ひぐらしだより


人生はその日暮らし。  映画、アート、音楽、フィギュアスケート…日々の思いをつづります。
by higurashizoshi
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かたちを彫り出す

ブログを始めてからぱったり詩を書かなくなっていたのが、数日前からまた書き出した。
昔、一時期は詩を書く人たちのグループにいたことがあったけど、今の私には周りに詩を書く人は誰もいない。
だからひとりで、ただただ、ひとりで書いている。

長らく詩をまったく書かなくなって、小説や散文だけ書いていた時期もあった。
私はどうも自分に対するこだわりが弱いのか、単にずぼらなせいか、過去に書いたものはいつの間にやらどこかに行って、所在不明になってしまう。
わずかに活字になったものだけが残って、あとは記憶のかなた。
だから、昔かなり気に入っていた詩、思いの強い詩も、部分的におぼえてるところしか、頭に残っていない。

それが、パソコンを使うようになって画期的に変わった。私がぼーっとしてても、書いたものはちゃんとパソコンくんが順序よく記録してくれる。マウスをクリックすれば、最近書いた詩がズラズラーっと日付順に並んで出てきてくれるので、とってもありがたい。
おかげで、最近は作品を紛失することもなく、頭の中も整理されている気がする。

いつも思うのは、詩を書くことは、なにか大きな塊から、ひとつのかたちを彫り出すのによく似ているな、ということだ。
そのかたちは、彫り出す前からすでにある。それを正確に彫り出すのが、詩を書くことだ。
私の中では小説は、絵を描くことや、土を練り上げてかたちを作っていくのに似ているので、とても対照的だ。

かたちはわかっていても、目の前の塊から、それを彫り出すのはむずかしい。
今も私は、ゆうべ書きかけた詩を何度も読み返しながら、どうやったら正確に、あるべきかたちに彫り出せるのか、考えている。
うまくいかないときは、ほんとうにもどかしい。
逆に、ほとんど何にも努力しなくても、するするとかたちが彫れていくこともある。
でも、そうできたものが、必ずしもよい詩になるとはかぎらない。
ときには、まちがったり迷ったりしながら、苦しんで彫り上げていく。
かたちにたどりつく道筋はいろいろだ。
そして、たどりつけたときは何ともいえないうれしさでいっぱいになる。

パソコンのおかげで整理されてたまっていく詩がかなりの量になったので、一度まとめたいと思いはじめた。
長い間、人に読んでもらう機会はなかったから、これも冒険。
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# by higurashizoshi | 2008-02-18 14:47 | 観る・読む・書く・聴く | Comments(2)

タタの手作りクッキー

タタが突然、
「クッキーが食べたい!」
と言い出した。
ではお店で買ってこよう、という選択肢は、今のわが家には、ない。
「じゃあ作ろうか?」
と私。無塩バター、小麦粉、砂糖、卵。基本の材料はあるし。
するとタタが意外なことを言った。
「わたしがひとりで作る!」
にゃにィ~!?
これまで、私が生地を作ってタタやミミは型抜き、というのがクッキー作りの分担。
タタがひとりで作るったって…
「やり方、わかる?」と聞くと、「本見れば、わかる!」
まあそりゃあ理屈はそうだよなあと思いながら、クッキーのレシピ本を渡した。

リビングからそっと見てると、タタは冷蔵庫からちゃんと無塩バターを出し、卵を出し。
「おかあさーん!小麦粉ってどこ?これ?」
「いやそれはパン粉やがな」と小麦粉だけ出して、またリビングに退散。
だいじょうぶなのかね?と思いながら新聞など読んでいると、
「ぎゃあああっ!うわはははは!粉が飛ぶ、飛ぶ!」
小麦粉をふるっている…らしい。
しばらくして、タタがキッチンから出てきた。
「できました!」と手にはラップで包んだみごとなクッキー生地が。
「ええっ、もうできたの?すごい」…ほんとに作っちゃった!
キッチンをのぞいてみたら、床は粉だらけ、そのへんに飛び散った生地がべっとり。
でもタタが、本だけ見て、自力でクッキー生地を作ったんだ!


1時間、冷蔵庫で生地を寝かせた。
いつもはココア生地も作ってマーブルにしたり、ナッツを入れたりして型抜きしていくのだけど、今回は簡単に、プレーンな生地を棒状にまとめて、ナイフで輪切りにしていくやり方。
「丸くならない~」とぼやきながら、
「ま、いいや。好きな形にしよーっと」と自分でフォロー。
以前のタタは、予想通りにならないとパニックになって泣き叫んで、投げ出してしまってたのになぁ…。

オーブンの使い方だけ教えて、あとはタタが全部やりとげた。
ちょっと謎めいた形のもあるけど、こんがりとみごとに焼きあがったクッキー。
「ほんとに、ひとりで作ったね!」と言うと、タタはにっこーっと笑った。
タタの手作りクッキーはほんのり甘くて、ほんとにほんとにおいしかった。
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# by higurashizoshi | 2008-02-16 15:04 | 雑感 | Comments(4)

きいちゃん(3)

その日から、Kさんの地獄の特訓がはじまった。

というのは真っ赤なウソで、Kさんは私が「ペーパードライバー」の常識をはるかに超えているのに衝撃を受けたらしい。
新車を買うぐらいなんだから、ちょっと勘を戻すのにつきあえばいい程度と思ってたのだろう。
アクセル、ブレーキ、エンジン始動…とやって、走り出して、路上に出て、ハイ右曲がって、ハンドル戻して、左曲がって…と20キロぐらいで数分走って家に戻った。
これだけで顔面蒼白、生きた心地もない私に、Kさんは同じく青い顔でほほえみ、
「きっと大丈夫ですよ。少し練習されたら、思いだしますよ」
と根拠ゼロの優しい嘘をつくと帰ってしまった。

それからKさんも何度かは練習に来てくれたが、あとはひたすら孤独な闘いだった。
タタは不安定を抜けたばかりの時期だったから、私の運転が危険(というか運転する私が危険?)だということを知られてはならない。
朝早く、まだみんなが寝ている間にそっと車を出し、そのたびに心臓バクバクさせながら練習した。
「ドライブに行こうよー」なんていう恐ろしい提案にも、笑顔で応える。
運転中にワイワイ話しかけてくる家族にあいづちを打ちながら、頭は真っ白。作り笑顔でハンドルを握って、いつも手のひらは汗でびっしょり。
家に帰りついてエンジンを止めると、必ず「よかった…今日も生きてた」と思うのだった。誰にも言わなかったが。

車の名前は、すぐに決まった。「黄色いから、きいちゃん」である。
正確には、きいちゃんのボディーカラーは「卵豆腐色」だ。
いや、カタログにそう書いてあるのではなく、なんとかイエローと書いてあった気がするけど、私は一番これが正確だと思う。卵豆腐色。カスタードクリームの色にも似ている。どっちも私の好物だ。
ワゴンなのにフォルムは丸っこくてかわいらしい。正面から見たらちっこくて絶対7人乗りに見えないのに、二階のベランダから見下ろすと胴長で大きいのでびっくりする。のほほんとして、なんとなく憎めないヤツだ。

きいちゃんが来てから、家族の行動範囲が広がった。実家はもちろん気軽に行けるようになったし、タタやミミが急に高熱を出したときは救急センターに走れたし、チャチャを飼いはじめてからは遠くても良心的な動物病院に行けるようになった。ワゴンだから、荷物もガンガン運べる。じいちゃんばあちゃんもまとめて運べる。
もちろん、すべて私の「顔は笑顔で心は決死」の運転で、である。
「あぶなっかしいけど一応運転できるレベル」までなんとか這いあがったあと、私は一向に上達しなかった。というか今も、していない。
きいちゃんが来てからの3年半で、

・逆走から方向転換しようとしてドア横をこする(2回)
・駐車場で器具に乗り上げてタイヤに裂傷
・運転にイチャモンつけられてチンピラと交番騒ぎ
・サイドブレーキ上げたまま走って煙発生

こんな華やかな経歴をきざみながら、今も心臓バクバクで私は走る。
ずいぶん傷つけちゃったが、きいちゃんはそうするしかない私を乗せて軽やかに走ってくれる。私にとってきいちゃんは、ダメドライバーの自分を支えてくれる同志だ。
庭でざぶざぶ洗車しながら、心の中でいつも私は言う。
「いつもごめんよ、きいちゃん。これからもよろしくね」って。
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# by higurashizoshi | 2008-02-14 17:42 | 雑感 | Comments(2)

きいちゃん(2)

車を買う…?
そう考えても、どうも現実感はなかった。
しかしとりあえず、車の広告など眺めているうちに、「買うとしたら、こういうのがいいよね」「買うとしたら、こんなのは絶対やだ」と、なんとなく盛り上がっていく家族。
「おじいちゃん・おばあちゃんとかも、みんなで乗れないと意味ないよね」「とすると最低6人乗り?」「普通の車って何人まで乗れるん?」「だからァ、ワゴン車じゃないと…」
気づけばいつしかワゴン車のカタログを集め始めることに。
でも、カタログをいくら眺めても「デザインがあーだこーだ」と品評するか、値段を見てみんなで肝をつぶすくらいで、ちっとも話が進展しない。
そこで運転歴の長い、姉の連れ合いのパルさんに相談してみた。
パルさんいわく、「とりあえず、実物を見に行ってみましょう」。
姉とパルさんが真っ白なセダンで迎えにきてくれ、こっちは家族一同、行楽気分でホイホイと販売店めぐりに出発した。
ん、まてよ…。車、すでにもう、買うことに? いつの間に?

最初に行ったT店で、とってもデザインのいいステーションワゴンを見る。カタログでもみんな気に入ってた車だ。
「ご試乗できますよ。どうぞ、どうぞ」と営業のお兄さん。
「わーい」とみんなで車に駆けよる。だがしかし、である。運転…???
「パルさん、運転して」と私は小さな声で頼んだ。いつもおおらか~なパルさんは、
「いいですよお」と何も気にすることなく、運転席に乗り込んでくれた。
「すごい、静かですねぇ。ハンドルも軽い」私たちを乗せたパルさんは、感想をのべながらスムーズに走る。助手席で私はパルさんを見つめ、思っていた。

そうか、運転って、こんな感じでするんだったねえ…。


それから数週間後。
私は車を買っていた。
あのあといくつかお店を回り、試乗した(パルさんもしくは営業の人が運転した)。
でも最初に見たステーションワゴンを家族全員が気に入ってしまい、あとはノリにまかせて一気に話が進んでいった。
暑い暑い8月はじめ、とうとう納車の日が来た。
イケメンで親切な、担当のKさんが車を持ってきてくれた。ギラギラの陽ざしの下、新車はサンゼンと輝いていた。タタもミミも大喜び。
のちにきいちゃんと命名されるわが家の愛車との、感動の出会いであった。
手続きも全部終わり、キーを渡された。
「あの、それでKさん…」と私は言った。
私が長年ペーパードライバーだったことは、Kさんに言ってあった。
「あ、はいはい。ちょっと乗ってみましょうか」
納車のあと練習につきあってほしいという申し出を、Kさんはこころよく承知してくれてたのである。

「さあ、どうぞ」Kさんにうながされて、私は運転席に座った。
助手席にKさんが乗り込んできた。
「じゃ、軽くちょっとそのへん、走ってみましょうか」
「え」
「とりあえず、エンジン、かけましょうか」
「エンジン…」
 Kさんの口調が、少し不安な感じに変わってきた。
「キーを差し込んで、そこに…それで右に回して」
「ちょっと、ちょっと待ってください」と私。
「なんですか」Kさんの口調は、不安というより、悲しげになってきた。
「あの…足もとに二つ、踏むとこがあるんですけど…」
 Kさん沈黙。
「…どっちがアクセルで、どっちがブレーキですか?」
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# by higurashizoshi | 2008-02-12 22:54 | 雑感 | Comments(6)

きいちゃん(1)

昨日はタタとミミを連れて、実家に車で行ってきた。
外出は前にレンタルDVD屋に行って以来だから、10日ぶりかな?

わが家の車は7人乗りのステーションワゴンである。名前は、きいちゃんという。
運転手は私。私しか免許を持ってないのだ。
昔々、必要に迫られて取った免許。でも当時から、私と車はとてもとても、相性が悪かった。
というより、私は運転にぜんぜん向いてなく、今考えればおそろしいことが数々あった。

免許を取って数か月後、私24歳。路肩に止まっていた軽トラックに追突して、自分の車の前部大破。
先方もこちらもケガがなかったのが奇跡と言われたくらい、車は派手に壊れた。
車が直ったらその後も平気で運転していたのだから、そのこともおそろしい。
その後はぶつけることはなかったものの、一方通行の道に入りこんで気づかず逆走するなんてしょっちゅう。
方向オンチだからいつまでも目的地にたどりつけずグルグル、も日常茶飯事。
それなのに高速にものんきに乗って、200キロ近くで走っていたのだから、若いってこわい。

その後、東京に移ったのを機に、私は運転をしなくなった。必要がなくなったからだ。
自分が運転に向いてないことは重々わかっていたし、サッパリと車なし人生に切り替えた。世の中のためにもなったことだろう。

それから長い月日がたち、車に乗っていた記憶もオボロゲになった4年前。
平和なペーパードライバーになっていた私は、東京から明石に引っ越してきて、夢にも思わなかった現実に会う。
車がないと実家に行けない!
正確にいうと、行くには行けるのだけど、田舎バスを乗り継いで、高いバス代を払って、さらに歩いて、ひどいときは2時間くらいかかってしまう。
そのころまた調子をくずしていたタタと、まだ6歳だったミミを連れてバスを乗り継ぎ2時間行脚を続けているうち、ぐったりしてしまった。
で、車で行けば40分だよ、と聞いて、「ぐらっ」ときた。

親も年老いていくし、車で行き来できなければ、何かあったとき動きが取れないかも…
タタが調子が悪いときでも、車があれば移動がしやすいかも…

でも、まてよ。免許を持ってるのは私だけ。しかも…

車ってどうやって運転するんだっけ!?

…きいちゃんと出会うまでの続きはまた次回。
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# by higurashizoshi | 2008-02-11 12:41 | 雑感 | Comments(0)

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