ひぐらしだより
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フィギュアスケートのことを含め、まったくブログに触れずにもう年の瀬も押し詰まり、今年もあと2日。
今年の漢字は「災」らしいけど、わたし自身にとっても今年の特に後半は「災」の連続だった。《呪われた秋》と自ら名付けた9月から11月、フィギュアスケートの競技シーズンに入っても、ほぼテレビでCS含め観られるものは網羅して観ていたけれど、とてもそれについて書くだけの余裕というかパワーはなかった。
全日本選手権、現役復帰した髙橋大輔選手のショート、フリー。
練習再開からたった半年あまりで、全日本のトップレベルまで戻してきた凄さと、最後の最後にフリーのあのプログラムを完成させられず終わったことの悔しさ。世界選手権の選考を辞退したことへの複雑な思い。
そして来季も現役続行の意思を示してくれたこと、ファンとしては希望をつなぎたいけれど、来季スケート連盟の強化選手に彼が入るのかどうかなど、ことはそう単純ではないだろう。
でも、ともかくうれしかったのは、大ちゃんが《今はスケートが大好き》と言い切るようになってくれたこと。そして、「できるだけ長く人前で滑ることを続けていきたい」と明言してくれていることだ。
ファンはこの言葉を待っていたんだよ。あなたがスケートを自分の愛するものとして中心に置き、自分の意志で滑り続けてくれること。それがどれほどクリエイティブな行為で、たくさんの人に希望や幸福感を与えることか…。

来季がどうなるにせよ、少なくとも氷の上で大ちゃんを見続けることができるのは確か。
それも、これまでとはきっと違う意思のもとで彼がつくりだす世界を、目にすることができるだろう。
本当に、本当にうれしい。
そして今回の全日本、ある意味大ちゃんよりも印象的で心うたれたのは、宇野昌磨選手だった。
これまで故障の少なかった彼が、ショートの前に足首をケガしていて、結果的にはショートもフリーも強行出場となり、そしてあの鬼気迫る演技で孤高の1位を守った。
フリーは構成を少し落としたとはいえ、とても右足首を歩けないほど傷めている人とは思えない演技内容。
追い詰められた昌磨は、激しく、強かった。

すべてが終わるまではケガについて一切語らず、フリー後には約束通りきちんと説明を尽くし、今回はケガをしたからこそ自分を信じることができたと語った彼。
「どうしてそんなにまでして(試合に)出たいの?」と樋口コーチに聞かれて答えた言葉、
「僕の生き方です」。
あまりにもかっこよすぎて、しみじみと「凄いひとだ」と思った。
静かなたたずまいの彼の中にある、貪欲さとプライド。
それは、世間に流布している宇野昌磨のイメージ、《可愛らしさ》や《ほんわか天然》とは遠く隔たっていた。
彼がこれからどんなふうに変化していくのか、どこまでの高みまで行けるのか、見守りたい。
ここ数日は、CSで放映しているロシア選手権を時間を作って観つつ、年末の仕事をひとつひとつ片づけている。
《呪われた秋》は去り、ようやく静かな冬が訪れた気がする。
年が明ければ、ヨーロッパ選手権(ハビエル・フェルナンデス選手の引退試合となる)、四大陸選手権、そして世界選手権。そのころには春が近づいてくる。
もちろん、今年はけして悪いことばかり起きたのではない。
私にとってプラスになる経験も、いろんな人とのかかわりの中で、たくさんさせてもらった。
初めて、台湾も旅した。来年は、ロシア極東部に行きたいなと夢見たりもしている。
この「ひぐらしだより」は、今後も細々ながら閉じることなく続けていきたいと思う。更新がなかなかないので「もう書かないのかな」と思われた方もいるかもだけど、気長に待っていただければ、こんなふうにひょっこり書いたりします。
2019年がどうか平和に少しでも近づく年であるように。
みなさんにとってなごやかで、うれしいことの多い年になりますように。
生きることは力仕事だけれど、その中にあるよろこびを忘れず味わえる自分でありたいと思います。
今年の漢字は「災」らしいけど、わたし自身にとっても今年の特に後半は「災」の連続だった。《呪われた秋》と自ら名付けた9月から11月、フィギュアスケートの競技シーズンに入っても、ほぼテレビでCS含め観られるものは網羅して観ていたけれど、とてもそれについて書くだけの余裕というかパワーはなかった。
全日本選手権、現役復帰した髙橋大輔選手のショート、フリー。
練習再開からたった半年あまりで、全日本のトップレベルまで戻してきた凄さと、最後の最後にフリーのあのプログラムを完成させられず終わったことの悔しさ。世界選手権の選考を辞退したことへの複雑な思い。
そして来季も現役続行の意思を示してくれたこと、ファンとしては希望をつなぎたいけれど、来季スケート連盟の強化選手に彼が入るのかどうかなど、ことはそう単純ではないだろう。
でも、ともかくうれしかったのは、大ちゃんが《今はスケートが大好き》と言い切るようになってくれたこと。そして、「できるだけ長く人前で滑ることを続けていきたい」と明言してくれていることだ。
ファンはこの言葉を待っていたんだよ。あなたがスケートを自分の愛するものとして中心に置き、自分の意志で滑り続けてくれること。それがどれほどクリエイティブな行為で、たくさんの人に希望や幸福感を与えることか…。

来季がどうなるにせよ、少なくとも氷の上で大ちゃんを見続けることができるのは確か。
それも、これまでとはきっと違う意思のもとで彼がつくりだす世界を、目にすることができるだろう。
本当に、本当にうれしい。
そして今回の全日本、ある意味大ちゃんよりも印象的で心うたれたのは、宇野昌磨選手だった。
これまで故障の少なかった彼が、ショートの前に足首をケガしていて、結果的にはショートもフリーも強行出場となり、そしてあの鬼気迫る演技で孤高の1位を守った。
フリーは構成を少し落としたとはいえ、とても右足首を歩けないほど傷めている人とは思えない演技内容。
追い詰められた昌磨は、激しく、強かった。

すべてが終わるまではケガについて一切語らず、フリー後には約束通りきちんと説明を尽くし、今回はケガをしたからこそ自分を信じることができたと語った彼。
「どうしてそんなにまでして(試合に)出たいの?」と樋口コーチに聞かれて答えた言葉、
「僕の生き方です」。
あまりにもかっこよすぎて、しみじみと「凄いひとだ」と思った。
静かなたたずまいの彼の中にある、貪欲さとプライド。
それは、世間に流布している宇野昌磨のイメージ、《可愛らしさ》や《ほんわか天然》とは遠く隔たっていた。
彼がこれからどんなふうに変化していくのか、どこまでの高みまで行けるのか、見守りたい。
ここ数日は、CSで放映しているロシア選手権を時間を作って観つつ、年末の仕事をひとつひとつ片づけている。
《呪われた秋》は去り、ようやく静かな冬が訪れた気がする。
年が明ければ、ヨーロッパ選手権(ハビエル・フェルナンデス選手の引退試合となる)、四大陸選手権、そして世界選手権。そのころには春が近づいてくる。
もちろん、今年はけして悪いことばかり起きたのではない。
私にとってプラスになる経験も、いろんな人とのかかわりの中で、たくさんさせてもらった。
初めて、台湾も旅した。来年は、ロシア極東部に行きたいなと夢見たりもしている。
この「ひぐらしだより」は、今後も細々ながら閉じることなく続けていきたいと思う。更新がなかなかないので「もう書かないのかな」と思われた方もいるかもだけど、気長に待っていただければ、こんなふうにひょっこり書いたりします。
2019年がどうか平和に少しでも近づく年であるように。
みなさんにとってなごやかで、うれしいことの多い年になりますように。
生きることは力仕事だけれど、その中にあるよろこびを忘れず味わえる自分でありたいと思います。
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by higurashizoshi
| 2018-12-30 01:49
| フィギュアスケート
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カザフスタン史上初のフィギュアスケートのオリンピックメダリストであり、カザフのスポーツ界における若き英雄だったデニス・テン選手が昨日、故国のアルマトイで亡くなりました。

あまりにも突然の死。昨日、レストランで会食後に車に戻った彼は、ミラーを盗もうとしていた2人の男に遭遇、大腿部を刺され大量出血し、搬送先の病院で死亡したというのです。
いまだ、信じられないし、信じたくない。
テンくん。その高い音楽性、美しいスケーティング、すばらしい衣装センス、静かに燃えるような力強さと、にじみ出る知性と優しい人柄、そして彼がまとう独特の高貴さ。
子ども時代に才能を見いだされてカザフからロシアへ。タチアナ・タラソワなど著名なコーチのもとで成長を続け、頭角をあらわしました。
私が彼に初めて注目したのは、バンクーバー五輪出場のとき。すでに彼はアメリカに移り、フランク・キャロルコーチのもとにいました。
まだ16歳、あどけない少年はとてつもない闘志と身体能力に満ちていました。カザフスタン出身ということも当時まだ珍しく、これはすごい選手が出てきたぞと思ったものです。私は彼をひそかに《火の玉小僧》と名付けました。
その後ケガや故障にたびたび苦しみながらも、確実に世界のトップスケーターへと成長。同時に、故国のスポーツ界を牽引する知性と気品に満ちた青年へと変化していき、私の中での呼称も《火の玉小僧》返上、《尊敬すべき美しきスケーター、テンくん》に変わりました。

毎年、シーズン初めはなかなか調子が上がらず、それでもシーズンが深まるにつれ、いつもすばらしい演技で私たちを惹きつけてくれたテンくん。世界選手権で2度のメダル、四大陸選手権で優勝、そしてソチ五輪では銅メダルに輝きました。何より、プログラムの音楽を丸ごと自分のものにしてひとつの作品にする力、その魅力はいつも抜きんでていました。
世界中のスケーターと親交を深め、ソチでのメダルをばねに、カザフスタンでの五輪開催を目指していた彼。その夢もかなうことなく、あまりにもあっけなく、あまりにも無残に、彼の25年の人生は断ち切られました。
世界中のスケーター、スケート関係者から悲鳴のような哀悼のことばが降り注いでいます。
今月初め、現役復帰を発表した大ちゃんに、テンくんはSNSで《おかえり、DT》と呼びかけてくれていました。テンくんと大ちゃん、イニシャルが同じだったんですよね。
カザフでテンくんが開催したアイスショーに大ちゃんも真央さんも招かれて、ほんとうに楽しそうに交流する姿が見られていたのに…。
彼のたくさんのプログラムの中で、これはずっと残り続けると思える演技を貼っておきます。
多くの方に、何度も何度も観てもらいたいです。
こうして亡くなったテンくんのことを報道するときに、かつて羽生選手との間にあった《トラブル》をクローズアップする人たちがいることは悲しい。
いまだ本当の事実関係も明らかではないのに、彼の功績よりもそれが大きなことであるかのように書くのは、あまりにも失礼です。彼のアスリートとしてのすばらしさ、彼がカザフスタンでもスケート界においてもどれほど大切な存在だったか、それこそを報道してほしい。
2015年、四大陸選手権優勝のフリー。
シルクロードをテーマにした難しい選曲をみごとに踊りこなし、わずかなジャンプミス以外は完ぺきな演技。衣装も、いつも凝った美しい彼のコスチュームの中でも史上最高のひとつです。
まだお別れを言う気持ちにはとてもなれないから、さようならではなく、ただありがとうと言います。
テンくん、美しいスケートを、その闘志と、優しい笑顔を、ありがとう。

あまりにも突然の死。昨日、レストランで会食後に車に戻った彼は、ミラーを盗もうとしていた2人の男に遭遇、大腿部を刺され大量出血し、搬送先の病院で死亡したというのです。
いまだ、信じられないし、信じたくない。
テンくん。その高い音楽性、美しいスケーティング、すばらしい衣装センス、静かに燃えるような力強さと、にじみ出る知性と優しい人柄、そして彼がまとう独特の高貴さ。
子ども時代に才能を見いだされてカザフからロシアへ。タチアナ・タラソワなど著名なコーチのもとで成長を続け、頭角をあらわしました。
私が彼に初めて注目したのは、バンクーバー五輪出場のとき。すでに彼はアメリカに移り、フランク・キャロルコーチのもとにいました。
まだ16歳、あどけない少年はとてつもない闘志と身体能力に満ちていました。カザフスタン出身ということも当時まだ珍しく、これはすごい選手が出てきたぞと思ったものです。私は彼をひそかに《火の玉小僧》と名付けました。
その後ケガや故障にたびたび苦しみながらも、確実に世界のトップスケーターへと成長。同時に、故国のスポーツ界を牽引する知性と気品に満ちた青年へと変化していき、私の中での呼称も《火の玉小僧》返上、《尊敬すべき美しきスケーター、テンくん》に変わりました。

毎年、シーズン初めはなかなか調子が上がらず、それでもシーズンが深まるにつれ、いつもすばらしい演技で私たちを惹きつけてくれたテンくん。世界選手権で2度のメダル、四大陸選手権で優勝、そしてソチ五輪では銅メダルに輝きました。何より、プログラムの音楽を丸ごと自分のものにしてひとつの作品にする力、その魅力はいつも抜きんでていました。
世界中のスケーターと親交を深め、ソチでのメダルをばねに、カザフスタンでの五輪開催を目指していた彼。その夢もかなうことなく、あまりにもあっけなく、あまりにも無残に、彼の25年の人生は断ち切られました。
世界中のスケーター、スケート関係者から悲鳴のような哀悼のことばが降り注いでいます。
今月初め、現役復帰を発表した大ちゃんに、テンくんはSNSで《おかえり、DT》と呼びかけてくれていました。テンくんと大ちゃん、イニシャルが同じだったんですよね。
カザフでテンくんが開催したアイスショーに大ちゃんも真央さんも招かれて、ほんとうに楽しそうに交流する姿が見られていたのに…。
彼のたくさんのプログラムの中で、これはずっと残り続けると思える演技を貼っておきます。
多くの方に、何度も何度も観てもらいたいです。
こうして亡くなったテンくんのことを報道するときに、かつて羽生選手との間にあった《トラブル》をクローズアップする人たちがいることは悲しい。
いまだ本当の事実関係も明らかではないのに、彼の功績よりもそれが大きなことであるかのように書くのは、あまりにも失礼です。彼のアスリートとしてのすばらしさ、彼がカザフスタンでもスケート界においてもどれほど大切な存在だったか、それこそを報道してほしい。
2015年、四大陸選手権優勝のフリー。
シルクロードをテーマにした難しい選曲をみごとに踊りこなし、わずかなジャンプミス以外は完ぺきな演技。衣装も、いつも凝った美しい彼のコスチュームの中でも史上最高のひとつです。
まだお別れを言う気持ちにはとてもなれないから、さようならではなく、ただありがとうと言います。
テンくん、美しいスケートを、その闘志と、優しい笑顔を、ありがとう。
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by higurashizoshi
| 2018-07-20 12:50
| フィギュアスケート
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よもや、ひさびさの更新がこんなテーマになろうとは。
7月1日、フィギュアスケートの2018-19年シーズンが始まる、フィギュアファンにとっての元旦。そのまさに今日、高橋大輔さんが現役復帰を発表。

私、会議中で。
ふとスマホを見て知った瞬間、脳内で理解しはじめる前に、なぜか泣きそうになった。会議中だから泣きませんでしたが。
この人って、この人って、ほんとにこういう人なんだ。また茨の道へ、32歳で復帰なんて。
回り道して、やっぱり自分の納得を求めて競技に戻る。自分のために。
あとから知ったけれど、昨年12月の全日本選手権を報道側としてそばで見ているとき、急に《降りてきた》思いだったと。それまでは競技に戻りたいとは一切思ってなかった。
そして、ソチ五輪シーズンが不本意に終わったこと、特にあのつらい五輪のあと、世界選手権を断念してそのまま休養→引退してしまったことに、やっぱり大ちゃん自身がどこかで引っかかっていた。やり切っていない、という思いが残っていた。
今度こそ自分のために、彼は帰ってくる。この過酷なリンクに。
今夜のテレビ生出演のとき、中村アナが「高橋大輔選手」と呼びかけたのを聞いて、また泣きそうになった。そんな自分の反応が、不思議だった。大ちゃんの現役復帰? 露ほども考えてなかったのに。
なぜか、驚きよりもなによりも、ただただ、胸がいっぱいで。
1年限定、と言っているけど、これはきっと、やってみてからのこと。
今後30代後半までスケートをしていくにあたって、一度現役に戻って一から作り直すということが必要だと考えた、とも言っていた。自分のスケートを取り戻したい、と。
すでに長光コーチのもとで、今シーズンを戦うための練習を関大リンクで始めているとのこと。
現時点での目標は、半年後の全日本選手権で最終グループに入ることだそうだ。
地道に近畿ブロック大会から勝ちあがっていって、そこまでいく。これは地方大会も大変なことになりそう。
そして、もしその願いがかなったら。
全日本で、結弦くんと、ショーマと、同じグループに大ちゃんがいる、という景色を見ることになるのだ。
そして気づく。発表になったばかりだった今シーズンアサインのNHK杯の、日本選手のTBD枠(選手名未定の枠)。なんでここ、こうなってるんだろうと思っていたんだけれど。
これは、もしかして、つまり、そういうことがあろうかという、TBDだったのか…。
はああ。こんな日が来るなんて。
ほんとうに実感するまでは、まだしばらく時間がかかりそう。
でも、今日記者会見でも、生出演でも、大ちゃんがとてもまっすぐで、すっきりとして、迷いがないいい眼をしていたこと。こんな彼を見るのはいつからぶりだろうと思って、それがただただうれしかったことは、忘れない。
大ちゃんに、現役復帰の思いを《降りて》こさせた演技のひとつとして、昨年末の全日本でのこの演技が紹介されていた。ああ、そうか…と思った。
2度の骨折、3度の手術、長いリハビリを経て、地方大会ではシングルジャンプしか跳べず、それでも全日本出場を果たした山本草太選手。私も生でテレビで観ながら、思わず泣いた。
「勝たなければ意味がないと思っていた。でもそうじゃない、それぞれの戦い方があっていいんだと気づいた」
そう、大ちゃんに言わせた草太くんの演技「アンセム」。
7月1日、フィギュアスケートの2018-19年シーズンが始まる、フィギュアファンにとっての元旦。そのまさに今日、高橋大輔さんが現役復帰を発表。

私、会議中で。
ふとスマホを見て知った瞬間、脳内で理解しはじめる前に、なぜか泣きそうになった。会議中だから泣きませんでしたが。
この人って、この人って、ほんとにこういう人なんだ。また茨の道へ、32歳で復帰なんて。
回り道して、やっぱり自分の納得を求めて競技に戻る。自分のために。
あとから知ったけれど、昨年12月の全日本選手権を報道側としてそばで見ているとき、急に《降りてきた》思いだったと。それまでは競技に戻りたいとは一切思ってなかった。
そして、ソチ五輪シーズンが不本意に終わったこと、特にあのつらい五輪のあと、世界選手権を断念してそのまま休養→引退してしまったことに、やっぱり大ちゃん自身がどこかで引っかかっていた。やり切っていない、という思いが残っていた。
今度こそ自分のために、彼は帰ってくる。この過酷なリンクに。
今夜のテレビ生出演のとき、中村アナが「高橋大輔選手」と呼びかけたのを聞いて、また泣きそうになった。そんな自分の反応が、不思議だった。大ちゃんの現役復帰? 露ほども考えてなかったのに。
なぜか、驚きよりもなによりも、ただただ、胸がいっぱいで。
1年限定、と言っているけど、これはきっと、やってみてからのこと。
今後30代後半までスケートをしていくにあたって、一度現役に戻って一から作り直すということが必要だと考えた、とも言っていた。自分のスケートを取り戻したい、と。
すでに長光コーチのもとで、今シーズンを戦うための練習を関大リンクで始めているとのこと。
現時点での目標は、半年後の全日本選手権で最終グループに入ることだそうだ。
地道に近畿ブロック大会から勝ちあがっていって、そこまでいく。これは地方大会も大変なことになりそう。
そして、もしその願いがかなったら。
全日本で、結弦くんと、ショーマと、同じグループに大ちゃんがいる、という景色を見ることになるのだ。
そして気づく。発表になったばかりだった今シーズンアサインのNHK杯の、日本選手のTBD枠(選手名未定の枠)。なんでここ、こうなってるんだろうと思っていたんだけれど。
これは、もしかして、つまり、そういうことがあろうかという、TBDだったのか…。
はああ。こんな日が来るなんて。
ほんとうに実感するまでは、まだしばらく時間がかかりそう。
でも、今日記者会見でも、生出演でも、大ちゃんがとてもまっすぐで、すっきりとして、迷いがないいい眼をしていたこと。こんな彼を見るのはいつからぶりだろうと思って、それがただただうれしかったことは、忘れない。
大ちゃんに、現役復帰の思いを《降りて》こさせた演技のひとつとして、昨年末の全日本でのこの演技が紹介されていた。ああ、そうか…と思った。
2度の骨折、3度の手術、長いリハビリを経て、地方大会ではシングルジャンプしか跳べず、それでも全日本出場を果たした山本草太選手。私も生でテレビで観ながら、思わず泣いた。
「勝たなければ意味がないと思っていた。でもそうじゃない、それぞれの戦い方があっていいんだと気づいた」
そう、大ちゃんに言わせた草太くんの演技「アンセム」。
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by higurashizoshi
| 2018-07-02 01:43
| フィギュアスケート
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終わりました。女子フリーが終わりました。
今は、とりあえず金メダルと銀メダルを分けた二人の戦いについて。

一昨日、女子ショートプログラムは上位陣がそろってパーソナルベストを続々更新するというすばらしい試合となりました。その中でも、エフゲーニャ・メドベージェワ選手が完璧な演技で出した歴代最高得点を、わずか20分後にはアレーナ・ザギトワ選手が更新、まったく異次元の一騎打ちがスタート。
そして中一日をあけたフリー。金メダルは、首位発進となった15歳のザギトワ選手か、僅差の2位発進となった世界女王メドベージェワ選手か。二人のショートでの得点差は、わずか1.31。
オリンピックシーズン序盤までは他を寄せつけることのない盤石の強さで、平昌での金メダル確実と思われたメドベージェワ選手。しかし昨年11月、右足の甲を疲労骨折していることを公表し、治療期間に入りました。
ちょうどメドベージェワ選手が治療に入った12月のグランプリファイナルで優勝したのが、まだ今季ジュニアからシニアに上がってきたばかりのザギトワ選手。ともにモスクワのエテリ・トゥトベリーゼコーチの指導を受ける同門の2人の行方に、大きな注目が集まりました。
メドベージェワ選手のケガ明けの復帰戦となった今年1月のヨーロッパ選手権では、ザギトワ選手がメドベージェワ選手を制して優勝。2年以上、どの試合でも負けなしだった絶対女王メドベージェワ選手の、初めての敗北でした。
そして迎えたオリンピック。メドベちゃんはケガは完全に治り、影響はないと断言。いつもながらの力強い高難度のジャンプ、ミスのない、そして表現力豊かな演技は健在。
一方のザギトワちゃんは、今季ほとんどミスのない演技を連発し、シニア一年目にして出場した国際試合のすべてで優勝。まさに伸び盛りの勢いを見せていました。
特に彼女が武器とするのは、3ルッツ+3ループをはじめとする高難度のジャンプをいとも軽々と高く正確に跳んでいく驚異的な技術力。そしてジャンプ7つすべてを得点が1.1倍になる後半に組み込むという、究極の高得点狙いの鬼プログラムでもまったくバテることのないスタミナとメンタルの強さ。
しかし、メンタルの強さではメドベちゃんはまさに女王。常に主体的にプログラムにも練習にも取り組み、どんな試合にも緊張や弱気などかけらも見せずに強く明るいオーラを放つ存在であり続けてきました。彼女の不運は、やはりよりによってオリンピックシーズンに骨折してしまい、その影響が避けられない中で対決に臨まなければいけなかったことでした。
ロシアからの選手派遣がドーピング問題で大揺れし、個人資格という変則的な形での参加となったロシアの選手たち。もともとウインタースポーツの牙城だったロシアですが、この五輪では今日まで金メダルはひとつもなかったんですね。そんな中迎えた女子シングル、どれほどの重圧が18歳と15歳の2人の少女の肩にかかっていたことかと思うと、胸が痛くなります。
フリーの滑走順は、ザギトワちゃんのほうが早く、メドベちゃんは最終滑走。
ザギトワちゃんの今季プログラムは、ショートが「ブラックスワン」、フリーが「ドン・キホーテ」と、どちらもクラシックバレエをベースにしたもの。特にフリーはバレエチュチュの真っ赤な衣装でドン・キホーテのキトリを演じるという、ロシアの伝統的な、ある意味ベタな演目。表現力というよりは、音楽とスケーティング技術をかっちりと合わせ、そこに高難度ジャンプをこれでもかと盛り込んで高得点をねらうプログラムです。

今日もまったくミスなく進むに見えたプログラムの中、後半に組み込んだ3ルッツ+3ループ、ザギトワちゃんの最強ジャンプコンビネーション。最初の3ルッツの着氷が詰まり、コンビネーションがつけられず! あわやのミス! と思ったら、そのあとジャンプ構成をすみやかに変更して、その後の3ルッツにおそろしく質のいい3ループをしっかりとつけてきました。うおお。
なんという落ち着き。どんなことにも対応できるように徹底的に鍛錬しているんでしょう。
すべてのジャンプ、エレメンツを完璧にこなし、フィニッシュ後は片手を挙げて力強くガッツポーズ!強い!!
そして出た点数は、フリー156.65、総合239.57のハイスコア。とはいえ、歴代最高には及びませんでした。
メドベちゃんのフリーは「アンナ・カレーニナ」。ロシア文学の名作を、その表現力を駆使して演じ切り、ジャンプも各エレメンツもすべてがその演技の一部であるかのように感じさせる、非常に芸術性の高いプログラムです。衣装もまさに芸術品の美しさ。

いつものように、物語に入り込む表情からスタート。
しかし、冒頭のジャンプコンビネーションがこれまで後半(得点1.1倍)に入れていた3フリップ+3トゥだとわかった瞬間、私の頭にパッとともった言葉は《ああ、金は取れない!》でした。
ほんのわずかな差が勝敗を分けるこの場面で、あえて後半から前半にジャンプを移さざるを得ないのは、後半に置いておけば失敗する懸念があるから。確実に跳ぶ自信のある冒頭に、このコンビネーションを持ってきたのでしょう。今のメドベちゃんは、そういうコンディションだったのだ、ということだと思います。
もし冒頭に移動した3フリップ+3トゥをこれまで通り後半で跳んでいたら。
《もしも》の話をしても仕方ないことですが、そうであれば得点は変動し、メドベちゃんが金メダルだった可能性はあります。それができるコンディションであれば、さらにコンポーネンツも上がっていたかもしれません。
ジャンプ全部を後半にかため、1.1倍のメリットを目いっぱい使うザギトワちゃんとの差が、そしてコンディションにわずかの疵があるかないかが、結局メダルの色を分けることになったのです。
メドベちゃんは、最後まで強かった。すべてのジャンプを降り、心からの演技をしました。
演技を終えた瞬間にあふれ出た涙、初めて見る彼女の号泣にこちらも涙が流れました。
そして、キスクラで得点を眼にしたときの、彼女の絶望的な悲しみの表情を忘れることができません。フリーの得点は、ザギトワちゃんとまったく同じ156.65。そして総合は238.26。
わずかに、わずかに1.31点の差、つまりショートの点差がそのまま天と地を分けました。

キスクラで泣きながらうつむいて、でも次の瞬間顔を上げたときは笑顔になっていた。この強さがメドベちゃんだと思いました。世界選手権に出場するかはわからないけれど、しっかり休養して万全のコンディションになって再び戦ってほしい。
その昔、15歳のタラ・リピンスキーが彗星のように現れ、長野五輪で金メダル確実のはずだった世界女王ミシェル・クワンの手から金メダルをもぎ取っていったことを思い出しました。クワンは結局五輪金メダルを最後まで獲ることはできず、一方のリピンスキーは長野五輪のすぐあとに現役引退。その後はタレント活動をしていて、この平昌五輪でもジョニー・ウィアーと組んでアメリカのテレビのフィギュアスケートの実況解説を担当しています。
もちろん、金メダルを手にしたザギトワちゃんは祝福したい。どうか彼女のこれからのキャリアに、このメダルがよい影響を与えますようにと願います。リプニツカヤ選手のようにメディアや周囲の期待にもみくちゃにされて早々とリンクを去った選手のことも、つい思い出してしまうので。
まだ15歳の彼女は今後体形変化もあるだろうし、ロシアには同じトゥトベリーゼ門下だけでも四回転を含めたおそろしいジャンプをバンバン跳べるジュニア選手がわんさといます。すぐに下からの突き上げも始まるでしょう。
本来ならもっと時間をかけて成長を見守ってもらうべき卓越した才能の持ち主なのに、こんなに早く金メダルを獲ってしまったことでこれからの道のりが逆に険しくなるかもしれない… ついついそんなことを考えて、ザギトワちゃんの無垢な笑顔が曇らなければいいなあと願っています。
今は、とりあえず金メダルと銀メダルを分けた二人の戦いについて。

一昨日、女子ショートプログラムは上位陣がそろってパーソナルベストを続々更新するというすばらしい試合となりました。その中でも、エフゲーニャ・メドベージェワ選手が完璧な演技で出した歴代最高得点を、わずか20分後にはアレーナ・ザギトワ選手が更新、まったく異次元の一騎打ちがスタート。
そして中一日をあけたフリー。金メダルは、首位発進となった15歳のザギトワ選手か、僅差の2位発進となった世界女王メドベージェワ選手か。二人のショートでの得点差は、わずか1.31。
オリンピックシーズン序盤までは他を寄せつけることのない盤石の強さで、平昌での金メダル確実と思われたメドベージェワ選手。しかし昨年11月、右足の甲を疲労骨折していることを公表し、治療期間に入りました。
ちょうどメドベージェワ選手が治療に入った12月のグランプリファイナルで優勝したのが、まだ今季ジュニアからシニアに上がってきたばかりのザギトワ選手。ともにモスクワのエテリ・トゥトベリーゼコーチの指導を受ける同門の2人の行方に、大きな注目が集まりました。
メドベージェワ選手のケガ明けの復帰戦となった今年1月のヨーロッパ選手権では、ザギトワ選手がメドベージェワ選手を制して優勝。2年以上、どの試合でも負けなしだった絶対女王メドベージェワ選手の、初めての敗北でした。
そして迎えたオリンピック。メドベちゃんはケガは完全に治り、影響はないと断言。いつもながらの力強い高難度のジャンプ、ミスのない、そして表現力豊かな演技は健在。
一方のザギトワちゃんは、今季ほとんどミスのない演技を連発し、シニア一年目にして出場した国際試合のすべてで優勝。まさに伸び盛りの勢いを見せていました。
特に彼女が武器とするのは、3ルッツ+3ループをはじめとする高難度のジャンプをいとも軽々と高く正確に跳んでいく驚異的な技術力。そしてジャンプ7つすべてを得点が1.1倍になる後半に組み込むという、究極の高得点狙いの鬼プログラムでもまったくバテることのないスタミナとメンタルの強さ。
しかし、メンタルの強さではメドベちゃんはまさに女王。常に主体的にプログラムにも練習にも取り組み、どんな試合にも緊張や弱気などかけらも見せずに強く明るいオーラを放つ存在であり続けてきました。彼女の不運は、やはりよりによってオリンピックシーズンに骨折してしまい、その影響が避けられない中で対決に臨まなければいけなかったことでした。
ロシアからの選手派遣がドーピング問題で大揺れし、個人資格という変則的な形での参加となったロシアの選手たち。もともとウインタースポーツの牙城だったロシアですが、この五輪では今日まで金メダルはひとつもなかったんですね。そんな中迎えた女子シングル、どれほどの重圧が18歳と15歳の2人の少女の肩にかかっていたことかと思うと、胸が痛くなります。
フリーの滑走順は、ザギトワちゃんのほうが早く、メドベちゃんは最終滑走。
ザギトワちゃんの今季プログラムは、ショートが「ブラックスワン」、フリーが「ドン・キホーテ」と、どちらもクラシックバレエをベースにしたもの。特にフリーはバレエチュチュの真っ赤な衣装でドン・キホーテのキトリを演じるという、ロシアの伝統的な、ある意味ベタな演目。表現力というよりは、音楽とスケーティング技術をかっちりと合わせ、そこに高難度ジャンプをこれでもかと盛り込んで高得点をねらうプログラムです。

なんという落ち着き。どんなことにも対応できるように徹底的に鍛錬しているんでしょう。
すべてのジャンプ、エレメンツを完璧にこなし、フィニッシュ後は片手を挙げて力強くガッツポーズ!強い!!
そして出た点数は、フリー156.65、総合239.57のハイスコア。とはいえ、歴代最高には及びませんでした。
メドベちゃんのフリーは「アンナ・カレーニナ」。ロシア文学の名作を、その表現力を駆使して演じ切り、ジャンプも各エレメンツもすべてがその演技の一部であるかのように感じさせる、非常に芸術性の高いプログラムです。衣装もまさに芸術品の美しさ。

しかし、冒頭のジャンプコンビネーションがこれまで後半(得点1.1倍)に入れていた3フリップ+3トゥだとわかった瞬間、私の頭にパッとともった言葉は《ああ、金は取れない!》でした。
ほんのわずかな差が勝敗を分けるこの場面で、あえて後半から前半にジャンプを移さざるを得ないのは、後半に置いておけば失敗する懸念があるから。確実に跳ぶ自信のある冒頭に、このコンビネーションを持ってきたのでしょう。今のメドベちゃんは、そういうコンディションだったのだ、ということだと思います。
もし冒頭に移動した3フリップ+3トゥをこれまで通り後半で跳んでいたら。
《もしも》の話をしても仕方ないことですが、そうであれば得点は変動し、メドベちゃんが金メダルだった可能性はあります。それができるコンディションであれば、さらにコンポーネンツも上がっていたかもしれません。
ジャンプ全部を後半にかため、1.1倍のメリットを目いっぱい使うザギトワちゃんとの差が、そしてコンディションにわずかの疵があるかないかが、結局メダルの色を分けることになったのです。
メドベちゃんは、最後まで強かった。すべてのジャンプを降り、心からの演技をしました。
演技を終えた瞬間にあふれ出た涙、初めて見る彼女の号泣にこちらも涙が流れました。
そして、キスクラで得点を眼にしたときの、彼女の絶望的な悲しみの表情を忘れることができません。フリーの得点は、ザギトワちゃんとまったく同じ156.65。そして総合は238.26。
わずかに、わずかに1.31点の差、つまりショートの点差がそのまま天と地を分けました。

キスクラで泣きながらうつむいて、でも次の瞬間顔を上げたときは笑顔になっていた。この強さがメドベちゃんだと思いました。世界選手権に出場するかはわからないけれど、しっかり休養して万全のコンディションになって再び戦ってほしい。
その昔、15歳のタラ・リピンスキーが彗星のように現れ、長野五輪で金メダル確実のはずだった世界女王ミシェル・クワンの手から金メダルをもぎ取っていったことを思い出しました。クワンは結局五輪金メダルを最後まで獲ることはできず、一方のリピンスキーは長野五輪のすぐあとに現役引退。その後はタレント活動をしていて、この平昌五輪でもジョニー・ウィアーと組んでアメリカのテレビのフィギュアスケートの実況解説を担当しています。
もちろん、金メダルを手にしたザギトワちゃんは祝福したい。どうか彼女のこれからのキャリアに、このメダルがよい影響を与えますようにと願います。リプニツカヤ選手のようにメディアや周囲の期待にもみくちゃにされて早々とリンクを去った選手のことも、つい思い出してしまうので。
まだ15歳の彼女は今後体形変化もあるだろうし、ロシアには同じトゥトベリーゼ門下だけでも四回転を含めたおそろしいジャンプをバンバン跳べるジュニア選手がわんさといます。すぐに下からの突き上げも始まるでしょう。
本来ならもっと時間をかけて成長を見守ってもらうべき卓越した才能の持ち主なのに、こんなに早く金メダルを獲ってしまったことでこれからの道のりが逆に険しくなるかもしれない… ついついそんなことを考えて、ザギトワちゃんの無垢な笑顔が曇らなければいいなあと願っています。
本音を言えば、やっぱりメドベちゃんを表彰台の真ん中に立たせてあげたかった。
なんともいえない残念な気持ちとともに、フィギュアスケートの採点って…とあらためて考えることにもなりました。後半に高難度ジャンプを固め打ちすれば勝てるのならば、コンポーネンツは何のためにあるんだろう?などと。
そういう意味では、どこかモヤモヤした気持ちが残った女子フリーの頂上決戦でした。
すばらしかった宮原知子選手など、ほかの女子フリーの内容については次回書きたいと思います。
なんともいえない残念な気持ちとともに、フィギュアスケートの採点って…とあらためて考えることにもなりました。後半に高難度ジャンプを固め打ちすれば勝てるのならば、コンポーネンツは何のためにあるんだろう?などと。
そういう意味では、どこかモヤモヤした気持ちが残った女子フリーの頂上決戦でした。
すばらしかった宮原知子選手など、ほかの女子フリーの内容については次回書きたいと思います。
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by higurashizoshi
| 2018-02-23 23:13
| フィギュアスケート
|
Comments(0)
平昌オリンピック、早くも折り返し点を過ぎました。
フィギュアスケート競技も団体戦、個人戦の男子、ペアと終わり、昨日今日はアイスダンス。そう、私の大好きなアイスダンスなのに、テレビ放映が…ペアと同じくあまりに貧しい。
昨日のショートダンスは後半3グループはBS1で生中継があったのだけど、今日のフリーダンスに至っては他の競技が押したために最終グループ+1カップルしか生中継してくれませんでした。
ただし、今回は民放やNHKのネット配信での中継があったので、テレビでやってくれない前半部分はそちらで観ようと思ってたのですが…ショートダンスのときからなぜか音声が出ない!
ツイッターなどでも《音出ない》と言ってる人が複数いたので、何か解決法がないかなって探したんだけど…無理でした。で、仕方なく画質はよくないけどロシアのライストで観ました。とはいえ、不便はあってもいろんな方法でこうやって生で試合を観られる今の時代は、テレビしかなかった昔に比べてどれほど恵まれてることか。
昨日今日とそうやってアイスダンスを追いかけて、もうお腹いっぱい、胸いっぱい、ほんとうにすごい戦いでした。
これをテレビで少ししかやらず、一般に知られないのがまことにもったいない。
まずは、すべての戦いを終えて頂点に立った3組の姿を。
金メダルは、カナダのテッサ・バーチュー&スコット・モイア組(206.07:歴代最高得点)。
銀メダルは、フランスのガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組(205.28)。
銅メダルは、アメリカのマイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組(192.59)でした。

4位からの順位は次のとおり。
4 マディソン・ハベル&ザッカリー・ドノヒュー(アメリカ)187.69
5 エカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビヨフ(ロシア)186.92
6 アンナ・カッペリーニ&ルカ・ラノッテ(イタリア)184.91
7 ケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ(カナダ)181.98
8 パイパー・ギルス&ポール・ポワリエ(カナダ)176.91
9 マディソン・チョック&エヴァン・ベイツ(アメリカ)175.58
10 シャーリーヌ・ギグナード&マルコ・ファブリ(イタリア)173.47
11 ペニー・クームス&ニコラス・バックランド(イギリス)170.32
12 サラ・ウルタド&キリル・ハリャーヴィン(スペイン)168.33
13 ティファニー・ザゴルスキー&ジョナサン・ゲレイロ(ロシア)162.24
14 ナタリア・カルシュク&マキシム・スポディリエフ(ポーランド)161.35
15 村元哉中&クリス・リード(日本)160.63
16 カヴィタ・ローレンツ&ヨティ・ポリゾアキス(ドイツ)150.49
17 マリー=ジャード・ローリオ&ロマン・ルギャック(フランス)149.59
18 ユラ・ミン&アレクサンドル・ガメリン(韓国)147.74
19 アリサ・アガフォノワ&アルペル・ウチャル(トルコ)147.18
20 ルチエ・ミスチェコヴァ&ルカシュ・チェーレイ(スロバキア)142.57
【テサスコv.s.パパシゼの頂上決戦】
今回のオリンピック、アイスダンスの頂上争いは2つのカップルに絞られてました。
バンクーバー金メダル、ソチ銀メダル、もはやアイスダンス界のレジェンドといっても過言ではないテッサ・バーチュー&スコット・モイア組。いったん現役引退をしたあと、まだやり残したことがあると競技に戻ってきての挑戦です。
もう一組は、若きカリスマカップルとなったガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組。現在世界歴代最高得点の記録を持っている2人。私がジュニアのころから偏愛してきたカップルなんですが、まさかこんなに早く、こんなところまで登りつめてくるとは思ってませんでした。
この二組は、同じコーチ陣のもとで、同じリンクで練習してるチームメイト。リンクサイドでなごやかに一緒にいるシーンも見られます。世界一を争ってしのぎを削る2組が…と思い返せば、テッサ&スコット組と、バンクーバー五輪とソチ五輪で金メダルを競い合ったライバルのデイヴィス&ホワイト組も、当時やっぱり同じコーチ、同じリンク(現在とは別のところ)のチームメイトでした。
テッサ&スコット(テサスコ)が競技に復帰してきた昨シーズンは、ちょうどパパダキス&シゼロン(パパシゼ)が飛ぶ鳥を落とす勢いでアイスダンス界を席巻していたとき。まだ20歳そこそこのパパシゼは快進撃を続けてたのですが、その後状況は変わってきました。復帰したベテランのテサスコの方がじりじりと得点を伸ばしてきたのです。
そしてオリンピックシーズンの今シーズン、2つのカップルの評価は拮抗してきました。テッサとスコットは28歳と30歳。いったん引退したとはいえ、まだまだアイスダンスの選手としては現役で十分戦える年齢です。
私はパパシゼを偏愛してきたとはいえ、テサスコはその技術、調和性において人間界を超えたアイスダンスカップルだと思っているので、今回はどちらにも勝ってもらいたいという気持ちで悶々としてました。パパシゼはまだまだ若い。これからがある。でもテサスコはこれが最後の五輪、最後の競技シーズンだと明言してる。おまけに今シーズンのテサスコのプログラムの仕上がりの凄まじいことといったら!
まずは昨日のショートダンス。
テサスコが歴代最高得点を出してトップに立ちました。
まさに鳥肌ものの演技。こんなラテンは誰にも滑れない。テッサの新衣装は、大阪の全マダムがひれ伏すゴージャス豹柄です。
(動画はいずれも最初にCMが入るのでそのまましばしお待ちを。あと、画面左下の音声ボタンをクリックして消音をオフにしてくださいね。あと、このサイトの動画は時間がたてば消えてしまうと思うので、その場合は別のところから動画を探して貼るようにします)
かたやパパシゼのショートダンスは、演技の最初のあたりでガブリエラちゃんの衣装にアクシデントが起きました。演技を中断できないと思ったガブリエラちゃんはそのまま続行。もちろんギヨームくんも気づいていたはずで、そのせいもあってかツイズルで近づきすぎるなどいつもより若干不安定な演技に。衣装がはだけたためにガブリエラちゃんは精神的な傷も負うことになり、ほんとうに残念でした。
とはいっても、そんな中ですばらしい得点を出したのはさすが若きカリスマカップル。テサスコとは、わずか1.74点という僅差につけました。
さて。
3位以下とは大きく差をつけて臨んだ、今日のフリーダンス。
滑走順はパパシゼの方が先でした。
彼らのオリンピックシーズンのプログラム、ベートーベンのピアノソナタ「月光」。
歴代最高得点を叩き出した、神々しいほどの端正な演技、ひとつの作品をつくりあげた2人の美しいムーブメントをごらんください。
そしてテサスコは、最終滑走。
もっとも重圧がかかる順番です。
なのになのに、結果、パパシゼの歴代最高得点を速攻で更新してしまった彼ら。
フリープログラムは「ムーランルージュ」。狂おしいまでの男女の愛のよろこび、苦しみが迫ってくる圧巻の演技です。
こんなものを観たらもう何も観たくないというくらい、アイスダンスでこんなことができるんだというひとつの究極を見せられた思い。
もしパパシゼにショートダンスでのアクシデントがなかったら…とか、滑走順が違っていたら…とか、たくさんの《もしも》はあるにせよ、テサスコのフリー演技は「ああ、彼らが世界最高なんだ」としか納得しようのない、圧倒的なものでした。
今のテサスコを見ていて思うのは、カップル競技における《ユニゾン》についてです。
同調性とか、調和性とか訳される《ユニゾン》。
つまり二人がいかに息を合わせ、ひとつに溶け合うように演技ができるかということなのですが、私が思うにテサスコの持つ《ユニゾン》は、ほかのアイスダンスカップルと完全に一線を画しています。彼らの演技における《ユニゾン》は、合せるとかではなくて、まるでひとつの身体を共有しているかのようです。
スコットが「テッサと心臓の鼓動すら合わせたい」と話したことがあるそうですが、この二人は7歳と9歳のときにカップルを組んで以来、ずっと組み替えなしで緊密な関係を作り上げてきました。心も身体も、お互いこれほど知り尽くしている相手はいないのではないかと思います。試合前に二人が必ずおこなう、恒例の長いハグ。それは他者を寄せつけない空気に満ちています。
でも、彼らはプライベートではリアルカップルではないそうです。あまりに仲がよく、あまりに息がぴったりなのでしばしば誤解されるみたいですが。
私はむしろ、この二人が恋愛関係でないがゆえに、たぐいまれな《ユニゾン》が壊れることなく育ってきたのではないかと思うのです。そして、男女が恋愛感情を介さずにここまで信頼しあい、大切に思いあうことができるということ。これもまたゆるぎない《愛》なんだな、こういう愛が存在するなら、この世にも希望があるな、と。
たぶん、こんな《ユニゾン》を持つ二人は、これから先も出てくることはないんじゃないかとも思うのですが。
テサスコは、やっぱり今季でもう競技をほんとうに去ってしまうのかな…。念願の平昌での金メダルを手に入れて、歴代最高得点も更新して、もはや競技の世界ではこれ以上望むことはなくなったのかもしれないけれど、彼らがいなくなると考えるとさびしくてもったいなくて。
パパシゼは、ここからもっともっと進化していくでしょう。それが楽しみで仕方がないし、きっとテサスコとはまったく違う意味で、あとにも先にもないほど圧倒的なアイスダンスカップルになってくれると思います。
【ついにメダル!シブタニズ。そしてオリンピックの魔物】
ものすごく上手な日系のジュニアカップルがいる、という話が耳に入ったのはかれこれ10年近く前だったような。お人形さんのようにかわいらしいマイアとアレックスのシブタニ兄妹が、ついにシニアデビューしたのは2010-11年シーズンで、そのシーズンの全米選手権、四大陸選手権で2位、世界選手権でも銅メダルを獲得と、電撃的デビューを飾りました。
ただしその後はソチ五輪でも9位、世界選手権でも表彰台から遠ざかり、プログラムに関してもなかなか彼らにぴったり合うものが見つからず、高い技術と一定の評価は保ち続けるものの、世界のトップには届かない日々が続きました。
転機は2015-16シーズンのフリープログラム、コールドプレイの「Fix You」。やっと《これがシブタニズ》と言えるプログラムを得て、全米選手権で初優勝、世界選手権でも5年ぶりに表彰台に立ちました。
今シーズンは、同じコールドプレイの「Parachutes」をフリープログラムの曲に選んでオリンピックに臨みました。
今回のオリンピック、金メダル・銀メダルはテサスコとパパシゼのほかはなく、銅メダルがどのカップルになるかが注目でした。
銅メダル候補としては、同じアメリカのマディソン・ハベル&ザッカリー・ドノヒュー組とマディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組、イタリアのアンナ・カッペリーニ&ルカ・ラノッテ組などが挙がってました。
その中で、ハベル&ドノヒュー組がショートダンスで3位発進。僅差でシブタニズが4位につけました。
そんな中で、やっぱり出たんですね、いわゆる《オリンピックの魔物》が。
フリー最終グループの直前、チョック&ベイツ組はスピンに入るところで転倒。ふだんは大きなミスのない、技術力の高いカップルなのに…。今季「イマジン」のとてもすてきなプロで、好調でもあったのですが…。スピンがノーバリュー(0点)となり、2人とも転倒となったので2点減点。涙を流してのフィニッシュに、こちらも泣いてしまいました。
そして、シブタニズがノーミスで感動的な演技を終え、銅メダルを目の前にしたハベル&ドノヒュー組。初の全米選手権優勝をもぎ取った、自信のフリープログラム。
ところが、演技冒頭からいつもの彼ららしいパンチのきいたスピード感がなく、ツイズルでレベルも取りこぼした上、最後にザッカリーくんが氷に両手をついてしまい転倒扱いに。今季破竹の勢いだった彼らを襲った、これもオリンピックの魔物だったのでしょう。
カッペリーニ&ラノッテ組は「ライフ・イズ・ビューティフル」のサントラで、まるで映画を氷上に写し出すような情感あふれるすばらしい演技でしたが、ツイズルなどでレベルを取れず得点はあまり伸びませんでした。
そして、私がずっと応援してきたエカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビヨフ組。長くロシアのアイスダンスを牽引してきた2人の、たぶん集大成のオリンピック。ぐっと引き込まれる演劇的なフリープログラムでほんとうにすばらしかったのですが、結果はソチ五輪と同じく5位にとどまりました。
さまざまなことがあった結果、銅メダルはシブタニズの手に。まだ若い彼らですが、低迷も苦労も垣間見てきただけにこちらも感慨ひとしおでした。
そして、村元哉中&クリス・リード組の大健闘も、もちろん忘れちゃいけません。
シングルの選手だった哉中ちゃんがアイスダンスの世界に飛び込み、クリスと組んでから、ものすごい勢いで二人は進化してきました。五輪での15位はほんとうに立派です。
哉中ちゃんがぐいぐいクリスを引っぱり、クリスはこれまでの経験で哉中ちゃんを支え、とってもいい関係の中で急成長してきたんだろうなと思います。これからもっともっとうまくなることでしょう。彼らがどこまでいけるのか楽しみです。
私がアイスダンスを本格的に観はじめたのはバンクーバー五輪からなので、ちょうど8年くらい。この間にもたくさんの変遷があり、引退、復帰、組み替え、コーチの変更、けっこうめまぐるしい変化がありました。そして、最初のころからずっと一緒に観てきた娘たちも、この8年で子どもから大人へ。
アイスダンスはシングルと違い、ファンが少なくてなかなか人に話が通じないこともあって、どんな選手がどのコーチからどのコーチに替わったとか、ステップの種類やらレベルがどうとか、そんな話が母娘の間でツーカーで通じるというのもなかなか珍しいことなんだろうなと思います。
今日テサスコが金メダルを決めた瞬間は、テレビの前で母娘3人で絶叫!そして落涙!でした。きっとこういう記憶は、ずっと心に残っていくんだろうなあ。
さて、明日から女子シングル。
いよいよ平昌オリンピック、フィギュアスケート最後の種目が始まります。
どうか選手たちみんなが、力を出し切れますように。魔物は、なるべくおとなしくしていてください。
フィギュアスケート競技も団体戦、個人戦の男子、ペアと終わり、昨日今日はアイスダンス。そう、私の大好きなアイスダンスなのに、テレビ放映が…ペアと同じくあまりに貧しい。
昨日のショートダンスは後半3グループはBS1で生中継があったのだけど、今日のフリーダンスに至っては他の競技が押したために最終グループ+1カップルしか生中継してくれませんでした。
ただし、今回は民放やNHKのネット配信での中継があったので、テレビでやってくれない前半部分はそちらで観ようと思ってたのですが…ショートダンスのときからなぜか音声が出ない!
ツイッターなどでも《音出ない》と言ってる人が複数いたので、何か解決法がないかなって探したんだけど…無理でした。で、仕方なく画質はよくないけどロシアのライストで観ました。とはいえ、不便はあってもいろんな方法でこうやって生で試合を観られる今の時代は、テレビしかなかった昔に比べてどれほど恵まれてることか。
昨日今日とそうやってアイスダンスを追いかけて、もうお腹いっぱい、胸いっぱい、ほんとうにすごい戦いでした。
これをテレビで少ししかやらず、一般に知られないのがまことにもったいない。
まずは、すべての戦いを終えて頂点に立った3組の姿を。
金メダルは、カナダのテッサ・バーチュー&スコット・モイア組(206.07:歴代最高得点)。
銀メダルは、フランスのガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組(205.28)。
銅メダルは、アメリカのマイア・シブタニ&アレックス・シブタニ組(192.59)でした。

4位からの順位は次のとおり。
4 マディソン・ハベル&ザッカリー・ドノヒュー(アメリカ)187.69
5 エカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビヨフ(ロシア)186.92
6 アンナ・カッペリーニ&ルカ・ラノッテ(イタリア)184.91
7 ケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ(カナダ)181.98
8 パイパー・ギルス&ポール・ポワリエ(カナダ)176.91
9 マディソン・チョック&エヴァン・ベイツ(アメリカ)175.58
10 シャーリーヌ・ギグナード&マルコ・ファブリ(イタリア)173.47
11 ペニー・クームス&ニコラス・バックランド(イギリス)170.32
12 サラ・ウルタド&キリル・ハリャーヴィン(スペイン)168.33
13 ティファニー・ザゴルスキー&ジョナサン・ゲレイロ(ロシア)162.24
14 ナタリア・カルシュク&マキシム・スポディリエフ(ポーランド)161.35
15 村元哉中&クリス・リード(日本)160.63
16 カヴィタ・ローレンツ&ヨティ・ポリゾアキス(ドイツ)150.49
17 マリー=ジャード・ローリオ&ロマン・ルギャック(フランス)149.59
18 ユラ・ミン&アレクサンドル・ガメリン(韓国)147.74
19 アリサ・アガフォノワ&アルペル・ウチャル(トルコ)147.18
20 ルチエ・ミスチェコヴァ&ルカシュ・チェーレイ(スロバキア)142.57
【テサスコv.s.パパシゼの頂上決戦】
今回のオリンピック、アイスダンスの頂上争いは2つのカップルに絞られてました。
バンクーバー金メダル、ソチ銀メダル、もはやアイスダンス界のレジェンドといっても過言ではないテッサ・バーチュー&スコット・モイア組。いったん現役引退をしたあと、まだやり残したことがあると競技に戻ってきての挑戦です。
もう一組は、若きカリスマカップルとなったガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組。現在世界歴代最高得点の記録を持っている2人。私がジュニアのころから偏愛してきたカップルなんですが、まさかこんなに早く、こんなところまで登りつめてくるとは思ってませんでした。
この二組は、同じコーチ陣のもとで、同じリンクで練習してるチームメイト。リンクサイドでなごやかに一緒にいるシーンも見られます。世界一を争ってしのぎを削る2組が…と思い返せば、テッサ&スコット組と、バンクーバー五輪とソチ五輪で金メダルを競い合ったライバルのデイヴィス&ホワイト組も、当時やっぱり同じコーチ、同じリンク(現在とは別のところ)のチームメイトでした。
テッサ&スコット(テサスコ)が競技に復帰してきた昨シーズンは、ちょうどパパダキス&シゼロン(パパシゼ)が飛ぶ鳥を落とす勢いでアイスダンス界を席巻していたとき。まだ20歳そこそこのパパシゼは快進撃を続けてたのですが、その後状況は変わってきました。復帰したベテランのテサスコの方がじりじりと得点を伸ばしてきたのです。
そしてオリンピックシーズンの今シーズン、2つのカップルの評価は拮抗してきました。テッサとスコットは28歳と30歳。いったん引退したとはいえ、まだまだアイスダンスの選手としては現役で十分戦える年齢です。
私はパパシゼを偏愛してきたとはいえ、テサスコはその技術、調和性において人間界を超えたアイスダンスカップルだと思っているので、今回はどちらにも勝ってもらいたいという気持ちで悶々としてました。パパシゼはまだまだ若い。これからがある。でもテサスコはこれが最後の五輪、最後の競技シーズンだと明言してる。おまけに今シーズンのテサスコのプログラムの仕上がりの凄まじいことといったら!
まずは昨日のショートダンス。
テサスコが歴代最高得点を出してトップに立ちました。
まさに鳥肌ものの演技。こんなラテンは誰にも滑れない。テッサの新衣装は、大阪の全マダムがひれ伏すゴージャス豹柄です。
(動画はいずれも最初にCMが入るのでそのまましばしお待ちを。あと、画面左下の音声ボタンをクリックして消音をオフにしてくださいね。あと、このサイトの動画は時間がたてば消えてしまうと思うので、その場合は別のところから動画を探して貼るようにします)
かたやパパシゼのショートダンスは、演技の最初のあたりでガブリエラちゃんの衣装にアクシデントが起きました。演技を中断できないと思ったガブリエラちゃんはそのまま続行。もちろんギヨームくんも気づいていたはずで、そのせいもあってかツイズルで近づきすぎるなどいつもより若干不安定な演技に。衣装がはだけたためにガブリエラちゃんは精神的な傷も負うことになり、ほんとうに残念でした。
とはいっても、そんな中ですばらしい得点を出したのはさすが若きカリスマカップル。テサスコとは、わずか1.74点という僅差につけました。
さて。
3位以下とは大きく差をつけて臨んだ、今日のフリーダンス。
滑走順はパパシゼの方が先でした。
彼らのオリンピックシーズンのプログラム、ベートーベンのピアノソナタ「月光」。
歴代最高得点を叩き出した、神々しいほどの端正な演技、ひとつの作品をつくりあげた2人の美しいムーブメントをごらんください。
そしてテサスコは、最終滑走。
もっとも重圧がかかる順番です。
なのになのに、結果、パパシゼの歴代最高得点を速攻で更新してしまった彼ら。
フリープログラムは「ムーランルージュ」。狂おしいまでの男女の愛のよろこび、苦しみが迫ってくる圧巻の演技です。
こんなものを観たらもう何も観たくないというくらい、アイスダンスでこんなことができるんだというひとつの究極を見せられた思い。
もしパパシゼにショートダンスでのアクシデントがなかったら…とか、滑走順が違っていたら…とか、たくさんの《もしも》はあるにせよ、テサスコのフリー演技は「ああ、彼らが世界最高なんだ」としか納得しようのない、圧倒的なものでした。
今のテサスコを見ていて思うのは、カップル競技における《ユニゾン》についてです。
同調性とか、調和性とか訳される《ユニゾン》。
つまり二人がいかに息を合わせ、ひとつに溶け合うように演技ができるかということなのですが、私が思うにテサスコの持つ《ユニゾン》は、ほかのアイスダンスカップルと完全に一線を画しています。彼らの演技における《ユニゾン》は、合せるとかではなくて、まるでひとつの身体を共有しているかのようです。
スコットが「テッサと心臓の鼓動すら合わせたい」と話したことがあるそうですが、この二人は7歳と9歳のときにカップルを組んで以来、ずっと組み替えなしで緊密な関係を作り上げてきました。心も身体も、お互いこれほど知り尽くしている相手はいないのではないかと思います。試合前に二人が必ずおこなう、恒例の長いハグ。それは他者を寄せつけない空気に満ちています。
でも、彼らはプライベートではリアルカップルではないそうです。あまりに仲がよく、あまりに息がぴったりなのでしばしば誤解されるみたいですが。
私はむしろ、この二人が恋愛関係でないがゆえに、たぐいまれな《ユニゾン》が壊れることなく育ってきたのではないかと思うのです。そして、男女が恋愛感情を介さずにここまで信頼しあい、大切に思いあうことができるということ。これもまたゆるぎない《愛》なんだな、こういう愛が存在するなら、この世にも希望があるな、と。
たぶん、こんな《ユニゾン》を持つ二人は、これから先も出てくることはないんじゃないかとも思うのですが。
テサスコは、やっぱり今季でもう競技をほんとうに去ってしまうのかな…。念願の平昌での金メダルを手に入れて、歴代最高得点も更新して、もはや競技の世界ではこれ以上望むことはなくなったのかもしれないけれど、彼らがいなくなると考えるとさびしくてもったいなくて。
パパシゼは、ここからもっともっと進化していくでしょう。それが楽しみで仕方がないし、きっとテサスコとはまったく違う意味で、あとにも先にもないほど圧倒的なアイスダンスカップルになってくれると思います。
【ついにメダル!シブタニズ。そしてオリンピックの魔物】
ものすごく上手な日系のジュニアカップルがいる、という話が耳に入ったのはかれこれ10年近く前だったような。お人形さんのようにかわいらしいマイアとアレックスのシブタニ兄妹が、ついにシニアデビューしたのは2010-11年シーズンで、そのシーズンの全米選手権、四大陸選手権で2位、世界選手権でも銅メダルを獲得と、電撃的デビューを飾りました。
ただしその後はソチ五輪でも9位、世界選手権でも表彰台から遠ざかり、プログラムに関してもなかなか彼らにぴったり合うものが見つからず、高い技術と一定の評価は保ち続けるものの、世界のトップには届かない日々が続きました。
転機は2015-16シーズンのフリープログラム、コールドプレイの「Fix You」。やっと《これがシブタニズ》と言えるプログラムを得て、全米選手権で初優勝、世界選手権でも5年ぶりに表彰台に立ちました。
今シーズンは、同じコールドプレイの「Parachutes」をフリープログラムの曲に選んでオリンピックに臨みました。
今回のオリンピック、金メダル・銀メダルはテサスコとパパシゼのほかはなく、銅メダルがどのカップルになるかが注目でした。
銅メダル候補としては、同じアメリカのマディソン・ハベル&ザッカリー・ドノヒュー組とマディソン・チョック&エヴァン・ベイツ組、イタリアのアンナ・カッペリーニ&ルカ・ラノッテ組などが挙がってました。
その中で、ハベル&ドノヒュー組がショートダンスで3位発進。僅差でシブタニズが4位につけました。
そんな中で、やっぱり出たんですね、いわゆる《オリンピックの魔物》が。
フリー最終グループの直前、チョック&ベイツ組はスピンに入るところで転倒。ふだんは大きなミスのない、技術力の高いカップルなのに…。今季「イマジン」のとてもすてきなプロで、好調でもあったのですが…。スピンがノーバリュー(0点)となり、2人とも転倒となったので2点減点。涙を流してのフィニッシュに、こちらも泣いてしまいました。
そして、シブタニズがノーミスで感動的な演技を終え、銅メダルを目の前にしたハベル&ドノヒュー組。初の全米選手権優勝をもぎ取った、自信のフリープログラム。
ところが、演技冒頭からいつもの彼ららしいパンチのきいたスピード感がなく、ツイズルでレベルも取りこぼした上、最後にザッカリーくんが氷に両手をついてしまい転倒扱いに。今季破竹の勢いだった彼らを襲った、これもオリンピックの魔物だったのでしょう。
カッペリーニ&ラノッテ組は「ライフ・イズ・ビューティフル」のサントラで、まるで映画を氷上に写し出すような情感あふれるすばらしい演技でしたが、ツイズルなどでレベルを取れず得点はあまり伸びませんでした。
そして、私がずっと応援してきたエカテリーナ・ボブロワ&ドミトリー・ソロビヨフ組。長くロシアのアイスダンスを牽引してきた2人の、たぶん集大成のオリンピック。ぐっと引き込まれる演劇的なフリープログラムでほんとうにすばらしかったのですが、結果はソチ五輪と同じく5位にとどまりました。
さまざまなことがあった結果、銅メダルはシブタニズの手に。まだ若い彼らですが、低迷も苦労も垣間見てきただけにこちらも感慨ひとしおでした。
そして、村元哉中&クリス・リード組の大健闘も、もちろん忘れちゃいけません。
シングルの選手だった哉中ちゃんがアイスダンスの世界に飛び込み、クリスと組んでから、ものすごい勢いで二人は進化してきました。五輪での15位はほんとうに立派です。
哉中ちゃんがぐいぐいクリスを引っぱり、クリスはこれまでの経験で哉中ちゃんを支え、とってもいい関係の中で急成長してきたんだろうなと思います。これからもっともっとうまくなることでしょう。彼らがどこまでいけるのか楽しみです。
私がアイスダンスを本格的に観はじめたのはバンクーバー五輪からなので、ちょうど8年くらい。この間にもたくさんの変遷があり、引退、復帰、組み替え、コーチの変更、けっこうめまぐるしい変化がありました。そして、最初のころからずっと一緒に観てきた娘たちも、この8年で子どもから大人へ。
アイスダンスはシングルと違い、ファンが少なくてなかなか人に話が通じないこともあって、どんな選手がどのコーチからどのコーチに替わったとか、ステップの種類やらレベルがどうとか、そんな話が母娘の間でツーカーで通じるというのもなかなか珍しいことなんだろうなと思います。
今日テサスコが金メダルを決めた瞬間は、テレビの前で母娘3人で絶叫!そして落涙!でした。きっとこういう記憶は、ずっと心に残っていくんだろうなあ。
さて、明日から女子シングル。
いよいよ平昌オリンピック、フィギュアスケート最後の種目が始まります。
どうか選手たちみんなが、力を出し切れますように。魔物は、なるべくおとなしくしていてください。
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by higurashizoshi
| 2018-02-21 00:18
| フィギュアスケート
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今日は家にいて、NHK地上波の生中継を最初から最後まで観てました。
途中で、もう観るのやめたいと何度か思うくらい、すごい試合でした。
ソチ五輪の男子フリーは最終グループに自滅演技が多く、モヤモヤが残った記憶があるのですが、今回平昌五輪の男子フリーは違いました。まっとうな激闘であり、結果も納得いくものでした。点数的なレベルが高すぎて、時代の変化をまざまざと感じた今日でした。
結果的には、ショートの上位3人がメダル。
勝つべくして勝った3人。心から讃えたいです。
ハビエル・フェルナンデス選手は、スペイン史上初めてのフィギュアスケートのメダリストとなりました。ほんとうにおめでとう!

男子シングルの総合順位です。
1羽生結弦(日本)317.85
2宇野昌磨(日本)306.90
3ハビエル・フェルナンデス(スペイン)305.24
4ボーヤン・ジン(中国)297.77
5ネイサン・チェン(アメリカ)297.35
6ヴィンセント・ゾウ(アメリカ)276.69
7ドミトリー・アリエフ(ロシア)267.51
8ミハイル・コリヤダ(ロシア)264.25
9パトリック・チャン(カナダ)263.43
10アダム・リッポン(アメリカ)259.36
11アレクセイ・ビチェンコ(イスラエル)257.01
12 キーガン・メッシング(カナダ)255.43
13ダニエル・サモヒン(イスラエル)251.44
14ヨリク・ヘンドリクス(ベルギー)248.95
15チャ・ジュンファン(韓国)248.59
16ミハル・ブレジナ(チェコ)246.07
17ミーシャ・ジー(ウズベキスタン)244.94
18田中刑事(日本)244.83
19デニス・ヴァシリエフス(ラトビア)234.58
20ブレンダン・ケリー(オーストラリア)233.81
21マテオ・リッツォ(イタリア)232.41
22パウル・フェンツ(ドイツ)214.55
23ハン・ヤン(中国)213.01
24モリス・クヴィテラシビリ(ジョージア)204.57
羽生結弦選手の圧倒的な強さ。この心の強さはどこからくるのだろう。
奇跡的なものを観た、という思いがぬぐえません。
こんな人はこれまでもいなかったし、これから先もいないだろう。
と同時に、これがもし彼の集大成になるのだとしたら、あまりに早く、さびしいなとも。
この特別なスケーターがこれからさらに進化するさまを、見たい。そう思わせられたから。

正直にいって、宇野昌磨選手が銀メダル、ということにいまだ実感がないんですよ。
私、ずっとショーマ推しで、すごく好きなスケーターなので応援もしてきたのだけど、
「ショーマ?メダル?それも、銀…?」
てキョトンとしてしまう。

フリー最終滑走で、冒頭の四回転ループで転倒したときは「もうだめか」と思いました。
インタビューによると、本人はその転倒で《一番にはなれないな》って思ったそうで、そしたら笑えてきたんだそうです。「笑いがこみあげてきた」って言ってましたね。
笑える…?オリンピックのメダルのかかった最終滑走の演技中に、笑える…?
ショーマは試合のとき、他の選手の演技をモニターで全部観てる珍しい選手です。ふつうは動揺するので見ないと思うんだけど、彼は平気なんですね。だから最終滑走の自分までの全部の選手の演技も得点も知ってた。そのうえでリンクに出ていった。
確かに、ショーマの基礎点からすると、もし予定通りのクリーンな演技ができたら結弦くんを上回る可能性はあったんですよね(いや、今回はそうならなくてよかったと思うけど)。
でも冒頭に転倒したから、あ、一番は無理だなって思った。そしたら笑えてきた。「もう、がんばろ、って」思ったんだそうです。そして銀メダルです。
要するに、今の彼にとっては、ほんとにその言葉通り、オリンピックは特別なものではない。試合のひとつにすぎないんですね。つくづく、これまで見たことのないタイプの選手だなって思います。
そういう意味でも、これからのショーマがどう変化していくのかが楽しみです。
ハビーは、たったひとつ四回転サルコウが抜けて二回転になった、あの瞬間に金メダルを逃しました。たったひとつ。
それでもそのほかはほんとうによくまとめました。縦横無尽でのびやかな最高のハビーではなかったけど、これまでのすべてを出したい、なんとしても勝つんだという思いがあふれ出ていました。
結果が出たあと、あの優しい笑顔で結弦くんを抱きしめて讃えるハビーの様子を見て、涙が止まりませんでした。

メダリスト全員が300点台という、4年前には想像もつかなかったハイスコアな五輪。
追い上げてあと一歩だった4位のボーヤン・ジン選手、奇跡のフリーを見せてくれたネイサン・チェン選手(フリーだけなら彼がダントツの1位でした)、そしてパトリック・チャン選手やミハル・ブレジナ選手など今季での引退を表明している選手たちの演技。
ヴィンセント・ゾウ選手やデニス・ヴァシリエフス選手など、4年後の進化が期待できる若い選手たちの姿も心に残りました。
実は今日はプライベートでは娘の天下分け目の試験当日で、そのことにハラハラし、男子フリーにハラハラし、一日中ちゃんと生きた心地がしませんでした。
でも娘も結果はわからないけど無事受験を終えて帰ってきたし、男子選手はみんなほんとうにすばらしい演技を見せてくれたし、ちょっと心を落ち着けてお風呂入って寝ようと思います。あ、録画してた表彰式見なきゃ。
途中で、もう観るのやめたいと何度か思うくらい、すごい試合でした。
ソチ五輪の男子フリーは最終グループに自滅演技が多く、モヤモヤが残った記憶があるのですが、今回平昌五輪の男子フリーは違いました。まっとうな激闘であり、結果も納得いくものでした。点数的なレベルが高すぎて、時代の変化をまざまざと感じた今日でした。
結果的には、ショートの上位3人がメダル。
勝つべくして勝った3人。心から讃えたいです。
ハビエル・フェルナンデス選手は、スペイン史上初めてのフィギュアスケートのメダリストとなりました。ほんとうにおめでとう!

1羽生結弦(日本)317.85
2宇野昌磨(日本)306.90
3ハビエル・フェルナンデス(スペイン)305.24
4ボーヤン・ジン(中国)297.77
5ネイサン・チェン(アメリカ)297.35
6ヴィンセント・ゾウ(アメリカ)276.69
7ドミトリー・アリエフ(ロシア)267.51
8ミハイル・コリヤダ(ロシア)264.25
9パトリック・チャン(カナダ)263.43
10アダム・リッポン(アメリカ)259.36
11アレクセイ・ビチェンコ(イスラエル)257.01
12 キーガン・メッシング(カナダ)255.43
13ダニエル・サモヒン(イスラエル)251.44
14ヨリク・ヘンドリクス(ベルギー)248.95
15チャ・ジュンファン(韓国)248.59
16ミハル・ブレジナ(チェコ)246.07
17ミーシャ・ジー(ウズベキスタン)244.94
18田中刑事(日本)244.83
19デニス・ヴァシリエフス(ラトビア)234.58
20ブレンダン・ケリー(オーストラリア)233.81
21マテオ・リッツォ(イタリア)232.41
22パウル・フェンツ(ドイツ)214.55
23ハン・ヤン(中国)213.01
24モリス・クヴィテラシビリ(ジョージア)204.57
羽生結弦選手の圧倒的な強さ。この心の強さはどこからくるのだろう。
奇跡的なものを観た、という思いがぬぐえません。
こんな人はこれまでもいなかったし、これから先もいないだろう。
と同時に、これがもし彼の集大成になるのだとしたら、あまりに早く、さびしいなとも。
この特別なスケーターがこれからさらに進化するさまを、見たい。そう思わせられたから。

正直にいって、宇野昌磨選手が銀メダル、ということにいまだ実感がないんですよ。
私、ずっとショーマ推しで、すごく好きなスケーターなので応援もしてきたのだけど、
「ショーマ?メダル?それも、銀…?」
てキョトンとしてしまう。

フリー最終滑走で、冒頭の四回転ループで転倒したときは「もうだめか」と思いました。
インタビューによると、本人はその転倒で《一番にはなれないな》って思ったそうで、そしたら笑えてきたんだそうです。「笑いがこみあげてきた」って言ってましたね。
笑える…?オリンピックのメダルのかかった最終滑走の演技中に、笑える…?
ショーマは試合のとき、他の選手の演技をモニターで全部観てる珍しい選手です。ふつうは動揺するので見ないと思うんだけど、彼は平気なんですね。だから最終滑走の自分までの全部の選手の演技も得点も知ってた。そのうえでリンクに出ていった。
確かに、ショーマの基礎点からすると、もし予定通りのクリーンな演技ができたら結弦くんを上回る可能性はあったんですよね(いや、今回はそうならなくてよかったと思うけど)。
でも冒頭に転倒したから、あ、一番は無理だなって思った。そしたら笑えてきた。「もう、がんばろ、って」思ったんだそうです。そして銀メダルです。
要するに、今の彼にとっては、ほんとにその言葉通り、オリンピックは特別なものではない。試合のひとつにすぎないんですね。つくづく、これまで見たことのないタイプの選手だなって思います。
そういう意味でも、これからのショーマがどう変化していくのかが楽しみです。
ハビーは、たったひとつ四回転サルコウが抜けて二回転になった、あの瞬間に金メダルを逃しました。たったひとつ。
それでもそのほかはほんとうによくまとめました。縦横無尽でのびやかな最高のハビーではなかったけど、これまでのすべてを出したい、なんとしても勝つんだという思いがあふれ出ていました。
結果が出たあと、あの優しい笑顔で結弦くんを抱きしめて讃えるハビーの様子を見て、涙が止まりませんでした。

メダリスト全員が300点台という、4年前には想像もつかなかったハイスコアな五輪。
追い上げてあと一歩だった4位のボーヤン・ジン選手、奇跡のフリーを見せてくれたネイサン・チェン選手(フリーだけなら彼がダントツの1位でした)、そしてパトリック・チャン選手やミハル・ブレジナ選手など今季での引退を表明している選手たちの演技。
ヴィンセント・ゾウ選手やデニス・ヴァシリエフス選手など、4年後の進化が期待できる若い選手たちの姿も心に残りました。
実は今日はプライベートでは娘の天下分け目の試験当日で、そのことにハラハラし、男子フリーにハラハラし、一日中ちゃんと生きた心地がしませんでした。
でも娘も結果はわからないけど無事受験を終えて帰ってきたし、男子選手はみんなほんとうにすばらしい演技を見せてくれたし、ちょっと心を落ち着けてお風呂入って寝ようと思います。あ、録画してた表彰式見なきゃ。
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by higurashizoshi
| 2018-02-17 23:51
| フィギュアスケート
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団体戦の後半部分を書こうと思ってたら、あっという間に個人戦のペアが始まり、男子ショートが今日終わりました。
ペアに関しては、スイ&ハン組に金メダルを!と個人的には応援してたのですが、サフチェンコ&マッソ組の歴史に残るフリー演技と、金メダル確定の瞬間にあふれ出した二人の涙を見て、「ああ、これでよかったんだ」と深く納得しました。
ウクライナからパートナーを求めてドイツ国籍を取り、多くの栄光ののちにパートナーが引退し、サフチェンコ選手も30歳を過ぎて引退するかと思いきや、若いパートナーを得て再び挑戦を始め…
しかも新パートナーのマッソ選手もドイツ人ではなく、フランス国籍から変更してのペア結成。そこから次第にまた世界の上位へと駆け上がってきて、ついにサフチェンコ選手は悲願の金メダルを手にしました。どれほどの苦労と困難の果てにこの瞬間を迎えたのか、想像すると思わずもらい泣き。
スイ&ハン組にとってはフリーでのわずかなミスが僅差での勝敗を分けたことになり、ほんとうに悔しいと思うけれど…4年後の母国開催の北京五輪まで、さらなる進化に期待です。
さて今日終わった男子ショート。
いやおそろしい試合でしたね。
ショートでの順位は、羽生結弦選手が圧巻の1位発進、2位がハビエル・フェルナンデス選手、3位が宇野昌磨選手、4位がボーヤン・ジン選手、はいここまで全部100点超え! ダークホースのドミトリー・アリエフ選手が5位です。

もう、どこを見ても羽生、羽生なので今さらですが、彼の超人伝説ここに極まれりという今日でした。昔のマンガみたい。というか、ふつう、こんな人はマンガの世界にしかいないはず。メンタルが強いとか、そういう次元じゃないです。
結弦くんの演技が終わった直後、一緒に観てた娘がひとこと、
「鬼、だね」
と言ったんですが、ほんとそうだなって思いました。もちろん悪い意味じゃなく。
明日のフリーがどんな内容であれ、今日のショートでの演技はひとつの伝説になりうるでしょう。
ハビーは素晴らしかったです。すべてを充実させて滑り切りました。4位に終わったソチ五輪から、ずっと彼の目指し続けたメダル。それがハビーの望む色になるかはわからないけど、絶対にその首にメダルがかかるところを想像して、明日を迎えたい。
そしてショーマは、今日もショーマでした。本人いわく、「高まってくると身体が動きすぎてしまう」。だからそれを抑えるのが大変だったそうです。
そして少し氷につまづきかけた瞬間とか、最後のトリプルアクセルがあやうかったけどおさめた直後とか、またも笑ってました。オリンピックの演技中に。いい意味で、こんな変なスケーター見たことないです。
ネイサン・チェン選手に関しては、団体戦のときから「どうしたんだろう?」と思ってました。
軽々と飛んできた多彩な四回転が、どうも決まらない。それでも、今季の活躍を考えれば個人戦では盛り返してくると確信してたのですが…。今日はまさに《悪夢》のひとことでした。どうかフリーでは彼らしい演技ができますように。
ほかに印象的だったのは、もはや美しき修行僧と化してしまったかのようなミーシャ・ジー選手の「アヴェ・マリア」の極まった演技。今季のどの演技よりも精神性が高かったです。
そしてヨリク・ヘンドリクス選手の、ジャンプも演技の中に完全に溶け込んだような、ひとつながりの美しいプログラム。
大好きなアダム・リッポン選手や、ミハル・ブレジナ選手の会心の演技もうれしかった。
もうひとり、惜しくもわずかな差でフリーに残れなかった初出場のマレーシアのジュリアン・ジー・ジェイ・イー選手。とても素敵なスケーターで、以前から応援していたので、初五輪での活躍を願ってました。いい演技だったのですけど…ほんとに惜しくも24位以内に僅差で入れず。
明日のメダル争いは、5位のアリエフ選手までの5人。
点差は3~4点あるとはいえ、フリーの出来次第では順位は入れ替わり可能。
明日は、選ばれた舞台に立つ選手たちの、何年もの思いや苦難が凝縮する日。
心して、静かに熱く見守りたいです。
ペアに関しては、スイ&ハン組に金メダルを!と個人的には応援してたのですが、サフチェンコ&マッソ組の歴史に残るフリー演技と、金メダル確定の瞬間にあふれ出した二人の涙を見て、「ああ、これでよかったんだ」と深く納得しました。
ウクライナからパートナーを求めてドイツ国籍を取り、多くの栄光ののちにパートナーが引退し、サフチェンコ選手も30歳を過ぎて引退するかと思いきや、若いパートナーを得て再び挑戦を始め…
しかも新パートナーのマッソ選手もドイツ人ではなく、フランス国籍から変更してのペア結成。そこから次第にまた世界の上位へと駆け上がってきて、ついにサフチェンコ選手は悲願の金メダルを手にしました。どれほどの苦労と困難の果てにこの瞬間を迎えたのか、想像すると思わずもらい泣き。
スイ&ハン組にとってはフリーでのわずかなミスが僅差での勝敗を分けたことになり、ほんとうに悔しいと思うけれど…4年後の母国開催の北京五輪まで、さらなる進化に期待です。
さて今日終わった男子ショート。
いやおそろしい試合でしたね。
ショートでの順位は、羽生結弦選手が圧巻の1位発進、2位がハビエル・フェルナンデス選手、3位が宇野昌磨選手、4位がボーヤン・ジン選手、はいここまで全部100点超え! ダークホースのドミトリー・アリエフ選手が5位です。

もう、どこを見ても羽生、羽生なので今さらですが、彼の超人伝説ここに極まれりという今日でした。昔のマンガみたい。というか、ふつう、こんな人はマンガの世界にしかいないはず。メンタルが強いとか、そういう次元じゃないです。
結弦くんの演技が終わった直後、一緒に観てた娘がひとこと、
「鬼、だね」
と言ったんですが、ほんとそうだなって思いました。もちろん悪い意味じゃなく。
明日のフリーがどんな内容であれ、今日のショートでの演技はひとつの伝説になりうるでしょう。
ハビーは素晴らしかったです。すべてを充実させて滑り切りました。4位に終わったソチ五輪から、ずっと彼の目指し続けたメダル。それがハビーの望む色になるかはわからないけど、絶対にその首にメダルがかかるところを想像して、明日を迎えたい。
そしてショーマは、今日もショーマでした。本人いわく、「高まってくると身体が動きすぎてしまう」。だからそれを抑えるのが大変だったそうです。
そして少し氷につまづきかけた瞬間とか、最後のトリプルアクセルがあやうかったけどおさめた直後とか、またも笑ってました。オリンピックの演技中に。いい意味で、こんな変なスケーター見たことないです。
ネイサン・チェン選手に関しては、団体戦のときから「どうしたんだろう?」と思ってました。
軽々と飛んできた多彩な四回転が、どうも決まらない。それでも、今季の活躍を考えれば個人戦では盛り返してくると確信してたのですが…。今日はまさに《悪夢》のひとことでした。どうかフリーでは彼らしい演技ができますように。
ほかに印象的だったのは、もはや美しき修行僧と化してしまったかのようなミーシャ・ジー選手の「アヴェ・マリア」の極まった演技。今季のどの演技よりも精神性が高かったです。
そしてヨリク・ヘンドリクス選手の、ジャンプも演技の中に完全に溶け込んだような、ひとつながりの美しいプログラム。
大好きなアダム・リッポン選手や、ミハル・ブレジナ選手の会心の演技もうれしかった。
もうひとり、惜しくもわずかな差でフリーに残れなかった初出場のマレーシアのジュリアン・ジー・ジェイ・イー選手。とても素敵なスケーターで、以前から応援していたので、初五輪での活躍を願ってました。いい演技だったのですけど…ほんとに惜しくも24位以内に僅差で入れず。
明日のメダル争いは、5位のアリエフ選手までの5人。
点差は3~4点あるとはいえ、フリーの出来次第では順位は入れ替わり可能。
明日は、選ばれた舞台に立つ選手たちの、何年もの思いや苦難が凝縮する日。
心して、静かに熱く見守りたいです。
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by higurashizoshi
| 2018-02-17 02:45
| フィギュアスケート
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始まりましたね、平昌オリンピック。(遅い…)
ソチから4年。早かったような、長かったような。
開会式の前にすでに競技があったフィギュアスケート。
いまだこちらも慣れない団体戦、選手に負担を強いるものでもある半面、個人戦への布石になるという利点もなきにしもあらず。特に今回は団体戦最初の男子ショートから荒れましたからね~。こんな朝早くから競技をやるのにフィギュアの選手たちは慣れてないので、団体戦で失敗しつつも身体慣らしや雰囲気に慣れるというハードな修練にはなったかもです。
団体戦男子ショートで一番驚いたのは、やはり金メダル候補のひとりネイサン・チェン選手が最近見たことのないような崩れ方をしたこと。
イナズマのごとく決めるはずの冒頭の四回転フリップからのコンビネーションが着氷乱れてセカンドが二回転に、しかもそのあとの単独の四回転トゥループがすっぽ抜けて二回転に、そして最後のトリプルアクセルは転倒と、すべてのジャンプで失敗。体調が悪いのか、ほかの原因かしらと心配になりました。個人戦では調子を取り戻していますように。
ほかの選手もロシアのコリヤダくんをはじめ、何人もが転倒や失敗を繰り返して大荒れ。
早朝からの練習→試合という流れにみんな身体がついていってないのかなと思ったものの、そこで気を吐く30歳のビチェンコ選手。まるで楽しげに軽々とクリーンプログラム!強い!
そして登場した20歳ショーマさん。朝が苦手らしいショーマさんですが、気負いもなく緊張の気配もなく、冒頭の四回転フリップはあぶなかったもののステッピンアウトでこらえ、あとは四回転トゥ含めクリーンにするするとやってのけちゃいました。
途中と最後にちょっと笑ってたのは、インタビューによると思ってなかったぐらつきとかあっての失笑的ひとり笑いだったそうで、《演技を終え満足そうにニヤッと笑った》とか書かれてる記事を読むと「うーむ、報道って…」と思ったことでした。
まあ、こんな場で(初出場のオリンピックで初演技中!)ひとり笑いが出るくらい、余裕があるってことではあるんだけれど。
終わったあと、「緊張は特になく、全日本の方が緊張した」とか言ってはりましたからね。どんだけ大物(超マイペース)なんだろう。
その宇野昌磨選手の団体戦ショートプログラムの演技です。
直接貼れないのでこちらから。
男子フリーは、やはり荒れ気味(ショートから勝ち上がった5か国の代表選手のうち、ほぼノーミスだったのは2人だけ)になりました。
その中で印象的だったのは、四回転を完全回避して《美しく完成されたクリーンプログラム》をめざしたアダム・リッポン選手の演技。昨シーズンから続けてのフリーのこのプログラム、私は大好きで、リッポンくん史上最高プロだと思っています。
個人戦では四回転を入れてくると思うので、この構成での美しい演技は今回しか見られないのでは。貴重です。
このフリーではパトリック・チャン選手もひさびさにまとめられたいい演技でした。
田中刑事選手は、やっぱりオリンピックの雰囲気にのまれたのかなあ。これを個人戦への糧にしてくれることを願ってます。すばらしい実力の持ち主なので、この大舞台でたくさんの人にそれを見せてほしい!
そして男子といえば、団体戦をスキップした羽生選手がいよいよ平昌入り。
いろいろな声が聞こえてくるとは思いますが、本人にとって少しでも納得のいくオリンピックになりますように。
団体戦の女子、ペア、アイスダンスについては次に。
フィギュア以外の競技もおもしろくて、ついつい観てしまってます。戸外での競技は悪天候と極寒で選手がどうにも気の毒なシーンが多い…。
ソチから4年。早かったような、長かったような。
開会式の前にすでに競技があったフィギュアスケート。
いまだこちらも慣れない団体戦、選手に負担を強いるものでもある半面、個人戦への布石になるという利点もなきにしもあらず。特に今回は団体戦最初の男子ショートから荒れましたからね~。こんな朝早くから競技をやるのにフィギュアの選手たちは慣れてないので、団体戦で失敗しつつも身体慣らしや雰囲気に慣れるというハードな修練にはなったかもです。
団体戦男子ショートで一番驚いたのは、やはり金メダル候補のひとりネイサン・チェン選手が最近見たことのないような崩れ方をしたこと。
イナズマのごとく決めるはずの冒頭の四回転フリップからのコンビネーションが着氷乱れてセカンドが二回転に、しかもそのあとの単独の四回転トゥループがすっぽ抜けて二回転に、そして最後のトリプルアクセルは転倒と、すべてのジャンプで失敗。体調が悪いのか、ほかの原因かしらと心配になりました。個人戦では調子を取り戻していますように。
ほかの選手もロシアのコリヤダくんをはじめ、何人もが転倒や失敗を繰り返して大荒れ。
早朝からの練習→試合という流れにみんな身体がついていってないのかなと思ったものの、そこで気を吐く30歳のビチェンコ選手。まるで楽しげに軽々とクリーンプログラム!強い!
そして登場した20歳ショーマさん。朝が苦手らしいショーマさんですが、気負いもなく緊張の気配もなく、冒頭の四回転フリップはあぶなかったもののステッピンアウトでこらえ、あとは四回転トゥ含めクリーンにするするとやってのけちゃいました。
途中と最後にちょっと笑ってたのは、インタビューによると思ってなかったぐらつきとかあっての失笑的ひとり笑いだったそうで、《演技を終え満足そうにニヤッと笑った》とか書かれてる記事を読むと「うーむ、報道って…」と思ったことでした。
まあ、こんな場で(初出場のオリンピックで初演技中!)ひとり笑いが出るくらい、余裕があるってことではあるんだけれど。
終わったあと、「緊張は特になく、全日本の方が緊張した」とか言ってはりましたからね。どんだけ大物(超マイペース)なんだろう。
その宇野昌磨選手の団体戦ショートプログラムの演技です。
直接貼れないのでこちらから。
男子フリーは、やはり荒れ気味(ショートから勝ち上がった5か国の代表選手のうち、ほぼノーミスだったのは2人だけ)になりました。
その中で印象的だったのは、四回転を完全回避して《美しく完成されたクリーンプログラム》をめざしたアダム・リッポン選手の演技。昨シーズンから続けてのフリーのこのプログラム、私は大好きで、リッポンくん史上最高プロだと思っています。
個人戦では四回転を入れてくると思うので、この構成での美しい演技は今回しか見られないのでは。貴重です。
このフリーではパトリック・チャン選手もひさびさにまとめられたいい演技でした。
田中刑事選手は、やっぱりオリンピックの雰囲気にのまれたのかなあ。これを個人戦への糧にしてくれることを願ってます。すばらしい実力の持ち主なので、この大舞台でたくさんの人にそれを見せてほしい!
そして男子といえば、団体戦をスキップした羽生選手がいよいよ平昌入り。
いろいろな声が聞こえてくるとは思いますが、本人にとって少しでも納得のいくオリンピックになりますように。
団体戦の女子、ペア、アイスダンスについては次に。
フィギュア以外の競技もおもしろくて、ついつい観てしまってます。戸外での競技は悪天候と極寒で選手がどうにも気の毒なシーンが多い…。
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by higurashizoshi
| 2018-02-12 19:14
| フィギュアスケート
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気がつけば、今年もあと4日ですって!
全日本については、女子ショートが終わったところから書いてませんでしたが、男子!
羽生選手というトップスター不在といえども実にスリリングな攻防でした。
全体として疵のない演技がこのところできてない宇野昌磨選手、それでも優勝はしっかり手にしました。そして《第三の男》が誰になるかという争いは、フリーで田中刑事選手と無良崇人選手の一騎打ちに。
無良選手が一世一代ともいえる素晴らしいフリー「オペラ座の怪人」をノーミスで滑り切り、コーチである両親と涙で抱き合う光景にテレビ前でもらい泣き。そして、直後が田中刑事選手。
無良くんも刑事くんも共通するのは、気が優しく謙虚、シャイであるという点。この性格の美点はアスリートとしては時に欠点になり、ここぞというときにメンタル面で押せない、自滅してしまう、という場面が2人ともにこれまで何度も何度も見られました。
その無良くんがここまでやり切り、しかも高得点を叩き出したのを目の当たりにして、刑事くん、もしかしてまた… と思ったのは私の杞憂でした。いやー杞憂でよかった。
無良くんももちろん応援してきたし、最後の五輪のチャンスをなんとかつかんでほしいと思ってました。ただ、刑事くんは関西でずっと練習してきたことから、これまでジュニアのころから何度かチャリティーなどで演技を生で観て、演技後も少しだけお話しする機会があったり、西宮のリンクで偶然練習を間近に見たり、ということがあり。もともと彼のスケートが私はとても好きだったので、応援にも力が入っていたのですよね。特に最近は四回転含むジャンプの成功率が上がっているだけでなく、表現や身体の使い方が非常に洗練されてきて、本当に美しい。
今回、特にすばらしかったショートでの演技です。完璧ノーミスで90点越え!ここでの高得点の貯金が、結果的に無良くんの追撃をかわし、刑事くんをオリンピックに導いたともいえます。
最後のステップシークエンスのときの天井カメラが惜しい!もう少し寄って、表情や表現をよく見せてほしかったな~。
そしてフリー、無良くんのスケート人生を賭けた演技。もう涙なしでは見られません。
ああ、このまま無良くんをオリンピックに行かせてあげたい!ときっと多くの人が思った直後の、刑事くんのフリー。
刑事くんがフリーで鮮やかに決めた4回転トゥループ、この一本が明暗を分けました。
そして激闘のあとなのに、なんとなくほのぼのとする、全日本2017男子表彰台。無良くんの笑顔に胸が痛みつつ。

無良くん、刑事くんの五輪3枠目争いが一番の注目でしたが、男子で忘れてはならないのは、ついに復活を果たした山本草太選手。
ジュニア時代から日本のトップになることは確実と言われ、平昌五輪出場を目指していた草太くんが相次ぐ大けがにより競技リンクから姿を消して、長い時がたちました。
復活の9月の中部選手権では、まだ一回転ジャンプしか跳べなかった草太くん。その後三回転まで徐々に跳べるようになり、この全日本では見事な演技を見せてくれました。
その滑らかで美しいスケーティングはさらに進化し、表現の奥行きが出て、すばらしい成長を感じました。まだ17歳!これでジャンプが戻ってきたら…本当に楽しみです。
女子に関しては、やはりケガからの復活シーズンだった宮原知子選手が勝ちとった優勝の意味の大きさ。そしてダークホース、坂本花織選手の快進撃と五輪切符奪取。
敗れた樋口新葉選手、三原舞依選手、本郷理華選手、そして本田真凛選手…。どうか気持ちを立て直して、次の派遣試合や来シーズンに新たに力を注いでほしいです。
そして3位に飛びこんだ紀平梨花選手のトリプルアクセル、ショートとフリー合わせて3本という、浅田真央選手以来の快挙。しかもまだ中学生。表現力も兼ね備えたバランスのいい選手で、これからが非常に楽しみです。
ペア優勝の須崎海羽&木原龍一組、アイスダンス優勝の村元哉中&クリス・リード組、それぞれに五輪経験者と初参加の組み合わせとなりました。ペアは須藤&ブードロ=オデ組が国籍問題で五輪出場がかなわないのが残念…。
しかしこの写真、ショーマと刑事くんが異様に可愛くありません?

ロシアの国内選手権も終了し(CSで放映中)、年明けすぐには全米選手権が始まります。
わが身を振り返れば、仕事納めもして明日からついに!おせち大作戦開始。
喪が2年続いたために3年ぶりのおせち作りなので、何をどうするんだっけ?状態。まあとにかくやらねばです。
今年を振り返って、しばししみじみと何か書けたらと思ってます。
全日本については、女子ショートが終わったところから書いてませんでしたが、男子!
羽生選手というトップスター不在といえども実にスリリングな攻防でした。
全体として疵のない演技がこのところできてない宇野昌磨選手、それでも優勝はしっかり手にしました。そして《第三の男》が誰になるかという争いは、フリーで田中刑事選手と無良崇人選手の一騎打ちに。
無良選手が一世一代ともいえる素晴らしいフリー「オペラ座の怪人」をノーミスで滑り切り、コーチである両親と涙で抱き合う光景にテレビ前でもらい泣き。そして、直後が田中刑事選手。
無良くんも刑事くんも共通するのは、気が優しく謙虚、シャイであるという点。この性格の美点はアスリートとしては時に欠点になり、ここぞというときにメンタル面で押せない、自滅してしまう、という場面が2人ともにこれまで何度も何度も見られました。
その無良くんがここまでやり切り、しかも高得点を叩き出したのを目の当たりにして、刑事くん、もしかしてまた… と思ったのは私の杞憂でした。いやー杞憂でよかった。
無良くんももちろん応援してきたし、最後の五輪のチャンスをなんとかつかんでほしいと思ってました。ただ、刑事くんは関西でずっと練習してきたことから、これまでジュニアのころから何度かチャリティーなどで演技を生で観て、演技後も少しだけお話しする機会があったり、西宮のリンクで偶然練習を間近に見たり、ということがあり。もともと彼のスケートが私はとても好きだったので、応援にも力が入っていたのですよね。特に最近は四回転含むジャンプの成功率が上がっているだけでなく、表現や身体の使い方が非常に洗練されてきて、本当に美しい。
今回、特にすばらしかったショートでの演技です。完璧ノーミスで90点越え!ここでの高得点の貯金が、結果的に無良くんの追撃をかわし、刑事くんをオリンピックに導いたともいえます。
最後のステップシークエンスのときの天井カメラが惜しい!もう少し寄って、表情や表現をよく見せてほしかったな~。
そしてフリー、無良くんのスケート人生を賭けた演技。もう涙なしでは見られません。
ああ、このまま無良くんをオリンピックに行かせてあげたい!ときっと多くの人が思った直後の、刑事くんのフリー。
刑事くんがフリーで鮮やかに決めた4回転トゥループ、この一本が明暗を分けました。
そして激闘のあとなのに、なんとなくほのぼのとする、全日本2017男子表彰台。無良くんの笑顔に胸が痛みつつ。

無良くん、刑事くんの五輪3枠目争いが一番の注目でしたが、男子で忘れてはならないのは、ついに復活を果たした山本草太選手。
ジュニア時代から日本のトップになることは確実と言われ、平昌五輪出場を目指していた草太くんが相次ぐ大けがにより競技リンクから姿を消して、長い時がたちました。
復活の9月の中部選手権では、まだ一回転ジャンプしか跳べなかった草太くん。その後三回転まで徐々に跳べるようになり、この全日本では見事な演技を見せてくれました。
その滑らかで美しいスケーティングはさらに進化し、表現の奥行きが出て、すばらしい成長を感じました。まだ17歳!これでジャンプが戻ってきたら…本当に楽しみです。
女子に関しては、やはりケガからの復活シーズンだった宮原知子選手が勝ちとった優勝の意味の大きさ。そしてダークホース、坂本花織選手の快進撃と五輪切符奪取。
敗れた樋口新葉選手、三原舞依選手、本郷理華選手、そして本田真凛選手…。どうか気持ちを立て直して、次の派遣試合や来シーズンに新たに力を注いでほしいです。
そして3位に飛びこんだ紀平梨花選手のトリプルアクセル、ショートとフリー合わせて3本という、浅田真央選手以来の快挙。しかもまだ中学生。表現力も兼ね備えたバランスのいい選手で、これからが非常に楽しみです。
ペア優勝の須崎海羽&木原龍一組、アイスダンス優勝の村元哉中&クリス・リード組、それぞれに五輪経験者と初参加の組み合わせとなりました。ペアは須藤&ブードロ=オデ組が国籍問題で五輪出場がかなわないのが残念…。
しかしこの写真、ショーマと刑事くんが異様に可愛くありません?

ロシアの国内選手権も終了し(CSで放映中)、年明けすぐには全米選手権が始まります。
わが身を振り返れば、仕事納めもして明日からついに!おせち大作戦開始。
喪が2年続いたために3年ぶりのおせち作りなので、何をどうするんだっけ?状態。まあとにかくやらねばです。
今年を振り返って、しばししみじみと何か書けたらと思ってます。
▲
by higurashizoshi
| 2017-12-28 01:47
| フィギュアスケート
|
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おそるおそる確認するに、グランプリシリーズのスケートアメリカの前で更新止まってましたね…?
そのあとスケートアメリカ、グランプリファイナルがあり、そして今日は全日本選手権が開幕。
さっそく女子ショートは大変な展開になっております。たった2枠のオリンピック代表をめぐる、まさにアスリート人生を賭けた戦いがスタート。
個人的には今日一番の演技は本郷理華選手の「カルミナ・ブラーナ」でした。人知を超えた何かが降臨したような、いわゆる《ゾーン》の演技。冒頭から最後まで、ただ惹きこまれました。
演技後、はらはらと落涙する本郷選手を見ながら、テレビの前で涙目でスタオベしました。
出たぞ70点台。ついに回転不足取られず。
ケガで滑れなかった苦しい日々から立ちあがった宮原知子選手の、新たなオーラを放つ演技、まさかのショート1位になった坂本花織選手、ショートでの失敗をどこまで挽回できるかと気がかりな樋口新葉選手と三原舞依選手、トリプルアクセルをこんなに安定して跳ぶ?と驚嘆の紀平梨花選手、などなど、フリーはいったいどうなるんだろう…?
明日は男子ショートです。
このところ(最近ずっとか…)とにかく忙しくて余裕がないのですが、明日はなんとか夕方から時間を空けることができて、家で第1グループからの生中継を観られる予定。
更新してない間にも、いろんなことがあり、福島行ったり、東京行ったり、仕事行ったり、バッハ歌ったり、第九を助っ人で歌ったり、映画観たり、人前で詩に関して話したり、ほかにもいろいろしました。
ここに書きたいなあと思うことがたくさんあるのに、なかなか書けないということが相変わらず続いてます。
全日本のこと、このあとも書きたいとは思っており… ただし実現するかは不明という感じ。
とりあえず男子はオリンピック3枠目が誰になるか、考えるだけで胸が痛い。
迫るクリスマスと年の瀬、そしてお正月。
私にとって、人のためになりたいと思いつつ孤島に逃げたいとも思う、一年でもっともアンビバレンツな季節。
そのあとスケートアメリカ、グランプリファイナルがあり、そして今日は全日本選手権が開幕。
さっそく女子ショートは大変な展開になっております。たった2枠のオリンピック代表をめぐる、まさにアスリート人生を賭けた戦いがスタート。
個人的には今日一番の演技は本郷理華選手の「カルミナ・ブラーナ」でした。人知を超えた何かが降臨したような、いわゆる《ゾーン》の演技。冒頭から最後まで、ただ惹きこまれました。
演技後、はらはらと落涙する本郷選手を見ながら、テレビの前で涙目でスタオベしました。
出たぞ70点台。ついに回転不足取られず。
ケガで滑れなかった苦しい日々から立ちあがった宮原知子選手の、新たなオーラを放つ演技、まさかのショート1位になった坂本花織選手、ショートでの失敗をどこまで挽回できるかと気がかりな樋口新葉選手と三原舞依選手、トリプルアクセルをこんなに安定して跳ぶ?と驚嘆の紀平梨花選手、などなど、フリーはいったいどうなるんだろう…?
明日は男子ショートです。
このところ(最近ずっとか…)とにかく忙しくて余裕がないのですが、明日はなんとか夕方から時間を空けることができて、家で第1グループからの生中継を観られる予定。
更新してない間にも、いろんなことがあり、福島行ったり、東京行ったり、仕事行ったり、バッハ歌ったり、第九を助っ人で歌ったり、映画観たり、人前で詩に関して話したり、ほかにもいろいろしました。
ここに書きたいなあと思うことがたくさんあるのに、なかなか書けないということが相変わらず続いてます。
全日本のこと、このあとも書きたいとは思っており… ただし実現するかは不明という感じ。
とりあえず男子はオリンピック3枠目が誰になるか、考えるだけで胸が痛い。
迫るクリスマスと年の瀬、そしてお正月。
私にとって、人のためになりたいと思いつつ孤島に逃げたいとも思う、一年でもっともアンビバレンツな季節。
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by higurashizoshi
| 2017-12-22 03:53
| フィギュアスケート
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