ひぐらしだより


人生はその日暮らし。  映画、アート、音楽、フィギュアスケート…日々の思いをつづります。
by higurashizoshi
プロフィールを見る
画像一覧
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

<   2012年 06月 ( 3 )   > この月の画像一覧

スローなブギにしてくれ

もう半月以上前の話ですが、誕生日でした。
今回の誕生日は区切りの歳ということで気合を入れて、生まれ故郷を訪ねてみたのでした。

なーんていっても、生まれ故郷というのは今住んでる町の隣の隣くらいの町で。
そこから出発して、ずいぶんいろいろ遠い土地をめぐり暮らしたあと、またその近くに戻ってきたというわけ。
とはいっても、近くても遠いのが故郷というもの。日常の暮らしの中で、ここをたずねることはなく、今回も思い出せないほどひさしぶりの訪問。

坂だらけの町の地形はそのままで、でも建物たちの姿はすっかり変わっていて、生まれ育った家ももうとっくに消えて。
でもこんな路地は昔のまま、まるで時がさかのぼるよう。

d0153627_9564181.jpg



途中でみつけたノラの子ネコたち。
お母さんは少しはなれたところで見ていた。
d0153627_95810100.jpg



子どものころ、よくおつかいに来た市場。
今はしずかに扉を閉じて、朽ちるのを待っている。
d0153627_1003993.jpg



帰り道、細い通りを行くと…
こんなものが。
d0153627_9571818.jpg



そして目を上げると…
d0153627_1012996.jpg



ほおお。

人生、この先はスローに行けとのお達しらしい。
いったい、誰が書いてくれたのだろう。
[PR]
by higurashizoshi | 2012-06-24 10:04 | 雑感 | Comments(10)

選択

クリーンで、安価で、未来志向の素晴らしいエネルギーだから原子力発電を選ぶ。
そう言い切る人は、今の日本にはほとんどいないだろう。
昨年3月の福島原発の事故以前は、あまりにも無邪気に多くの人が信じていたこと。それがくつがえされた。この国の人たちの意識は、画然と変わったのだ。
放射能に汚染された、居住不可能な土地がこの日本に生まれた。数え切れない人々の暮らしが、人生が、破壊された。汚染は続いている、食物連鎖、生物濃縮は進んでいく。
収束どころか、福島の原発は今も不安定で、放射能漏れを止める手立てはいまだにない。

それなのに、この国はまた原発を動かすことにした。安全性が確認されたという。誰もその安全性を信じてなどいないのに。
原発を動かしたい人間たちは思っている、昨年の地震はごくまれな不運だ、自分たちが生きている間にはもうそんなことは起きない。自分たちが地位を保ち金を儲けて生きている間には。
彼らは考えないのだろうか。自分たちの子どもが、孫が、新しい世代のすべての子どもたちが放射能汚染にさらされる未来について。

もう誰も、原子力発電をクリーンで安価な素晴らしいエネルギーとは言わない。
その代わりに、私たちのリーダーは、国民生活のために必要なのだという。誰もその安全を信じていないものを、私たち国民は必要としているのだという。
そうなのだろうか。そんなうつろなことを、私たちは選択するのだろうか。自分を裏切るような選択を。
私も。あなたも。


d0153627_1161711.jpg
                                榎忠「薬莢」(1991-2年)
[PR]
by higurashizoshi | 2012-06-18 01:17 | 雑感 | Comments(4)

別離

d0153627_229339.jpg2011年公開 イラン
製作・監督・脚本 アスガー・ファルハディ
出演 レイラ・ハタミ、ペイマン・モアディ、シャハブ・ホセイニ、サレー・バヤト、サリナ・ファルハディ


映画は、一組の夫婦が裁判所で離婚の申し立てをしている、緊迫した場面で幕をあける。
妻は美しく、教養がありそうだ。夫も身なりがよく、インテリ然としている。
妻は娘の将来のため、家族で他国に移住しようとしていた。そのために奔走してやっと移住許可を取ったのに、夫はアルツハイマーの父親の介護のため、移住に反対。二人は真っ向から対立し、双方が譲る気配を見せない。
イランでも離婚? 女性からもこんなに自己主張激しく離婚の申し立てが?
まずそんな驚きに軽く打たれる。

裁判所から離婚は認められないと告げられ、不穏な空気のまま帰宅する二人。家具や家電のそろった広いアパート、彼らは経済的にも恵まれた階層であるらしい。やがて妻シミンは夜間学校の教師、夫ナデルは銀行員であることがわかる。ひとり娘のテルメーはいかにも聡明で優秀な中学生だ。そのテルメーは大好きな父と母の不和に心を痛めながら、動揺を押し隠し健気にふるまっているのが見て取れる。

まもなく、この家庭に、まったく社会階層のことなった一組の家族がかかわってくる。
離婚を譲らないシミンがついに実家に帰ってしまったために、昼の間父親を看てくれていた妻がいなくなったナデルは、急遽ヘルパーを雇うことにしたのだ。
ナデルが雇った女性ラジエーはいかにも介護の素人で、仕事に幼い娘まで連れてくる。暮らしの苦労が面立ちに表れている彼女は敬虔な信仰の持ち主で、車を乗り回し、インテリで解放的な身なりのシミンとは対照的に、いつも黒くて長いチャドルを巻き直しては身をくるんでいる。
そして驚いたことに、ヘルパーとして雇われたのに、彼女はナデルの父親の身体に触れることができない。アルツハイマーの症状で徘徊や失禁をする彼を前に戸惑うばかり。そして電話で聖職者に相談する。「仕事なら男性の身体に触れても許されるのでしょうか?」と。
イランでは介護の専門職が少ないのだろうか? 異性の身体に触れられない女性を、父親の介護人として雇うなんて、どういうことなのだろう? 

ラジエーは毎日娘を連れ、バスで何時間もかけて通ってくる。信仰上の戒律を破ることを恐れながら、失業中の夫に代わって稼ぐために必死で仕事をこなし続ける。私たちはそれを痛々しい思いで見守る。そのラジエーの苦労を、雇い主のナデルは知らない。
ある日のこと、ナデルは昼間に帰宅し、父がベッドに縛りつけられて意識不明になっているのを発見する。逆上したナデルは、どこかから戻ってきたラジエーに解雇を言い渡し、ドアから叩き出してしまう。
そして叩き出されたラジエーは階段から落ちて倒れた。
いや、落ちたところを私たちは見ていない。彼女が近所の人たちに助け起こされたところを見ただけだ。

翌日、ナデルは驚くべきことを告げられる。ラジエーをドアから叩き出したために、彼女が流産したというのだ。しかもその子は男の子であり、妊娠期間の規定により殺人罪で告訴されるかもしれないと。
そこから、離婚寸前の妻シミンも巻き込み、激高したラジエーの夫も加わって、二組の家族は複雑にもつれあっていく。
ナデルは、雇ったラジエーが妊婦であることを知らなかったと主張する。知ったうえで暴力をふるったのなら、彼は殺人犯となるのだ。

ナデルは、本当にラジエーの妊娠を知らなかったのだろうか?
そして、ラジエーは本当に階段から落ちたのだろうか? 
そもそもなぜ、ラジエーはナデルの父を縛りつけて外出したのか?

いくつもの疑問の前に、私たちは立たされる。
けれどやがて、ここに登場する二組の夫婦は、それぞれ自分の正当性や利益を主張するが、「真実」を求めはしないことに気づかされる。社会的名誉やプライド、信仰上の罰への恐れ、怒りや憎しみ。別々の方向に目をやり、理解しあうこともいたわりあうこともなく、必死でそれぞれの窮地から抜け出そうともがいている。
それをじっと見つめているのは、現場にいたラジエーの幼い娘であり、ナデルとシミンの娘テルメーだ。祖父にも両親にも思いやり深いテルメーは、初めて母の冷たさに失望し、初めて父を疑う。父は嘘をついて、罪をまぬがれようとしているのではないかと。

私たちは、わかりやすい答を期待してはいけない。
ハリウッド映画のような派手などんでん返しや、カタルシスはここにはない。
「真実」があらわれるとき、疑問が氷解した心地よさとは遥かに遠い、苦く重い思いにしめつけられて画面を見つめる。そして、文化も慣習もこれほどことなっている国で、人々が繰りひろげる愛憎の営みが、私たちにこんなにもよく似ていることに気づくのだ。

音楽をほとんど使用せず、静けさの中、全編を貫くただならぬ緊張感。そして俳優たちの自然でリアルな演技がすばらしく、前作の「彼女が消えた浜辺」とあわせて、イランという国がどれほど豊かな文化を持っているか、その片鱗を見せられた気がする。
期待した食事のシーンはまったくといっていいほど出てこなかったが、イランの料理を口にしてから観たせいか、すんなりと異国の世界に入っていくことができた。
[PR]
by higurashizoshi | 2012-06-01 22:11 | 観る・読む・書く・聴く | Comments(2)

フォロー中のブログ

明石であそぼう! たこ焼...

最新のコメント

Disney 鴨さん ..
by higurashizoshi at 00:53
こんばんは。 ひぐらし..
by Disney 鴨 at 22:17
Disney 鴨さん ..
by higurashizoshi at 16:30
bikegogoyさん ..
by higurashizoshi at 16:13
こんばんは。お久しぶりで..
by Disney 鴨 at 20:57
お久しぶりです。忙しそう..
by bikegogoy at 07:10
なみさん ずいぶん長く..
by higurashizoshi at 12:52
初めまして。マリンメッセ..
by なみ at 17:22
Disney 鴨さん ..
by higurashizoshi at 23:49
こんばんは。お久しぶりで..
by Disney 鴨 at 20:03

検索

ファン

ブログジャンル

映画
ウィンタースポーツ

画像一覧