ひぐらしだより


人生はその日暮らし。  映画、アート、音楽、フィギュアスケート…日々の思いをつづります。
by higurashizoshi
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割り切れないけど、ひと区切り

毎夜、12時近くなると「そろそろ生中継観る態勢に入らないと…」と、いまだに一瞬思ってしまうこのごろ。
もう日本選手団も無事帰国して、みんなひと休みのあとは来月の世界選手権に向けて気を引き締めて調整に入っていくのだろうな…という状況なのに、まだふと気づけばソチの影を引きずったまま、あれこれもの思いにふけってしまう。

もし○○だったらとか、もう少し○○だったらとか、詮ないことをいつまでも考えてしまうの、そろそろやめたらどうかねえと自分に思うのだけど、しょうがないじゃないか、大ちゃんファンなんだから。あっこちゃん大好きなんだから。真央さんだってまっちーだって、もっともっと報われてほしかった、世界の人に認められる位置にのぼってほしかった、そんな気持ちに簡単に折り合いをつけることなんてできないのだ。もはや、選手本人がどう整理をつけてるかなんて関係ない、勝手な思い。
でもソチが終わって、生活は元に戻っていく。新しいことも始まっていく。ぽかぽか陽気で春がもうすぐそこに来ていることに突然気づく。

私自身、ソチが終わったらやろうと決めていたことがいくつかあって、そのひとつである検診に閉会式の次の日に行ってきた。
もうずっと長く、いろいろな理由で受けずに来たのだけど、自分の中でひとつの区切りとして受けようと思った。
人に言うと、「オリンピックでフィギュア観るのが人生の区切り?」って驚かれるかもしれないけれど、私がこれまでとことん好きになったもの――たとえば映画とか詩や小説とかさまざまなアートとか――とフィギュアスケートはまた違うものだ。
感性や生き方に影響を与える総合芸術という側面もありながら、フィギュアスケートはあくまでスポーツだから、死にものぐるいの戦いの果てに必ず勝者と敗者が決まる。
それを娯楽として観るのではなく、自分の思いを重ねて観るから引き込まれる。知れば知るほど深みにはまり、競技でのしのぎを削る戦いが自分の心を侵食していくことが快感になる。たぶんこれまでに、こんなに病的?に何かにのめり込むような体験はなかったような気がする。
スポーツにあんまり縁がなかった自分が、ここまでフィギュアスケートに魂を持ってかれることになろうとは、思っていなかった。ものすごくエネルギーを注いで消耗するけれど、たとえ勝っても負けても競技であるからこそ得られるカタルシスがある。

大ちゃんやあっこちゃんが今季のあとプロスケーターになったらもちろん追いかけて観るつもりだし、ふたりが競技を離れ、高難度のジャンプを跳ばなければいけないという枷から自由になって、どんなスケートを見せてくれるのかすごく楽しみだ。楽しみだけれど、それはやっぱり競技の中でずっと彼らを追ってきた自分の感情とは、また別のものだと思う。
そういう意味でも、ソチは私自身にとってフィギュアスケートを追いかける形が自分の中で変わる転機でもあり、自分の応援する選手たちの結果がどんなふうであれ、ソチが終わったら心の中でもひとつの区切りをつけようと考えていた。
ただ、こうしてオリンピックという大きな渦の中でぐるぐる回りながらたくさんの選手の演技を追い続けたことで、これまでより一層フィギュアが好きになったし、これからもっともっと心をこめて真剣にフィギュアを見続ける気持ちにはなっている。

とはいえ、これまでの何ていうか、日常から幽体離脱するみたいな感覚はちょっと置いておこう、と思っている。現世でやらなければいけないこと、やるべきことがたくさんある。
ソチが始まる前、これが終わったら、目をそらしていたことに向き合うときが来るのだと感じる自分がいた。といったって、そんな別におおげさなことじゃなく、たとえばずっと放りっぱなしにしていた仕事を再開するとか、やりたくないなと思っていたことにちゃんと向き合うとか、そういうこと。

逃げずに自分の舞台に立って戦った選手たちを観て、やっぱりそうだよな、ちっぽけなことから逃げてたら恥ずかしいなと思った。きっとそう感じるだろうと予想していたけど、もっともっと強くそう思った。
というわけで、まあその一環として長らく受けてなかった、ある検診を受けに行ったのである。ソチ後の早い時期に受けようと思っていたら、たまたま予約が取れたのが閉会式の翌日だったので、実に猶予ないなあと思いつつ、これもまたすっきりしててよいな、とも考えて出かけて行った。
しかしまあ、あのリンクに立つときの大ちゃんやら真央さんやらに比べたら、なんと小さい勇気でしょう。とはいえ私なりにいろいろな予測も立てて、どんな結果であれ受けとめて何とかする覚悟で行ったのだ。

で、結果はといえば、今のところはシロだった。より詳しい結果は一ヶ月くらいたってからということだけど、とりあえずは拍子抜けするくらいに、すんなり解放された。
ちょうど同時にずっと懸案だったタタの進路もほぼ決まり、と同時にタタが生まれて初めてひとりで東京に一泊で出かけることになり(実は明日から!)、そして母の施設入居が来月に決まり…といろいろなことが一気に動き出して、いろいろなことが重なって今年も春が来るんだなあと思う。

しかしやっぱり関心事は帰国した大ちゃんの動向だったり来月の世界選手権だったりするわけで、しかも4月にある世界選手権の大阪でのエキシビションは、しっかりチケット取れてるという。
最後だなあ。これがほんとにたぶん最後。まだ、夢を見ていたい自分もいる。
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by higurashizoshi | 2014-02-26 22:11 | フィギュアスケート | Comments(0)

ソチ五輪エキシビション、閉会式

ソチ五輪が終わりました。
初めての団体戦から始まり、ものすごい速さで駆け抜けた18日間でした。
幸せと緊張と涙と感動と… でもやっぱり幸せな18日間だったなあと思います。
オリンピックを(フィギュアがメインですが)ここまで徹底的に追っかけて観たのは初めてだった。きっと、ずっとずっと忘れられないオリンピックでしょう。



戦いが終わって、エキシビション。
5位までの選手が出場でしたが、大ちゃん、真央さんは招待枠に。
金メダルの結弦くん、5位のまっちーとともに4人での出場となり、うれしかった。
順不同で、個人的にピックアップして紹介します。




エキシビションで出色だったのが、デニス・テン選手。
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故国カザフスタンの音楽と衣装で、個性的ですばらしい迫力の演技でした。こういうのを競技プロでもやってほしい。西欧のクラシカルも似合うけど、アジアの風を感じるこんなプロを今後期待。
うん、テンくんはやっぱりかっこいい! 銅メダルおめでとう!








アデリナ・ソトニコワ選手。
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この蝶の羽のようなフラッグを使ったプログラム、今季は何度も観ているけれど…
まさか金メダリストのエキシとして観ることになるとは思ってもいなかったなあ。いまだにびっくりしてます。でもおめでとう!
金メダルのオーラか、これまでより一層情感を込めた滑りでした。








町田樹選手。
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おなじみ、クイーンのナンバー。エアギター炸裂!会場大受け! 
このプロ、一昨年に生で観たことがあるのですが、あのときのまっちーに比べて今は段違いにハイレベルな選手になりましたね。技術だけでなく、内面からにじみ出す自信と風格。
まっちーが今後さらに《化ける》ことを期待!








浅田真央選手。
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この「スマイル」はとてもいいプログラムで、天真爛漫でちょっと大人っぽい魅力があふれてるのですが、この五輪エキシでは天真爛漫な彼女ではなく、少し憂いもありつつパッと光がともるような笑顔を見せていたのが印象的でした。

今日NHKでやっていた総集編で、あのフリーの演技中に真央さんがひとつひとつのジャンプを「誰々のために跳ぶ」と考えて決めていった、という話を聞いて、新たに衝撃を受けました。
ジャンプ一つ目は姉の舞さんに、二つ目はお父さんに…というふうに心で言いながら跳んでいったのだと。亡くなったお母さんのために跳んだジャンプがどれだったのかは、彼女だけの胸の中にしまわれているのだろうな。
まさに背水の陣のあのフリーで、そんなふうにしながら8トリプルを決めていった… 
浅田真央は職人、と前回書いたけれど、職人にしてこれはもうサムライですな。なんかもう、順位とかそういうこととは次元が違いすぎて、私はインタビューを観ていてまた鳥肌が立ちました。まあ、某東京五輪組織委員会会長には理解できない話でしょうけど。








ハビエル・フェルナンデス選手。
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やっぱり五輪もこれで来たわけね。もう何回観たか忘れたけど、やっぱり観るたびに後半どうしてもギャハハと笑ってしまいます。
ハビーのとぼけたお茶目さと、旺盛すぎるサービス精神が作り上げた傑作プログラム。プル様なきあと、ハビーがこの手の帝王になるのか?








テッサ・バーチュー&スコット・モイア。
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最後の五輪エキシで舞うふたり。最後なんだなあ。
美しくて、そしてさみしい。








キム・ヨナ選手。
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彼女も最後の五輪、最後のエキシ。
どんな感慨が胸にあるのだろう。とてもやわらかい、寂しいほどに透明感のある演技でした。








羽生結弦選手。
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この五輪の最後に彼が選んだのは「ホワイト・レジェンド」でした。
震災の年にショーで滑り続けたプログラム。仙台で被災しリンクも失った結弦くんにとって、このプログラムを日本各地で滑り続けることが生きることだったのでしょう。
今見てもとても美しく、彼によく合うように作られたすぐれたプログラムです。

ひさびさにこの衣装でこのプロ、三年足らずの間に体格も雰囲気もずいぶん変わったんだなあと実感させられました。きゃしゃで勝気な少年だった彼が、たったこれだけの年月でまさか金メダリストまでのぼりつめるとは。
帰国したら、今はまだ体感していない金メダルのすさまじい反響が彼に押し寄せるでしょう。これからがまた新たなスタート。








高橋大輔選手。
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おなじみ、宮本賢二さん振り付けの「ブエノスアイレスの春」。
いつものこのプログラムの演じ方の濃さに比べて、このエキシではなんとなく大ちゃんの素が出ていたような気がする。衣装が違ったこともあるのだろうけど、それだけではないような。
いつものようにプログラムに没頭するというよりは、何かほかのことを感じながら滑っていたのかな…とも思う。でも、それはそれで妙に感慨深いものがありました。

最後の五輪の最後のエキシ。スケーター高橋大輔の歴史も、とうとう大きな転換点をむかえます。真央さんと同様、今後の進退は世界選手権後に決めるとのこと。
まずは、世界選手権までにもう少し足の状態がよくなりますように。このエキシには出られなかったあっこちゃんも、足指が早く治りますように。







演技を終えた金メダリストたち。
選ばれたひと握りのスケーターたちの中で勝ち残った、たった6人のスケーター。
この栄誉が、彼らのこれからの人生を明るく照らすことを願って。
それにしてもトランコフくんの髪型がやっぱり変だ。
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そして閉会式。結局生中継で最後まで観ました。
最後まで見届けないと、自分の中でソチが終わらない気がして。
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この日本の選手たちの表情を見て気持ちがなごみ(しかし結弦くんはいない…)、ずいぶん心が穏やかになれた気がします。
この18日間、速かったけど、やっぱり長くもあった。つらい涙も流した。ままならないことがたくさんあった。でもようやく、終わりました。私も笑顔で終わりたいです。




こんなに連日更新するつもりではなかったのに、ついつい熱が入って毎日毎日書いて、書いて。
はっ!別にフィギュアに特化したブログでもないのに、私はいったい何をやっているんだろう!? と振り返ったりして、でも書かずにいられず睡眠を削ってフィギュアを観ては、また書いて。
そうしているうちにブログのアクセス数がどんどん増えて、ちょっと怖くなってきたのでしばらくアクセス数見るのやめたりしました。

ソチ五輪を一緒におつきあいくださったみなさん、ありがとうございました。大変だったけど、楽しかったです。
これからはフィギュアのことも書きつつ、ほかのことも書いてぼちぼち更新するブログに戻ります。とりあえずちょっとゆっくり寝ようと思います。でも寝てもやっぱりフィギュアの夢を見るような気がする…
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by higurashizoshi | 2014-02-25 00:29 | フィギュアスケート | Comments(2)

ソチ五輪女子フリー

女子フリーの戦いが終わって丸一日。
ちょっと落ち着いて振り返れるようになってきた感じです。



メダリストたち。
激闘を勝ち抜いてここに上がった3人のスケーターの、晴れやかな笑顔。
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男子フリーが上位選手の大きなミスが目立ったのと真逆で、女子フリーは皆が崩れず非常にミスの少ない、まさに真正面から力を尽くした戦いとなりました。
思い返しても、ドイツのバインツィール選手が大崩れして涙に暮れた以外、ほとんどの選手が演技後のキスクラで充実した笑顔だった気がする。こんな五輪も珍しいのではないかな。







金メダル、ロシアのアデリナ・ソトニコワ選手。
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逆転の金。確かに、彼女の持つ潜在能力のすべてがいい形に出た、渾身の演技でした。
コンビネーションの最後のダブルの着氷が乱れた以外はノーミス。伸び悩んでいた時期がウソのような、ばらばらになっていたピースがぴたりとここではまったような会心の出来。
この最後の大舞台でこれだけ完成され、しかもエネルギッシュな滑りができたことが、一番になれた要因でしょう。

ただし、このフリーが、得点149.95というのは…
点数が出た瞬間、テレビの前でタタとミミと3人ともギャー!と叫び、異口同音に出た言葉が「いくらなんでも出しすぎでしょ!?」
ちなみに女子フリーの世界歴代最高得点はキム・ヨナ選手がバンクーバー五輪で出した150.06。あの演技はまざまざと憶えてますが、この世のものとも思えぬあの完成度と今回のアデリナの演技が0.11点しか違わないとは…

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私、どこの国の選手だからどう、とはまったく考えないタイプなんですが、やっぱり採点競技の宿命というか、ロシアで開催された五輪であるからこそここまでの得点になったのだろうと思わざるを得ないです。
アデリナの演技はすばらしかったし、心からおめでとうと言いたいです。ここに照準を合わせられてこその金メダル、立派です。メダルの色に文句を言う気はない、ただしこれほどの高得点には納得はできないというのが率直な感想。








銀メダル、韓国のキム・ヨナ選手。
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リンクを支配する女王の風格でした。
プログラムは、五輪で金を狙うにはシンプルな構成すぎたかもしれない。実戦を積んでない分、トランジションなどあまり細かく入れるほどの余裕はなかったのでしょう。
でも、ジャンプはすべて完璧に決め、キム・ヨナにしか作りだせない世界を氷の上に描いていくさまはやはり圧巻のひとこと。アルゼンチンタンゴの濃密さを出し切るところまではいかなかったけれど、優雅で力強い、女王の最後の舞でした。

最終滑走で大変な緊張があっただろう中、ノーミスで滑り切って、そして得点が出て金メダルを逃したと知ったあとの、何か憑きものが落ちたようなほっとした笑顔が忘れられない。
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長い間、韓国のスケート界を彼女ひとりで牽引するのは本当に大変なことだったことでしょう。このフリー後、キム・ヨナ選手は引退を発表しました。
彼女もまた、あとにも先にも出てこないであろう偉大な選手。心からお疲れさま、ありがとうと言いたいです。








銅メダル、イタリアのカロリーナ・コストナー選手。
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カロリーナ、ついにやりました!
トリノ、バンクーバーの悪夢を払拭、最後の最後にメダルを手にしました。
ショートのときにも書いたのですが、団体戦のときもこの個人戦でも、カロリーナはずっとほほえんでいました。演技の前→演技中→演技後→キスクラ→表彰式、全部ほほえみ。しかもなんと、演技中にジャンプを跳ぶときも、スピンをするときも、全部ほほえみ。
私はこれを《ほほえみ教》と名づけました。心優しくメンタルがタフとはいえなかったカロリーナは、この《ほほえみ教》によって現世の欲やしがらみを超えた天上の世界でのびのびと滑ることができるようになったのです。
いやもう、そう思うしかないくらい、彼女は変貌していました。五輪なのに、戦っていることを忘れさせてくれたのはカロリーナただひとりです。

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彼女も今季で引退。今後この偉大なる《ほほえみ教》を継承する選手を求む!








4位、アメリカのグレイシー・ゴールド選手。
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きっちりと、ショートもフリーも4位につけて終わりました。
次のトップの座を確実に、そして虎視眈々と狙っておりますよグレイシー。
技術はしっかり、メンタルも強く、キャラクターも華やか、何でもそろっている彼女ですが、演技全体に起伏がなく、強さでどんどん押していくだけ、というところが課題かな。
まだまだこれからの選手なので、内面の成長とともに演技の深みを見せてくれるのを楽しみにしています。







5位、ロシアのユリア・リプニツカヤ選手。
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あまりにも前評判が高く、その重圧がきつかったのでしょうかね。
団体戦は得点を稼ぐべくショートにもフリーにも出場。そこでは完璧だったのが、この個人戦にきてショートでもフリーでもまさかのミス。ロシア、ロシアの大合唱はあっという間にソトニコワ選手にかっさらわれる形となりました。
鉄壁に見えても、まだたった15歳の少女には過酷な試練だったのだなあ…
この五輪後は体形も変化してくるし、ジャンプも今のようには跳べなくなるでしょう。代名詞になっているキャンドルスピンもいずれできなくなるだろうし、ますます試練は待っている。
才能の塊であるリプちゃんが今後あまり苦しまず、さらにすばらしい選手に育っていくのを祈りたいです。ロシアのメディアも見守ってあげてほしいなあ。








6位、日本の浅田真央選手。
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昨日書いた通りです。
彼女の起こした奇跡を私たちは見ました。
最悪の結果から、最高の演技へ。たった一晩でこの変化を遂げさせたものは何なのだろう。
8トリプル=トリプルアクセルを含む6種類すべてのトリプルジャンプをひとつのプログラムの中で成功させ、計8つのトリプルを完璧に跳ぶ、という挑戦が彼女を動かしたことは事実でしょう。
あのショートを終えて、たった一日後。ただならない不安も、恐怖心もあったでしょう。それらを超えさせたのは浅田真央という選手の、いわば職人魂ともいうべきものだったのではないか? と、あのフリーの演技を何度か観なおしながら、私はふと思いました。

たとえば、金メダルを獲ったアデリナの演技と比べると、アデリナが野生の花がたくましく咲き乱れる庭だとしたら、真央さんの演技はまるで隅々まで最高に手入れの行き届いた日本庭園のようです。
どこまでも完璧に、どこまでも最高の質をもとめて追及をやめない誇り高い職人。彼女をそんなふうに感じたことはなかったのですが、ここで、この場で絶対に自分の目指すことをやり抜くんだという、その強い希求力があのフリーを支えていたのではと私は感じたのでした。

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メダルを獲れなかったという結果だけで、今後いろいろな声が彼女に降りかかるかもしれないけれど、このどん底からの五輪フリー演技の4分間は、必ずこれからの彼女の人生を支えていくだろうと思う。







7位、アメリカのアシュリー・ワグナー選手。
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やっぱり強かったアシュリー。女子ドヤ顔部門代表としても、風格の演技を貫きました。
全米で崩れた悪い記憶を、この五輪ではショートとフリーをそろえて払拭しましたね。
本人が思ったほど点数が伸びなかったのは、ジャンプの回転不足がけっこうとられてしまったから。今後はまた修正をしつつ、ますます強いアメリカの女王として君臨してほしい。








8位、日本の鈴木明子選手。
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あっこちゃんの五輪が終わりました。
足指のケガの悪化。大ちゃんと同じで「どうしてこんなときに」というタイミングで、最後のオリンピックはいつも通りの演技ができない、苦しいものとなりましたね。
でもこのフリーは、ショートよりもさらに、あっこちゃんらしい演技を最後まで見せてくれた。笑顔で、終わりまで笑顔でと自分で決めていたとおりに。
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観る人の心を揺るがせ、幸福にし、ときには涙させるあっこちゃんのスケートを、来季はもっと自由な形で観られるのを楽しみにしています。
二度目の五輪も8位。でも、前回とはまたちがう重みの詰まった、誇れる入賞でした。おめでとう。







日本の村上佳菜子選手、12位でした。
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ショート15位から順位を上げました。緊張は続いていたかもしれないけど、しっかりと冷静なところも見えたフリー。
佳菜子ちゃん、実はしばらく前に、五輪シーズンが終わったら引退するかもとチラリと言っていたんですよね。普通の大学生の生活がしたい…というような。
でもこの五輪はきっと、自分本来の力が出し切れずに悔しかったはず。その力は、もっともっとすばらしいスケーターになれる力でもある。
来季からはいきなり佳菜子ちゃんが日本のエース…たぶん。次の五輪を目指して成長していってくれたらうれしいです。
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フタを開ければやはり、女子は強し。
女子フリー、美しく、強い戦いでした。
紹介できなかった、たくさんの国の選手がいますが、またの機会に。



今夜はこれから、ソチ五輪エキシビションです。上位選手たちに加え、大ちゃん、まっちー、そして真央さんも招待枠で選ばれて出場します。

大ちゃんのプログラムは、おなじみの宮本賢二さん振り付けのピアソラとのこと。
ミヤケンさんがラストシーズン用に振りつけてくれた「Time to Say Goodbye」はいつやるの? 観るのが怖いと思っていたけど、観られずにこの最後の(ですよね?大ちゃん)シーズンが過ぎてほしくはないなあ。

明け方まで生中継を凝視しつづけるのも、今夜のエキシビションが最後。
ああ、遠いと思っていたソチが終わっていく。
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by higurashizoshi | 2014-02-23 00:44 | フィギュアスケート | Comments(0)

ソチ五輪女子フリーを終えて

今朝、女子フリーをすべて見届けて布団に入ったのは5時。
またも数時間の睡眠で起きて出かけ、一日働いて帰ってきて、さらに用事をこなしていたらもう今日が終わろうとしています。
でも、なぜか寝不足にもかかわらず、今日は運転中もまったく眠気におそわれることなく、なんだか心がすっきりと覚醒していて。

早く女子フリーについて書きたいのですが、ブログに載せる写真をネットで探し、今朝までの激闘を心の中で振り返るところまでで、今は時間切れ。
明日も朝から一日働かねばならないので、ちゃんと文章が書けるのは夜になりそうです。



今はこの一枚だけを。

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今朝、私たちは奇跡をこの眼で見ました。
それはメダルという形では報われることはなかったけれど、私たちの中にずっと消えることなく刻まれる奇跡です。
そして、その奇跡を呼び寄せたのは、彼女が地の底からはいあがり自分を取り戻すための、強い意志でした。

浅田真央選手が見せてくれた、スケーターとしての魂を、私は決して忘れません。
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by higurashizoshi | 2014-02-21 23:58 | フィギュアスケート | Comments(0)

ソチ五輪女子 ショートプログラム

明け方まで生中継、最後まで観てました。
第1グループあたりは連日の睡眠不足のため眠気との戦いで、テレビの前でときどき意識が薄れておりましたが、そのあと覚醒。第3グループのキム・ヨナ選手で、大覚醒。
そのあとは眠気どころではない、感動・極度の緊張・茫然自失という3つの感情を行ったり来たりが続き、そして… 明け方4時過ぎ、最終滑走の浅田真央選手の演技が終わったときはあまりの無常観で世界が真っ白に見えました。

おそらく、その時間にあの演技を見つめていた日本中の、世界のフィギュアファンが「こんなことが起きるはずがない」という感情に支配されたのではないだろうか。
女子ショートを観終わって、眠ろうとしてもなかなか寝つけなくて、数時間寝たら目が覚めてしまい。
「あれは悪い夢だったのでは」と思いたかったのですが、思えるはずもなく。

私は鈴木明子選手が大好きで、浅田選手のことはもちろん応援してきたけれど、特別彼女のファンというわけではないのです。
ただ、フィギュアについて知れば知るほど、真央さんのこれまでの不断の努力、真面目すぎるほどのひたむきさを感じ、その努力が彼女の望み続けた「金メダル」という形で報われれば…と思っていました。
いや、たとえ望みどおりに金が獲れなくても、少なくともメダリストになって有終の美を飾るのは当然、と思いこんでいたし、それ以外の結果は考えてもいなかったです。

やっぱり、オリンピックは恐ろしかった。
今は、どうかフリーで彼女が「少なくとも、これは自分のスケートだ」と思えるだけの演技をして終わることができるのを祈るばかりです。でなければ、あまりにも彼女のスケート人生が報われない。






ソチ五輪女子ショートプログラムの結果です。

1位、韓国のキム・ヨナ選手。
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すべてのジャンプ、スピン、ステップ、あぶなげな部分がまったくありませんでした。途切れることのない演技の流れ、情感を見せる音楽表現、すべてにおいて安定のヨナ度でした。
あとで談話を読むと、非常に緊張していて、自分では決していい演技ではなかったということですが…この盤石の強さ。彼女は自滅しませんね。メリチャリの強さと同種のものを感じます。最強にタフなアスリートであり、勝負に挑むとき迷いがない点において。
技術においてもメンタルにおいても、ここまで強い女子選手はほかにいない、とあらためて思いました。







2位、ロシアのアデリナ・ソトニコワ選手。
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「どりぃやあああ!」切り込んできました、みごとに切り込んできました。
リプばっかりメダルメダルと言ってんじゃないわよ!ロシア選手権で優勝したのはあたしなのよ!とばかりに、アデリナがその持てる力を爆発させました。
シニアに上がるのが早かった上、ロシアは下からの突き上げがすごいので中堅みたいに見えてるけど、実はまだ17歳。まだまだこれからの選手です。
シニアに上がって以来、この五輪でのショートが一番いい演技だったのではないかな。そのくらい充実した内容でした。いやあ、虚を突かれた。







3位、イタリアのカロリーナ・コストナー選手。
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団体戦に続き、いやそれよりもさらに、上質な演技でした。
トリノ、バンクーバーと、世界トップの実力がありながら五輪ではことごとく下位に沈んできたカロリーナが、最後の五輪でこんなに花開くとは。
観ている誰もが幸福感につつまれるような美しい「アベ・マリア」。ジャンプを跳ぶときですら、ほほえみを絶やさない演技。彼女にしかない、うねるような深いエッジワーク。
これまでメンタルの弱さ、不安からくる失敗に泣いてきた彼女は、今季後半、何か大きなものを肩から下ろすことに成功したのだと思うのです。それは何なのだろう。




ショート1位から3位までは、すべて74点台。
1位ヨナと3位カロリーナとの差はわずか0.5点。
ここはメダルの色争いが熾烈をきわめます。すべてはフリー次第。

そして3位と4位との差は約5.5点離れているので、よほどの崩れがない限り、メダルはショート1位から3位のヨナ、アデリナ、カロリーナに確定とみていいのでは。






4位、アメリカのグレイシー・ゴールド選手。
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彼女も強かった。まったく崩れる部分がなく、自分の滑りを最後までやり切りました。
グレイシーもまだ10代。これだけ五輪でも力が出せることを証明し、今後どこまで高みにいけるのか期待される選手です。
フリーではたぶん、少しでもメダルに近づくため、彼女らしい攻めの演技で来ると思う。さてどこまで食い込めるか。







5位、ロシアのユリア・リプニツカヤ選手。
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世の中に、絶対、ということはないのですね。
絶対ミスをしない、という滑りをこのところ続けていたリプちゃんが、ここで大きなミスをおかしました。3×3コンビネーションとダブルアクセルを軽々と決めたあと、単独の3回転フリップで転倒、しかもダウングレード。今の彼女にはありえない失敗。
この瞬間、15歳の手からあとかたもなく金メダルが消えました。
あとはフリーを完璧に滑り切って、どれだけ点が出せるか。まだまだ彼女の未来は長いのです。これからです。







6位、アメリカのアシュリー・ワグナー選手。
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全米選手権のときのような崩れはありませんでした。自信を持って、着実に滑っていました。コンビネーションの2本目は回転が足りなかったものの、それ以外のミスはなし。
このかっこいいショートプログラムを、五輪でかっこよく滑り切れてよかった。ちょっとあっこちゃんの「キルビル」思い出すプロです。







7位、アメリカのポリーナ・エドマンズ選手。
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足の長い選手はいろいろいるけれど、こんなに手の長い選手は見たことないなあ…とあらためて思いました。
15歳で、ジュニア上がりのまま全米でブレイクして五輪に来て、何のプレッシャーも何のしがらみもなく、天衣無縫に軽々とジャンプを決めてパーソナルベスト更新。あらそうなのね。
リプもそうですが、こういう10代半ばの選手を(特に五輪で)見ると、ベテラン選手の血と汗と涙を思ってちょっと無常観にさらされる私。
これから体形変化も大きいでしょうし、まだどんな選手に育つのか未知数。ただすごい才能の持ち主なのは確かです。







8位、日本の鈴木明子選手。
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足の指のケガが悪化して、当日の練習ではジャンプがほとんど跳べなかったという報道があり、ただただ心配していました。
だからジャンプミスがあるだろうというのは予測の上で見たのだけれど、コンビネーションが一本目両足着氷、しかもダウングレードになるとは…。でも、そのあとのルッツにダブルをつけてリカバリーした瞬間は命拾いした思い。ああ怖かった。
あっこちゃんの思い描いた最高の「愛の讃歌」にはならなかったかもしれないけど、古澤さんのバイオリンに乗せて後半は滑る喜びをリンクに振りまき、彼女にしかできないスケートだったと思う。
フリーでも結果を気にせず、純粋にあっこちゃんらしく滑り切ってほしい。どうか、フリー演技後も笑顔がありますように。
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村上佳菜子選手は15位。
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今回の女子ショートは、ありえないミスをおかした選手と、着実に力を出せた選手との明暗があまりにも大きかった。そして、佳菜子ちゃんも前者のひとりになってしまいました。
ジャンプも絶好調、こんなに試合前に調子がいいことはない、と本人が言うほどだったのに。彼女は少なくとも、それほど背負う重圧は大きくなかったはずなのに。
でも、そんなことは言っても仕方がないんだろうな。理由はわからない、刹那の出来事なのだろう。町田選手のショートでのミスとよく似た、大事なショートで3回転がシングルに抜けるというまさかの失敗。しかもスピンのレベルも取れなかった。
フリーはもう、ああしようこうしようと思わずに、できるだけ無心で滑ってほしい。そしてこの経験をこれからに生かして強くなってほしい。







浅田真央選手、ショート16位から今夜フリーに臨みます。
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誰も何も彼女に言うべきではないと思う。ただ黙って見守ることしかないと思う。
彼女が特別なスケーターであること、この五輪のために力を尽くしてここまできたことを、世界中が知っているのだから。

スケートの神さまが、どうか今夜すべての選手に温かい手をのべますように。
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by higurashizoshi | 2014-02-20 18:17 | フィギュアスケート | Comments(0)

ソチ五輪アイスダンス フリーダンス

いや~終わりました。
最後まで生中継観て明け方に寝て朝には起きて出かけて、運転中寝そうであぶなかった。
夜には会議あって遅くに帰ってきて、やっと書いてます。



ソチ五輪アイスダンス・フリーダンスの結果です。


金メダル、アメリカのメリル・デイビス&チャーリー・ホワイト。
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アイスダンスの歴史が変わる瞬間、と前から言われていたこの日。
点数的な結果としては、まさにその通りになりました。ショート・フリーあわせて195.52点というとんでもない点数を出して、メリチャリはついに金メダルを獲得。
すべてが満点といっていい評価で、もはや大幅なルール変更をしない限り、この得点を超えるカップルはまず現れないでしょう。
それにしても、何があっても金、というすさまじいプレッシャーに打ちかち、ミスなく終えた彼らは本当に強い!なんでこんなに強いんだ!

ただし、このフリーダンスの演技でここまでの点数?というのはちょっと疑問は残りました。
ロシアの2カップルの演技直後、ものすごいロシアコールの中での最終滑走。さすがのメリチャリも極度の緊張と重圧があったのでしょう。いつもよりスピードがなく、全体に慎重な演技で、ふだんの彼らが紡ぎだす圧倒的な高揚感は少なかった。ふだんのメリチャリ比でいえば、まずまずかなあという感じ。私には、これまで彼ら自身が出した最高得点を大幅に上回る演技には思えなかったのです。
「うーん。この点の出方がオリンピックなのだ、ということなのかなあ」とテレビの前で考え込んでしまいました。

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でも、バンクーバーの銀メダル以来、血のにじむ努力を続け、彼らがやっとやっとつかんだ金メダル。このメダルの色はもちろん文句なく彼らの努力の成果です。
アイスダンスの世界で前人未到の場所に到達したメリルとチャーリー。タフでキュートで真のアスリートである二人に、心から称賛を送ります。






銀メダル、カナダのテッサ・バーチュー&スコット・モイア。
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ショート、フリーともひさびさに会心の演技をそろえ、パーソナルベストも更新し、テサスコは銀メダルを獲得。
バンクーバーでメリチャリを下して金メダルを獲った若き天才カップルも、おそらくこれが最後の五輪。早々と引退といわれています。
五輪シーズンにしては今ひとつパンチに欠けるプログラム…と思っていたのですが、この日の彼らの演技はすばらしかった。このプロは、テッサとスコットが8歳と10歳でカップルを組んで以来の、二人の歴史を表現しているんだそう。本当に美しい、充実した演技でした。

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彼らの信じられないほどなめらかなユニゾンが競技で観られなくなるのか…なんだか信じられない。ぽっかり穴があいてしまう感じ。メリチャリも互角に戦う相手がいなくなってしまうねえ…






銅メダル、ロシアのエレーナ・イリニフ&ニキータ・カツァラポフ。
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結局、メダルはショートダンスの順位通りになりました。
19歳と22歳の若きロシアのカップルが、ひとつだけ残ったメダルをつかみました。
モロゾフコーチも両手を上げて超ガッツポーズ。いやあ、ほんとにイリカツ、メダルとっちゃったよ。もっと先の話だろうと思っていたのだが…
これで彼らがロシアの一番手となりますね。二人の持つ才能をもし、あますところなく発揮することができたら…次の五輪に金メダルを獲るカップルになると思う。ただ、あますところなく、っていうのが難しいんだろうけど。






4位、フランスのナタリー・ペシャラ&ファビアン・ブルザ。
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ラストシーズン。最後の五輪。なんとかメダルに届きたかったでしょう。その夢はかないませんでした。
でも、このフリーダンスも二人にしか出せない華やかで艶やかな色彩の世界を繰り広げ、最後までミスなく滑り切りました。ファビアン、こけなくてよかった!
衣装も、出場カップルの中でダントツのお洒落さん。いつも楽しみだったこの二人の演技が、もう競技で観られなくなると思うと本当にさびしいです。来月の世界選手権には出場せず、ペシャブルはこのフリーダンスを終えて引退を発表しました。







5位、ロシアのエカチェリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビヨフ。
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ボブソロはこの五輪ぎりぎりまでプログラム選びが迷走しました。メダルに届くための必死の選択だったのでしょう。
このフリーは直前に二度目の変更、昨シーズンのプログラムを若干リメイクしてきました。ただ、イリカツの華々しく明るいプログラムの大喝采のあとで、このダークなプログラムはちょっと不利だったかも。心を病む男女のストーリーで、私はけっこうこのプロ好きなんですが、五輪に持ってくるのはどうだったかなあ…
ロシア一番手をここでイリカツに奪われたボブソロ、これからが正念場ですね。まだまだ巻き返してほしい。






6位、イタリアのアンナ・カッペリーニ&ルカ・ラノッテ。
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ヨーロッパチャンピオンとして臨んだこの五輪で6位。前回のバンクーバーでは12位だったので、確実にランクを上げてきた二人ですが、本当ならもう少し上位に食い込みたかったでしょうね。
ミスなく、この二人らしい躍動的でキュートな魅力あふれる「セビリアの理髪師」でした。ショートもフリーも今ひとつ点が伸びなかったなあ。こんな衣装着て似合うのはアンナちゃんだけ。






7位、カナダのケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ。
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すばらしい演技でした。初めてこの二人のタンゴで鳥肌立ちました。
これまではこのプログラム、タンゴらしく演じようとしてる努力が感じられてしまったのですが、さすがオリンピック。さすがウィバポジェ。何かが乗り移ったかのように、完全にタンゴの世界に入り込んで踊り切りました。かっこよかった!
昨季まではストーリー性のあるフリーダンスが大評判だった二人ですが、こういうプロもここまで持ってくるとは。本当にうまくなりました。今後が楽しみです。






8位、アメリカのマディソン・チョーク&エヴァン・ベイツ。
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最初から最後までずーっと、ぐいんぐいんハイテンションなままの「レ・ミゼラブル」。
観てる方もちょっと疲れるなあというプログラムなのですが、でもやっぱり五輪、ノーミスの熱演でやり切った感が違いました。ひとつ下位の同じアメリカのシブタニズに、8点以上の大差をつけての8位。彼らも押しも押されぬアメリカの二番手になりましたね。






9位、マイア・シブタニ&アレックス・シブタニ。
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マイケル・ジャクソンにしなきゃいけなかったのかなあ…って、この期に及んでもつぶやいてた私。だってこの二人にどう考えても合わないんだもの。なんか可愛いこけしが般若のまねしてるみたいに見えてしまう。わざわざ五輪シーズンにこれやらなくてもな。
ズエワさん、来季からは考え直してほしいなあ。この二人本来の、なめらかでうっとりするような上質の滑りが見たいです。






10位、イギリスのペニー・クームス&ニコラス・バックランド。
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このところ急激に評価の高まっている彼らが10位に入りました。五輪の10位以内ってほんとにすごいことです。この二人もマイケル・ジャクソンメドレーだったのですが、こちらはほどよく力の抜けたお洒落なマイケルでしたね。
ニコラスくん、最近心臓の手術をして器具を埋め込んでいるそうで…そんな身体で五輪に。すごい速度でペニーちゃんをぶん回すたんびに「心臓、心臓―!」と叫んでしまいました。お大事に!





最後に、10位圏外のカップルの中から2組を紹介します。

13位、スペインのサラ・ウルタド&アドリア・ディアス。
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スペインのアイスダンス史上、五輪初出場をはたした二人。
シニアデビューで観た昨々シーズンには、まだあか抜けなくて素朴な雰囲気でしたが、みるみるうちに洗練されて注目株に。スペインらしい濃い情緒を前面に出し、個性的な演技で引きつけてくれます。
この五輪もパーソナルベストを大幅更新する高評価。ピカソを題材にした音楽と衣装も面白いです。これからがさらに楽しみ。





18位、カナダのアレクサンドラ・ポール&ミッチェル・イスラム。
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残念ながら、ショートダンスから順位を上げることはできませんでした。
このフリーでは特段のミスはなかったのですが、カナダ選手権で五輪出場を勝ち取ったあのフリー演技のような勢いがなく、やはり全体的に滑りも小さくなっていました。
アレクサンドラちゃんの鮮やかな紅い衣装、よく似合っていたんだけどなあ。ミッチェルくんもがんばっていたし、美しいスケーティングではあったんだけど。ジャッジから高評価を得るためには、彼らはまだまだ越えなければならないものがいろいろあるようです。ここからの成長に期待。




今回の五輪は、上位カップルにみんな大きなミスなかったのは本当によかった。たくさんの万感迫るエンディングを観ることができてうれしかったです。
ただ、全体を観ていて思ったのは、五輪会場のわりに声援や手拍子が少ないように思える…ということ。
ロシアの選手に対する声援だけものすごいのですが。
そして客席にかなり空席が目立つこと。
なんだか、五輪会場というより、通常の国際大会を観ているような感じです。
最後のメリチャリの演技直後でも、あれ?と思うくらい拍手もすぐ途切れ、しーん… スタンディングオベーションもなし。しかもすぐに「ロシア!ロシア!」の大合唱に。
ソチはロシアのはしっこの小さな地方都市なので、コアなスケートファンはあまり会場に来てないんだろうなあ。

仕方のないことと思いつつ… 会場全体が地鳴りのような盛り上がりで、どこの国の選手も大きな拍手に包まれていたバンクーバー五輪とつい比べてしまいました。
ロシアのお客さん、きっとハートはフレンドリーなんだと信じたい。よその国の選手にも温かいアピールをよろしくね!




さて、男子も終わり、アイスダンスもとうとう終わり…
残すは女子のみ。ごくり。
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by higurashizoshi | 2014-02-19 01:01 | フィギュアスケート | Comments(4)

ソチ五輪アイスダンス ショートダンス

男子フリーのくわしい感想を書こうと思っていたら、忙しく時間が過ぎ、昨夜のアイスダンス・ショートダンスの時間が来てしまい、ともかくテレビに明け方までかじりつきました。
で、とりあえず五輪終了までは即時性(っつっても遅すぎる)先行で、ショートダンスの結果と若干の感想を書いておきます。
とかいって、もうフリーダンスあと二時間くらいで始まるんですが。
しかも昨夜のショートダンスはNHK総合での生放送だったのに(それでも途中でメダル授与式の中継でぶった切られた)、今夜の中継は民放。とってもイヤな予感がしますよ…。
いわゆる煽り映像てんこ盛りで、6分間練習はおろか、最初の方に滑走するカップルはばっさりカット、その代わりにアイスダンスの中継なのに絶対、明日の女子ショートに関する映像がドサドサと入ってくるに違いない(私の応援するカナダのポール&イスラムは全体の2番滑走なのだ…嗚呼)。



さて、昨夜のショートダンスの結果です。
順位順に。



1位 アメリカのメリル・デイビス&チャーリー・ホワイト。
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ほんっとに失敗しませんね、今のメリチャリって。
露ほどの疵もないわ。パターンダンスはもちろんオール4、ほかを見てもすべからく、ジャッジひれ伏すの図。
今夜、彼らは未曾有の点数で、アメリカのアイスダンスカップル史上初の金メダルを獲る予定。予定は未定じゃなくて確定。





2位 カナダのテッサ・バーチュー&スコット・モイア。
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こんなに喜ぶこの二人、ひさしぶりに見ました。それほどにいい出来のショートダンスでした。美しい、美しい!
が… 
なぜ最初のパターンはレベル3なの? もうほんとショートダンスってわからんわ。メリチャリと2.5点以上も差がついてしまったやないの。どこがその点差の理由なのか誰か教えて。





3位 ロシアのエレーナ・イリニフ&ニキータ・カツァラポフ。
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ロシア2番手、のはずが、先輩を差し置いてものすごい高得点! 
五輪のショートダンスで自己ベストをここまで大幅更新してくるとは、自国開催パワー入ってるにしてもすごい。19歳と22歳と、まだ若い二人。実力からみる可能性でいえば、いずれ世界のてっぺんに行けるカップルです。フリーでこけないでね!





4位 フランスのナタリー・ペシャラ&ファビアン・ブルザ。
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団体戦のときよりいい出来でした。目指していた以上の得点が出て、まさかのイリカツ高得点がなければ3位につけてましたね。さすがベテランという見せ場たっぷりの滑りで素敵だった! うう、悲願の五輪メダルはどうなるだろう。





5位 ロシアのエカチェリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビヨフ。
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若手のイリカツにしてやられたりボブソロ。私は彼ら好きなんだけど、やっぱりマリリン・モンローに変更したのはよくなかったんじゃ…? 
もとい、ツイズルの失敗ってやっぱり大きい。それにしてもロシアの観客、自国選手ばっかりにちょっと騒ぎすぎではなかろうか。





6位 イタリアのアンナ・カッペリーニ&ルカ・ラノッテ。
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うーん、もうちょっと上位で折り返す予定だったんだがなあ。悪い滑りではないと思ったんですが、けっこうあちこち引かれてます。アンナちゃんの衣装センスがいつもながらキュートすぎる。





7位 カナダのケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ。
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本人たちは演技後とてもいい出来!という感じだったのだけど… 
ということ、ショートダンスではけっこうありますね。本人たちにもわからないのに、素人にわかりますかいな、パターンのチェックポイントなんていわれてもね。
テサスコ引退後は彼らがカナダのトップカップルです。フリーはもっと評価されますように。





8位 アメリカのマデイソン・チョーク&エヴァン・ベイツ。
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ツイズルがちょっと?そのくらいええやないの!と言いたくなるほど全体になめらかで質のよい滑りでした。カップルの組み替え直後は意外に思ったけど、いいカップルになってきたなあ。





9位 アメリカのマイア・シブタニ&アレックス・シブタニ。
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ご存じ、はるみとひでおの兄妹。ショートダンスは衣装も音楽もシニアデビューのころを思い出させる、彼らの王道路線。やっぱりいいですね。
このところキスクラで曇った顔が多めだったけど、この五輪でシーズンベスト。シブタニズの笑顔って癒される。





10位、ドイツのネッリ・ジガンシナ&アレクサンダー・ガジ。
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大学教授(でしたっけ?)を演じるガジくんが愛らしすぎてたまりません。艶っぽいお姉さんのジガンシナさんも相変わらず魅力的。五輪に持ってくるにはこの二人としてはわりと地味なプログラムだけど、らしさは出てます。
ガジくんツイズル失敗してたのに、解説の若松詩子さん成功してるって言ってた…
やっぱり、ペア選手だった若松さんにはアイスダンスの解説はむずかしいと思うの。宮本賢二さんという素晴らしいアイスダンス解説者がいるのにナゼニ連れてこないん?





カナダの3枠目をつかみ取って出場したアレクサンドラ・ポール&ミッチェル・イスラム。熱烈応援していたのですが、やっぱり初五輪、緊張したのかなあ。
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アレクサンドラちゃんにツイズルでの大きなミスがあり、18位と大きく出遅れてしまいました。滑りも全体にちょっと慎重すぎて小さかったような。ううう残念なり…
フリーではぜひ持ち前の魅惑的な演技を見せてほしいです。





日本のキャシー・リード&クリス・リード。
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目立ったミスもなく、この演技ならフリーに進めるのではと思ったのですが…
率直にいって滑走順ですね。第一グループの一番滑走は、誰かが担う順番とはいえ、やっぱりもっとも不利なので。もしもう少しあとの滑走なら、20位以内に入れていたのではと思うと本当に何といっていいのか。
団体戦に続き、精一杯の力を尽くしてきたリーズ。「ごめんなさい」というコメントがつらいです。今は少し休んで、ゆっくりしてほしい。来季また素敵なプログラムを待ってます。





というわけで、あと少しでソチ五輪フリーダンス始まります!
みんな自分の持てる力を出し、笑顔で終われますように。
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by higurashizoshi | 2014-02-17 23:20 | フィギュアスケート | Comments(0)

ソチ五輪男子フリーを終えて

男子フリーは、ショートとはまた別の意味で予想もしない展開となりました。
メダル争いにからむ選手が十数人もいるという大混戦のフタをあければ、結果としてその十数人の中で、ノーミスで滑った選手は皆無。
最小限のミスに抑えられたデニス・テン選手がかろうじて銅メダルをつかみ、ショート3位だったハビエル・フェルナンデス選手はジャンプミスに加え、ジャンプの飛びすぎ違反というミスをおかしてメダルを逃しました。

そして注目された「どちらが金メダルか?」という白熱の争い。
ショート首位の羽生結弦選手は冒頭の4回転サルコウの失敗にくわえ、ふだんならあり得ない3回転フリップでも転倒。178.64という、今の羽生選手がここ一番の勝負で出した点数としては、考えがたいレベルに。
この得点が出た時点で、おそらく誰もが、金メダルは直後に滑走するパトリック・チャン選手がつかんだと思ったでしょう。

しかし。
やっぱりオリンピックは恐ろしい。
冒頭で美しい4×3のコンビネーションジャンプを決めたパトリックでしたが、そのあとは最近では見たことのないミスを連発。逆転でその手につかんだかに見えた金メダルは、あっという間にパトリックのもとから再び結弦くんのもとへ。
この逆転+逆転劇にはさすがに呆気にとられました。

結弦くんもびっくりしたらしく、テレビでは外国の記者にモニターを示されて、「君、金メダルちゃう?」と言われて「はい?」みたいな場面も。自分の演技が終わった直後は、これで金メダルは逃したと得心していたらしい。確かにそのくらい、よくない出来だったフリーでした。

こうして頂上決戦は、なんだか苦い自滅合戦の果て、五輪フィギュアスケート史上最年少にして、日本男子フィギュア界初の金メダルを羽生結弦選手が獲得するという結果になったのでした。
慣れないカナダの環境や、持病やケガ、そして震災と、さまざまなことにぶつかりながらひたすらに突き進んできた結弦くん。決して会心の勝利ではなかったからこそ、これからさらに成長しようと思える余地が残されたのではないかな。

銀メダルに終わったパトリック、カザフスタン史上初のメダルを獲得したテンくんにも、心からお疲れさま、おめでとうと言いたいです。

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さて、男子フリーの個々の選手については、あとで書くことにして。
今は高橋大輔選手のことを書きます。



長年、大ちゃんに伴走してきた長光歌子コーチが、大ちゃんを最初に教えた岡山のコーチに昨日送ったメールの一部をネットで読みました。

「NHK杯の後の怪我からここまで、本当に苦しみました。 本日はそれから解放される最高の日でありますよう、 祈るばかりです。」

フリー終了後、実況解説をしていた本田武史コーチが、間近でずっと指導してきた大ちゃんの様子を、「(ケガのため練習ができず)追い込みたくても追い込めない。心と体がついていかない」状態だったと。そして、「最後まで笑顔で滑ってくれたのが本当によかった」と、声を震わせて話しているのをテレビで聞きました。


あとになって入ってくる話、大ちゃん本人の談話をみても、やはり右ひざのケガは思うような回復を見せず、直前までほとんど練習らしい練習はできなかったらしい。
11月下旬の骨挫傷のあと、回復を待てずに全日本があり、そこからソチまでもまた1ヶ月あまり。時が足りなかった、としか言いようがない。
でも、それが現実です。
本人はもちろん、長光コーチをはじめ彼を支える人たちはどんなに悔しく、つらかったことか。代表選考で後ろにおいてきた選手たちに対する責任。そして現役最後という崖っぷちで、本来の滑りができないことのもどかしさ。もしかしたらこの1ヶ月あまりは、これまでの選手生活にはなかったような苦しさの連続だったかもしれない。


3年前、「ソチまで現役続行」という爆弾(?)発言をしたとき、大ちゃんは言っていた。
「トップにいられないかもしれないけど、人生のいい経験になると思ってがんばりたい」
「きれいには終われないかもしれいけど、そういうスケート人生もいいのかな」と。

そのとき、彼の中にはここまで過酷の果てのソチ五輪が待っているという予想はなかっただろうけど、いくらでも「きれいな終わり方」ができるチャンスがあった中で、大ちゃんはここまでねばり通し、努力をやめなかった。
まだ、たった27歳の彼にとって、これからの人生は長い。アスリートとしてとことん戦い抜いたことが、そこで得たたくさんの苦しみやよろこびが、きっと彼のこれからの人生を支えていくと思う。

これを書きながらつけていたテレビで、ついさっきソチからの中継で大ちゃんの生出演があり、結弦くん、まっちーとともになごやかな笑顔で話をしているのを見た。ほっとした。
(日本のスタジオにいた織田くんが、ソチの大ちゃんに呼びかけた瞬間に号泣したので、さらになごむ)

そしてその中で、来月の埼玉での世界選手権には出るような?雰囲気の答え方だったので驚いた。
今回のコンディションからいって、もう世界選手権には出られないんじゃないかと思っていたので。
そして今後のことについても「自分の中でだんだん固まってきてはいる」とだけ言っていた。さらに現役続行も、なんて書いていたメディアもあるようだけど、さすがにそれはありえないと思う。
ただ、大ちゃんがとてもすっきりした、すがすがしい顔をしていたこと。それがただただ、うれしかった。彼は長光コーチの書いていた長い苦しみから、ついに解放されたのだと思った。




ソチ五輪男子フリーの高橋大輔選手。
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思いを込めた「ビートルズメドレー」。
やさしくあたたかい、唯一無二のスケートがそこにあった。
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明け方、生中継を泣きながら観て。
何度でも観たいけど、つらくてまだ録画を観ることはできてません。



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キスクラでクマさんとともに。
ずっと笑顔だった。悔しさも苦しさも見せず、最後は自分のために、みんなのために笑顔でいたんだと思った。
6位入賞。
立派な結果だと思う。胸をはって帰ってきてほしい。



今はただ、お疲れさまと言いたいです。
そして残りのオリンピックを精一杯楽しんでください。
ありがとう。ありがとう大ちゃん。
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by higurashizoshi | 2014-02-15 21:54 | フィギュアスケート | Comments(8)

ソチ五輪男子ショートプログラム

オリンピックは何が起きるかわからない、ということは十分わかっていた。
でもやはり、起きたのは予想以上のことだった。


ソチ五輪男子ショートプログラム。

まず最初は、彼。
第2グループの最初に滑走するエフゲニー・プルシェンコ選手に、すべての眼は集まっていた。
けれど、当日の公式練習をたった10分で切り上げたこと、ジャンプをほとんど跳ばなかったこと、そしていよいよリンクインしての6分間練習での異様な雰囲気…。腰に手を当て、苦しげな表情を浮かべている。ミーシンコーチと言葉をかわし、何か諦念するようなうなずきを重ねるのが見えた。
そして彼の名前がアナウンスされ、「ジェーニャ!ジェーニャ!」の大歓声の中、彼は静かにリンクの中央を通り抜け、ジャッジ席へと向かった。
この瞬間、長く長く君臨した帝王の競技生活は終わりを告げた。
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あとのインタビューで、一年前に手術した腰の状態が団体戦で悪化したこと、直前の練習でさらに痛めてしまい、今はジャンプが跳べる状態ではないことを語っていた。
この数年で、プルシェンコは腰と膝を12回手術したという。
何度も何度も引退を宣言してはそれを取り消し、競技の場へ帰ってきた。ボロボロの身体でも強固な意志とプライドで王者の地位を譲らなかった。
今回の五輪も、若手を押しのける形で代表になったことに疑問の声は多かった。それをあの団体戦での絶対的存在感ではねつけたあとの、突然の幕切れだった。
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彼にあこがれ続けた羽生選手が頂点へと駆け上がったこの五輪で、プルシェンコはキャリアを終えた。この象徴的な出来事はフィギュアの歴史に刻まれるだろう。
プルの前にプルなし、プルの後にプルなし。と団体戦のときに書いたとおり、いろいろな意味で後にも先にも現れることがないだろうスケーター。15歳でシニアデビューして以来16年間、彼の存在がフィギュア界に与え続けた影響はすさまじいものがあった。
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ああ、それにしても。
あまりに突然のことでボーゼンとするほかなく、しかし五輪のリンクの上でこうして皆に別れを告げて終わるのは、実は帝王らしい最後なのかも、と思ったりで、そしてそう思う間にも次の選手はリンクインして、男子ショートの滑走は予定を早め、よどみなく遂行されていった。




ショートは、最終2グループの中で注目選手のみ、滑走順に書きます。
ほかに触れたい選手は、フリーのときに。

その前に、ひとりだけ。
アメリカのジェレミー・アボット選手をおそった不運と、そのあとのことを。
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冒頭の4回転トゥーループでジェレミーは激しく転倒、フェンスにぶつかり動けなくなりました。
あまりに長く立ち上がれないので、ケガをしてしまったのか?このまま棄権?今季で引退なのに、ここでこんなふうに終わってしまうの?と頭の中をめまぐるしく不安が巡りました。
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でも、ジェレミーは… やがてよろよろと立ちあがり、そして再び滑り始めた! 客席からは悲鳴のような応援が降りそそぎます。
どう考えてもあの強打のあとは激痛があるはず。しかも音楽には10秒以上は遅れている。
でも彼はあきらめなかった。しかもそのあと、3×3を、そしてトリプルアクセルもみごとに跳んでみせるというミラクル展開!
メンタルが弱い弱いと言われ続けてきた彼が、この五輪で不運にみまわれたあとに見せた奇跡的な底力でした。
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点数はやはり低く、15位発進になってしまったけど…
この日のヒーローのひとりは、確実にジェレミー・アボットでした。
この転倒がどうか、フリーに影響しませんように。



第4グループ。
日本、羽生結弦選手。
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団体戦のときより、さらによかった。ひとつの疵もなく、ひとつの弱さもなく、最後まで攻め続けた演技でした。
このメンタルの強さはどこからくるのだろう。おそらくこれまでの日本人選手の歴史の中で、間違いなくメンタル選手権ナンバーワン。雑念がないのね彼は。まだまだ追われる本当の怖さも経験していないし。
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出てしまいました、ついに100点越えです。
この時点で、結弦くんがメダリストになることは確定した、といっていい。
しかし、プロトコルを見るとやっぱりスケーティングスキル、トランジション、高すぎないだろうか?とあとで思った。ジャッジも人の子、彼の演技は点を出させるのだやはり。

で、日本スケート連盟の小林さんとのキスクラが凄い。
前人未到の101.45点が出た瞬間。
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スペイン、ハビエル・フェルナンデス選手。
彼のいいところより、よくないところが多めに出たショートでした。
とはいっても、ジャンプは悪くない。押しも押されぬ4回転ジャンパーのハビー、肝心のところで詰めが甘い傾向があり、今回も着氷が複数回乱れました。
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でも3位発進。しかし後続がすごいのでまったく安泰ではない。





カナダ、パトリック・チャン選手。
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「エレジー」の完成形、ソチで見たかったな。
とはいえ、トリプルアクセルの着氷以外、目立ったミスはなかったのです。でも全体にみなぎる力は、はっきりいってこのショートでは結弦くんの比ではありませんでしたね。
97点台まで出るとは、本人も思っていなかった様子。文句なく2位発進。





フランス、ブライアン・ジュベール選手。
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こんなガッツポーズのジュベが五輪で!
もうそれだけで胸がいっぱいです。バンクーバーの悪夢は過去へさようなら。
4×3をばっちり決めて、全編エネルギッシュで、ものすごくかっこよかった!
7位発進、もうちょっと得点出てもよかったなあ。





最終グル―プ。

カザフスタン、デニス・テン選手。
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バンクーバーの火の玉小僧も、すっかりいい男になりました。うん、かっこいいわテンくん。
ジャンプの調子がふるわないまま、五輪に突入してしまったのだろうか。でもステップはやっぱり素敵でした。9位発進。





ドイツ、ペーター・リーバース選手。
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うなぎのぼりというかしり上がりというか、このところ加速度的によくなってます。驚異的です。
ヨーロッパの常連さんなれど、目立たない選手だったんですけどね。ジャンプもスケーティングもすごく安定し、美しくなってます。4×3も軽々! ペーターに何があったんだ。
団体戦に続き、ほぼパーフェクトの演技でした。なんと5位発進。





中国、ハン・ヤン選手。
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何度も思ったけど五輪で観るとなお、これ五輪シーズンにぶつけてくるプログラムかなあと思う。彼のよさを出すプロはもっとほかにあると思うけれど。
まだ17歳、かなり緊張してましたね。アクセルは相変わらず、すばらしい飛距離でした。加点が3点近くあるなんてすごすぎる。8位発進となりました。





日本、高橋大輔選手。
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もう何も言わないで。
誰も何も言ってなくても、そんな気持ちです。

右ひざの状態は、あの全日本選手権の前よりよくなってはいない、と知りました。
その状態で五輪に出てきた彼に、この1か月余りの中での焦り、苦しみ、いろんな感情があっただろうと思い、リンクに出てきたのを見ただけで胸がいっぱいでした。
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万全で滑りたかったろう。
五輪に故障をかかえてきた選手はみんなそうだろう、彼だけが特別ではない。そう思いながらも、彼が《特別》である私は、ただ悲しかった。たくさんの、彼を《特別》と思うファンが、同じ気持ちで見つめていたことでしょう。

でも、彼は果敢でした。
ダウングレード判定になってしまったけれど、4回転を跳び、そしてアクセルを、3×3を、みごとに降りてみせた。
いつものスケーティングではなかった。自信のなさ、不安が出ていた。それでも、ステップはすべて4が揃う評価を受けるだけの滑りを見せつけた。
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最後までまったく気が抜けなくて、息を止めて見ていて、終わったあとはただ涙がこぼれました。よかった。逃げずに戦った。そして負けなかった。
結果は4位発進。ダイスケタカハシへの高い評価が、この順位につなぎとめてくれたと思う。
フリーでメダルをと思う気持ちはもちろんある。
でもそれよりも、ただ思いのすべてを出しきるスケートをしてほしい。そして笑顔で終わってほしい。



日本、町田樹選手。
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最終滑走でした。
冒頭のコンビネーションで4回転のあとが2回転になり、でもそれは大きなミスではなく、トリプルアクセルを美しいランディングで決め、ああこれはまっちー、3位には入るな…とほぼ確信した直後。
トリプルルッツがダブルになりました。

一瞬、何が起きたのかわからなかった。絶対に絶対に、ふだんならありえないミス。特別何か不具合があったとも思えないのに、なぜ?
本人もこの痛恨のミスの原因はよくわからないのかも。いわゆるオリンピックの魔物というやつが、最後にまっちーに襲いかかったとしか考えようがない。
たったこれだけで、まっちーは大きく点数を失い、11位という順位での発進に。



1位の結弦くん101.45点と、2位のパトリック97.52点の差は、4点余り。
この点差なら、フリーの出来ではいくらでも逆転可能。結弦くん、まだ金メダル確定ではないです。
とはいえ、当然もう金メダルと銀メダルは、どちらが上にいくかだけのこと。
頂上をかけた一騎打ちをする結弦くんとパトリックの一方で、たったひとつの銅メダルというチャンスを目がけた熾烈な戦いがフリーで展開します。
なんと、3位のフェルナンデス選手の86.98点から11位の町田選手の83.48まで、9人!9人もの選手が、たった3.5点差という僅差で銅メダルを奪い合うのです。なんという恐ろしいことになったんだろう。

男子フリー開始まで、あと4時間。
ただただ、選手みんなが悔いなく終われるように、そして大ちゃんが笑顔で終われるように祈ります。
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by higurashizoshi | 2014-02-14 20:12 | フィギュアスケート | Comments(0)

ソチ五輪ペア フリー

ソチ五輪ペアの競技が昨夜、というか今日明け方に終了しました。
フリーの戦いは予想通りの展開あり、予想外の波乱もあり、最後は涙、涙…。やっぱりオリンピックはオリンピック。あまりにも特別の舞台。


ペアフリー、NHK総合で全部生中継の予定が、女子モーグルで日本人選手が決勝に残ったことで(たぶん)いきなり放送予定が変わってしまい、最初のグループの滑走だけ中継して突如ブツ切れに。
それに関する中継スタジオからのフォローもなく、いったいどこで見られるの!?とツイッター上でもフィギュアファンがパニックに。
私も大あわてでネットでライブストリーミングを探し、米NBCのストリーミングであやうく続きを生で観ることができました。そしたら解説がジョニー・ウイアーとタラ・リピンスキー! 
画質は悪いしカックンカックンしてたけど、ともかくライブで観られたし、ジョニーの解説も聴けたので(ていったって英語だから雰囲気しかわかりませんが)まだしもラッキーでした。

にしてもNHK、あとになって明け方の3時半から最終グループだけ録画で見せてお茶をにごすっていうのは…あんまりじゃないかい? 高橋&木原ペアがショートで敗退して、日本人選手が出てないから、とりあえず金メダルのヴォロソジャール&トランコフだけ見せといたらよかろう、ということなんだろうか。
放映予定を信じて、深夜まで起きて全競技を観ようとしてたフィギュアファンにとっては思いもよらない仕打ちで、ストリーミングを見つけられなかった人の多くはあきらめてしまったらしい…。



さて、ソチ五輪ペア・フリーの結果です。

金メダル、タチアナ・ヴォロソジャール&マキシム・トランコフ。
どう転んでも金、というくらい絶対視されている中、ロシア自国開催のものすごい重圧と戦い、おそらくは不安と戦い、ついにそれに打ちかった二人。
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演技終了直後に顔を両手でおおい慟哭したタチアナさんと、氷につっぷして動けなかったトランコフくん。
ここまで金メダル確実といわれていたゆえの、長い長い道のりの果てがこの場所なのだと、ここに勝者として立てることの奇跡を痛感した瞬間でした。
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最初のスロージャンプで珍しくタチアナさんが手をついた以外、目立ったミスはなし。おそらく慎重になっているゆえのスピードのなさ、全体のキレの緩さはあったものの、確実に金メダルをつかみ取るための演技としては十分でした。
いやもう、ミスがないことを祈りながら息をとめて観てました。ああしんど。でもよかったわあ。本当におめでとう!
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銀メダル、ロシアのクセニア・ストルボワ&フョードル・クリモフ。
なぜかNHKのアナもスタジオ解説も「キリモフ」って言ってたんですけど、クリモフくんですから。まあ、間違えられてしまう程度の知名度だってことなんでしょう。だのに銀メダル。まさか銀メダル。こんなことってあっていいの?
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サフチェンコ&ゾルコビーが、そしてパン&トンがミスをしなければ順位は変わっていたはず… とはいえ、ストクリがここまで完璧でしかもアグレッシブな演技をしなければ、もちろんメダルは獲れなかった。
ショートに続いてすべてのエレメンツでノーミスだっただけでなく、とにかくすべての演技の流れに切れ目がなく、勢いにみちていて。そして最後までそれがまったく衰えることがなかった。
「アダムス・ファミリー」なんていうベタな選曲で、どう考えてもシーズンオフの段階では五輪メダル狙う想定じゃなかったよね…この二人に合ってるプロとも思えないし。でもそれなのに、それなのに、これで銀メダル獲っちゃったよ!?
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以前からのファンだからもちろんうれしいけど、この大番狂わせにいまだ戸惑ってます。
正直にいえば、現役最後のパン&トンにメダルを獲ってほしかった!





銅メダル、ドイツのアリョーナ・サフチェンコ&ロビン・ゾルコビー。
嗚呼。バンクーバーと同じメダルの色になりました。彼らはこの演技をもって現役を引退します。
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これまで、ほぼ常に手堅く高度なエレメンツを決めてきたサフゾルに、この最後の最後の演技で、彼ららしくない大きなミスが二つ出ました。
ソロジャンプでゾルコビーくんが転倒。非常にめずらしいミスです。
そして最後のスロージャンプでサフチェンコさんが転倒。ここが決まっていたら、メダルの色は銀になっていたかもしれない。
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ウクライナからドイツに国籍変更して世界のトップへ向かったサフチェンコさんと、タンザニア人の父とドイツ人の母から生まれ、シングルからペアに移ったゾルコビーくん。欧米ではめずらしくないこととはいえ、まったく異なる出自の二人はお互い別のパートナーを経たのちに固いタッグを組み、度重なるケガや手術を乗り越えて世界選手権で4度の金メダル、オリンピック銅メダルという輝かしい成果をおさめてきました。
いつも新しいジャンルのプログラムにチャレンジする彼らに楽しませ、感動させてもらってきたこと。今はただ、心から感謝したいです。





4位、中国のチン・パン&ジャン・トン。
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メダルには届きませんでした。
でも彼らもおそらく現役最後の演技である「夢やぶれて」、万感をこめた演技に最後の方は涙が止まらず。トンさん、何度も復帰があやぶまれてきた腰の状態をどう調整してこのラストシーズン、五輪まで来たのだろう。

このプログラムも、この二人にしかできないしっとりとした情感あふれるプロでした。度肝を抜くような力技が目立つ中国ペアの中にあって、高い技術とともに美しく気品のある表現力をたもち続けたパン&トン。
二人とも34歳までこうして第一線で戦い続け、長い競技生活の中には栄光と苦しみがたくさん詰まっていたことでしょう。現役を退いたあとは、やっとふつうの夫婦としての休息の日々が待っているのかな。でも、できればアイスショーには出てほしいし、いずれぜひコーチとしてリンクサイドでお顔を見たいです。
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このあとのペアもひとつひとつコメント書きたいところですが、またも時間がなく、しかも今夜の男子ショートを思うと完全に地に足がついてない。ということで5位以下、写真のみご紹介。


5位がカナダのクリスティン・ムーア=タワーズ&ディラン・モスコビッチ。
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6位、ロシアのヴェラ・バザロア&ユーリ・ラリオノフ。
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7位、カナダのミーガン・ディハメル&エリック・ラドフォード。
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8位、中国のチェン・ペン&ハオ・ジャン。
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9位、アメリカのマリッサ・キャステリ&サイモン・シュナピア。
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10位イタリアのステファニア・ベルトン&オンドレイ・ホタレック。
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渾身の戦いを見せてくれたペア出場選手のみなさん、本当にお疲れさまでした!
そして…
あと5時間あまりで男子ショートプログラムがはじまります。
ずっとずっと先のことだと思っていたのに、その日ってやっぱり来るもんなんですね。
覚悟は重々していたつもりだったけど、今から、心臓を体内にたもっておける自信がありませんです。はっきりいって観るのがこわい。
ただただ、ショートもフリーもみんな力を出し切れますように。
そして大ちゃんの右ひざが、どうかあと2度のプログラムを持ちこたえることができますように。
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by higurashizoshi | 2014-02-13 20:08 | フィギュアスケート | Comments(0)

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