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ひぐらしだより


人生はその日暮らし。  映画、アート、音楽、フィギュアスケート…日々の思いをつづります。
by higurashizoshi
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もうひとつの場所

また8月の終わりと9月のはじめがやってきた。
夏休み明け、この国のあちこちで何人もの子どもたちが命を絶つ。
理由が《いじめ》であろうと、他人が推し量ることができないものであろうと、少なくともこの子たちは行き場がなかったのだということは確かだと思う。
学校へ行きつづけるか、誰も届かない場所に行くか。その二つ以外には。

ずっと昔、中学生だった私は考えていた。
自分が死んだら、あの子たちはきっと罰せられる。そのほかに、あの子たちを正当に罰する方法はない。だったら死のう。
そして別の日には、また考えていた。私ひとりが死んでも、あの子たちは驚くだけで罪など感じないだろう。理不尽だ。悔しい。命を捨てても無駄だ。

私がその後も生きていたのは、私を人間扱いしてくれる別の世界があったからだ。
教室では私はモノのようだった。でも教室を出たら私は誰かに愛される人間に戻れた。
今、子どもたちの世界はもっともっと容赦なく厳しいだろう。プライドがはぎ取られ、なまぬるく巧妙に孤立させられ、そして受けいれてくれるもうひとつの居場所がない。隙間がない。

あのころ、教室までの階段を毎朝のぼるときの、体ごと呑まれていくような感覚を今もおぼえている。長い昼間の地獄が待っていることを知りながら、私は階段をのぼっていくしかなかった。
もしあの状態がもっと長く続いていたら、持ちこたえられていただろうか。学年がかわり、潮がひくように、私が標的であることから逃されていなかったら。

学校が世界のすべてであるような、日本の子どもの環境は異常だ。
何十年もたっているのに、そのことは変わらないどころか、もっと悪くなっているようにみえる。
生き続けられないほどの苦しみを負わせる場所なら、その子はそこにいてはいけない。
それなのに「そこにいろ、もっとがんばれ」と大人が言うなら、それは絶望しろということだ。きみの味方はどこにもいないと宣告することだ。

今日もニュースでどこかの教委が語っていた。「命の大切さを指導してきたつもりだったのに」と。
夏休み明け、たったひとりで死んでいく子たちは、命の大切さを知らず、捨てていくのだというのだろうか。
絶望しつくして、もう吸う息も吐く息もなくして、ほかに行くところがなくなってこの子たちは行く。学校ではないもうひとつの場所へ。
その場所が死でしかなかったこと。
その現実を前に、この国の大人は、こんな言葉しか言えないのだろうか。


東京のフリースクールの子どもたちが文科大臣に直言に行き、「苦しむ子たちには、学校に行かなくていいと明言してほしい」と訴えたニュース。
http://news.tbs.co.jp/20120831/newseye/tbs_newseye5120515.html
http://www.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/220831047.html

提言の中身には、「学校教育がすべてである現状を変えてほしい」という大切な訴えが入っている。

登校か、死か。
そんな異常な選択しかない岐路に子どもたちを立たせているのは、私も含めたこの国のすべての大人たちだ。


もうひとつの場所_d0153627_23131617.jpg

by higurashizoshi | 2012-09-06 23:17 | 不登校とホームスクーリング

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