ひぐらしだより
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ソチ五輪男子フリーを終えて
男子フリーは、ショートとはまた別の意味で予想もしない展開となりました。
メダル争いにからむ選手が十数人もいるという大混戦のフタをあければ、結果としてその十数人の中で、ノーミスで滑った選手は皆無。
最小限のミスに抑えられたデニス・テン選手がかろうじて銅メダルをつかみ、ショート3位だったハビエル・フェルナンデス選手はジャンプミスに加え、ジャンプの飛びすぎ違反というミスをおかしてメダルを逃しました。
そして注目された「どちらが金メダルか?」という白熱の争い。
ショート首位の羽生結弦選手は冒頭の4回転サルコウの失敗にくわえ、ふだんならあり得ない3回転フリップでも転倒。178.64という、今の羽生選手がここ一番の勝負で出した点数としては、考えがたいレベルに。
この得点が出た時点で、おそらく誰もが、金メダルは直後に滑走するパトリック・チャン選手がつかんだと思ったでしょう。
しかし。
やっぱりオリンピックは恐ろしい。
冒頭で美しい4×3のコンビネーションジャンプを決めたパトリックでしたが、そのあとは最近では見たことのないミスを連発。逆転でその手につかんだかに見えた金メダルは、あっという間にパトリックのもとから再び結弦くんのもとへ。
この逆転+逆転劇にはさすがに呆気にとられました。
結弦くんもびっくりしたらしく、テレビでは外国の記者にモニターを示されて、「君、金メダルちゃう?」と言われて「はい?」みたいな場面も。自分の演技が終わった直後は、これで金メダルは逃したと得心していたらしい。確かにそのくらい、よくない出来だったフリーでした。
こうして頂上決戦は、なんだか苦い自滅合戦の果て、五輪フィギュアスケート史上最年少にして、日本男子フィギュア界初の金メダルを羽生結弦選手が獲得するという結果になったのでした。
慣れないカナダの環境や、持病やケガ、そして震災と、さまざまなことにぶつかりながらひたすらに突き進んできた結弦くん。決して会心の勝利ではなかったからこそ、これからさらに成長しようと思える余地が残されたのではないかな。
銀メダルに終わったパトリック、カザフスタン史上初のメダルを獲得したテンくんにも、心からお疲れさま、おめでとうと言いたいです。
さて、男子フリーの個々の選手については、あとで書くことにして。
今は高橋大輔選手のことを書きます。
長年、大ちゃんに伴走してきた長光歌子コーチが、大ちゃんを最初に教えた岡山のコーチに昨日送ったメールの一部をネットで読みました。
「NHK杯の後の怪我からここまで、本当に苦しみました。 本日はそれから解放される最高の日でありますよう、 祈るばかりです。」
フリー終了後、実況解説をしていた本田武史コーチが、間近でずっと指導してきた大ちゃんの様子を、「(ケガのため練習ができず)追い込みたくても追い込めない。心と体がついていかない」状態だったと。そして、「最後まで笑顔で滑ってくれたのが本当によかった」と、声を震わせて話しているのをテレビで聞きました。
あとになって入ってくる話、大ちゃん本人の談話をみても、やはり右ひざのケガは思うような回復を見せず、直前までほとんど練習らしい練習はできなかったらしい。
11月下旬の骨挫傷のあと、回復を待てずに全日本があり、そこからソチまでもまた1ヶ月あまり。時が足りなかった、としか言いようがない。
でも、それが現実です。
本人はもちろん、長光コーチをはじめ彼を支える人たちはどんなに悔しく、つらかったことか。代表選考で後ろにおいてきた選手たちに対する責任。そして現役最後という崖っぷちで、本来の滑りができないことのもどかしさ。もしかしたらこの1ヶ月あまりは、これまでの選手生活にはなかったような苦しさの連続だったかもしれない。
3年前、「ソチまで現役続行」という爆弾(?)発言をしたとき、大ちゃんは言っていた。
「トップにいられないかもしれないけど、人生のいい経験になると思ってがんばりたい」
「きれいには終われないかもしれいけど、そういうスケート人生もいいのかな」と。
そのとき、彼の中にはここまで過酷の果てのソチ五輪が待っているという予想はなかっただろうけど、いくらでも「きれいな終わり方」ができるチャンスがあった中で、大ちゃんはここまでねばり通し、努力をやめなかった。
まだ、たった27歳の彼にとって、これからの人生は長い。アスリートとしてとことん戦い抜いたことが、そこで得たたくさんの苦しみやよろこびが、きっと彼のこれからの人生を支えていくと思う。
これを書きながらつけていたテレビで、ついさっきソチからの中継で大ちゃんの生出演があり、結弦くん、まっちーとともになごやかな笑顔で話をしているのを見た。ほっとした。
(日本のスタジオにいた織田くんが、ソチの大ちゃんに呼びかけた瞬間に号泣したので、さらになごむ)
そしてその中で、来月の埼玉での世界選手権には出るような?雰囲気の答え方だったので驚いた。
今回のコンディションからいって、もう世界選手権には出られないんじゃないかと思っていたので。
そして今後のことについても「自分の中でだんだん固まってきてはいる」とだけ言っていた。さらに現役続行も、なんて書いていたメディアもあるようだけど、さすがにそれはありえないと思う。
ただ、大ちゃんがとてもすっきりした、すがすがしい顔をしていたこと。それがただただ、うれしかった。彼は長光コーチの書いていた長い苦しみから、ついに解放されたのだと思った。
ソチ五輪男子フリーの高橋大輔選手。
思いを込めた「ビートルズメドレー」。
やさしくあたたかい、唯一無二のスケートがそこにあった。
明け方、生中継を泣きながら観て。
何度でも観たいけど、つらくてまだ録画を観ることはできてません。
キスクラでクマさんとともに。
ずっと笑顔だった。悔しさも苦しさも見せず、最後は自分のために、みんなのために笑顔でいたんだと思った。
6位入賞。
立派な結果だと思う。胸をはって帰ってきてほしい。
今はただ、お疲れさまと言いたいです。
そして残りのオリンピックを精一杯楽しんでください。
ありがとう。ありがとう大ちゃん。
メダル争いにからむ選手が十数人もいるという大混戦のフタをあければ、結果としてその十数人の中で、ノーミスで滑った選手は皆無。
最小限のミスに抑えられたデニス・テン選手がかろうじて銅メダルをつかみ、ショート3位だったハビエル・フェルナンデス選手はジャンプミスに加え、ジャンプの飛びすぎ違反というミスをおかしてメダルを逃しました。
そして注目された「どちらが金メダルか?」という白熱の争い。
ショート首位の羽生結弦選手は冒頭の4回転サルコウの失敗にくわえ、ふだんならあり得ない3回転フリップでも転倒。178.64という、今の羽生選手がここ一番の勝負で出した点数としては、考えがたいレベルに。
この得点が出た時点で、おそらく誰もが、金メダルは直後に滑走するパトリック・チャン選手がつかんだと思ったでしょう。
しかし。
やっぱりオリンピックは恐ろしい。
冒頭で美しい4×3のコンビネーションジャンプを決めたパトリックでしたが、そのあとは最近では見たことのないミスを連発。逆転でその手につかんだかに見えた金メダルは、あっという間にパトリックのもとから再び結弦くんのもとへ。
この逆転+逆転劇にはさすがに呆気にとられました。
結弦くんもびっくりしたらしく、テレビでは外国の記者にモニターを示されて、「君、金メダルちゃう?」と言われて「はい?」みたいな場面も。自分の演技が終わった直後は、これで金メダルは逃したと得心していたらしい。確かにそのくらい、よくない出来だったフリーでした。
こうして頂上決戦は、なんだか苦い自滅合戦の果て、五輪フィギュアスケート史上最年少にして、日本男子フィギュア界初の金メダルを羽生結弦選手が獲得するという結果になったのでした。
慣れないカナダの環境や、持病やケガ、そして震災と、さまざまなことにぶつかりながらひたすらに突き進んできた結弦くん。決して会心の勝利ではなかったからこそ、これからさらに成長しようと思える余地が残されたのではないかな。
銀メダルに終わったパトリック、カザフスタン史上初のメダルを獲得したテンくんにも、心からお疲れさま、おめでとうと言いたいです。
さて、男子フリーの個々の選手については、あとで書くことにして。
今は高橋大輔選手のことを書きます。
長年、大ちゃんに伴走してきた長光歌子コーチが、大ちゃんを最初に教えた岡山のコーチに昨日送ったメールの一部をネットで読みました。
「NHK杯の後の怪我からここまで、本当に苦しみました。 本日はそれから解放される最高の日でありますよう、 祈るばかりです。」
フリー終了後、実況解説をしていた本田武史コーチが、間近でずっと指導してきた大ちゃんの様子を、「(ケガのため練習ができず)追い込みたくても追い込めない。心と体がついていかない」状態だったと。そして、「最後まで笑顔で滑ってくれたのが本当によかった」と、声を震わせて話しているのをテレビで聞きました。
あとになって入ってくる話、大ちゃん本人の談話をみても、やはり右ひざのケガは思うような回復を見せず、直前までほとんど練習らしい練習はできなかったらしい。
11月下旬の骨挫傷のあと、回復を待てずに全日本があり、そこからソチまでもまた1ヶ月あまり。時が足りなかった、としか言いようがない。
でも、それが現実です。
本人はもちろん、長光コーチをはじめ彼を支える人たちはどんなに悔しく、つらかったことか。代表選考で後ろにおいてきた選手たちに対する責任。そして現役最後という崖っぷちで、本来の滑りができないことのもどかしさ。もしかしたらこの1ヶ月あまりは、これまでの選手生活にはなかったような苦しさの連続だったかもしれない。
3年前、「ソチまで現役続行」という爆弾(?)発言をしたとき、大ちゃんは言っていた。
「トップにいられないかもしれないけど、人生のいい経験になると思ってがんばりたい」
「きれいには終われないかもしれいけど、そういうスケート人生もいいのかな」と。
そのとき、彼の中にはここまで過酷の果てのソチ五輪が待っているという予想はなかっただろうけど、いくらでも「きれいな終わり方」ができるチャンスがあった中で、大ちゃんはここまでねばり通し、努力をやめなかった。
まだ、たった27歳の彼にとって、これからの人生は長い。アスリートとしてとことん戦い抜いたことが、そこで得たたくさんの苦しみやよろこびが、きっと彼のこれからの人生を支えていくと思う。
これを書きながらつけていたテレビで、ついさっきソチからの中継で大ちゃんの生出演があり、結弦くん、まっちーとともになごやかな笑顔で話をしているのを見た。ほっとした。
(日本のスタジオにいた織田くんが、ソチの大ちゃんに呼びかけた瞬間に号泣したので、さらになごむ)
そしてその中で、来月の埼玉での世界選手権には出るような?雰囲気の答え方だったので驚いた。
今回のコンディションからいって、もう世界選手権には出られないんじゃないかと思っていたので。
そして今後のことについても「自分の中でだんだん固まってきてはいる」とだけ言っていた。さらに現役続行も、なんて書いていたメディアもあるようだけど、さすがにそれはありえないと思う。
ただ、大ちゃんがとてもすっきりした、すがすがしい顔をしていたこと。それがただただ、うれしかった。彼は長光コーチの書いていた長い苦しみから、ついに解放されたのだと思った。
ソチ五輪男子フリーの高橋大輔選手。
思いを込めた「ビートルズメドレー」。
やさしくあたたかい、唯一無二のスケートがそこにあった。
明け方、生中継を泣きながら観て。
何度でも観たいけど、つらくてまだ録画を観ることはできてません。
キスクラでクマさんとともに。
ずっと笑顔だった。悔しさも苦しさも見せず、最後は自分のために、みんなのために笑顔でいたんだと思った。
6位入賞。
立派な結果だと思う。胸をはって帰ってきてほしい。
今はただ、お疲れさまと言いたいです。
そして残りのオリンピックを精一杯楽しんでください。
ありがとう。ありがとう大ちゃん。
by higurashizoshi
| 2014-02-15 21:54
| フィギュアスケート