ひぐらしだより


人生はその日暮らし。  映画、アート、音楽、フィギュアスケート…日々の思いをつづります。
by higurashizoshi
プロフィールを見る
画像一覧
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

加子母明治座クラシックコンサート

いや~、またもやご無沙汰してしまいました。
気づくと、島旅記録を書き上げてから、はや1ヶ月以上。
なんせ、仕事が3つに増えちゃった上、新しく合唱団にも入ってしまったり、忙しいの嫌いなのに自分で自分を追い込むことになっており。
その間に、世間はいろいろとキナ臭い動きが起きていて、私たちがお互いを監視する社会を作るような法律が着々と作られようとしています。なんだか先行き暗く思えることばかり。

私自身は明日から今夏の保養キャンプにそなえて福島行きなのでその準備でドタバタしてるのですが、これだけは書いておきたいと思い、先日行った「加子母明治座」でのクラシックコンサートのことをちょっとだけ。こんな楽しく輝く時間があったことを忘れたくなくて。

去年、岐阜県は加子母(かしも)村にある芝居小屋「明治座」での年一回のクラシックコンサートに友人が行っていたく感動し、すぐに写真を送ってくれたのがはじまり。農村歌舞伎の芝居小屋でクラシック!という新鮮さにも心ひかれ、今年は私も行ってみることにしたのでした。

訪れた6月11日は、コンサートの2日目。
お天気にも恵まれ、田植えの終わったばかりの苗の緑と、真っ青な空が美しい。
向こうに見えるのが明治座です。
d0153627_18571091.jpg
これが明治座の建物。こぢんまりとして端正です。
d0153627_19174178.jpg
中の様子。コンサートが始まる前にパチリ。
素朴にして丁寧な作り。大切に修復され、使われている様子がしのばれます。
d0153627_19261458.jpg
120年以上の昔、地元の方たちが力を合わせて山から切り降ろしてきた材木が使われているそうです。美しい。
d0153627_19262007.jpg
第19回を数えるというクラシックコンサート、今年の演目。
ハイドン、ヴィヴァルディ、バッハ。
オーボエとクラリネットの協奏曲、チェンバロの協奏曲など、日頃あまり聴く機会のないユニークな曲ばかり。
バロック専門の合唱団に最近入った私としては、かなりぐっとくるプログラムでした。
d0153627_19322199.png
なんといっても、小編成オーケストラの皆さんがとてもいい音を奏で、しかもすごく楽しそうに演奏しているのがよかった!
こんなに奏者が楽しそうに弾んでいるコンサートは初めてでした。
チェンバロも生で初めて聴くことができ、そのつつましく気品ある音色にうっとりしました。
チェンバロ奏者の方は、なんと加子母村に住んでおられるそうです。

アンコールでは、クラリネット奏者のお二人がなんと花道から小走りで登場。
しっかりと歌舞伎の見栄を切って見せてから演奏に入る、というサービスぶりで、こういう「遊び」の部分もほんとに楽しかった。

コンサート終了後、20年しかもたないという屋根板を、1枚500円で寄付するというのに参加しました。住所と名前を板に書いて、あと18年くらいで屋根の葺き替えのときにこれが使われるのだそう。

18年…

生きてるかな…
生きてたら何してるかな…

と、友人と話したりしました。

これがその板屋根。ちょっとわかりにくいけど、瓦屋根の向こうに石で重しをしてる部分です。
d0153627_19263061.jpg

明治座の奥の山は、なんともいえない清涼な空気が流れていました。
気持ちいい。
d0153627_19263743.jpg
帰りには腰を抜かすほど美味しい近江牛を夕食にいただき、1日だけの短いけれど充実した旅が終わりました。いつもいろんな楽しい場所を教えてくれる友人に感謝です。

さて、明日は福島。
旅支度をせねば。



[PR]
# by higurashizoshi | 2017-06-16 19:50 | 旅の記録 | Comments(0)

五島列島 小値賀島・野崎島への旅 4

長々とつづってきました今回の旅の話も、これで最終回(たぶん)。
いつも「ブログなんて長いと誰も読んでくれないよ」と人から言われるので、そうよねーと思い、今度こそ短く書こうと思うんだけど… なんか、長くなっちゃうんですよねえ。だから途中であきちゃう人もいるんだろうなあ。まあ、気が向いた方はもう少しおつきあいください。

さて、野崎島でアクティブなエネルギーを使い果たし、あれこれ感じ考えすぎてボー然状態で小値賀島に戻った私。小値賀での1泊2日はもうひたすら、なすがままに過ごそうと決めていた。
目的なし。急ぐ用なし。何にも考えず、のんびりと。
そもそも、最初に書いたように野崎島が大きな目標すぎて、小値賀島のことは何も知らないまま来てしまったので、島の地図すら現地でもらって初めて目にした始末。

小値賀島での宿は、「愛宕」という民宿に予約をしていた。
愛宕のご主人が港まで車で迎えに来てくださっていて、ラクチンで宿まで。ああ、なんだこの極楽ぶり。自分で歩かないってなんて楽なの。そもそもあちこちに人がいるし!
そう、人がいるってすごいことなのだと思った。人がいるって、ものすごい安心感だ。もちろんストレスにもなりうるわけだけど、このときの私には、あったかいお風呂に急にチャポンと入ったかのような、心がほとびるような感覚があった。

着いた民宿「愛宕」さんは、なんと目の前に野崎島がドーン!
小値賀港からかなり離れていて、ちょうど野崎島側の別の漁港に面していたのだ。さっき別れたばかりなのに、どこまでも縁があるわね野崎島。
d0153627_16053795.jpg

素朴なお宿に落ち着き、そのあとは付近をぶらぶらと散歩したくらいで、ぼよーんと過ごした。
お散歩中にも、あちこちで行きあう人がみんな「こんにちは」と言ってくれる。あたたかい。
庭先の花にも、人の住む気配を感じる。
d0153627_16093746.jpg

とはいっても、小値賀島も過疎に悩む島だそうで、今の人口は2600人ほど。
確かに、散歩しているとところどころに、空き家らしい建物が目立つ。

まるで、昭和の街並みにタイムスリップしたような。
d0153627_16132766.jpg

家の前にこんな木があるって、やっぱりここは南の島なんだなあと思う。
すんごいっすよ。
d0153627_16125885.jpg

その夜は、小値賀の新鮮なお魚づくしの美味しい夕飯をいただいた。
脱力しすぎてて、写真撮るの忘れました。特に美味しかったのが、白身のお刺身を小さく切ったのを、超たっぷりのすりたてのゴマとお醤油・みりん・お酒であえたもの。これをお茶漬けにするのが、五島列島ではポピュラーな食べ方なんだそうだ。これはもう、永久に食べ続けられそうなくらい旨かったです。


一夜明けて。
元は漁協勤務だったという愛宕のご主人が、「魚のあがるとこば見ますか?」と、朝の小値賀港に連れて行ってくれた。
d0153627_16410186.jpg

最近は漁獲量が減っているのでさびしいとのこと。でも小値賀の魚は東京などにいくと高級魚として人気があるのだそうだ。
これから東京の居酒屋に直送されるという魚たち。
d0153627_16384865.jpg

南の海らしい鮮やかな色の魚。
名前を聞くと、「ヨメ」というんだそうだ。なんでヨメなんですか?と聞いたら、
「色がきれいかやけん」
だそうだ。ふふふ。
d0153627_16354197.jpg

宿に戻ると、ご主人が「今日はほかにお客もおらんけん、このあと島をひととおり案内しますよ」と言ってくださる。なんて親切な! もう、なすがままに連れていっていただくことに。
笑顔のやさしい奥さんにあいさつして荷物を持ち、完全無欲な状態で車に乗り込む。

車で回る道々、いろいろなお話を聞いた。小中高とひとつだけ公立校がある小値賀島だが、子どもの数がどんどん減っているうえ、働き口がないため高校を卒業すると100%島を出るのだそうだ。愛宕のご主人の二人の娘さんも、島を出て遠くで家庭を持たれているとのこと。
逆に、ゆったりした暮らしを求めてよそから小値賀島に住みつく若い人もいる。特に農業はなかなか人気があるという。

島のあちこちに牛がいる。ここで育つと、肉牛として遠隔地に運ばれるそうだ。
d0153627_16534629.jpg

「地ノ神島神社」。
野崎島にある、「海ノ神島神社」と一対をなす社だ。
d0153627_16560192.jpg

海の際に立つ鳥居。
対岸はるかに、野崎島の鳥居と向い合わせになり、飛鳥時代ともいわれる昔からこの海の安全を見守っている。
d0153627_17001088.jpg

鳥居をくぐり、ごつごつの岩の浜に出てみる。
遣唐使も通ったという海峡。なんだか敬虔な気持ちになる。
d0153627_17023475.jpg

牛の塔。
ここの由来は、前々日に小値賀の民俗資料館で聞いていた。
鎌倉時代、もともと二つの島に分かれていた小値賀島をひとつにするための干拓工事が行われた。大変な難工事で、使役のために何万頭もの牛が犠牲になった。その亡くなった牛の数の石ひとつひとつに経文を書いて積み、その上に供養塔を建てたのだという。
牛たちを供養し続けてきた、小値賀島の人々のやさしい心が思われる。
d0153627_17045537.jpg

赤浜海岸。
その名の通り、ほんとうに海辺が全部赤い!
この島が火山の噴火でできた名残りなのだという。
d0153627_17043322.jpg

こちらは、柿の浜海水浴場。
なんとも素朴でかわいらしい海水浴場だ。きめ細かな砂も、打ち寄せる水もきれい。
夏には島の人でいっぱいになるという。
d0153627_17053297.jpg

車は橋を渡り、隣の小島、斑島へ。
ここで有名なのが「ポットホール」。
ポットホール…って何じゃ?

この海べりの岩場にあるのだそうだ。
d0153627_17061628.jpg

岩によじのぼり、裂け目から見下ろすと…
うわおお!
なんすかコレは!?
d0153627_17062355.jpg

この裂け目の底に見えるのが、ポットホール。地元では「玉石様」として信仰の対象になっているのだそうだ。
いつの昔からか、この裂け目の奥で石が波に洗われてクルクルと回り、回り、回り…いつしかまん丸の玉石様に。クルクル、クルクル…何十年、何百年、いやもっと?
これ、底まで3m以上と相当深くて、玉石様は直径50cmくらいだそうだ。
しかし、この玉石様のもとになった石は、どうしてここにあったの?誰かが入れたの?周囲の石からはがれたの? …誰か教えて~!

今度は、車はもうひとつの橋でつながった小島、黒島へ。
ここの金毘羅宮が展望台になっているのだという。
愛宕のご主人、あちこちへ車を走らせてくださるが、必要なときだけ案内してくれ、ほとんどは「どうぞごゆっくり」とご自分は車で待機。マイペースで見て回りたい私には、これがすごくありがたかった。
黒島の金毘羅宮への石段。新緑が美しい。
d0153627_17064811.jpg

素朴な展望台があって、そこに陶製の地図が。
d0153627_17071585.jpg

ここは国境の島、という言葉が思い出される。
小値賀港が一望。
d0153627_17460028.jpg

車に戻り、昼はどこで食べられるとですか、と聞かれたが、本日まるごとノープランの私。
「ふるさと」を勧められたが前々日に行ったので…と言うと、「おーがにっく」は友だちがやっとる店やけん、どうですかと言われる。
その店!実は前々日に小値賀のメインストリートを歩いたとき、目をつけていたのであった。というか、目をつけざるをえない店構えであったのだ。
これが前々日、その衝撃に思わず撮影した「おーがにっく」の店の前のメニュー。
d0153627_17555925.jpg

どうですか、すごいでしょう。名状しがたい多彩さとディープさ。
イノシシとトルコライスとウニとラーメン、そして鯨!

そうか、あそこの店主さんとお友だちだったのか。でも愛宕のご主人、野崎島の管理人の前田さんともお友だちだったね。なんだかみんな、つながってるね…
「トルコライスってなんですか?」と聞いてみたら、「食べたことないけん…」との答。そしてご主人、聞いてみますよと即、スマホを取り出し「おーがにっく」の店主さんに電話。
「トルコライスっていうんは、トルコと関係があるんね?え、ない?トンカツとスパゲッティ?」等の対話ののち、
「まあ、食べてみたらわかるんじゃないですかねえ」
ということであった。

小値賀島一周の観光の旅終了。港の近くのしみじみした海産物屋さんの前で、車から降ろしてもらった。なんとまあお世話になったことだろう。「愛宕」のご夫妻、ほんとうにありがとうございました。

笑顔のすてきなおばさまの海産物屋さんでいろいろとおみやげを買いこみ、ここでも親切にも「お昼食べに行かれるなら荷物預かりますよ」と言ってくださる。忘れたら大変…と私が言うと(これはポカが日常の私にとってはごくリアルな話)おばさまはカラカラと笑って、
「3時の船でしょう。忘れてたら港まで持ってってあげますよ」
と何でもないことのように言われる。うーん、あったかい。

まだお腹が空いてなかったので、しばらく港近くの裏通りをぶらぶら。
d0153627_18142811.jpg

d0153627_18134273.jpg

ええ時間が流れとるねえ…
と思って歩いていたら、一軒の家の前に数人の人たちが集まってなにやら相談中。
そこを通り過ぎようとすると、ひとりの男の人が私の顔を見てやおら、
「あんたええとこに来たね。この家もらわんね。ただよ!」
とニコニコして言うではありませんか。
「え、突然!?」
思わず話を聞いてみると、しばらく前にこの家の住人のお年寄りは亡くなられ、遠くに住むお子さんが、誰かもらってくれる人がいれば無料でこの家をあげたいと言われているとのこと。
「どうね、いい家よ。もらわんね。ただし、ここに住んだらお姉さんが会長さん」
会長?
聞けば高齢化で町内会長のなり手がいないので、この家を譲る条件は、町内会長になることなんだそうだ!
と、そこへ通りかかった数人のおばあちゃん連。「なんね、なんね?」
「いや、このお姉さんに、この家ばもらわんねと…」と男の人がいいかけると、おばあちゃんのひとりがにべもなく、
「この家はダメね!根太が腐っとる!」
とバッサリ。
すると男の人も負けてない。
「お姉さん、あっちの家はしっかりしとるよ。あっちも空き家やけん、古民家やけん」
と売り込む。
「でも、リフォームしないと住めないですよねえ」と言うと、一緒にいた役場関係らしき人がすかさず、
「いや、空き家に住んでいただく場合、リフォームに町から200万出ますから」。
「ほら、200万出るとよ!どうね!」
「いや~急に言われてもねー」
なんだかんだと、お互い軽口合戦になり、笑いのうちに解散。

おそらくこの島のかかえる切実な問題をはらんでいるのだけど、なんだろう、こんなふうに行きずりの旅行者の私に声をかけてこられるフレンドリーさがなんとも楽しい。
そして、この島に住んだらどんな毎日がありうるんだろう?と、現実離れした空想がふと頭をよぎったりもして。

さて、ほどよくお昼どきのお腹になってきたので、いよいよ懸案の「おーがにっく」へ。
d0153627_08284937.jpg
うーん、この脱力した《構えてません》感がなんとも。
店の前にはさきほどの写真のメニューが掲げられてるわけですよ。
こちらが店内。
d0153627_18145704.jpg
店内あちこちにもメニューあり、洋食、中華、酒のつまみ、とんこつラーメンから小値賀の海の珍味まで、この幅広さに脱帽です。
なかなか雰囲気のあるご店主、いろいろおしゃべりしているうちにびっくり!なんとこのご店主が前々日行った民俗資料館の、初代学芸員だったとのこと。長年考古学を研究され、小値賀島と野崎島の古代からの歴史についてたくさん論文も書かれていて、店内に置いてある文献をいろいろ見せていただいた。
考古学研究から、なぜ食べもの屋さんに?と尋ねると、
「小値賀には休日にお昼を食べられる店がほとんどないんですよ。もともと発掘作業で料理は作り慣れてたし好きだったので…」
とのこと。今も研究の方もぼちぼちと続けておられるそうだ。

さてお昼なにをいただこうか、と考えて、トルコライスの中身を聞くとかなり濃厚そう。カツにナポリタンにサラダか…もうちょっと疲れてなければトライするところだけど。
ご店主が、「さっき港から来た小イカがあるんで、それをバター焼きにするのはどうですか?」と提案され、それは美味しそう~とお願いすることにした。
今朝見に行った港からあがったばかりの、可愛らしいイカ。これが絶品でした!
(思わず食べちゃったあとで撮ったので、イカ減ってますけど)
d0153627_08553110.jpg

うまいうまいとモフモフ言いながらいただいたあとで、テーブルの上のメニューの一点に眼が止まる。
むっ!?
「カメの手!」
d0153627_08324341.jpg
このカメの手、バルセロナの市場の魚売り場で何度か見たんですわ。
ぎょえー、スペインではカメの手食べるんか!と娘たちと盛り上がったものの、調理法もわからず手出しはできぬまま。その後、高知に行ったときにも売ってるのを見た記憶があり、日本でも食べるんか!と思いつつそのままになっていた。
「カメの手、どうやって食べるんですか!?」
と勢い込んで聞くと、いたずらっぽく微笑んだ店主さんがすぐにサッと湯がいて出してくれた。
d0153627_08560237.jpg
腕部分(!)をピリッと裂いて、中から出てくるオレンジ色の部分をぱくっと食べる。
濃い海の味がして、コリッとして、
「おっ旨い!カメの手!」
しかし…
「これね、カメの手じゃないですよ」
と言われて
「?」
なんと、これは岩場に生息する甲殻類で、カメの手そっくりなのでこの名前がついたんだそうだ。にゃに~!? カメの手ちゃうんかい! 長いことだまされとった…
でも、バルセロナ以来の課題が思わぬところで解けて、あーこれもたぶん一生忘れないなあと思ったのだった。

すっかり長居して(お昼どきなのに誰もお客さん来なかったね…)興味深いお話をいろいろ聞かせていただき、店主さんにごあいさつして「おーがにっく」を出る。
いよいよ船出、帰路につく。
海産物屋さんのおばさまにお礼を言って荷物を受け取り、港へ。

小値賀の漁の無事を祈る、小さな社。
お世話になりました、小値賀島。ほんとうにいいところだった。
d0153627_09241839.jpg
行きは高速船だったが、帰りはフェリーでゆっくりと。
さて乗りましょうかねと船着き場に行ったけど、誰もいないし船もない。アレ、もう出発時間迫ってるのにおかしいな。
と思っていたら、ターミナルの「おぢかアイランドツーリズム」の職員さんがあわてて走ってこられた。
「フェリー、あっちですよ!」
私、あらぬ方向の別の船着き場に行ってたのね。ほんとに最後までお世話になりました。今日最後の便でっせ、乗り遅れたらエライことやっちゅうねん。
d0153627_09305987.jpg
フェリーの2等船室というのは、何かそういうきまりごとでもあるのか、乗り込むや否やみなさんじゅうたん敷きの床の上にやおら横になって毛布をかぶるんですね。きっと多くの人はこの航路が日常で、ここは休むとこ、となっているのだろう。
旅人としては、デッキに出て島との別れを惜しむほかない。

あっという間に小値賀島、野崎島は遠ざかっていった。やがて平戸をへて、陸路へ。そして長い時間をかけて九州から本州へと戻っていく。旅が終わる。
d0153627_09312837.jpg

今、帰りついて10日以上がたち、すっかりいつもの忙しい生活に戻った中でも、ふと島の感覚がよみがえることがある。
夜明けの島の空気。島じゅうに響く鳥の声。人のいない野崎島と、人のあたたかな小値賀島。突き抜けるような不安と怖さと、楽しさと。たったひとりで経験した旅の匂い。
私の身体や心の深いところで、きっとこの感覚は生き続ける。


*****

小値賀島・野崎島への旅の記録、これにて終了。
いや~長かったですねえ。
全部読んでくださった方、ありがとうございました。
国別対抗戦のことを書くよりもこちらを優先したので、フィギュアについてはまた今季を振り返るような形で書けたらいいなあと思っています。




[PR]
# by higurashizoshi | 2017-05-02 09:55 | 旅の記録 | Comments(2)

五島列島 小値賀島・野崎島への旅 3

野崎島で過ごした夜は、何か説明しがたい畏れのようなものをひしひしと感じる時間だった。
数人の人間は確かにいるし、電灯も点くし、部屋で布団にくるまって眠れる。それなのに、今この宿舎以外の島中すべてが真の闇に閉ざされて、激しい海風にさらされ続けている光景が頭を離れない。自分が脆弱でちっぽけな存在に思えて、なんとも心もとない。
うとうとと短く眠ったあと、午前5時に起き出した。もちろん外はまだ真っ暗闇だ。身支度をして、5時半すぎに宿舎を出た。少しずつ空に色が差しはじめている。

教会への急勾配を早足でのぼっていく。息が切れる。胸がはやる。
教会の前までのぼり切る。
明けかけた空を背景にした、旧野首教会。
d0153627_09110239.jpg

海を見おろす。
d0153627_09091407.jpg

みるみるうちに、空は明るくなっていく。
d0153627_08580588.jpg

100年以上、ここでこうして朝日を受けてきた姿。
d0153627_09293129.jpg

太陽がのぼった。
d0153627_09330375.jpg

まっさらな今日の光の中、この完璧な美しさをいつまでも見ていたくなる。
d0153627_09383371.jpg

すっかり日がのぼった。
教会を遠景で見る。

石垣の配置や勾配、木々の配置や枝ぶりまで、まるでしつらえられた舞台装置のように完璧に見える。
偶然と年月が作りだした、荒々しくも美しい作品。それは、ここで信仰を暮らしの中心において生き抜いた人たちがいてこそ生まれたものだ。
d0153627_08584618.jpg

野首海岸に降りてみる。
d0153627_10292934.jpg

きれいだなー。
d0153627_10295973.jpg


宿舎に戻って、昨夜厨房で炊いたごはんで作ったおにぎりで朝食。
米や梅干しはリュックに入れて持参した。
旧分校の校庭から、教会を見ながらいただきます。どんだけこの教会が好きやねん。もうこれは完全に恋ですわ。
d0153627_09554896.jpg

私以外の2人の旅行者は、朝の船で小値賀島へ戻っていかれた。昨夜少しおしゃべりした、ひとり旅の女性との会話を胸にそっとしまう。きっとずっと忘れないだろう。

管理人の前田さんからは、ひとりで(ったってもう私しかいないよ)山奥に入らないこと(行方不明者が出て大騒ぎになったことが何度かあるらしい)、午後3時10分発の船に絶対乗り遅れないように港に行くこと、の2つを言い渡された。
島の南端の舟森集落へは道もけわしく、イノシシに会ったり迷って山に入り込んだりする危険があるとのことであきらめ、まずは教会の裏手の山にのぼって景色を堪能することにした。結局、教会を離れがたい恋心。

教会の横を通るときにつくづく観察すると、瓦屋根と西洋風の屋根下飾りのマッチングがなんとも可愛らしい。
d0153627_10344954.jpg

野首集落のあったきつい勾配は、ていねいに積まれた石垣がそのまま残り、きれいな階段状になってずっとずっと山の上まで続いている。低いところには住居が、高いところには畑があったそうだ。
d0153627_10431407.jpg

住居跡。昨日見た港近くの野崎集落と違って、ここはすべて家が崩壊しその残骸が散っている。
d0153627_10363434.jpg

かつて、家族の服をたくさん縫い上げただろうミシン。
島を離れるとき、持っては出られなかったのだろう。
d0153627_10535174.jpg

晴れ渡った空、昨夜とはちがう心地よい風が吹きすぎる。
かなり上までのぼり切り、石垣に腰をおろして海を見下ろす。
心をからっぽにする。

さまざまな鳥の声。
かすかにのぼってくる波の音。
木々の葉ずれのささやき。
ほかには何も、聞こえない。まったく、何も。
d0153627_10561374.jpg

永遠の時間。自分を感じない自由。
これまで味わったことのない感覚だった。

ずいぶん長い時間がたった。
と、突然人間が現れた! 管理人さんではない見知らぬ人が。
ここからはずっとふもとの方にある教会へと、豆つぶほどに見えるその男の人はなにごとか大声で叫びながら走るように近づいていく。
人?どこから来たの?どうして?と思ったが、考えたら何のことはない、朝の船に乗ってきた人がいたのだ。でもなんで叫んで走ってる?
教会までの石垣をのぼりつめたその人は、どうやら「来たぞー!来たぞー!」と叫んでいるらしい。そのまま教会に飛びこんでいった。
なんだろう? ただただびっくりして山の上から見つめる私。

しばらくするとその人は出てきて、今度はいきなり教会前に立つ鐘を全力で打ち鳴らし始めた。
島じゅうに響き渡る鐘の音。
泣くように叫ぶ声が遠く聞きとれた。
「じいちゃーん! ばあちゃーん!」
そのとき諒解した。
この男性はこの集落の住民の子孫なのだと。
どこからか海を渡り、祖父母の記憶を訪ねてきたのだと。
私はそっと石垣から降りた。


名残りおしく旧野首教会に別れを告げて、私は通称サバンナと呼ばれている島の東端をめざした。
港を過ぎて野崎集落の崩落寸前の家々の間を通り過ぎる。家々の間の道もすでに崩れて、よじのぼるように行く。ずっと歩き続けると、廃墟の奥に一面の大平原が見えてきた。
d0153627_22240750.jpg

鮮やかな赤土と、その上をおおう新緑のコントラストが美しい。
木の枝はみんな、強い海風の形にかしいでいる。
d0153627_11370121.jpg

平原のあちこちには、無数の鹿の群。
少しでも近づくと、警戒して逃げてしまう。
d0153627_11381919.jpg

そんな中にも、好奇心の強いのがいるもの。
すみません、おじゃましております。
d0153627_11395096.jpg

ここで腰をおろし、大平原と海をながめながら昼のおにぎりを食べた。
なんとも気持ちのいい風景の中に、まったくのひとりきり。それなのに、なぜか落ち着かなくて、背中がぞわぞわする。

この感情はなんだ? と自問してみると、それは《怖さ》なのだった。
何が怖いのか? 怖いというか、不安感。危機感。さっき山にいたときは、背後を守られていた感じがあって、あんなに心地よかったのに。
それに比べて、この平原は見渡すかぎり360度、何も守ってくれるものがない。
何が襲ってくるわけでもないことはわかっているのに(あちこちに掘り返した跡があるイノシシには会うかもしれないけど)、なぜか不安でたまらなくなってきた。
自分がひどくちっぽけで、丸はだかにされた非力な生きものだと痛切に感じる。
あかん。怖いぞ、私。

このままではいかん、動かなければ、と立ち上がり、さらに平原の奥へ奥へと歩く。
何がこの先にあるのか見てやろうと思う。
ずいぶん歩くと、どうやらまた島の端に到達するらしい。波の音がする。
本能的に再び、絶景の予感。

いきなり目の前が開け、まるで地球がカッと大きな口をあけたような光景が目に飛び込んできた。わあああー!
d0153627_22543014.jpg

写真ではよくわからないけれど、赤い地層がむきだしになってえぐれたような巨大な穴が、海を呑みこむようにそそり立っている。
しかも、このまま少し前にいけば崖をザーッと海まで転がり落ちていきそうな足元のあやうさ。
またまた私は心臓がバクバクして、「怖いー!」と叫んでしまった。
四方八方、誰も私の叫びを聞く人などいないのに。

ひええ、だめだ。私ってこんな弱虫だったのか。
足に力が入らないまま、またもふらふらと歩き回る。
怖いぞ怖いぞ、誰もいないのって怖い。
(あとで調べると、あの《地球の口》みたいなやつは、野崎島の海底火山の噴火口の跡だった)
ふたたび平原をあちこち歩いて、方向があやしかったものの、やがて野崎集落に戻ることができた。しかしここも廃墟なのである。なんだか身体がみしみしする。

野崎集落で最後の住人だった神主さんの家が、最近修復されたばかりで公開されていた。
廃墟の中に突然一軒だけ、真新しい家があるのがシュール。これも、世界遺産登録を見越してのことらしい。
そこの庭にも、ふと見ると鹿がいた。ゆったりと木々の新芽を食んでいる。
d0153627_23223707.jpg

とうとう港に到達。
人がいるってすごい。軽トラに乗って管理人の前田さんがノンビリとやって来るのが見えたときは、前田さんが天使に見えた。
天使がイノシシの檻にエサをしかけるところを見せてもらう。
d0153627_23160783.jpg

ここに人が二度と来ないのなら、イノシシも狩られることなどないのに、と思うと複雑だ。
無人の島になったがゆえに、私のようにここにやってくる人間がいるという矛盾。

私のほかに港で船を待つ人、それが午前中に教会で鐘を鳴らしていた男性だと気づいた。
聞けばやはり、6歳までこの島に、しかも教会のすぐ裏の家に住んでおられたそうだ。
20年ぶりにここを訪れ、荒れ果てたキリシタン墓地の草刈りをし、墓を調べて先祖のこともいろいろわかったとのことだった。そして旧野首教会を建てた信者の直接の末裔は、もうたぶん自分だけではないかと言われていた。

町営船「はまゆう」がやってきた。
とうとう、野崎島とお別れだ。
たった25時間ほどいただけなのに、ものすごく長い時間をここで過ごしたような気がする。
d0153627_23402987.jpg
ここから小値賀島の港までの写真が、なぜかまったくない。
たぶん私は、疲れ切ってぼーっとしてたんだと思う。
そしてただただ、去りゆく島を見ていた。

たった25時間。でもその間にここで体験したこと、自分の奥深くに感じたことを、きっと私は一生忘れないだろう。

このあと、小値賀島ではまったく別の時間が流れる中、また新たな体験があった。
次回はそのお話。

*****


[PR]
# by higurashizoshi | 2017-04-29 23:54 | 旅の記録 | Comments(3)

五島列島 小値賀島・野崎島への旅 2

さて、目的の野崎島に渡るには、事前に予約が必要ということで、「おぢかアイランドツーリズム」にメールで申し込んでいた。
とっても素敵なHPを完備して小値賀島や野崎島の魅力をアピールしておられる「おぢかアイランドツーリズム」さん(HPはこちら↓)

現地では、小値賀港ターミナルの中に窓口兼事務所が。
d0153627_08495906.jpg

現在は無人島である野崎島。昭和40年代までは長きにわたり、数は少ないけれど住民がいた。過疎による集団離島のあとも最後の最後まで残っていた方が島を離れたのは平成13年というから、完全に無人島になったのは意外に最近なのだ。
島内には3つの集落があり、そのうち2つが元々潜伏キリシタンの人たちが住む場所だったそうだ。
私の目指す「旧野首教会」は、島の中央あたりにある野首集落というところに建っている。

いよいよ、町営船「はまゆう」で野崎島へ出発。
d0153627_14505543.jpg

ぐるっと野崎島の周りをめぐっていくので、島の様子がよくわかる。船のスタッフが、「あれが王位石(おえいし)ですよ」と教えてくれる。
「王位石」というのは、野崎島に飛鳥時代(!)に建てられたという冲ノ神島神社の後ろにそびえ立つ巨岩。不思議な形に積まれていて、考古学的にも謎が多いらしい。8世紀にはすでにこの小さな島に神社や建造物があったのか…。

途中、予告なく別の島に立ち寄る。ここはドコ? あとで聞いたら、すぐそばにある六島(むしま)という島で、ここには住民が3人だけ(!)いるという。だから日用品を運んだりインフラを整備したりする必要があるのね。
d0153627_09152225.jpg

いよいよ野崎島に上陸。
この町営船が、小値賀島と六島とこの野崎島を、1日2便で結んでいる。
d0153627_09153603.jpg

港には、人がここに上陸する予約が入っているときだけ小値賀島から来る管理人さんが待っていてくれた。
実は、予約の段階ではこの日野崎島に渡るのは私ひとり、泊まるのも私ひとりになっていた。オフシーズンだけに、無人島をひとりじめ!と思っていたのだが、この前日がひどい暴風雨で船は欠航。そこで足止めをくった旅行者2人が予定変更してこの日に渡航することになり、島に渡る人数は3人となった。管理人さんを入れて4人だけが、この一夜を野崎島で過ごす人間となる。

みなさんひとり旅で独立心ある人ばかりで、基本バラバラに行動したのでストレスはなかったし、むしろ後になってからは、もし予定通り島にたったひとりだったら相当こわかっただろう…と思う場面も多々あった。

港に降り立つと、3つの集落のひとつ、野崎集落が目の前に。
住民の離島から長い年月がたち、すでに崩壊寸前の廃屋が並んでいる。
d0153627_09455588.jpg

島の樹木が、人の積んだ石垣を深く食んでいる。
d0153627_09474238.jpg


かつて集落の中心だっただろう神社も、石段をあがると社殿は完全に崩落していた。
こういう景色を見るとどうしても東日本大震災の被災地を思い出してしまう。人が長い年月いつくしんだ大切な日常が、断ち切られ朽ちていく光景。
d0153627_09471155.jpg

島のいたるところに群生していた、鮮やかな黄色の花。
朽ちゆく人工物を背に、植物たちはのびのびと咲きほこっている。
d0153627_09505284.jpg

意外だったのは、港から島の中心部へ向かって、大きな電柱が並んで電線が延びていること。
無人島とはいえ、宿舎に人を泊めるためにこうして電気を運んでいるわけだ。

野崎島の平地部分は、ほんとうにわずか。あとで歩いてみてよくわかった。
その貴重な狭い平地、このあたりはきっと畑だったのだろう。
d0153627_10022405.jpg

その後は山道の急勾配を、息を切らせつつのぼっていく。
たちまち高みへとやってくる。絶景の予感。

視界が開けた!
d0153627_10094570.jpg

おおー。
d0153627_10102183.jpg

これが野首海岸。
目に沁みるほど真っ白な砂と、群青の海。
あたりまえながら、誰も、誰もいない。
d0153627_10121279.jpg
海岸を見下ろしつつ、山道をさらに進む。
港から20分あまり来ただろうか。目の前に谷があらわれた。野首集落。
あれだ。小さく見える、レンガ造りの建物。
d0153627_10272469.jpg
このあたり、私テンパりすぎてほとんど写真撮ってません。
あこがれた教会がすぐそこにあると思うと、ドキドキしすぎて頭まっしろで、ひとりで「ああー」とか「はー」とか言いながら近づいていった記憶が。
d0153627_10363690.jpg
見上げるところまでたどり着いた。
のぼっていく。
人の手でひとつひとつ積まれたであろう、ごつごつの石垣と石段。
はげしい勾配。
d0153627_10400524.jpg
のぼっていく。
d0153627_10403659.jpg
見上げる。
d0153627_10465218.jpg
見上げる。
d0153627_10453980.jpg

振り向けば、眼の前は海。
d0153627_10545228.jpg
旧野首教会は、この教会周辺に住んでいた17世帯の信者が、生活を切りつめて持ち寄った資金で1908年(明治41年)に建てられた。今のお金にして数億円ともいわれる材料費と建築費を、たった17戸の家庭が知恵をしぼり、力を合わせて捻出したのだ。
かつて潜伏キリシタンとして厳しい弾圧の時代を生き抜いた野首集落の人たちにとって、この美しい教会はいわば信仰の証、夢の実現だったのではないだろうか。

多くの教会建築で知られる鉄川与助が最初に設計・施工したレンガ建築の教会とのことで、とても小さいけれど端正で、素朴にして完成された美しさだ。
d0153627_11215922.jpg
内部もまた美しかった。
撮影はできなかったが、つつましやかな祭壇、やわらかな色味の木を基調としたリブ・ヴォールト天井のなんともいえず親密であたたかな雰囲気の空間。ここに17世帯の信者たちが集い、祈りをささげていたと思うと敬虔な気持ちになる。
そしてこの教会を置いて島を出ていくとき、信者の方たちはどんな思いだったかと想像してみる。
(内部の写真はこちらで見ることができます↓)
教会の裏手にのぼってみる。
実に、この教会は建物の美しさだけでなく、周囲の状況がドラマチックなのだ。
d0153627_11421638.jpg
教会の周りにも家があり、畑があったらしい跡が広がっている。
この海風の吹きすさぶ、傾斜のつよい土地を耕して暮らしていくのはどれほど大変だったことだろう。

あちこちにアザミが咲いていて、うっかりそこらに腰を下ろすと鋭い葉でおしりをチクリと刺される。
d0153627_11594166.jpg


野首海岸に降りていく。
ほんとうに真っ白な砂。きめこまかいパウダー状で、足がめりこんでいくほど。
d0153627_11532199.jpg

夕景を見に、古いダムを越えて向かい側の海辺へ。
d0153627_12042658.jpg

キリシタン墓地があるのが遠く見える。
すっかり荒れてしまっている。
鹿や猪よけのフェンスも傾いたまま。
d0153627_12050570.jpg

波の音と、風の音しか聞こえない夕暮れ。
d0153627_12044743.jpg

野崎島唯一の宿泊施設、自然学塾村。
管理人の前田さんが作られたユニークなアートがいろいろと並ぶ。
d0153627_12054894.jpg
ここは、かつて人が住んでいたころの小中学校分校跡。
子どもたちがここで学び、前庭は集落総出の運動会の開かれる校庭だった。
今はきれいに整備され、畳も敷かれて意外に快適に泊まれる。自由に使える厨房もある。ムカデ、ネズミに注意、外には鹿と猪、というワイルドさはもちろんあるけれど。
d0153627_12060614.jpg
夜。
前日の暴風雨のなごりの強風が吹きすさんでいて、ものすごい音で宿舎が揺れる。
外は漆黒の闇。
電気もついて、建物にも守られているのに、ひしひしと何か強いものが迫ってくるように感じる。
「ここは、死と隣り合わせよ。」
昼間聞いた、前田さんの言葉が思い出される。なかなか寝つけない。
明日は教会にのぼって夜明けを見よう。

次回、野崎島2日目です。

*****



[PR]
# by higurashizoshi | 2017-04-26 12:35 | 旅の記録 | Comments(0)

五島列島 小値賀島・野崎島への旅 1

始まりは、一枚の写真だった。
ある日、新聞の折り込み特集に、日本のさまざまな島を紹介する記事があって、その中にモノクロのレンガ造りのちいさな教会の写真があった。山を背景に、石垣の上に立っているような、なんともいえない静かなたたずまい。その一枚の写真に、私はくぎづけになった。美しい。なんて美しいんだろう。
しかも記事を読むとその教会は、今は無人島になっている五島列島の小島にあるという。
誰もいない島に建つ教会。その風景をこの目で観たい。なぜか引き込まれるようにそう思い、いつか必ずここへ行こうと心に決めた。

それから一年半もたたないうちに、時はやってきた。願いがかなうのは、私の人生としてはかなり早かった。きっと近年、日頃のおこないがいいからであろう。
その島の名は、野崎島。長崎県の五島列島の北の方にある。
しかし、無人島であるからして、野崎島に直でいくことはできない。近くにある有人島、小値賀島(おぢかじま)にまず行って、一日2便の野崎島行きの航路を使わねばならない。
野崎島に行くことしか考えてない私は、小値賀島のことはなんも知らない・調べないまま、佐世保港を船出した。
d0153627_13441255.jpg

奮発して高速船「シークイーン」というのに乗ったら、これが速い速い。すさまじく飛ばしつつ湾を出て平戸あたりを通り過ぎ、ぐんぐんと五島列島北端へ。

着いたぞ小値賀島。はじめまして。あなたのことはまだ何も知りませんがよろしく。
d0153627_14123994.jpg

のどかだけど、意外に大きな港です。
d0153627_14131514.jpg


これが小値賀のメインストリート。
d0153627_13450405.jpg


昭和のまま時がやわらかく立ち止まっているような街並み。
d0153627_14175657.jpg


こんにちは。
d0153627_14182657.jpg


野崎島への船が出るまでの間、小値賀の民俗資料館へ。
かつて盛んだった鯨漁で財を成した名家が資料館になっている。
d0153627_14254027.jpg

実にこぢんまりした資料館の中は貴重な考古学的資料がぎっしり!
この資料館の学芸員の土川さん。
いろいろお話をうかがっていたら、元シスターで、野崎島とも関係の深い方だった。
d0153627_14274040.jpg

かつて潜伏キリシタンが隠れ住んだ野崎島・舟森集落に、44年前に神父を案内して渡り、その後この小値賀島に居を定められたそう。
「小値賀が大好き。どこにも行きたくない。」
そんなに愛される小値賀島。その魅力をもっと知りたくなる。

資料館を出てぷらぷら歩いていると、さっき港でちらっと会った地元の青年にばったり。
「お昼がまだなら、うまい店にご案内しましょう。」
都会だったらぜったいついていかへんわ、これ。聞くと青年は学生時代の旅でこの島にほれこみ、東京から小値賀の町役場に就職したのだそうだ。どこにそこまでほれたのか聞いてみると、
「ここは時間が何倍にも感じられるんですよ。それと、人ですね。人がいい。」
とのこと。
青年おすすめの店「ふるさと」。超ジューシーな肉厚の焼きアジと、ぷりぷりのお刺身、あごだしのお吸い物。うみゃあ!
d0153627_14433744.jpg
さて、いよいよ野崎島への町営船が出る時間。
緊張してきたぞ。
30分ほどで着くのだけど、こことは別世界が広がっている予感。
この予感は当たっていたどころか現実はそれをはるかに超えていたのであった。
次回、野崎島一日目です。




[PR]
# by higurashizoshi | 2017-04-23 15:01 | 旅の記録 | Comments(0)

フォロー中のブログ

明石であそぼう! たこ焼...

最新のコメント

初めまして。マリンメッセ..
by なみ at 17:22
Disney 鴨さん ..
by higurashizoshi at 23:49
こんばんは。お久しぶりで..
by Disney 鴨 at 20:03
bikegogoyさん ..
by higurashizoshi at 14:59
いやー、楽しかったです南..
by bikegogoy at 22:38
伝わってきます。なんてい..
by まにまに at 10:40
まにまにさん 読んでく..
by higurashizoshi at 22:45
先輩、すごい旅をしたんだね。
by まにまに at 18:27
おはようございます。 ..
by Disney 鴨 at 10:36
Disney 鴨さん ..
by higurashizoshi at 01:15

検索

ファン

ブログジャンル

映画
ウィンタースポーツ

画像一覧