒! フランスのお客さんが悲鳴をあげ、頭をかかえる! と、ロミオは直後に立ち上がり、何のダメージもなくいきなりトリプルアクセルのコンビネーションを決める! 怒号のようなどよめきと拍手。
最後の渾身のステップでは、確かにジュリエット一家が、いやジュリエットすら逃げ出しそうな(それではだめやんか…)鬼神のごとき迫力で舞い、そしてずっと課題だった、スタミナ切れで失敗してきた最後のトリプルサルコウも何とか成功させ、フィニッシュ。
ものすごいアドレナリン出っ放しの眼力ガッツポーズのあとは、突然別人化が終了。
全てを出し切った少年に戻って涙を流した。ふにゃふにゃになってコーチのところに戻って抱き合う元ロミオ。
このギャップの大きさ、実は意識してやってるんじゃないかと疑いたくなるほど。こういうところも含めて、とにかく人の目を引きつける力がハンパじゃないのである。

最後の右手を挙げて天を指差すガッツポーズは、彼があこがれているプルシェンコ選手を意識したものだと思えたし、これひそかに鏡の前でひとりで練習してたんじゃ…と考えてしまった。
リンクサイドでコーチに持ってもらうティッシュのボックスカバーが必ずくまのプーさんだったり、ドリンクのカバーがプログラムごとの衣装とおそろいで替わっていたりと、これはこだわりなのか、それともキャラクター作りなのか。私が思うのは、彼は実は非常に野心家でしたたかな作戦家であるということ。
あるインタビューで、「世界チャンピオンになるのはもちろんのこと、他の選手を突き放し続けるような選手になりたい」というようなことを言っていたのを読んで、なるほど…と思ったのだった。羽生選手はたぶん、うまくいけば世界で勝てるかもしれない、というこれまでの日本人選手の枠を軽く超えていく。そういう「予定」をすでに持っている。自分をリンク内でもリンク外でもどう「見せる」かについても、よく考えている。
いよいよこんな選手が出てきたんだな、という感慨と、これから実際にはいったいどんなふうに成長し、どこまで行くんだろうという期待と不安。しかもタタと同い年。これはもう来シーズンも眼が離せないなあ。

というところで高橋大輔選手をはじめ、ほかの選手については次回。
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by higurashizoshi | 2012-04-06 21:35 | フィギュアスケート | Comments(0)

ママ友ではなく友である

東京・群馬に行って友人たちに再会し、最後の2日間はホームシューレの全国合宿で、たぶんこれまでの合宿で一番充実して楽しかった。
ホームシューレはかつてタタとミミのために参加したのだけど、今は子どもたちより私自身がそこでの友人関係に支えられているかも。遠くにいてふだんはほとんど会えないし、考えてみれば顔を合わせてじっくり話したこともあまりなくて、メールのやりとりやホームシューレの親サイバーの書き込みで交流してる程度という人も多い。

子どもが学校に行かず育っている、そのことを積極的に「いい」と思っている。
共通点といえばそういうところ? でもいわば、みんなが電車で行くところを徒歩で、地図もなく行くという人生を選んで、それを楽しむというのは、なかなか渋い方たちではないか。そのあたりがウマが合うというか、信頼感がすーっと通うのだろうなと思う。

私自身は地元で「あそぼうかい」のつながりもあるし、「ホームスクーリングネットひめじ」でのつながりもあるし、そのそれぞれで少しずつカラーが違っていて、そしてこのホームシューレでもまた違う面白さがある。
「あそぼうかい」は多種多様な子どもと大人の交差点のような場所で、「ホームスクーリングネット」はまさにホームスクールを実践する家庭的なつながりの場。しっかりと家庭を守っている《お母さんらしいお母さん》が多い。
ホームシューレは会員も全国に散らばっていて、家庭のあり方もそれぞれで、専門職で働いている親も多く、個性的な人がたくさんいる。今回の合宿でも、元来《ママ友的社交》がものすごく苦手な私にとって、よけいな気づかいなくスッと話せる人が不思議とここには多いなぁと改めて思った。

世間一般(といっては変だけど)のお母さんたちと話すと、「そこまで自分の子どもを悪く言わんと社交できんのですか?」と言いたくなることがしばしばある。
何もできない、言うこときかない、成績悪い、それにくらべてお宅は(もしくはどこどこさんちは)いいわねー、これからが楽しみねー。
ほんとは自分の子どもなんだからかわいいだろうし愛してるだろうに、なんだかそんなこと言ったら村八分になってママ友界の座敷牢に閉じ込められちゃうかのようだ。と思うはしから身体がムズムズしてきて、早く家に帰りたくなる。

ホームスクーラーやホームエデュケーション(それにしても何か統一したいい訳語はないものか)を選択した親と話すと、こういうよけいなストレスがなくて大変気持ちがよろしいのである。
もちろん、ときにガッツのある母に出会い、子どもが学校行きつつとってもいい感じに個性的に育っていて、「おっ」とうれしくなることはある。要は自分の人生を自前で選んで自前で生きてるかどうかということなのだ。学校に行ってる/行ってないは表面にあらわれる形にすぎない。他人と比較して上か下かとやっている限り、「これでいいのだ」という平穏は得られない。

と、エラそうに言っているが私自身がこんなふうに考えるようになるのには高い高い授業料が要り、それこそ七転八倒、暗中模索、人生底なし、ディープリバーを溺れ泳ぎながら息つぎの仕方をようよう覚えて今に至るのである。
つまりそのくらいの経験をしてやっと、こんな簡単な真理にたどりつけた程度に、私は無自覚でおろかな親だったということ。
とりあえず「いい母」じゃなくても、ちゃんと「母」になれたと思えるようになったのも最近のことだ。

私の個人的にすごく親しい友だちは、独身だったり子どもがいない人がなぜか多くて、私自身そういう友と話すほうが楽だったりする。
とはいえ親として分かち合いたい感情とかもあるわけで、それだけどママ友苦手な私にとって、ホームシューレをはじめとする親同士の関係は稀有なもの。いずれ子どもたちがもっと大きくなってホームシューレを《卒業》したあとも、このつながりを続けたいね、と合宿の夜の大女子会(?)で語り合ったのがうれしかった。老後の楽しみが、またひとつ。


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by higurashizoshi | 2012-04-03 15:36 | 不登校とホームスクーリング | Comments(2)

子どもたち、親たち

3月11日に小さな集まりを明石でやったあと、下旬には5日ほど東京と群馬に出かけ、帰ってきたらミミがめずらしく熱を出した。
大きくなってからはほとんど風邪も引かず、引いても長びかないミミが、今回はひどい腹痛と何日も上がり下がりする熱でぐったりしていた。

東京から戻った直後、ちょうど去年のキャンプに参加した親子が福島からこちらに一時保養で来ていて、そのお母さんとひさしぶりにお会いして話を聴いた。被曝への不安、子どもの体調や行動をいつも緊張して見守るつらさ…。自宅の敷地内でも高い放射線量で、木のあるところへは近づけない。落ち葉も子どもに触らせられない。
それでも避難・移住はできない事情があり、この春休みも神戸に来たあとは、子どもだけ岐阜の保養キャンプに新学期ぎりぎりまで行かせるとのこと。そうやって懸命に情報収集しながら休日や長期休みをできる限り県外遠くに行かせ、子どもを少しでも被曝から守ろうとしている親たちがたくさんいる。

その一方で、今はもう圧倒的に多数の親たちが、福島で暮らし続けるために不安から目をそらし、情報に耳をふさいでいる現実を聞く。確かに、そうだろう。そこで暮らし続けるのなら、「安全」という学者のお墨付きや自治体の姿勢を頼みにし、みんなもう普通に過ごしているんだから大丈夫、という安心を共有するしかないのだから。
私がもしそこにいて、避難できない状況にあったら、不安を押さえ込み、きっと大丈夫と自分に言い聞かせながら耳をふさぐかもしれない。

ミミがようやく回復してきたころ、今度は去年のキャンプをきっかけにこちらに母子移住してきていた親子が、福島に戻ることになった。まだ若いお母さんと、5歳と6歳の女の子。
上の子がこの4月に入学なので、それを機に福島に戻したいお父さんと、強い危機感を持ち避難を続けたいお母さんとの間で何度も軋轢があり、結局お母さんが折れる形で避難生活を断念することになった。
昨日最後に彼女に会ったとき、「パパを説得して家族みんなで移住するのを目指してがんばります。私、あきらめてませんから」と言っていた。自分の頭で考え、自分の力で子どもたちを連れて福島を飛び出した彼女の強さを思った。
悔しかった。彼女は私の何万倍も悔しいだろう。

家に帰ると、やっとすっきりした顔になったミミが笑顔で待っていた。家事全般担当のミミが寝込んでいる間、よく働いていたタタが夕食の準備をしていた。
泣きたいような気持ちになって、「ただいま」を言った。


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by higurashizoshi | 2012-04-02 14:14 | 雑感 | Comments(2)

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