ひぐらしだより


人生はその日暮らし。  映画、アート、音楽、フィギュアスケート…日々の思いをつづります。
by higurashizoshi
プロフィールを見る
画像一覧
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

五島列島 小値賀島・野崎島への旅 3

野崎島で過ごした夜は、何か説明しがたい畏れのようなものをひしひしと感じる時間だった。
数人の人間は確かにいるし、電灯も点くし、部屋で布団にくるまって眠れる。それなのに、今この宿舎以外の島中すべてが真の闇に閉ざされて、激しい海風にさらされ続けている光景が頭を離れない。自分が脆弱でちっぽけな存在に思えて、なんとも心もとない。
うとうとと短く眠ったあと、午前5時に起き出した。もちろん外はまだ真っ暗闇だ。身支度をして、5時半すぎに宿舎を出た。少しずつ空に色が差しはじめている。

教会への急勾配を早足でのぼっていく。息が切れる。胸がはやる。
教会の前までのぼり切る。
明けかけた空を背景にした、旧野首教会。
d0153627_09110239.jpg

海を見おろす。
d0153627_09091407.jpg

みるみるうちに、空は明るくなっていく。
d0153627_08580588.jpg

100年以上、ここでこうして朝日を受けてきた姿。
d0153627_09293129.jpg

太陽がのぼった。
d0153627_09330375.jpg

まっさらな今日の光の中、この完璧な美しさをいつまでも見ていたくなる。
d0153627_09383371.jpg

すっかり日がのぼった。
教会を遠景で見る。

石垣の配置や勾配、木々の配置や枝ぶりまで、まるでしつらえられた舞台装置のように完璧に見える。
偶然と年月が作りだした、荒々しくも美しい作品。それは、ここで信仰を暮らしの中心において生き抜いた人たちがいてこそ生まれたものだ。
d0153627_08584618.jpg

野首海岸に降りてみる。
d0153627_10292934.jpg

きれいだなー。
d0153627_10295973.jpg


宿舎に戻って、昨夜厨房で炊いたごはんで作ったおにぎりで朝食。
米や梅干しはリュックに入れて持参した。
旧分校の校庭から、教会を見ながらいただきます。どんだけこの教会が好きやねん。もうこれは完全に恋ですわ。
d0153627_09554896.jpg

私以外の2人の旅行者は、朝の船で小値賀島へ戻っていかれた。昨夜少しおしゃべりした、ひとり旅の女性との会話を胸にそっとしまう。きっとずっと忘れないだろう。

管理人の前田さんからは、ひとりで(ったってもう私しかいないよ)山奥に入らないこと(行方不明者が出て大騒ぎになったことが何度かあるらしい)、午後3時10分発の船に絶対乗り遅れないように港に行くこと、の2つを言い渡された。
島の南端の舟森集落へは道もけわしく、イノシシに会ったり迷って山に入り込んだりする危険があるとのことであきらめ、まずは教会の裏手の山にのぼって景色を堪能することにした。結局、教会を離れがたい恋心。

教会の横を通るときにつくづく観察すると、瓦屋根と西洋風の屋根下飾りのマッチングがなんとも可愛らしい。
d0153627_10344954.jpg

野首集落のあったきつい勾配は、ていねいに積まれた石垣がそのまま残り、きれいな階段状になってずっとずっと山の上まで続いている。低いところには住居が、高いところには畑があったそうだ。
d0153627_10431407.jpg

住居跡。昨日見た港近くの野崎集落と違って、ここはすべて家が崩壊しその残骸が散っている。
d0153627_10363434.jpg

かつて、家族の服をたくさん縫い上げただろうミシン。
島を離れるとき、持っては出られなかったのだろう。
d0153627_10535174.jpg

晴れ渡った空、昨夜とはちがう心地よい風が吹きすぎる。
かなり上までのぼり切り、石垣に腰をおろして海を見下ろす。
心をからっぽにする。

さまざまな鳥の声。
かすかにのぼってくる波の音。
木々の葉ずれのささやき。
ほかには何も、聞こえない。まったく、何も。
d0153627_10561374.jpg

永遠の時間。自分を感じない自由。
これまで味わったことのない感覚だった。

ずいぶん長い時間がたった。
と、突然人間が現れた! 管理人さんではない見知らぬ人が。
ここからはずっとふもとの方にある教会へと、豆つぶほどに見えるその男の人はなにごとか大声で叫びながら走るように近づいていく。
人?どこから来たの?どうして?と思ったが、考えたら何のことはない、朝の船に乗ってきた人がいたのだ。でもなんで叫んで走ってる?
教会までの石垣をのぼりつめたその人は、どうやら「来たぞー!来たぞー!」と叫んでいるらしい。そのまま教会に飛びこんでいった。
なんだろう? ただただびっくりして山の上から見つめる私。

しばらくするとその人は出てきて、今度はいきなり教会前に立つ鐘を全力で打ち鳴らし始めた。
島じゅうに響き渡る鐘の音。
泣くように叫ぶ声が遠く聞きとれた。
「じいちゃーん! ばあちゃーん!」
そのとき諒解した。
この男性はこの集落の住民の子孫なのだと。
どこからか海を渡り、祖父母の記憶を訪ねてきたのだと。
私はそっと石垣から降りた。


名残りおしく旧野首教会に別れを告げて、私は通称サバンナと呼ばれている島の東端をめざした。
港を過ぎて野崎集落の崩落寸前の家々の間を通り過ぎる。家々の間の道もすでに崩れて、よじのぼるように行く。ずっと歩き続けると、廃墟の奥に一面の大平原が見えてきた。
d0153627_22240750.jpg

鮮やかな赤土と、その上をおおう新緑のコントラストが美しい。
木の枝はみんな、強い海風の形にかしいでいる。
d0153627_11370121.jpg

平原のあちこちには、無数の鹿の群。
少しでも近づくと、警戒して逃げてしまう。
d0153627_11381919.jpg

そんな中にも、好奇心の強いのがいるもの。
すみません、おじゃましております。
d0153627_11395096.jpg

ここで腰をおろし、大平原と海をながめながら昼のおにぎりを食べた。
なんとも気持ちのいい風景の中に、まったくのひとりきり。それなのに、なぜか落ち着かなくて、背中がぞわぞわする。

この感情はなんだ? と自問してみると、それは《怖さ》なのだった。
何が怖いのか? 怖いというか、不安感。危機感。さっき山にいたときは、背後を守られていた感じがあって、あんなに心地よかったのに。
それに比べて、この平原は見渡すかぎり360度、何も守ってくれるものがない。
何が襲ってくるわけでもないことはわかっているのに(あちこちに掘り返した跡があるイノシシには会うかもしれないけど)、なぜか不安でたまらなくなってきた。
自分がひどくちっぽけで、丸はだかにされた非力な生きものだと痛切に感じる。
あかん。怖いぞ、私。

このままではいかん、動かなければ、と立ち上がり、さらに平原の奥へ奥へと歩く。
何がこの先にあるのか見てやろうと思う。
ずいぶん歩くと、どうやらまた島の端に到達するらしい。波の音がする。
本能的に再び、絶景の予感。

いきなり目の前が開け、まるで地球がカッと大きな口をあけたような光景が目に飛び込んできた。わあああー!
d0153627_22543014.jpg

写真ではよくわからないけれど、赤い地層がむきだしになってえぐれたような巨大な穴が、海を呑みこむようにそそり立っている。
しかも、このまま少し前にいけば崖をザーッと海まで転がり落ちていきそうな足元のあやうさ。
またまた私は心臓がバクバクして、「怖いー!」と叫んでしまった。
四方八方、誰も私の叫びを聞く人などいないのに。

ひええ、だめだ。私ってこんな弱虫だったのか。
足に力が入らないまま、またもふらふらと歩き回る。
怖いぞ怖いぞ、誰もいないのって怖い。
(あとで調べると、あの《地球の口》みたいなやつは、野崎島の海底火山の噴火口の跡だった)
ふたたび平原をあちこち歩いて、方向があやしかったものの、やがて野崎集落に戻ることができた。しかしここも廃墟なのである。なんだか身体がみしみしする。

野崎集落で最後の住人だった神主さんの家が、最近修復されたばかりで公開されていた。
廃墟の中に突然一軒だけ、真新しい家があるのがシュール。これも、世界遺産登録を見越してのことらしい。
そこの庭にも、ふと見ると鹿がいた。ゆったりと木々の新芽を食んでいる。
d0153627_23223707.jpg

とうとう港に到達。
人がいるってすごい。軽トラに乗って管理人の前田さんがノンビリとやって来るのが見えたときは、前田さんが天使に見えた。
天使がイノシシの檻にエサをしかけるところを見せてもらう。
d0153627_23160783.jpg

ここに人が二度と来ないのなら、イノシシも狩られることなどないのに、と思うと複雑だ。
無人の島になったがゆえに、私のようにここにやってくる人間がいるという矛盾。

私のほかに港で船を待つ人、それが午前中に教会で鐘を鳴らしていた男性だと気づいた。
聞けばやはり、6歳までこの島に、しかも教会のすぐ裏の家に住んでおられたそうだ。
20年ぶりにここを訪れ、荒れ果てたキリシタン墓地の草刈りをし、墓を調べて先祖のこともいろいろわかったとのことだった。そして旧野首教会を建てた信者の直接の末裔は、もうたぶん自分だけではないかと言われていた。

町営船「はまゆう」がやってきた。
とうとう、野崎島とお別れだ。
たった25時間ほどいただけなのに、ものすごく長い時間をここで過ごしたような気がする。
d0153627_23402987.jpg
ここから小値賀島の港までの写真が、なぜかまったくない。
たぶん私は、疲れ切ってぼーっとしてたんだと思う。
そしてただただ、去りゆく島を見ていた。

たった25時間。でもその間にここで体験したこと、自分の奥深くに感じたことを、きっと私は一生忘れないだろう。

このあと、小値賀島ではまったく別の時間が流れる中、また新たな体験があった。
次回はそのお話。

*****


[PR]
by higurashizoshi | 2017-04-29 23:54 | 旅の記録 | Comments(3)

五島列島 小値賀島・野崎島への旅 2

さて、目的の野崎島に渡るには、事前に予約が必要ということで、「おぢかアイランドツーリズム」にメールで申し込んでいた。
とっても素敵なHPを完備して小値賀島や野崎島の魅力をアピールしておられる「おぢかアイランドツーリズム」さん(HPはこちら↓)

現地では、小値賀港ターミナルの中に窓口兼事務所が。
d0153627_08495906.jpg

現在は無人島である野崎島。昭和40年代までは長きにわたり、数は少ないけれど住民がいた。過疎による集団離島のあとも最後の最後まで残っていた方が島を離れたのは平成13年というから、完全に無人島になったのは意外に最近なのだ。
島内には3つの集落があり、そのうち2つが元々潜伏キリシタンの人たちが住む場所だったそうだ。
私の目指す「旧野首教会」は、島の中央あたりにある野首集落というところに建っている。

いよいよ、町営船「はまゆう」で野崎島へ出発。
d0153627_14505543.jpg

ぐるっと野崎島の周りをめぐっていくので、島の様子がよくわかる。船のスタッフが、「あれが王位石(おえいし)ですよ」と教えてくれる。
「王位石」というのは、野崎島に飛鳥時代(!)に建てられたという冲ノ神島神社の後ろにそびえ立つ巨岩。不思議な形に積まれていて、考古学的にも謎が多いらしい。8世紀にはすでにこの小さな島に神社や建造物があったのか…。

途中、予告なく別の島に立ち寄る。ここはドコ? あとで聞いたら、すぐそばにある六島(むしま)という島で、ここには住民が3人だけ(!)いるという。だから日用品を運んだりインフラを整備したりする必要があるのね。
d0153627_09152225.jpg

いよいよ野崎島に上陸。
この町営船が、小値賀島と六島とこの野崎島を、1日2便で結んでいる。
d0153627_09153603.jpg

港には、人がここに上陸する予約が入っているときだけ小値賀島から来る管理人さんが待っていてくれた。
実は、予約の段階ではこの日野崎島に渡るのは私ひとり、泊まるのも私ひとりになっていた。オフシーズンだけに、無人島をひとりじめ!と思っていたのだが、この前日がひどい暴風雨で船は欠航。そこで足止めをくった旅行者2人が予定変更してこの日に渡航することになり、島に渡る人数は3人となった。管理人さんを入れて4人だけが、この一夜を野崎島で過ごす人間となる。

みなさんひとり旅で独立心ある人ばかりで、基本バラバラに行動したのでストレスはなかったし、むしろ後になってからは、もし予定通り島にたったひとりだったら相当こわかっただろう…と思う場面も多々あった。

港に降り立つと、3つの集落のひとつ、野崎集落が目の前に。
住民の離島から長い年月がたち、すでに崩壊寸前の廃屋が並んでいる。
d0153627_09455588.jpg

島の樹木が、人の積んだ石垣を深く食んでいる。
d0153627_09474238.jpg


かつて集落の中心だっただろう神社も、石段をあがると社殿は完全に崩落していた。
こういう景色を見るとどうしても東日本大震災の被災地を思い出してしまう。人が長い年月いつくしんだ大切な日常が、断ち切られ朽ちていく光景。
d0153627_09471155.jpg

島のいたるところに群生していた、鮮やかな黄色の花。
朽ちゆく人工物を背に、植物たちはのびのびと咲きほこっている。
d0153627_09505284.jpg

意外だったのは、港から島の中心部へ向かって、大きな電柱が並んで電線が延びていること。
無人島とはいえ、宿舎に人を泊めるためにこうして電気を運んでいるわけだ。

野崎島の平地部分は、ほんとうにわずか。あとで歩いてみてよくわかった。
その貴重な狭い平地、このあたりはきっと畑だったのだろう。
d0153627_10022405.jpg

その後は山道の急勾配を、息を切らせつつのぼっていく。
たちまち高みへとやってくる。絶景の予感。

視界が開けた!
d0153627_10094570.jpg

おおー。
d0153627_10102183.jpg

これが野首海岸。
目に沁みるほど真っ白な砂と、群青の海。
あたりまえながら、誰も、誰もいない。
d0153627_10121279.jpg
海岸を見下ろしつつ、山道をさらに進む。
港から20分あまり来ただろうか。目の前に谷があらわれた。野首集落。
あれだ。小さく見える、レンガ造りの建物。
d0153627_10272469.jpg
このあたり、私テンパりすぎてほとんど写真撮ってません。
あこがれた教会がすぐそこにあると思うと、ドキドキしすぎて頭まっしろで、ひとりで「ああー」とか「はー」とか言いながら近づいていった記憶が。
d0153627_10363690.jpg
見上げるところまでたどり着いた。
のぼっていく。
人の手でひとつひとつ積まれたであろう、ごつごつの石垣と石段。
はげしい勾配。
d0153627_10400524.jpg
のぼっていく。
d0153627_10403659.jpg
見上げる。
d0153627_10465218.jpg
見上げる。
d0153627_10453980.jpg

振り向けば、眼の前は海。
d0153627_10545228.jpg
旧野首教会は、この教会周辺に住んでいた17世帯の信者が、生活を切りつめて持ち寄った資金で1908年(明治41年)に建てられた。今のお金にして数億円ともいわれる材料費と建築費を、たった17戸の家庭が知恵をしぼり、力を合わせて捻出したのだ。
かつて潜伏キリシタンとして厳しい弾圧の時代を生き抜いた野首集落の人たちにとって、この美しい教会はいわば信仰の証、夢の実現だったのではないだろうか。

多くの教会建築で知られる鉄川与助が最初に設計・施工したレンガ建築の教会とのことで、とても小さいけれど端正で、素朴にして完成された美しさだ。
d0153627_11215922.jpg
内部もまた美しかった。
撮影はできなかったが、つつましやかな祭壇、やわらかな色味の木を基調としたリブ・ヴォールト天井のなんともいえず親密であたたかな雰囲気の空間。ここに17世帯の信者たちが集い、祈りをささげていたと思うと敬虔な気持ちになる。
そしてこの教会を置いて島を出ていくとき、信者の方たちはどんな思いだったかと想像してみる。
(内部の写真はこちらで見ることができます↓)
教会の裏手にのぼってみる。
実に、この教会は建物の美しさだけでなく、周囲の状況がドラマチックなのだ。
d0153627_11421638.jpg
教会の周りにも家があり、畑があったらしい跡が広がっている。
この海風の吹きすさぶ、傾斜のつよい土地を耕して暮らしていくのはどれほど大変だったことだろう。

あちこちにアザミが咲いていて、うっかりそこらに腰を下ろすと鋭い葉でおしりをチクリと刺される。
d0153627_11594166.jpg


野首海岸に降りていく。
ほんとうに真っ白な砂。きめこまかいパウダー状で、足がめりこんでいくほど。
d0153627_11532199.jpg

夕景を見に、古いダムを越えて向かい側の海辺へ。
d0153627_12042658.jpg

キリシタン墓地があるのが遠く見える。
すっかり荒れてしまっている。
鹿や猪よけのフェンスも傾いたまま。
d0153627_12050570.jpg

波の音と、風の音しか聞こえない夕暮れ。
d0153627_12044743.jpg

野崎島唯一の宿泊施設、自然学塾村。
管理人の前田さんが作られたユニークなアートがいろいろと並ぶ。
d0153627_12054894.jpg
ここは、かつて人が住んでいたころの小中学校分校跡。
子どもたちがここで学び、前庭は集落総出の運動会の開かれる校庭だった。
今はきれいに整備され、畳も敷かれて意外に快適に泊まれる。自由に使える厨房もある。ムカデ、ネズミに注意、外には鹿と猪、というワイルドさはもちろんあるけれど。
d0153627_12060614.jpg
夜。
前日の暴風雨のなごりの強風が吹きすさんでいて、ものすごい音で宿舎が揺れる。
外は漆黒の闇。
電気もついて、建物にも守られているのに、ひしひしと何か強いものが迫ってくるように感じる。
「ここは、死と隣り合わせよ。」
昼間聞いた、前田さんの言葉が思い出される。なかなか寝つけない。
明日は教会にのぼって夜明けを見よう。

次回、野崎島2日目です。

*****



[PR]
by higurashizoshi | 2017-04-26 12:35 | 旅の記録 | Comments(0)

五島列島 小値賀島・野崎島への旅 1

始まりは、一枚の写真だった。
ある日、新聞の折り込み特集に、日本のさまざまな島を紹介する記事があって、その中にモノクロのレンガ造りのちいさな教会の写真があった。山を背景に、石垣の上に立っているような、なんともいえない静かなたたずまい。その一枚の写真に、私はくぎづけになった。美しい。なんて美しいんだろう。
しかも記事を読むとその教会は、今は無人島になっている五島列島の小島にあるという。
誰もいない島に建つ教会。その風景をこの目で観たい。なぜか引き込まれるようにそう思い、いつか必ずここへ行こうと心に決めた。

それから一年半もたたないうちに、時はやってきた。願いがかなうのは、私の人生としてはかなり早かった。きっと近年、日頃のおこないがいいからであろう。
その島の名は、野崎島。長崎県の五島列島の北の方にある。
しかし、無人島であるからして、野崎島に直でいくことはできない。近くにある有人島、小値賀島(おぢかじま)にまず行って、一日2便の野崎島行きの航路を使わねばならない。
野崎島に行くことしか考えてない私は、小値賀島のことはなんも知らない・調べないまま、佐世保港を船出した。
d0153627_13441255.jpg

奮発して高速船「シークイーン」というのに乗ったら、これが速い速い。すさまじく飛ばしつつ湾を出て平戸あたりを通り過ぎ、ぐんぐんと五島列島北端へ。

着いたぞ小値賀島。はじめまして。あなたのことはまだ何も知りませんがよろしく。
d0153627_14123994.jpg

のどかだけど、意外に大きな港です。
d0153627_14131514.jpg


これが小値賀のメインストリート。
d0153627_13450405.jpg


昭和のまま時がやわらかく立ち止まっているような街並み。
d0153627_14175657.jpg


こんにちは。
d0153627_14182657.jpg


野崎島への船が出るまでの間、小値賀の民俗資料館へ。
かつて盛んだった鯨漁で財を成した名家が資料館になっている。
d0153627_14254027.jpg

実にこぢんまりした資料館の中は貴重な考古学的資料がぎっしり!
この資料館の学芸員の土川さん。
いろいろお話をうかがっていたら、元シスターで、野崎島とも関係の深い方だった。
d0153627_14274040.jpg

かつて潜伏キリシタンが隠れ住んだ野崎島・舟森集落に、44年前に神父を案内して渡り、その後この小値賀島に居を定められたそう。
「小値賀が大好き。どこにも行きたくない。」
そんなに愛される小値賀島。その魅力をもっと知りたくなる。

資料館を出てぷらぷら歩いていると、さっき港でちらっと会った地元の青年にばったり。
「お昼がまだなら、うまい店にご案内しましょう。」
都会だったらぜったいついていかへんわ、これ。聞くと青年は学生時代の旅でこの島にほれこみ、東京から小値賀の町役場に就職したのだそうだ。どこにそこまでほれたのか聞いてみると、
「ここは時間が何倍にも感じられるんですよ。それと、人ですね。人がいい。」
とのこと。
青年おすすめの店「ふるさと」。超ジューシーな肉厚の焼きアジと、ぷりぷりのお刺身、あごだしのお吸い物。うみゃあ!
d0153627_14433744.jpg
さて、いよいよ野崎島への町営船が出る時間。
緊張してきたぞ。
30分ほどで着くのだけど、こことは別世界が広がっている予感。
この予感は当たっていたどころか現実はそれをはるかに超えていたのであった。
次回、野崎島一日目です。




[PR]
by higurashizoshi | 2017-04-23 15:01 | 旅の記録 | Comments(0)

桜の季節にさよならを

桜の咲きごろとお天気をためすがめつしながら過ごす中、飛びこんできたニュース。
この時期に?と最初は思ったけれど、本人は2月には心を決めていたという。世界選手権が終わり、次のシーズンが始まる前に決着をつけた。
d0153627_22190554.png

幼少期からの卓越した天賦の才能、五輪銀メダルや世界選手権3度の金メダルをはじめとする輝かしい実績の数々、華やかなスター性と万人に愛されるキャラクター。まさに後にも先にも現れない、あまりにも特別なスケーター。彼女が日本女子スケート界に与えた影響は限りなく大きい。そして浅田真央という名が、世界のフィギュアスケートの歴史からも忘れられることはないだろう。


みんなが「真央ちゃん真央ちゃん」という中で、私は長らく彼女のファンというわけではなかった。それが、2014年の神戸チャリティーで生の「ジュピター」を観たときに変わった。目の前をスパイラルしていく浅田真央選手は、この世ではないどこかの、美しい生きものだった。
以来、彼女を心の中でずっと応援した。特に休養後、復帰を決めた彼女の一途さに心動かされた。平昌五輪で今度こそ金メダルを獲るという、彼女の願いがかなえばどんなにいいかと思った。
d0153627_22231880.jpg

ことのほか苦しかっただろう今シーズン、左ひざの痛みも限界を超えていたという中で、最後までトリプルアクセルにこだわり、きれいな引き際を選ばなかった彼女。その愚直なまでの頑固さと誠実さに、スターでもましてやアイドルでもなく、彼女はあくまでも厳しくアスリートであり続けたのだと感じる。
すべてを兼ね備えたスケーターでありながら、究極の目標をついにかなえることはできなかった。けれど同時に、彼女は現状に満足して守りに入ることは決してなかった。その事実を胸に、別れを告げたい。

さよなら、偉大なスケーターであり、最後までもがき続けた浅田真央選手。あなたの輝かしい戦歴とともに、その勇気はずっと、静かに光り続ける。
新しい人生に多くの幸せがありますように。


d0153627_22172106.jpg


[PR]
by higurashizoshi | 2017-04-16 22:29 | フィギュアスケート | Comments(0)

世界選手権2017男子フリー、アイスダンスフリーダンス終了

一昨日夜は予定通り福島の宿泊先にて、iPadとスマホとテレビの3本立てで男子フリーの全滑走を観戦。
ライブストリーミングが何度も固まるので、そのたびにiPadとスマホで更新を繰り返し、ところどころの演技が切れ切れになりつつもなんとか前半グループを観て、後半グループはフジ系列の生中継へ。CMで切られる部分は引き続きライストで、というやり方で追いかけました。
観終わった直後から翌日の会議の打ち合わせのため、男子フリーのあとのアイスダンスのフリーダンスは惜しくもライストで観られず。一夜明けて会議、夕方終わって6時間近くかけて福島から帰ってくる車中はさすがに疲れて、フリーダンスの結果だけネットで確認して、男子フリーの感想をスマホで入力するエネルギーはさすがになく…。

で、昨夜の夜中近くに帰宅して、フジ系列のエキシビションの放映を観て、シブタニズとスイハンの演技にことのほか感動し、あちこちネットで情報を見ながらビール飲んで寝ちゃいました。
今朝起きたら録画しておいた「めざましテレビ」でスピッツの新曲とミニ特集を確認。やっぱりスピッツは最強ですわ。(30周年のツアー、大阪城ホール2デイズとも当選したのが福島入りしてからわかったので、ほっとしてます)

さて話を男子フリーに戻します。
1日半たったのでだいぶ冷静になれました。
あまりのフリーでしたね。あまりのショートのあとに、あまりのフリー。もはや未曾有を「みぞゆう」と言っちゃいそうです。現実を現実としてとらえられないというか。総合300点超えても表彰台に乗れないんですよ。どこの世界の話やねん。

戦い終えて勝ち残った男3人。こうして見るとなんだかみんな、幼な顔。
まさに歴史を塗り替える死闘をくぐりぬけた勝者たちなんですけど、アジアの中高生大会みたいに見えなくもない…
d0153627_18192539.png
これが現役最後の競技演技となったミーシャ・ジー選手の自己ベスト更新演技、予想外の順位となったもののついに四回転6回入れたネイサン・チェン選手、最終滑走でまさかの涙を飲んだハビエル・フェルナンデス選手など、忘れがたいことが山ほどありました。

そして羽生結弦選手。やっぱり追う立場になることって彼のハイオクガソリンなんですね。
ショート5位発進という屈辱が炎に。そして最終グループで最初の滑走というめぐり合わせも幸運でした。ついにすべてのジャンプを完璧に跳び、疵のないフリーを完成させました。
見たことのないものを幾度も幾度も私たちに見せてくれる結弦くん。今度は321.59という見たこともない得点が現実となりました。どこまで点を出せるのかという限界への挑戦。彼はどこまでもいきたいだろうし、ケガさえなければもっともっと先へいけるでしょう。

誰しも結弦くんのこの大記録達成、奇跡的な演技に総立ちになってるのは当然ですが、2位を勝ちとった宇野昌磨選手のショート・フリーをそろえたすばらしい演技、結弦くんの天文学的歴代1位記録に実に僅差の313.31!これにももっと注目してほしい!
たった1年前、初めての世界選手権で7位に沈み、キスクラで茫然自失でボロボロと涙を流していた彼が、たった1年でこの高みまできたことの奇跡。
そしてフリー後のインタビューで実にさらりと自然な表情で語った、ショーマこのことばが私は忘れがたい。
「落ち着いて楽しく滑れました。世界選手権を深く味わうことができました」
深く味わう…こんなことばを競技の、しかも世界選手権のトップ争いの感想として言える19歳。その感性。彼のこれからが、私は怖いくらい楽しみです。

ボーヤン・ジン選手も、ショートとフリーをみごとにそろえ、ほんとにすばらしかった!
男子フリーについては、もっとくわしくのちほど書きたいと思います。とりあえず結果だけ載せておきます。

◆世界選手権2017 男子フリー結果◆

1 羽生結弦(日本)321.59
2 宇野昌磨(日本)319.31
3 ボーヤン・ジン(中国)303.58
4 ハビエル・フェルナンデス(スペイン)301.19
5 パトリック・チャン(カナダ)295.16
6 ネイサン・チェン(アメリカ)290.72
7 ジェイソン・ブラウン(アメリカ)269.57
8 ミハイル・コリヤダ(ロシア)257.47
9 ケヴィン・レイノルズ(カナダ)253.84
10 アレクセイ・ビチェンコ(イスラエル)245.96
11 マキシム・コフトゥン(ロシア)245.84
12 ミーシャ・ジー(ウズベキスタン)243.45
13 モリス・クヴィテラシヴィリ(ジョージア)239.24
14 デニス・ヴァシリエフス(ラトビア)239.00
15 ブレンダン・ケリー(オーストラリア)236.24
16 デニス・テン(カザフスタン)234.31
17 シャフィク・ベセギエ(フランス)230.13
18 ミハル・ブレジナ(チェコ)226.26
19 田中刑事(日本)222.34
20 ポール・フェンツ(ドイツ)217.91
21 ヨリク・ヘンドリクス(ベルギー)214.02
22 ジュリアン・ジー・ジェイー(マレーシア)213.99
23 アレクサンドル・マヨロフ(スウェーデン)205.04
24 マイケル・クリスチャン・マルティネス(フィリピン)196.79


******

[PR]
by higurashizoshi | 2017-04-03 21:45 | フィギュアスケート | Comments(0)

世界選手権2017 女子フリー、アイスダンスショートダンス終了

ショートダンスのライストのあと、夜中12時から女子フリー前半2グループをライストで観戦。引き続きフジ系列の地上波生中継で後半2グループで観終わり、明け方4時。
ちょっと寝て、起きて、現在福島へ向かう新幹線車中です。ゆえに珍しくスマホで書いてます。

このあと福島到着後は16時過ぎからの男子フリーをホテルでライスト観戦、17時半から福島テレビでの生中継に移ります。てか、そうなるように仕事も調整して全部の予定を組んだのです。
こういうのをフィギュアに関心ない友だちに話すとクレイジーと言われるけど、好きとはこういうこと。私にとってはまったく当然の行動と申せましょう。

さて、特にアイスダンスに関してはライストはやっぱキツいですね。世界最高峰の戦いをカクカクの荒い画面で、時には固まったり暗転しては「ぎゃー今ここで」等となりながら観るのは、アイスダンス愛好者にとっていわば生殺し状態。ダンスは細かい動きやエッジさばきが得点を生んでいくので、正直ライスト画面ではモヤモヤとしかわからんのです。

とにもかくにも観終えた感想は、ただただテッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組が別次元すぎるってこと。長期休養のあとの復帰シーズン?衰えどころか緩みどころか、以前より進化してる。
彼らが不在の間に急成長して世界トップになったパパダキス&シゼロン組を実にアッサリと退け、すべてにおいて異世界な技術と表現力を見せつけてます。昨日のショートダンスでは前人未到の82.43というスコアを出しました。早くクリアなテレビ画面て観たい。
フリーダンスでも転倒などの大きなミスがない限り(テサスコにはまずありえない)1位は変わらないでしょう。2位以下が凄まじい団子状態なのでどうなるか。熾烈です。

そして女子フリー。
パーフェクトが続いて《神ってる》状態だった男子ショートとは対照的に、大崩れあり完璧ありとそれぞれ明暗が非常に分かれる結果となりました。

メドベージェワ選手のあの揺るぎない強さ、一点の迷いもないクリアな演技。卓越した技術を進化させ続ける凄さはもちろんのこと、17歳でどうやってこの精神力を身につけられるのか。いや、子どもの頃からずーっとこうだったんだろう。そんな気がします。彼女は今朝、また世界歴代記録を軽やかに更新してみせました。
そしてカナダ女子2人、今回は強かった。そして三原舞依選手、すばらしいフリーでした。樋口選手も本郷選手も本当によくやったと思います。

もっとも印象的たったのは、カロリーナ・コストナー選手の演技。まるで音楽が彼女から流れ出しているようで、ひたすらに気高く、美しかった。
もうひとつ、アンナ・ポゴリラヤ選手のあまりに悲しい演技にも、いまだに胸がしめつけられています。すっと今季好調だった彼女なのに、ワールドでなぜ魔物に掴まれたかのようなジャンプの崩壊が起きたのか。

女子フリー上位結果です。

1 エフゲニア・メドベージェワ(ロシア)233.41
2 ケイトリン・オズモンド(カナダ)218.13
3 ガブリエル・デールマン(カナダ)213.52
4 カレン・チェン(アメリカ)199.29
5 三原舞依(日本)197.88
6 カロリーナ・コストナー(イタリア)196.83
7 アシュリー・ワグナー(アメリカ)193.54
8 マリア・ソツコワ(ロシア)192.20
9 エリザヴェト・トゥルシンバエワ(カザフスタン)191.99
10 ダビン・チョイ(韓国)191.11
11 樋口新葉(日本)188.05
12 マライア・ベル(アメリカ)187.23
13 アンナ・ポゴリラヤ(ロシア)183.37
14 シャンニン・リー(中国)175.37
15 ロナ・ヘンドリクス(ベルギー)172.82
16 本郷理華(日本)169.83
17 ニコル・ラジコワ(スロバキア)165.55
18 ロレーヌ・ルカヴァリエ(フランス)162.99
19 ニコル・ショット(ドイツ)161.41
20 イヴェット・トート(ハンガリー)160.77

男子フリーは大波乱になりませんように!


*****

[PR]
by higurashizoshi | 2017-04-01 12:05 | フィギュアスケート | Comments(4)

フォロー中のブログ

明石であそぼう! たこ焼...

最新のコメント

bikegogoyさん ..
by higurashizoshi at 14:59
いやー、楽しかったです南..
by bikegogoy at 22:38
伝わってきます。なんてい..
by まにまに at 10:40
まにまにさん 読んでく..
by higurashizoshi at 22:45
先輩、すごい旅をしたんだね。
by まにまに at 18:27
おはようございます。 ..
by Disney 鴨 at 10:36
Disney 鴨さん ..
by higurashizoshi at 01:15
こんばんは。ひぐらし草子..
by Disney 鴨 at 20:22
Disney 鴨さん ..
by higurashizoshi at 08:28
こんにちは。 男子SP..
by Disney 鴨 at 17:05

検索

タグ

ファン

ブログジャンル

映画
ウィンタースポーツ